1 保健医療サービス及び福祉サービスの提供(基本法第14条関係)
(1) 「PTSD対策専門研修」の内容の充実等
【施策番号38】
厚生労働省においては、医師、看護師、保健師、精神保健福祉士等を対象に、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関する専門的知識・技能を習得させる「PTSD対策専門研修」を実施し、医療機関、精神保健福祉センター、保健所等における地域住民等に対する相談支援の充実を図っている。
同研修においては、犯罪被害者等の心のケアに関する「犯罪・性犯罪被害者コース」を設けており、令和5年度は399人(前年度:347人)が受講した。
(2) PTSD等の治療に対応できる医療機関に関する情報提供
【施策番号39】
厚生労働省においては、平成19年4月から、医療機関に対し、医療機能に関する一定の情報について都道府県への報告を義務付け、都道府県が、医療機関の診療科目、医師や看護師の数等の基本的な情報、提供する医療の内容に関する情報及び医療連携や医療安全に関する情報を比較できるよう整理し、ウェブサイト等において住民が利用しやすい形で公表する医療機能情報提供制度を運用しており、令和6年4月には全国統一的な情報提供システム(検索サイト)として、医療情報ネット(ナビイ)(https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/znk-web/juminkanja/S2300/initialize)の運用を開始した。同制度の報告事項にはPTSD治療の可否も含まれており、厚生労働省においては、ウェブサイト等を活用し、同制度の周知に努めている。


(3) 医療現場における自立支援医療制度の周知
【施策番号40】
厚生労働省においては、「犯罪被害者等のPTSD治療に係る自立支援医療(精神通院医療)の利用について(周知依頼)」(平成28年4月28日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課長通知)により、各都道府県・指定都市障害保健福祉主管部(局)長に対し、保険診療によるPTSD治療が自立支援医療(精神通院医療)の対象となることについて周知を依頼した。
さらに、令和5年7月に「「犯罪被害者等施策の一層の推進について」の決定に伴う特別児童扶養手当、障害児福祉手当、特別障害者手当、自立支援給付の周知について」(令和5年7月7日付け厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長通知)により、各都道府県・指定都市障害保健福祉主管部(局)長に対し、犯罪被害者等も支給要件等に該当すれば、自立支援給付が利用できることについて、再度周知を依頼した(第1部第5章「犯罪被害者等のための制度の拡充等」参照)。
(4) 犯罪被害者等への適切な対応に資する医学教育の推進
【施策番号41】
文部科学省においては、医学生が卒業までに身に付けておくべき実践的診療能力を学修目標として提示した「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/mext_00005.html)を策定し、PTSDについては、医学生が複眼的に学修できるよう、不安障害や心的外傷後ストレス障害として整理するとともに、全国医学部長病院長会議の総会をはじめとする医学部関係者が参加する各種会議において、同カリキュラム及び第4次基本計画の内容を紹介し、各大学におけるPTSD等の精神的被害に関する教育の充実に向けた取組を要請している。
また、厚生労働省においては、医学部卒業後の医師臨床研修の到達目標、方略及び評価において、精神科を必修分野として位置付け、精神疾患に関する研修医の理解の促進を図っている。
(5) 犯罪被害者等支援業務に関する精神保健福祉センターの職員の理解促進
【施策番号42】
精神保健福祉センターにおいては、心のケアが必要な犯罪被害者等に対し、精神保健に関する相談支援を行っている。厚生労働省においては、平成20年度に「犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究」において取りまとめられた、「犯罪被害者等支援のための地域精神保健福祉活動の手引」(http://victims-mental.umin.jp/pdf/shiryo_tebikizenbun.pdf)を同センターに配布し、相談支援の充実を図っている。
(6) 地域格差のない迅速かつ適切な救急医療の提供
【施策番号43】
厚生労働省においては、ドクターカー・ドクターヘリの普及や、初期救急、二次救急(入院を要する救急)及び三次救急(救命救急)の救急医療体制の体系的な整備を図っている。また、消防庁及び厚生労働省においては、救急業務におけるメディカルコントロール体制※の構築及び充実・強化に努めており、令和5年8月現在、全国で47の都道府県メディカルコントロール協議会及び250の地域メディカルコントロール協議会等から成るメディカルコントロール体制が構築されている。
(7) 救急医療における精神的ケアのための体制の確保
【施策番号44】
厚生労働省においては、救命救急センターに犯罪被害者等が搬送された場合に、救急医療の実施と併せて、精神科医による診療等が速やかに行われるよう、必要に応じて精神科医を適時確保することを各都道府県に要請している。
なお、令和6年4月現在、306か所(前年:302か所)の施設が救命救急センターとして指定されている(厚生労働省ウェブサイト:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32614.html)。
(8) 自動車事故による重度後遺障害者に対する医療の充実等
【施策番号45】
国土交通省においては、平成13年度より、自動車事故による重度後遺障害のために在宅介護を受けている者の入院を積極的に受け入れる病院を短期入院協力病院として指定しており、令和5年度には新たに5病院を指定し、全国で合計202病院となった。また、令和4年度より、短期入院協力病院の中から、意欲的にリハビリテーションを提供する病院を重点支援病院として10病院を指定している。さらに、平成25年度より、障害者支援施設等を短期入所協力施設として指定しており、令和5年度には新たに7施設を指定し、全国で合計143施設となった。また、同年度より、短期入所協力施設の中から、夜間の医療的ケアに対応可能な施設を重点支援施設として5施設を指定している。
独立行政法人自動車事故対策機構(ナスバ)(https://www.nasva.go.jp/)においては、全国12か所(療護センター4か所、療護施設機能一部委託病床8か所(うち一貫症例研究型委託病床1か所))の療護施設において、自動車事故による遷延性意識障害者に対する高度な治療及び手厚い看護を実施するとともに、重度後遺障害者(脊髄損傷者)に対して十分な治療・リハビリテーション等の機会を確保するための環境整備を図っている。さらに、訪問支援の実施、被害者やその家族との交流会の開催、各種被害者団体との意見交換会等を通じて、被害者やその家族の実情、要望等の把握に努めている。
また、国土交通省においては、令和4年6月に成立した自動車損害賠償保障法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律を踏まえ、自動車事故被害者支援等のさらなる充実への取組として、自動車事故被害者への支援に関する情報提供の充実、自動車事故対策事業の財源を負担することとなる自動車ユーザーの理解促進にも取り組み、安全・安心な車社会の実現を推進することとしている。
自動車事故被害者本人やその家族等が、事故直後に混乱している中でも事故の概要等の記録を残すことができるようにするとともに、警察、独立行政法人自動車事故対策機構や地方公共団体、民間被害者支援団体等で行われている支援制度を知ることができるよう、「交通事故被害者ノート」を配布した。元々はあらゆる犯罪被害者向けの「被害者ノート」を、交通事故被害の観点から更に内容を充実させ、その周知に取り組んでいく。
令和6年3月、自賠責保険に関する情報へのアクセスを容易にするべく、自賠責保険に関連する複数のウェブサイトを統合した。これにより、自動車事故被害者への支援・事故防止対策、賦課金の使途や必要性等をはじめ、自賠責保険に関する情報を分かりやすく発信している。また、SNSを用いた情報発信にも取り組んでいる。今後、随時内容を更新していく予定であり、自動車事故被害者支援に対する自動車ユーザーの理解を得るための不断の努力を行っていく。



(9) 高次脳機能障害者への支援の充実
【施策番号46】
厚生労働省においては、各都道府県において実施する「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」を支援しており、同事業では、高次脳機能障害者に対する支援を行うための支援拠点機関の設置、支援コーディネーターによる専門的な相談支援、関係機関との地域ネットワークの構築、高次脳機能障害の支援手法等に関する研修等を行っている。
また、平成23年10月、国立障害者リハビリテーションセンター内に高次脳機能障害情報・支援センターを設置し、毎年2回「高次脳機能障害支援普及全国連絡協議会」及び「高次脳機能障害支援コーディネーター全国会議」を開催するとともに、高次脳機能障害に関する最新の支援情報をはじめとする様々な情報を集約し、高次脳機能障害者やその家族、支援関係者等に役立つ情報をウェブサイトで発信する体制を整備するなど、情報提供機能の強化を図っている。特に、専用ウェブサイト(http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/)において、高次脳機能障害者が、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づくサービスの対象である旨や、疾患や年齢に応じた制度の概要等を周知している。
令和5年度は、全国で470人(前年度:464人)の支援コーディネーターを配置、研修会・講習会を293回(前年度:295回)開催(参加者数2万2,233人(前年度:2万3,496人))、ケース会議を2,808回(前年度:2,742回)開催(参加者数1万6,074人(前年度:1万4,833人))した。

(10) 子供の被害者等に対応できる思春期精神保健の専門家の養成
【施策番号47】
厚生労働省においては、不登校、ひきこもり、家庭内暴力等の児童思春期における精神保健に関する様々な問題に対応できる人材を確保するため、医療従事者やひきこもり支援従事者等を対象に「思春期精神保健研修」を実施し、精神保健福祉センター、保健所、ひきこもり地域支援センター等における地域住民等に対する相談支援の充実を図っている。
令和5年度は、医療従事者専門研修を450人(前年度:391人)、ひきこもり対策研修を374人(前年度:464人)が、それぞれ受講した。
(11) 被害少年等のための治療等の専門家の養成、体制整備及び施設の増強に資する施策の実施
【施策番号48】
こども家庭庁においては、虐待を受けたこどもの児童養護施設等への入所が増加していることを受け、平成23年度に心理療法担当職員及び個別対応職員の児童養護施設等への配置を義務化したほか、令和5年度に児童養護施設等が障害等を有する児童を受け入れる際の連絡調整や入所中の支援のための障害児等受入調整員を配置する費用の補助を行うとともに、課題に応じた個別対応の強化を図るため、令和6年度にケアニーズの高い児童を受け入れている自立援助ホーム及びファミリーホームへの個別対応職員の配置を支援するなど適切な支援体制を確保している。
また、児童相談所においては、円滑な業務遂行のため、児童福祉司(指導及び教育を行う児童福祉司(以下「指導教育担当児童福祉司」という。)を含む。)、相談員、精神科若しくは小児科を専門とする医師及び保健師、児童心理司、心理療法担当職員、弁護士等を配置するとともに、こどもへの相談援助活動を行うに当たって専門的・医学的な判断や治療を必要とする場合には、医療機関の受診に関する支援を行うこととしている。
令和5年4月1日現在、全国の計232の児童相談所には、6,138人の児童福祉司、819人の医師、253人の保健師及び2,623人の児童心理司が配置されている。
年次 | 児童 相談所数 |
児童 福祉司数 |
児童 心理司数 |
---|---|---|---|
平成30年 | 210 | 3,426 | 1,447 |
平成31年 | 215 | 3,817 | 1,570 |
令和2年 | 219 | 4,553 | 1,800 |
令和3年 | 225 | 5,168 | 2,071 |
令和4年 | 228 | 5,783 | 2,347 |
令和5年 | 232 | 6,138 | 2,623 |
※ 児童福祉司数には任用予定者を含む。 | |||
提供:こども家庭庁 |
(12) 里親制度の充実
【施策番号49】
こども家庭庁においては、虐待を受けたなどの事情により代替養育を必要とするこどもについて、家庭養育優先原則に基づき、里親やファミリーホームへの委託の推進を図っており、里親のリクルート及びアセスメント、登録前・登録後及び委託後における里親に対する研修、こどもと里親家庭のマッチング、里親養育への支援(未委託期間中及び委託解除後のフォローを含む。)に至るまでの里親養育支援等を実施する事業に要する経費を補助する里親養育包括支援(フォスタリング)事業を実施している。令和6年度予算においては、同年4月に創設された「里親支援センター」による里親等への支援等を推進するほか、里親支援センターにおける人材育成のため、里親支援センター等の職員に対する研修や全国フォーラムの開催、第三者評価機関職員研修を実施するとともに、里親に対する研修受講費用の支援範囲を広げるための経費等を盛り込んでいる。令和4年度末時点での里親登録数は、1万6,817人(前年度:1万5,607人)である。
(13) 児童虐待への夜間・休日対応の充実等
【施策番号50】
ア こども家庭庁においては、児童相談所が夜間・休日を問わずいつでも相談に応じられる体制を整備するための予算補助を行っており、令和6年4月現在、全ての児童相談所(79地方公共団体・234か所)において、24時間・365日対応可能な体制が確保されている。
【施策番号51】
イ こども家庭庁においては、児童相談所では対応困難な医学的判断・治療が必要となるケースに迅速・適切に対応するため、都道府県が地域の医療機関を協力医療機関として指定し、個々のケースに応じた心身の治療の必要性等について児童相談所が医学的見地から専門的・技術的な助言を受ける取組に対し、予算補助を行っている。
(14) 被害少年等の保護に関する学校及び児童相談所等の連携の充実
【施策番号52】
地方公共団体が設置する要保護児童対策地域協議会においては、虐待を受けているこども等の早期発見や適切な保護を図るため、市区町村(こども家庭センター)、児童相談所、学校・教育委員会、警察等の関係機関が、要保護児童やその保護者等(以下「支援対象児童等」という。)に関する情報共有や支援内容の協議を行うこととしており、その結果を踏まえ、関係機関が適切な連携を図り対応している。同協議会は、令和2年4月現在、99.8%の市区町村で設置されている。
また、令和元年6月に成立した児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律により、同協議会から情報提供等の求めを受けた関係機関等は、これに応ずるよう努めなければならないこととされたほか、虐待を受けたこどもが住所等を移転する場合には、移転前の住所等を管轄する児童相談所長は、移転先の住所等を管轄する児童相談所長に速やかに情報提供を行うとともに、情報提供を受けた児童相談所長は、同協議会が速やかに情報共有を行うことができるようにするための措置を講ずることとされた。
さらに、「保育所等から市町村又は児童相談所への定期的な情報提供について」(令和5年8月4日付けこども家庭庁成育局長、支援局長通知)を発出するなど学校と市町村・児童相談所の連携について周知徹底を図っている。

平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | ||
---|---|---|---|---|
設置している市区町村数(※) | 1,736(99.7%) | 1,738(99.8%) | 1,738(99.8%) | |
登録ケース数(うち児童虐待) | 238,642(108,041) | 263,430(122,569) | 277,234(134,229) | |
調整機関職員数 | ① 児童福祉司と同様の専門資格を有する職員 | 1,986 | 2,113 | 2,849 |
② その他専門資格を有する職員 | 3,949 | 3,909 | 4,153 | |
③ ①②以外の職員(事務職等) | 2,215 | 1,945 | 1,551 | |
④ 合計 | 8,150 | 7,967 | 8,553 | |
※各年度4月1日時点(設置している市区町村数、登録ケース数) 【出典】厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課調べ |
||||
提供:こども家庭庁 |
(15) 被害少年等に対する学校における教育相談体制の充実等
【施策番号53】
ア 文部科学省においては、犯罪被害者等を含む児童生徒の相談等に適切に対応できるよう、学校における教育相談体制の充実に取り組んでいる。具体的には、心理及び福祉に関する専門家(スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー)を学校に配置するために必要な経費の一部を都道府県教育委員会等に対し補助した。加えて、犯罪被害に遭った児童生徒等の相談等に適切に対応できるよう、教職員の資質能力の向上に向けた研修等の実施や、教育委員会等を対象とした会議等における警察等関係機関と連携した犯罪被害に遭った児童生徒等への対応等に係る周知等を通じて、学校における相談体制の充実を図っている。
年度 | スクール カウンセラー |
スクール ソーシャルワーカー |
---|---|---|
平成30年度 | 8,995 | 2,377 |
令和元年度 | 9,210 | 2,659 |
令和2年度 | 9,539 | 2,859 |
令和3年度 | 9,948 | 3,091 |
令和4年度 | 10,255 | 3,241 |
※ 経費を補助した任用に限る。 | ||
提供:文部科学省 |

【施策番号54】
イ 教員が犯罪被害者等を含む児童生徒の相談等に適切に対応できるよう、大学の教職課程においては、カウンセリングに関する基礎的な知識を含む教育相談の理論及び方法が必修とされている。また、地方公共団体の教育相談指導者を対象として、犯罪被害者等に関する内容を含む教育相談の研修を実施している。
(16) 被害少年の精神的被害を回復するための継続的支援の推進
【施策番号55】
人格形成の途上にある少年が犯罪被害を受けた場合には、その後の健全育成に与える影響が大きいことから、警察においては、被害少年の再被害を防止するとともに、その精神的打撃の軽減を図るため、少年補導職員(令和6年4月現在、全国で820人(前年:850人)配置)等による指導・助言やカウンセリング等の継続的な支援を行っている。
被害少年の支援については、公認心理師等の資格を有する部内カウンセラーによる支援体制の充実を図るとともに、臨床心理学、精神医学等の高度な知識・技能を有する部外の専門家に被害少年カウンセリングアドバイザーを委嘱し、その指導・助言を受けながら適切に支援を行っている。
令和5年中、児童ポルノ事犯の検挙を通じて新たに特定された被害児童の数は1,444人であり、このうち19.9%は抵抗する手段を持たない小学生以下の低年齢児童であるほか、SNSの利用に起因して児童買春等の被害に遭った児童の数が1,665人に上るなど、こどもの性被害をめぐる情勢は依然として厳しい状況にある。警察においては、このような情勢を踏まえ、「子供の性被害防止プラン(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)2022」(令和4年5月20日犯罪対策閣僚会議決定)に基づき、関係府省庁と連携し、被害児童の迅速な保護及び適切な支援に向けた取組を推進している。

(17) 警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実
【施策番号56】
警察においては、令和6年4月現在、47都道府県警察で計209人(うち公認心理師又は臨床心理士の資格を有する職員167人)の部内カウンセラーを配置するとともに、全ての都道府県警察においてカウンセリング費用の公費負担制度を運用している(【施策番号15】参照)。

(18) 性犯罪被害者等に対する緊急避妊に関する情報提供
【施策番号57】
厚生労働省及びこども家庭庁においては、性犯罪被害者その他の緊急避妊を必要とする者が、緊急避妊薬の使用目的や使用方法等を含め、緊急避妊の方法等に関する情報を得られるよう、保健所や性と健康の相談センター等を通じて情報提供を行っている。
なお、厚生労働省においては、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に基づき緊急避妊薬の調剤に対応可能な薬局等に関する情報について、厚生労働省ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/kinnkyuuhininnyaku.html)で公開している。
(19) 性犯罪被害者への対応における看護師等の活用
【施策番号58】
厚生労働省においては、医師、看護師等が連携し、各々の専門性を発揮して性犯罪・性暴力等の被害者への支援に取り組んでいる、実践的な事例を盛り込んだ「チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集」を作成し、ウェブサイト(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ehf7.html)等で周知している。
(20) ワンストップ支援センターの体制強化
【施策番号59】
ア 内閣府においては、ワンストップ支援センター(基礎資料8参照)について、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金により、24時間365日対応化、拠点となる病院における環境整備等の促進、コーディネーターの配置・常勤化等の地域連携体制の確立、専門性を高めるなどの人材の育成や運営体制の確保、支援員の適切な処遇等、運営の安定化及び質の向上を図っている。また、ウェブサイトや毎年11月に実施している「女性に対する暴力をなくす運動」等により、全国共通番号「#8891(はやくワンストップ)」を周知するとともに、令和4年11月から、ワンストップ支援センターの通話料の無料化を実施している。さらに、性暴力被害者のための夜間休日コールセンターを運営するとともに、若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施し、相談支援体制の充実を図っている。


【施策番号60】
イ 警察庁においては、地域における性犯罪・性暴力被害者支援の充実を促進するため、主管課室長会議や警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/manual/onestop.html)を通じ、ワンストップ支援センターの体制強化や性犯罪・性暴力被害者支援に関する情報を提供している。
【施策番号61】
ウ 厚生労働省においては、都道府県等の協力を得て、犯罪被害者支援団体、医師等の医療関係者等からワンストップ支援センターの開設に向けた相談があった場合には、協力可能な医療機関の情報を収集し、当該団体等に提供することとしている。
【施策番号62】
エ 厚生労働省においては、医療機能情報提供制度(【施策番号39】参照)の内容に、医療機関におけるワンストップ支援センターの設置の有無に関する項目を設け、地域住民や患者に対して情報提供を行っている。
【施策番号63】
オ 前記施策のほか、関係府省庁において、「性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針」(令和5年3月30日性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)に基づき、障害者や男性等を含む様々な性犯罪・性暴力被害者への適切な対応や支援を行うことができるよう、性犯罪・性暴力被害者の支援体制の充実のための施策を進めている。
また、令和5年7月、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議及びこどもの性的搾取等に係る対策に関する関係府省連絡会議の合同会議において取りまとめた「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」に基づき、男性・男児を含む被害者が相談・被害申告をしやすくする強化策、被害者支援の強化策等を進めている。
内閣府においては、ワンストップ支援センターにおける支援体制の充実を図っている(【施策番号59】参照)ほか、男性・男児のための臨時の相談窓口として、同年9月から12月まで男性・男児のための性暴力被害者ホットライン事業を実施した。
警察庁においては、都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん)」について、警察のウェブサイトやSNSへの掲載、地方公共団体や学校等の関係機関・団体の協力に基づく広報用ポスターの掲示等の広報を推進し、周知を図っている。
(トピックス「こども・若者の性被害防止のための取組について」参照)
(21) 犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する専門職の養成等
【施策番号64】
ア 警察庁においては、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会及び一般社団法人日本臨床心理士会に対し、犯罪被害者等と接する際のポイント等を紹介した動画「犯罪被害者等支援を知ろう~犯罪被害者等への接し方~」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/kouhyou/kyouzai/shien/shien01.mp4)の活用を働き掛けるなどし、犯罪被害者等に関する専門的知識・技能を有する臨床心理士の養成及び研修の実施を促進している。
また、同会等に犯罪被害者週間(毎年11月25日から12月1日まで)における啓発イベント及び犯罪被害者等施策講演会の開催を案内し、臨床心理士等の参加を呼び掛けるなどしている(犯罪被害者週間については、トピックス「犯罪被害者週間」参照、犯罪被害者等施策講演会については、【施策番号171】参照)。


【施策番号65】
イ 警察庁においては、厚生労働省と連携し、社会福祉士がインターネットを通じていつでも基本法や第4次基本計画の内容等について学ぶことができるe-ラーニングのコンテンツ作成に関して、公益社団法人日本社会福祉士会と協力するとともに、同会、公益社団法人日本精神保健福祉士協会及び公益社団法人日本看護協会に対し、上記動画「犯罪被害者等支援を知ろう~犯罪被害者等への接し方~」の活用を働き掛けるなどし、犯罪被害者等に関する専門的知識・技能を有する社会福祉士、精神保健福祉士及び看護師の養成及び研修の実施を促進している。
また、同会等に犯罪被害者週間における啓発イベント及び犯罪被害者等施策講演会の開催を案内し、社会福祉士等の参加を呼び掛けるなどしている。
【施策番号66】
ウ 警察庁においては、文部科学省及び厚生労働省と連携し、公益社団法人日本公認心理師協会が開催する公認心理師を対象とした研修会に職員を派遣し、犯罪被害者等に関する講義を実施するとともに、同協会及び一般社団法人公認心理師の会に対し、上記動画「犯罪被害者等支援を知ろう~犯罪被害者等への接し方~」の活用を働き掛けるなどし、犯罪被害者等に関する専門的な知識・技能を有する公認心理師の養成に協力している。
また、同協会等に犯罪被害者週間における啓発イベント及び犯罪被害者等施策講演会の開催を案内し、公認心理師等の参加を呼び掛けるなどしている。
【施策番号67】
エ 警察庁においては、一般社団法人日本トラウマティック・ストレス学会に対し、上記動画「犯罪被害者等支援を知ろう~犯罪被害者等への接し方~」の活用を働き掛けるなどし、犯罪被害者等に関する専門的知識・技能を有する専門職の養成及び研修の実施を促進している。
また、同学会等の犯罪被害者等施策に関係する団体に犯罪被害者週間における啓発イベント及び犯罪被害者等施策講演会の開催を案内し、犯罪被害者等施策に関係する専門職の参加を呼び掛けるなどしている。
(22) 法科大学院における教育による犯罪被害者等への理解の向上の促進
【施策番号68】
文部科学省においては、各法科大学院が、自らの教育理念に基づき多様で特色のある教育を展開していく中で、犯罪被害者等に対する理解の向上を含め、真に国民の期待と信頼に応え得る法曹の養成に努めるよう、会議等を通じて促している。
各法科大学院においては、犯罪被害者等の実態を把握・分析し、その法的地位、損害回復の方法、支援における課題等について考察する授業科目を開設するなどの取組を行っている。
(23) 犯罪被害者等に対する医療機関の医療機能に関する情報の提供
【施策番号69】
厚生労働省においては、医療機能情報提供制度(【施策番号39】参照)を運用し、犯罪被害者等を含む地域住民や患者が医療に関する情報を得て、適切に医療機関を選択できるよう支援している。
(24) 犯罪被害者等の受診情報等の適正な取扱い
【施策番号70】
ア 個人情報保護委員会及び厚生労働省においては、医療機関等における個人情報の適切な取扱いを確保するため、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日付け個人情報保護委員会事務局長、厚生労働省医政局長、医薬・生活衛生局長、老健局長通知)を定め、医療機関等に適切な対応を求めている。
また、厚生労働省においては、「診療情報の提供等に関する指針」(平成15年9月12日付け厚生労働省医政局長通知)を定め、医療機関等に適切な対応を求めている。
さらに、医療法に基づき設置されている都道府県等の医療安全支援センターにおいては、患者やその家族から個人情報の取扱いを含めた医療に関する苦情・相談を受けた場合には、当該患者等又は苦情・相談のあった医療機関の管理者に対し、必要に応じて助言を行うこととされている。
加えて、個人情報保護委員会及び厚生労働省においては、医療保険者について、「健康保険組合等における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(平成29年4月14日付け個人情報保護委員会事務局長、厚生労働省保険局長通知)等の関連ガイダンスを定め、健康保険組合等に適切な対応を求めている。
そのほか、「第三者求償に係る犯罪による被害を受けた者等に関する情報の取扱いについて」(令和6年2月1日付け厚生労働省保険局保険課事務連絡)を発出し、健康保険の保険者が第三者求償を行う際、被害者からの求めに応じて、被害者に関する情報や医療機関の情報をマスキングするなどの対応を行うなど、保険者に対し適切な対応を求めている。
【施策番号71】
イ 金融庁においては、犯罪被害者等の保健医療に関する情報をはじめとする個人情報の取扱いに関し、保険会社に問題があると認められる場合には、保険業法に基づき、保険会社に対する検査・監督において適切な対応を行っている。