第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

4 国民の財産を狙う事犯への対策

(1)財産犯の被害額の罪種別状況

財産犯の被害額の推移は、図表2-30のとおりである。

令和5年の財産犯の被害額の罪種別状況は、図表2-31のとおりである。

 
図表2-30 財産犯の被害額の推移(平成26年~令和5年)
図表2-30 財産犯の被害額の推移(平成26年~令和5年)
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図表2-31 財産犯の被害額の罪種別状況(令和5年)
図表2-31 財産犯の被害額の罪種別状況(令和5年)
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(2)特殊詐欺等への対策

① 特殊詐欺等の情勢

特殊詐欺の認知・検挙状況の推移は、図表2-32のとおりである。

令和5年中の特殊詐欺(注)の認知件数は3年連続、被害額は2年連続で増加し、高齢者を中心に多額の被害が生じており、依然として高い水準にある。

注:被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝及びキャッシュカード詐欺盗を含む。)の総称

 
図表2-32 特殊詐欺の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-32 特殊詐欺の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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また、令和5年下半期において、SNSを使用した非対面型の投資詐欺やロマンス詐欺の被害が急増し、同年中の被害額は、特殊詐欺の被害額を上回る約455億円に上るなど、極めて憂慮すべき状況にある(注)

注:5頁参照(特集)

② 「国民を詐欺から守るための総合対策」等に基づく対策の推進

令和6年6月に開催された犯罪対策閣僚会議において、詐欺手口の変化に応じ、官民一体となって推進する総合対策として「国民を詐欺から守るための総合対策」(注)が決定され、特殊詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺等の犯罪から国民を守るための対策を推進することとされた。同対策に基づき、警察では、金融機関やコンビニエンスストア等と連携した各種被害防止対策、特殊詐欺に悪用される電話への対策等の犯行ツール対策及び効果的な取締り等を推進している。また、高い発信力を有する著名な方々で構成される「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(略称:SOS47)では、特殊詐欺等の被害に遭いやすい高齢者への働き掛けのみならず、社会全体における特殊詐欺等の被害防止対策の一層の浸透を目指し、デジタル空間も含めた多種多様な媒体を活用するなどして、被害防止に向けたメッセージを継続的に発信している。

注:21頁参照(特集)

 
令和5年SOS47広報啓発ポスター
令和5年SOS47広報啓発ポスター
 
令和6年SOS47広報啓発バナー
令和6年SOS47広報啓発バナー

MEMO AI画像分析を活用した特殊詐欺被害防止対策

金融機関等では、特殊詐欺の被害防止のため、犯人側からの指示を携帯電話で受けながら現金自動預払機(ATM)を操作する利用者を人工知能(AI)で検知し、特殊詐欺の被害者であることが疑われる利用者に対し、警告表示や警告音による注意喚起を速やかに行うシステムを導入している。警察庁では、注意喚起を呼び掛ける動画を提供するなど、金融機関等によるこうした取組に実証実験の段階から協力している。

(3)侵入窃盗対策

侵入窃盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-33のとおりである。侵入窃盗の認知件数は、ピーク時である平成14年(33万8,294件)以降減少傾向にあったが、令和5年中は4万4,228件と、前年より増加した。警察庁、経済産業省、国土交通省及び建物部品関連の民間団体から構成される「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」では、平成16年4月から、侵入までに5分以上の時間を要するなど一定の防犯性能があると評価した建物部品(CP部品)を掲載した「防犯性能の高い建物部品目録」をウェブサイトで公表するなどして、CP部品の普及に努めており、目録には令和6年3月末現在で17種類3,473品目が掲載されている。また、警察庁のウェブサイトに「住まいる防犯110番」(注)を開設し、侵入犯罪対策の広報啓発を推進している。

注:https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/top.html
QRコード 住まいる防犯110番

 
CPマーク CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの
CPマーク CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの
 
図表2-33 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-33 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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(4)侵入強盗対策

侵入強盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-34のとおりである。侵入強盗の認知件数は、ピーク時である平成15年(2,865件)以降減少傾向にあったが、令和5年中は414件と、前年より増加した。

警察では、コンビニエンスストアや金融機関等を対象とした強盗対策として、防犯体制、現金管理の方法、店舗等の構造、防犯設備等について基準を定め、警察官の巡回や機会を捉えた防犯訓練等を実施している。

 
図表2-34 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-34 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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(5)自動車盗対策

自動車盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-35のとおりである。

警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省及び民間19団体から構成される「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」では、「自動車盗難等防止行動計画」(平成14年1月策定、令和4年12月改定)に基づき、イモビライザ(注)等の盗難防止装置やナンバープレート盗難防止ネジ等の普及促進、自動車の使用者に対する防犯指導、広報啓発等を推進している。

こうした取組等の結果、ピーク時である平成15年(6万4,223件)以降、自動車盗の認知件数はおおむね減少傾向にあったが、令和5年中は5,762件と、令和3年から2年連続で増加した。

注:エンジンキーに埋め込まれた送信機から発するIDコードと、車両本体の電子制御装置にあらかじめ登録されたIDコードが一致しなければ、エンジンが始動しない電子式盗難防止装置

 
図表2-35 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-35 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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(6)自転車盗対策

自転車盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-36のとおりである。

警察庁の要請を踏まえ、平成12年以降、業界団体において、不正開錠に強い錠の普及が促進されたことなどから、ピーク時である平成13年(52万1,801件)以降、自転車盗の認知件数はおおむね減少傾向にあったが、令和5年中は16万4,180件と、令和3年から2年連続で増加した。

警察では、引き続き関係機関・団体等と連携し、自転車の利用者に対して施錠の励行や防犯登録の呼び掛けを行うなど、自転車の盗難防止及び被害回復に向けた取組を推進している。

 
図表2-36 自転車盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-36 自転車盗の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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(7)万引き対策

万引きの認知・検挙状況の推移は、図表2-37のとおりである。万引きの認知件数は平成22年以降減少傾向にあったが、令和5年中は9万3,168件と、前年より増加し、刑法犯認知件数に占める万引きの認知件数の割合は13.2%と高い水準にある。また、万引きの検挙人員全体に占める65歳以上の高齢者の割合は高い水準にあり、令和5年中は40.9%であった。

近年、一部の外国人が窃盗グループを形成し、海外にいる首謀者からの指示により、国内にいる実行役が化粧品や医薬品、衣料品等を大量に万引きするとともに、万引きした商品を海外で転売するために、盗品回収役の業者が当該商品を輸出するといった組織的犯行に及んでいる例も見受けられる。

警察では、万引きを許さない社会気運の醸成や規範意識の向上を図るため、関係機関・団体等と連携した広報啓発を行うなど、社会を挙げた万引き防止に向けた取組を推進している。

 
図表2-37 万引きの認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-37 万引きの認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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(8)ひったくり対策

ひったくりの認知・検挙状況の推移は、図表2-38のとおりである。ひったくりの認知件数は、ピーク時である平成14年(5万2,919件)以降、おおむね減少傾向にあり、同年から令和5年にかけて5万2,368件(99.0%)減少した。一方、ピーク時の平成14年中にひったくりの検挙人員全体の69.3%を占めていた14歳から19歳までの検挙人員は大きく減少している(ひったくりの検挙人員全体の減少数への寄与率(注1)は、71.5%)。これらの要因を一概に断定することは困難であるが、街頭防犯カメラの設置や街頭防犯活動等、官民一体となった取組が効果を上げていることや、少年の人口が減少していることなどが考えられる。

一方で、身近な場所で発生する犯罪であるひったくりは、依然として国民に不安を与えている(注2)ことから、警察では、ひったくり事件の発生状況や手口を分析して、ひったくりの被害防止に効果のあるかばんの携行方法や通行方法等について広報啓発を行っているほか、関係機関・団体等と協力し、自転車用のひったくり防止カバー等の普及を促進するなどしている。

注1:データ全体の変化を100とした場合に、構成要素となるデータの変化の割合を示す指標

注2:内閣府が令和3年に実施した「治安に関する世論調査」(https://survey.gov-online.go.jp/hutai/r03/r03-chian/r03-chian.pdf)によれば、「あなたが、自分や身近な人が被害に遭うかもしれないと不安になる犯罪は何ですか」との問い(複数回答)に対して、「すり、ひったくりなどの携行品を盗む犯罪」と答えた者は24.4%であり、ひったくりに不安を覚えている国民が少なくないことが分かる。
QRコード 治安に関する世論調査

 
図表2-38 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-38 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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(9)金属盗(注1)対策

金属盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-39のとおりである。

金属盗の認知件数は、統計をとり始めた令和2年以降増加傾向にあり、令和5年中は1万6,276件であった。

近年、外国人グループ等により太陽光発電施設内の銅線が大量に窃取されるなど、組織的な金属盗等が敢行され、治安上の課題となっている。警察では、この種事犯に対し実効的な対策を講じるため、関係機関・団体と連携して、事業者等に対し、防犯情報を提供するとともに、警察庁にワーキンググループを設置し、部門横断的な検討を行っている(注2)

注1:被害品が金属類(銅板、銅線、溝蓋・マンホール等)に係る窃盗

注2:組織的窃盗・盗品流通事犯については、6頁参照(特集)

 
図表2-39 金属盗の認知・検挙状況の推移(令和2年~令和5年)
図表2-39 金属盗の認知・検挙状況の推移(令和2年~令和5年)
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(10)悪質商法事犯対策

① 利殖勧誘事犯(注1)

利殖勧誘事犯の検挙状況の推移は、図表2-40のとおりである。令和5年中は、集団投資スキーム(ファンド)に関連した事犯(注2)の検挙が目立った。

利殖勧誘事犯では、被害者が被害に遭ってから気付くまでに時間を要する場合が多いことから、警察では、同事犯の被害拡大防止のため、早期の事件化を図るとともに、犯罪に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供等を推進しており、令和5年中は同事犯に関する情報提供を516件実施した。

注1:出資法、金融商品取引法、無限連鎖講の防止に関する法律等の違反に係る事犯。捜査の結果、詐欺に当たるものも含まれる。

注2:出資者から集めた資金を有価証券や事業への投資等で運用し、生じる利益を配分する仕組みを商材とする事犯

 
図表2-40 利殖勧誘事犯の検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-40 利殖勧誘事犯の検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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図表2-41 利殖勧誘事犯の類型別検挙状況(令和5年)
図表2-41 利殖勧誘事犯の類型別検挙状況(令和5年)
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CASE

会社役員の男(38)らは、海外資産運用会社の運用事業に対する出資名目で金銭をだまし取ろうと考え、平成28年3月頃から令和4年1月頃にかけて、SNS等を通じて知り合った若者らに対し、約定どおりの配当及び返金を可能とする出資金の運用の実態はないにもかかわらず、「お客さんが出資したお金は、海外法人がヘッジファンドで運用する」、「毎月の配当として出資額の4パーセントを支払う」、「1年契約で、途中解約の場合は7割返金になるが、契約更新月に解約をすると100パーセント元本をお返しする」などとうそを言い、46都道府県の約3,400人から約200億4,400万円をだまし取るなどした。令和5年4月までに、同男ら1法人8人を金融商品取引法違反(無登録営業)で、同男ら8人を詐欺罪で、同男及び1法人を組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で検挙した(警視庁)。

② 特定商取引等事犯(注)

特定商取引等事犯の検挙状況の推移は、図表2-42のとおりである。令和5年中の検挙事件を類型別にみると、訪問販売に関連した事犯の検挙が目立った。

特定商取引等事犯では、被害者が被害に遭っていることに気付いたとしても、被害者自身で解決しようとして届出までに時間を要する場合もみられることから、警察では、ウェブサイト等を通じて警察や関係機関への早期の相談を呼び掛けている。

注:訪問販売、電話勧誘販売等で事実と異なることを告げるなどして商品の販売や役務の提供を行う悪質商法。具体的には、訪問販売等の特定商取引を規制する特定商取引法違反及び特定商取引に関連する詐欺、恐喝等に係る事犯

 
図表2-42 特定商取引等事犯の検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-42 特定商取引等事犯の検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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図表2-43 特定商取引等事犯の類型別検挙状況(令和5年)
図表2-43 特定商取引等事犯の類型別検挙状況(令和5年)
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CASE

会社役員の男(33)らは、令和4年4月から令和5年8月にかけて、インターネット上で利用者が検索したキーワードに連動して表示される、いわゆるリスティング広告を見て自動車のバッテリー交換等を依頼してきた顧客に対し、役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、「既に現場に来ているので、修理を断られても出張費等は払ってもらう」などと主張して高額な作業代金を請求した上、契約解除に関する事項につき、故意に事実を告げず、更に契約解除に関する事項が記載されていない書面を交付し、12都府県の約2,500人との間で約4億円の売買契約を締結した。令和5年10月までに、同男ら1法人6人を特定商取引法違反(事実の不告知等)で検挙した(愛知)。

(11)通貨偽造犯罪対策

① 発見状況

偽造日本銀行券の発見枚数(注)の推移は図表2-44のとおりである。

注:届出等により警察が押収した枚数

 
図表2-44 偽造日本銀行券の発見枚数の推移(平成26年~令和5年)
図表2-44 偽造日本銀行券の発見枚数の推移(平成26年~令和5年)
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② 特徴的傾向と対策

近年は、高性能のプリンタ等で印刷された偽造日本銀行券が多数発見されているほか、精巧に偽造された日本銀行券が海外から日本国内へ大量に持ち込まれる事案が発生している。

警察庁では、財務省、日本銀行等と連携して、ポスターやウェブサイトで偽造日本銀行券が行使された事例や偽造通貨を見破る方法を紹介するなどして、国民の注意を喚起している。

CASE

ベトナム人の男(36)は、令和5年6月から同年8月にかけて、ベトナムから、偽造一万円券176枚を手荷物に入れて本邦に輸入するとともに、熊本県内の郵便局等において、銀行口座に預け入れるなどのために、同偽造一万円券を手渡し、行使した。同年8月から同年10月までに、同男を偽造通貨輸入・同行使罪で逮捕した(熊本)。

(12)カード犯罪(注)対策

カード犯罪の認知・検挙状況の推移は、図表2-45のとおりである。

警察では、早期検挙のため捜査を徹底するほか、口座名義人からキャッシュカード等の盗難・紛失等の届出があった場合にカードの利用停止を促すなど、被害の拡大防止に努めている。

注:クレジットカード、キャッシュカード、プリペイドカード及び消費者金融カードを悪用した犯罪

 
図表2-45 カード犯罪の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-45 カード犯罪の認知・検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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(13)ヤミ金融事犯対策

ヤミ金融事犯の検挙状況の推移は、図表2-46のとおりであり、無登録・高金利事犯(注1)の検挙事件数及び検挙人員は減少傾向にあるが、クレジットカードショッピング枠現金化の手口(注2)やいわゆる「先払い買取現金化」の手口(注3)等の巧妙な手口による犯罪が発生している。また、貸金業に関連した犯罪収益移転防止法違反、詐欺、携帯電話不正利用防止法違反等に係る事犯(ヤミ金融関連事犯)については前年より増加している。

なお、無登録・高金利事犯のうち、携帯電話や預貯金口座を利用して非対面で敢行されるものについては、令和5年中は、検挙事件数の23.2%、検挙人員の33.7%を占めている。また、暴力団が関与した事犯の割合は、14.3%であった。

警察では、ヤミ金融事犯に利用された預貯金口座の金融機関への情報提供、レンタル携帯電話等の解約に関する事業者への要請等の総合的な対策を行っており、令和5年中の同事犯に関する金融機関への情報提供件数は9,053件、レンタル携帯電話事業者への解約要請件数は745件であった。

注1:貸金業法違反(無登録営業)及び出資法違反(高金利等)に係る事犯

注2:クレジットカード決済による商品売買を装って商品代金の一部をキャッシュバック金として払い戻す方法で実質的に金銭の貸付けを行い、商品代金と払戻金との差額を利息相当分の利益として受領する手口

注3:先払いによる商品売買を装い、商品の先払いの代金として実質的に金銭を交付した上で、後日売買契約を解除させ、代金の返還と高額な違約金を求めるという形をとることで、実質的に貸付けを行う手口

 
図表2-46 ヤミ金融事犯の検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-46 ヤミ金融事犯の検挙状況の推移(平成26年~令和5年)
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CASE

無登録で貸金業を営む男(45)らは、令和3年11月から令和4年7月にかけて、インターネット上で、融資を申し込んできた全国の顧客約1万2,800人に対し、商品代金先払いでスマートフォンやゲーム機を買い取ったかのように仮装して、法定利息の約31倍から約140倍で金銭を貸し付け、返済は同男らが管理する法人名義の口座に振込送金を受けるなどの方法により、元利金合計約8億3,000万円を受領した。令和5年1月、同男ら11人を貸金業法違反(無登録営業)及び出資法違反(高金利受領等)で逮捕した(茨城)。

(14)知的財産権侵害事犯対策

① 商標権侵害事犯(注1)及び著作権侵害事犯(注2)

知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移は、図表2-47のとおりである。偽ブランド事犯等の商標権侵害事犯及び海賊版事犯等の著作権侵害事犯においては、インターネットを利用して侵害行為が行われる場合が多いことから、警察では、サイバーパトロール等による端緒情報の把握に努めている。

また、不正商品対策協議会(注3)の活動への参加をはじめ、権利者等と連携した知的財産権の保護及び不正商品の排除に向けた広報啓発活動を推進している。

注1:商標法違反に係る事犯

注2:著作権法違反に係る事犯

注3:不正商品の排除及び知的財産権の保護を目的として、知的財産権侵害に悩む各種業界団体により設立された任意団体。警察庁等の関係機関と連携し、シンポジウムの主催や各種催物への参加を通じて、広報啓発活動、海外における不正商品販売の実態調査、海外の捜査機関や税関等に対する働き掛け等を行っている。

 
図表2-47 知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(令和元年~令和5年)
図表2-47 知的財産権侵害事犯の検挙状況の推移(令和元年~令和5年)
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図表2-48 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国・地域別押収状況の推移(平成26年~令和5年)
図表2-48 押収した偽ブランド品のうち、仕出国・地域が判明したものの国・地域別押収状況の推移(平成26年~令和5年)
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② 営業秘密侵害事犯(注)

営業秘密侵害事犯については、令和5年中、26事件42人を検挙した。

警察では、各都道府県警察で指定された営業秘密保護対策官が、営業秘密の侵害に係る相談への対応や、事件化する場合の捜査等について、第一線たる警察署の捜査員等に必要な指導を行うことなどにより、警察における対応能力の一層の向上を図っているほか、被害の早期届出の必要性について企業に啓発するための取組を推進している。

注:不正競争防止法第21条第1項、第2項、第4項及び第5項に係る事犯

CASE

大手総合商社の元社員の男(32)は、同社退職後の令和4年7月、不正の利益を得る目的で、当時の同社従業員を誤信させて同社サーバーコンピュータへのアクセスが可能なアカウント情報等を入手し、転職先の会社から貸与されたパソコンを操作して、同アカウント情報等を使用し、営業秘密である取引台帳等のファイルデータを同パソコンに複製して保存し、営業秘密を取得した。令和5年9月、同男を不正競争防止法違反(営業秘密の不正取得)で逮捕した(警視庁)。



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