特集:変容する捜査環境と警察の取組 

第1節 犯罪情勢と捜査上の課題

刑法犯の認知件数は平成14年をピークに一貫して減少しており、犯罪情勢には一定の改善がみられる。しかし、児童虐待やストーカー事案、配偶者からの暴力事案が増加傾向にあることに加え、振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の25年中の被害総額が過去最高となるなど、犯罪情勢は依然として予断を許さない状況である。また、サイバー犯罪が多発し、サイバー攻撃が相次ぐなど、サイバー空間における脅威が深刻化し、治安上の新たな課題となっている。本節では、刑法犯を中心とした犯罪情勢を概観するとともに、窃盗犯や特殊詐欺等を例に挙げて警察捜査が抱える課題について分析する。

1 刑法犯の情勢

(1)刑法犯の認知・検挙状況

刑法犯の認知・検挙状況の推移は、図表.1のとおりである。刑法犯の認知件数は、平成8年から14年にかけて増加し続け、同年には約285万件に達した。しかし、15年からは減少に転じ、25年中は131万4,140件と、前年より8万9,130件(6.4%)減少した。近年の刑法犯の認知件数の減少は、窃盗犯の認知件数の減少が大きな要因となっており、14年から25年にかけての刑法犯の認知件数の減少数の90.7%を同期間の窃盗犯の認知件数の減少数(139万6,255件)が占めている。

刑法犯の検挙件数は、15年から19年にかけて60万件台で推移していたが、それ以降減少を続け、25年中は39万4,121件と、前年より4万3,489件(9.9%)減少し、戦後初めて40万件を下回った。刑法犯の検挙件数の減少についても、窃盗犯の検挙件数が減少したことが大きな要因であり、14年から25年にかけての刑法犯の検挙件数の減少数の75.2%を同期間の窃盗犯の検挙件数の減少数(14万9,050件)が占めている。

刑法犯の検挙人員は、9年以降30万人台で推移していたが、24年に30万人を下回り、25年中は26万2,486人と、前年より2万4,535人(8.5%)減少した。

刑法犯の検挙率は、昭和期にはおおむね60%前後の水準であったが、平成に入ってから急激に低下し、13年には19.8%と戦後最低を記録した。その後、14年から19年にかけて上昇し、それ以降30%〜32%の間で推移していたが、25年中は29.99%と、前年より1.2ポイント低下し、17年以降、8年ぶりに30%を下回った。

 
図表-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和21~平成25年)
図表-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和21~平成25年)
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図表-2 刑法犯の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-2 刑法犯の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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(2)刑法犯による被害状況

刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移及び財産犯(注)の被害額の推移は、それぞれ図表-3及び図表-4のとおりである。

注:強盗、恐喝、窃盗、詐欺、横領及び占有離脱物横領

 
図表-3 刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移(平成21~25年)
図表-3 刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移(平成21~25年)
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図表-4 財産犯の被害額の推移(平成21~25年)
図表-4 財産犯の被害額の推移(平成21~25年)
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(3)重要犯罪の認知・検挙状況

重要犯罪(注)の認知・検挙状況の推移は、図表-5のとおりである。平成25年中の重要犯罪の認知件数は、24年に引き続き前年より増加したが、ピーク時である15年の2万3,971件と比べ9,375件(39.1%)減少した。検挙率は、19年以降60%台で推移している。

注:殺人、強盗、強姦、強制わいせつ、放火、略取誘拐及び人身売買

 
図表-5 重要犯罪の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-5 重要犯罪の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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①殺人

殺人の認知・検挙状況の推移は、図表-6のとおりである。殺人の認知件数は、16年以降減少傾向にあり、25年中は938件と、戦後初めて1,000件を下回った。また、検挙率は、他の重要犯罪の罪種に比べ高い水準を維持している。殺人の解決事件(注)を除いた検挙件数を被疑者と被害者の関係別にみると、親族が459件(53.5%)と最も多く、そのうち配偶者(内縁の者を含む。)が155件で最も多かった。

注:刑法犯として認知され、既に統計に計上されている事件であって、これを捜査した結果、刑事責任無能力者の行為であることなどの理由により犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件

 
図表-6 殺人の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-6 殺人の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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図表-7 殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(平成25年)
図表-7 殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(平成25年)
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図表-8 親族間の殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(平成25年)
図表-8 親族間の殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(平成25年)
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②強盗

強盗の認知・検挙状況の推移は、図表-9のとおりである。25年中の強盗の認知件数は、前年より減少し、ピーク時である15年の7,664件と比べ4,340件(56.6%)減少した。手口別の認知件数では、侵入強盗が1,254件で、うち47.0%がコンビニ強盗であり、非侵入強盗は2,070件で、うち49.4%が路上強盗であった。検挙率は、過去10年間で17.0ポイント上昇するなど近年上昇傾向にある。

 
図表-9 強盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-9 強盗の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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図表-10 侵入強盗の手口別認知状況(平成25年)
図表-10 侵入強盗の手口別認知状況(平成25年)
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図表-11 非侵入強盗の手口別認知状況(平成25年)
図表-11 非侵入強盗の手口別認知状況(平成25年)
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③強姦・強制わいせつ

強姦の認知・検挙状況の推移は、図表-12のとおりである。強姦の認知件数は、16年から23年にかけて連続して減少していたが、24年以降は増加に転じている。検挙率は、25年は前年より低下したものの、過去10年間で18.0ポイント上昇するなど近年上昇傾向にある。

 
図表-12 強姦の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-12 強姦の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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強制わいせつの認知・検挙状況の推移は、図表-13のとおりである。強制わいせつの認知件数は、16年以降減少傾向にあったが、24年以降は増加に転じている。検挙率は、25年は前年より低下したものの、過去10年間で12.0ポイント上昇するなど近年上昇傾向にある。

 
図表-13 強制わいせつの認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-13 強制わいせつの認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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④放火

放火の認知・検挙状況の推移は、図表-14のとおりである。放火の認知件数は17年以降減少していたが、25年は前年より増加した。検挙率は、過去10年間では、おおむね70.80%の間で推移している。

 
図表-14 放火の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-14 放火の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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⑤略取誘拐・人身売買

略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移は、図表-15のとおりである。

略取誘拐・人身売買の認知件数を被害者の男女別でみると、女性の被害が約4分の3を占めており、25年は74.6%であった。また、被害者の年齢層別でみると、6.12歳が約3分の1を占めており、25年は33.5%であった。検挙率は、18年以降90%前後で推移している。

 
図表-15 略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-15 略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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(4)窃盗犯の認知・検挙状況

窃盗犯の認知・検挙状況の推移は、図表.16のとおりである。平成25年中の窃盗犯の認知件数は98万1,233件と、前年より7万8,027件(7.4%)減少し、昭和48年以降40年ぶりに100万件を下回った。

窃盗犯の検挙件数は、17年から連続して減少し、25年中は25万4,822件と、前年より3万1,814件(11.1%)減少した。また、検挙人員も17年以降減少傾向にあり、25年中は13万8,947人と、前年より1万4,917人(9.7%)減少した。

窃盗犯の検挙率は、刑法犯と同様、13年に15.7%と戦後最低を記録した後、緩やかに回復し、18年以降は27%前後で推移していたが、25年中は26.0%と、前年より1.1ポイント低下した。

 
図表-16 窃盗犯の認知・検挙状況の推移(平成6~25年)
図表-16 窃盗犯の認知・検挙状況の推移(平成6~25年)
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図表-17 窃盗犯の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
図表-17 窃盗犯の認知・検挙状況の推移(平成16~25年)
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 第1節 犯罪情勢と捜査上の課題

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