我が国のマネー・ローンダリング対策


マネー・ローンダリングとは?

国際的な取組の沿革

我が国のマネー・ローンダリング対策

国家公安委員会・警察庁におけるマネー・ローンダリング問題への取組

マネー・ローンダリング対策の変遷



マネー・ローンダリングとは?

 マネー・ローンダリング(Money Laundering 資金洗浄)とは、 違法な行為による収益の出所を隠すことで、例えば、麻薬密売人が麻薬密売代金を偽名で開設した銀行口座に隠匿したり、詐欺や横領の犯人が騙し取ったお金をいくつもの口座に転々と移動させて出所をわからなくするような行為などがその典型とされています。
 このような行為を放置すると、犯罪収益が将来の犯罪活動に再び使われたり、犯罪組織がその資金をもとに合法的な経済活動に介入し支配力を及ぼすおそれがあることから、マネー・ローンダリングの防止は犯罪対策上の重要な課題になっています。


国際的な取組の沿革
1 麻薬問題への取組とマネー・ローンダリング対策

 マネー・ローンダリング対策は、当初、当時国際的な課題となっていた麻薬問題への取組の中で取り上げられました。麻薬問題には、それまでも生産面、流通面、消費面など様々な角度から取組が行なわれていましたが、さらに生産と消費の連環を断ち切るという観点、つまり、密造・密売収益の没収やマネー・ローンダリングを取り締るなどという角度からも対策がとられることになりました。 1988年 12月に採択された「麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約」(麻薬新条約)では、薬物犯罪収益に係るマネー・ローンダリング行為を犯罪として取り締ることが各国に義務づけられました。その後、アルシュ・サミット(1989年7月)での合意により金融活動作業部会(FATF)が設立され、1990年4月にマネー・ローンダリング対策の国際基準ともいうべき「40の勧告」を提言しました。「40の勧告」は、麻薬新条約の早期批准やマネー・ローンダリングを取り締る国内法制の整備、顧客の本人確認及び疑わしい取引報告の措置を各国に求めるものでした。

2 組織犯罪対策とマネー・ローンダリング対策

 麻薬密売組織に対抗する上でマネー・ローンダリング対策が有効な手段であったことから、ハリファクス・サミット(1995年6月)では、国際的な組織犯罪全般を防止する対策として、重大犯罪から得られた収益のマネー・ローンダリングについても防止措置を講じる必要があるとされました。そこで、FATFは「40の勧告」を一部改訂し、マネー・ローンダリング罪成立の前提となる犯罪(マネー・ローンダリングとして処罰される対象の収益を生み出す犯罪行為)を従来の薬物犯罪から重大犯罪に拡大すべきだとしました。また、バーミンガム・サミット(1998年3月)では、マネー・ローンダリング情報を専門に収集・分析・提供する機関(Financial Intelligence Unit :FIU)を設置することが、参加国間で合意されました。

3 最近の国際的な動き

 合法的な経済活動のみならず、犯罪や犯罪収益も今やボーダーレスの時代となっています。一国のみが規制を強化しても、規制の緩い国へ逃れて行ってしまうため、取締りには国際的な協調が不可欠となっています。
 FATFは、加盟国の対策のレベルを高めるとともに、加盟国の拡大を図っていますが、これに加えて1998年以来マネー・ローンダリング対策に非協力的な国・地域を特定し、改善を求める取組みを行なっています。その一環として、2000年6月に非協力的な15の国と地域を特定し公表しました。その後も、各国・地域のマネー・ローンダリング対策への取組を審査するなどして、非協力的な国・地域の追加及び削除を行っています。
 またFATFは、2001年9月11日の米国同時多発テロ発生後、臨時会合を開催し、テロ資金対策も活動範囲に加える決定をするとともに、新たなテロ資金対策の国際的な基準というべき「8の特別勧告」(2004年10月には「9の特別勧告」)を提言しました。この特別勧告は「国連諸文書の速やかな批准・履行、テロ資金供与の犯罪化、テロリズムに関係する疑わしい取引の届出の義務化」等を内容とするものです。
 さらに、マネー・ローンダリングの手法と技術は対策の発達に対応して変化しており、真の所有者や違法な収益の管理を隠すために法人を利用する事例が増加してきたことなど、近年、犯罪技術が精巧に複合化してきたことに注目し、これまでの「40の勧告」の再検討を行った結果、2003年6月に非金融業者(不動産業者、貴金属・宝石等取扱業者等)・職業的専門家(法律家・会計士等)に対する同勧告への適用を盛り込んだ、新たな「40の勧告」を発表しました。


我が国のマネー・ローンダリング対策
1 「疑わしい取引の届出制度」の創設

 我が国では、このような国際的な動きを受けて、1990年7月に大蔵省から金融団体に対して顧客の本人確認実施の要請がなされ、1992年7月には「麻薬特例法」(注1)で、金融機関に薬物犯罪収益に関するマネー・ローンダリング情報の届出を義務づける「疑わしい取引の届出制度」が創設されました。

2 組織的犯罪処罰法の施行

 さらに、麻薬特例法施行以降の国際的な動向を踏まえ、2000年2月に組織的犯罪処罰法(注2)により「疑わしい取引の届出制度」が拡充されました。同法は、疑わしい取引の届出の対象となる犯罪を従来の「薬物犯罪」から「一定の重大犯罪」に拡大するとともに、マネー・ローンダリング情報を一元的に集約し、整理・分析して捜査機関に提供する権限を、金融庁長官(特定金融情報室)に付与しました。

3 組織的犯罪処罰法の改正

 2002年6月に、「公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律」が可決・成立しました。同法の施行(同年7月2日)に伴い、組織的犯罪処罰法が一部改正され、テロリズムに対する資金供与の疑いがある取引についても疑わしい取引の届出対象とされました。

4 本人確認法の施行

 2003年1月6日に「金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律」(注3)が施行され、金融機関等による顧客等の本人確認、本人確認記録・取引記録の作成・保存が義務づけられました。

5 犯罪収益移転防止法の制定

 近年になり、マネー・ローンダリングは金融機関以外の事業者を利用するなど、その手口にも変化がみられるようになってきました。さらには、2003年6月のFATFの新たな「40の勧告」においては、措置を講ずべき事業者の範囲を金融機関以外に拡大することが求められ、こういった国際的な枠組みの中、我が国においてもこれを履行する必要が認められました。
 このような情勢から、2007年3月「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(注4)が成立し、同年4月からFIUは金融庁から国家公安委員会・警察庁(犯罪収益移転防止管理官)に移管されました。
 また、対象事業者も金融機関等からファイナンスリース業者、クレジットカード業者、宅地建物取引業者、貴金属等取引業者、郵便物受取・電話受付サービス業者、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士などに拡大されました。
 警察庁刑事局組織犯罪対策部に置かれた犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)は、我が国の新たなFIUとして同法に定められた国家公安委員会の事務を補佐する役割を担っています。


※ JAFICとは、日本のFIUの英語名称でJapan Financial Intelligence Centerの略称です。

注1

「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為等を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律」(平成3年法律第94号)

注2

「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(平成11年法律第136号)

注3

平成14年法律第32号。預金口座等の不正利用を防止するため、平成16年12月(法律第164号)に改正され、題名も「金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律」に改められた。

注4

「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(平成19年法律第22号)


国家公安委員会・警察庁におけるマネー・ローンダリング問題への取組

 国家公安委員会・警察庁には、我が国のFIUとして「刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)」が設置され、全国各地の金融機関などから届け出られたマネー・ローンダリングの疑いがある取引情報を様々な角度から分析し、捜査機関に捜査の端緒となるべき情報を提供しています。
 犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)は、所管行政庁や捜査機関等との定期的な情報交換を行うなど連携を取り合いながら、効果的なマネー・ローンダリング対策を検討するとともに、特定事業者が疑わしい取引の届出を行う際の判断基準となる「疑わしい取引の参考事例」などについて、所管行政庁と連携をしながら順次公開し、疑わしい取引の届出制度の適切な運用ができるよう努めます。
 また、特定事業者による本人確認等の措置が的確に行われることを確保するため、犯罪による収益の移転防止の重要性について、広報活動などにより国民の理解を深めるように努めます。
 さらに、国際的なマネー・ローンダリング対策に積極的に参画していくため、各国と協調し、連携しながら情報交換を行うとともに、手口情報の交換や施策の立案等様々な側面での連携強化に努め、マネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策における国際協調において着実な貢献を果たしていきたいと考えています。


マネー・ローンダリング対策の変遷


 

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