警察庁 National Police Agency

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第4章 支援等のための体制整備への取組

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1 相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)

(1) 地方公共団体における総合的かつ計画的な犯罪被害者等支援の促進

【施策番号166】

警察においては、地方公共団体における犯罪被害者等の視点に立った総合的かつ計画的な犯罪被害者等支援に資するよう、犯罪被害者等支援を目的とした条例等の犯罪被害者等支援のための実効的な事項を盛り込んだ条例(以下「犯罪被害者等支援を目的とした条例等」という。)の制定又は計画・指針の策定状況に関する情報提供を行っている。

※ 犯罪被害者等支援を目的とした条例とは、専ら犯罪被害者等の支援に関する事項について定めた条例(犯罪被害者等の支援に特化した条例(特化条例))をいい、安全で安心なまちづくりの推進に関する条例のように、条例の一部に犯罪被害者等施策が盛り込まれているものは含まず、令和5年4月時点においては、見舞金支給のみを目的とした条例も除外している。

警察庁においては、地方公共団体における犯罪被害者等支援を目的とした条例等に関する情報を警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/local/jourei.html)に掲載するほか、「犯罪被害者等施策情報メールマガジン」において、犯罪被害者等支援を目的とした条例等の制定状況及び当該条例に基づく主な支援施策等を紹介するなど、地方公共団体に対する情報提供に努めている。

さらに、令和3年3月、都道府県警察に対し、地方公共団体における条例の制定等に向けた検討等に資する協力等を行うよう指示した(令和3年3月31日付け警察庁次長依命通達別添)。

令和5年4月現在、46都道府県、13政令指定都市、606市区町村において、犯罪被害者等支援を目的とした条例等が制定されている(トピックス「犯罪被害者等支援を目的とした条例等の制定状況」参照)。

警察においては、地方公共団体間で格差が生じないよう、犯罪被害者等支援を目的とした条例等の制定等に関する情報提供等の取組を推進している。

(2) 地方公共団体における総合的対応窓口等の周知の促進

【施策番号167】

警察庁においては、地方公共団体における犯罪被害者等施策の窓口部局(以下「施策主管課」という。)及び総合的対応窓口の担当部局について定期的に確認しており、施策主管課については平成28年度以降、総合的対応窓口の担当部局については平成31年4月以降、全ての地方公共団体において確定している(基礎資料6-2参照)。

また、総合的対応窓口や地方公共団体における犯罪被害者等施策等について、警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/local/madoguchi_list.html)に掲載するなどして、国民に周知している。

さらに、政府広報テレビ番組内「サキドリ情報便!」(令和4年11月25日放送「犯罪被害者の声なき声に耳を傾けていく~犯罪被害者週間~」。https://www.gov-online.go.jp/pr/media/tv/jouhoubin/movie/20221125.html)や警察庁公式ツイッター等のSNSを活用した広報等を行い、総合的対応窓口の周知の促進に努めている。

(3) 地方公共団体における総合的対応窓口等の充実の促進

【施策番号168】

警察庁においては、地方公共団体に対し、犯罪被害者等施策主管課室長会議や地方公共団体の職員を対象とする研修等を通じ、総合的対応窓口の機能の充実や政令指定都市の区役所における体制整備を要請している。

また、「犯罪被害者等施策情報メールマガジン」において、地方公共団体における犯罪被害者等支援の担当者に対する研修の実施状況や参考となる事例等を紹介することにより、地方公共団体における総合的対応窓口の機能の充実の促進に努めている。

さらに、「犯罪被害者等施策の一層の推進について」(令和5年6月6日犯罪被害者等施策推進会議決定)に基づき、途切れない支援を一元的に提供する体制の構築(ワンストップサービスの実現)に向け、総合的対応窓口等の機能強化や関係機関・団体との連携・協力の一層の充実を図るための取組について検討を行うとともに、より円滑な支援の実現に向け、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した取組についても検討を行っている。

(4) 地方公共団体における専門職の活用及び連携・協力の一層の充実・強化

【施策番号169】

警察庁においては、犯罪被害者等の生活支援を効果的に行うため、犯罪被害者等施策主管課室長会議や地方公共団体の職員を対象とする研修等を通じ、犯罪被害者等支援の分野における社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、臨床心理士等の専門職の活用を働き掛けるとともに、総合的対応窓口と関係機関・団体との連携・協力の一層の充実・強化を要請している。加えて、「犯罪被害者等施策の一層の推進について」(令和5年6月6日犯罪被害者等施策推進会議決定)に基づき、これらを更に促進するための取組について検討を行っている。

令和5年4月現在、11都道府県、8政令指定都市、93市区町村(前年:13都道府県、7政令指定都市、95市区町村)において、総合的対応窓口等に専門職を配置している。

(5) 地方公共団体間の連携・協力の充実・強化等

【施策番号170】

警察庁においては、各都道府県内における市区町村間の連携・協力を促進するため、犯罪被害者等施策の総合的な推進に関する事業を開催しており、令和4年度は、埼玉県、長野県、福岡県及び鹿児島県において、市町村の職員等に対する研修会等を実施した(埼玉県については、トピックス「犯罪被害者等施策の総合的推進に関する事業」参照)。

また、地方公共団体間の連携・協力が必要な事案が発生した場合に備え、地方公共団体における犯罪被害者等支援に関するコンタクト・ポイントを一覧にまとめた資料を警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/local/list.html)に掲載し、地方公共団体間の情報共有を促進している。

(6) 犯罪被害者等施策に携わる地方公共団体の職員等の育成及び意識の向上

【施策番号171】

警察庁においては、犯罪被害者等や犯罪被害者等の支援に精通した有識者を招き、関係府省庁や地方公共団体の職員等を対象とする「犯罪被害者等施策講演会」を開催するとともに、その内容について、ウェブサイト等で国民に情報提供を行っている(これまでに開催した講演会の内容については、警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/kensyu/sesaku_kouen.html)を参照)。

また、地方公共団体に対し、犯罪被害者等施策主管課室長会議や地方公共団体の職員を対象とする研修を通じ、犯罪被害者等支援に関する最新の情報や資料を提供している。

(7) ワンストップ支援センターの体制強化

【施策番号172】

ア 【施策番号59】参照

【施策番号173】

イ 【施策番号60】参照

【施策番号174】

ウ 【施策番号61】参照

【施策番号175】

エ 【施策番号62】参照

【施策番号176】

オ 【施策番号63】参照

(8) 性犯罪被害者等に対する緊急避妊に関する情報提供

【施策番号177】

【施策番号57】参照

(9) 性犯罪被害者への対応における看護師等の活用

【施策番号178】

【施策番号58】参照

(10) 性犯罪の被害に遭った児童生徒への対応の充実

【施策番号179】

文部科学省においては、児童生徒が全国どこからでも、いつでも気軽に悩みを相談できるよう「24時間子供SOSダイヤル」を設置し、教育委員会等による紹介カード、リーフレット等の配布等を通じて児童生徒や保護者に周知している。

また、近年、若年層の多くがSNSを主なコミュニケーション手段として活用している状況等を踏まえ、平成30年から、地方公共団体に対し、SNS等を活用した児童生徒向けの相談体制の整備に関する支援を行っている(【施策番号53】参照)。

(11) 地方公共団体における配偶者等からの暴力事案の被害者の支援に係る取組の充実

【施策番号180】

内閣府においては、配偶者暴力相談支援センター長、地方公共団体の同支援センター主管課等の行政職員並びに同支援センター、児童相談所及び民間シェルター等において相談支援業務に携わる官民の相談員等の関係者を対象として、相談対応の質の向上及び被害者や被害親子に対する支援における官官・官民連携強化のために必要な知識の習得(機会の確保)を目的として、オンライン研修教材を作成し提供している。

(12) コーディネーターとしての役割を果たせる民間支援員の養成への支援等

【施策番号181】

警察においては、公益社団法人全国被害者支援ネットワークをはじめとする民間被害者支援団体に対し、研修内容に関する助言や講師派遣等の協力を行っている。また、犯罪被害者等が必要とする支援に関する相談対応や情報提供、適切な関係機関・団体への橋渡し等、犯罪被害者等支援全般を管理するコーディネーターとしての役割を果たす民間支援員の養成を支援するため、民間支援員も参加可能な研修を実施するとともに、被害者支援連絡協議会等において、具体的事例を想定した犯罪被害者等支援に関する実践的なシミュレーション訓練を実施している(被害者支援連絡協議会については、【施策番号183】参照)。

(13) 警察と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び情報提供の充実

【施策番号182】

警察においては、犯罪被害者等支援に関係する機関・団体等との連携・協力を充実・強化し、当該関係機関・団体等の犯罪被害者等支援のための制度等を犯罪被害者等に説明できるよう努めている。また、犯罪被害者等支援のための制度を所管する関係府省庁の協力を得て、同制度に関する案内書、申込書等を常備し、これを必要とする犯罪被害者等に提供している。

(14) 被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークにおける連携の推進

【施策番号183】

警察においては、生活支援、医療、公判等多岐にわたる犯罪被害者等のニーズに応え、総合的な支援を行うため、警察、地方公共団体の担当部局及び相談機関、検察、法テラス、医師会、公認心理師関連団体、臨床心理士会、弁護士会並びに犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等から成る被害者支援連絡協議会を、全ての都道府県に設置し、相互に連携を図っている。

また、犯罪被害者等の具体的なニーズを把握し、事案に応じたきめ細かな総合的支援を行うため、警察署等を単位とした連絡協議会(被害者支援地域ネットワーク)を設置している。

さらに、被害者支援連絡協議会及び被害者支援地域ネットワークについて、メンバー間の連携及び相互の協力を充実・強化し、犯罪被害者等が置かれている立場への理解を増進するための研修や、死傷者が多数に及ぶ事案等の具体的事例を想定した実践的なシミュレーション訓練を通じて、具体的な事案に応じた対応能力の向上を図っている。

令和5年4月現在、全ての都道府県において、被害者支援連絡協議会及び計1,087の被害者支援地域ネットワークが設置され、全ての地域を網羅している。

警察と関係機関・団体等とのネットワーク
警察と関係機関・団体等とのネットワーク
シミュレーション訓練の様子
シミュレーション訓練の様子

(15) 警察における相談体制の充実等

【施策番号184】

ア 警察においては、犯罪被害の未然防止に関する相談等に応じる各種相談窓口を設置している。

また、全国統一番号の警察相談専用電話(「#9110」番)を設置するとともに、犯罪被害者等のニーズに応じ、性犯罪被害相談(【施策番号223】参照)、少年相談、消費者被害相談等の個別の相談窓口を設け、相談体制の充実に努めている。

さらに、犯罪被害者等の住所や実名・匿名の別を問わず相談に応じるとともに、犯罪被害者等の希望に応じ、被害者支援連絡協議会等に参画している関係機関・団体に関する情報提供やこれらへの引継ぎを行うなど、犯罪被害者等がより相談しやすく、より負担が少なくなるような対応に努めている。

加えて、警察庁の委託を受けた民間団体が、特定の犯罪等に関する通報を匿名で受け付け、有効な通報を行った者に対して情報料を支払う匿名通報事業を実施し、被疑者の検挙、犯罪被害者等の早期保護等に役立てている(【施策番号81】参照)。

都道府県警察においては、交通事故被害者等に対し、パンフレット「被害者の手引」、現場配布用リーフレット等を活用して、

  • 刑事手続の流れ
  • 交通事故により生じた損害の賠償を求める手続
  • ひき逃げ事件の場合や相手方が自賠責保険に加入していなかった場合に国が損害を塡補する制度(政府保障事業)
  • 犯罪被害者等支援に関する各種相談窓口

等に関する説明を行っている。

また、交通事故被害者等から加害者に対する行政処分に係る意見聴取等の期日等についての問合せや、交通死亡事故の遺族、重度後遺障害を負った者及びその直近の家族から加害者に対する行政処分の結果についての問合せを受けた場合には、適切に情報提供を行っている。令和4年中の都道府県警察における行政処分に係る意見聴取等の期日等に関する問合せに対する回答及び行政処分の結果に関する問合せに対する回答の合計件数は11件(前年:33件)であった。

このほか、都道府県交通安全活動推進センターにおいても、職員、弁護士等が交通事故被害者等からの相談に応じ、助言を行っている。

心のリリーフ・ライン
心のリリーフ・ライン
少年用カウンセリングルーム
少年用カウンセリングルーム

【施策番号185】

イ 警察においては、性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置を推進するなどして、性犯罪被害相談において、相談者の希望する性別の職員が対応することができるよう努めている。また、執務時間外においても、当直勤務中の職員が対応した上で担当者に引き継ぐなど、性犯罪被害相談の適切な運用を推進している。

(16) 警察における被害少年等が相談しやすい環境の整備

【施策番号186】

警察においては、全ての都道府県警察に設置されている少年サポートセンター、警察署の少年係等が窓口となり、警察官や少年補導職員が少年や保護者等からの相談に応じ、必要な指導・助言を行っている。

また、全ての都道府県警察に、「ヤングテレホンコーナー」等の名称で電話による相談窓口を設け、電話や電子メール等による少年相談を受け付けており、夜間・休日も対応するなど、少年や保護者等が相談しやすい環境の整備を図っている。

令和4年4月現在、全国196か所(前年:199か所)に少年サポートセンターが設置されており、このうち70か所(前年:71か所)は、少年や保護者等がより気軽に立ち寄ることができるよう、警察施設以外の施設に設置されている。

さらに、警察庁においては、被害少年等が相談しやすいよう、相談内容等に応じた相談窓口を提供するシステム「子供の性被害等相談窓口案内ウェブサイト・ぴったり相談窓口」を構築し、警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/annai/)に掲載している。

子供の性被害等相談窓口案内ウェブサイト・ぴったり相談窓口
子供の性被害等相談窓口案内ウェブサイト・ぴったり相談窓口

(17) 指定被害者支援要員制度の活用

【施策番号187】

都道府県警察においては、専門的な犯罪被害者等支援が必要とされる事件が発生した場合に、あらかじめ指定された警察職員が事件発生直後から犯罪被害者等への付添い、情報提供等を行ったり、被害者支援連絡協議会等のネットワークを活用しつつ部外のカウンセラー、弁護士会、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等の紹介等を行ったりする、指定被害者支援要員制度を運用している。また、指定被害者支援要員に対し、犯罪被害者等支援において必要となる知識等に関する研修、教育等を実施している。

令和4年末現在、全国で3万8,349人が指定被害者支援要員として指定されている。

○ 海上保安庁においては、犯罪被害者等支援及び関係機関との連絡調整を行う犯罪被害者等支援主任者を部署ごとに指定し、犯罪被害者等の具体的な事情を把握し、当該事情に応じ、犯罪被害の発生直後から犯罪被害者等に必要な助言、情報提供等を行うとともに、具体的な支援に関する説明を行うなど、犯罪被害者等の精神的・経済的負担の軽減に努めている。

指定被害者支援要員制度
指定被害者支援要員制度
指定被害者支援要員による制度の説明(模擬)
指定被害者支援要員による制度の説明(模擬)

(18) 交通事故相談活動の推進

【施策番号188】

国土交通省においては、研修会の実施や実務必携の発刊等を通じ、交通事故相談活動に携わる地方公共団体の交通事故相談員の能力向上を図るなど、交通事故相談活動に対する支援を行っている。

(19) 公共交通事故の被害者等への支援

【施策番号189】

国土交通省においては、公共交通事故による被害者等への支援の確保を図るため、平成24年4月に公共交通事故被害者支援室を設置し、被害者等から公共交通事業者への要望の取次ぎ、相談内容に応じた適切な相談窓口の紹介等を行っている。

令和4年度においては、公共交通事故の発生時には、被害者等から相談内容を聴取して適切な相談窓口を紹介し、平時には、支援を担当する職員に対する教育訓練の実施、公共交通事故被害者等支援フォーラムの開催、公共交通事業者における被害者等支援計画の策定の働き掛け等を行った。同年度末時点における教育訓練受講者数は389人、支援計画の策定数は375であった。

平成28年1月に発生した軽井沢スキーバス事故に関しては、継続的な遺族会との意見交換会の開催や、遺族会が開催する安全を誓う集いについて関係者とともに支援を実施している。また、令和4年4月に発生した知床遊覧船事故に関しては、事故発生直後から相談窓口を24時間体制としたほか、被害者家族への説明会を開催するなど、家族と相互に連絡を取り合う体制を継続し、被害者家族への支援を行っている。

(20) 婦人相談所等の職員に対する研修の促進

【施策番号190】

厚生労働省においては、平成23年度から、国立保健医療科学院で実施している婦人相談所等指導者研修等において、配偶者等からの暴力事案の被害を受けた女性の人権、配偶者等からの暴力事案の特性等に関する理解の増進を図るため、婦人相談所等の職員に対する専門研修を実施している(【施策番号119】参照)。

(21) ストーカー事案への対策の推進

【施策番号191】

内閣府においては、地方公共団体におけるストーカー事案の被害者への支援の充実を図るため、「ストーカー被害者支援マニュアル」を作成し、地方公共団体及び被害者支援を行っている関係機関等に配布している(配偶者等からの暴力事案については、【施策番号180】参照)。

令和4年度においては、非同棲交際相手からの暴力(いわゆるデートDV)について、予防や一時保護、緊急避難等について必要な施策の整理を行い、これを踏まえ、同マニュアルの改訂を行った。

(22) ストーカー事案への適切な対応

【施策番号192】

警察における令和4年中のストーカー事案の相談等対応件数は、1万9,131件(前年:1万9,728件) であった( 警察庁ウェブサイト「令和4年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」:https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/stalker/R4_STDVRPCAkouhousiryou.pdf)。

ストーカー事案においては、加害者の被害者に対する執着心や支配意識が非常に強い場合が多く、加害者が被害者に対して強い危害意思を有している場合には、検挙を顧みず大胆な犯行に及ぶこともあるなど、事態が急展開して重大事件に発展するおそれが大きい。

このため、警察においては、ストーカー事案をはじめとする人身の安全を早急に確保する必要があると認められる事案に一元的に対処するための体制を確立し、被害者等の安全の確保を最優先に対処することとしている。

ストーカー事案・配偶者等からの暴力事案に関する手続の流れ
ストーカー事案・配偶者等からの暴力事案に関する手続の流れ
ストーカー総合対策
ストーカー総合対策

具体的には、ストーカー行為等の規制等に関する法律その他の関係法令の積極的な適用による加害者の検挙のほか、被害者等の安全な場所への避難や身辺の警戒、110番緊急通報登録システムへの登録、ビデオカメラや緊急通報装置等の資機材の活用、被害者等の保護措置等、組織による迅速・的確な対応を推進している。また、被害者等からの相談に適切に対応できるよう、被害者の意思決定支援手続等を導入している。

さらに、逮捕状請求における被疑事実の要旨の記載に際し、被害者に関する事項の記載方法に配慮しているほか、仮釈放又は保護観察付執行猶予となった者に関する保護観察所等との連携の強化、犯罪被害者等支援における婦人相談所、法テラス等の関係機関との協力の強化等、被害の拡大防止及び再被害の防止に向けた対策を推進している。

令和3年5月、ストーカー行為等の規制等に関する法律の一部を改正する法律が成立したことから、改正を踏まえた対策を推進している。

また、「ストーカー総合対策」(平成27年3月20日ストーカー総合対策関係省庁会議決定。平成29年4月24日・令和4年7月15日改訂)に基づき、関係機関・団体等と連携した取組を一層推進している。

(23) 人身取引被害者の保護の推進

【施策番号193】

人身取引(性的サービスや労働の強要等)事犯は、被害者に対して深刻な精神的・身体的苦痛をもたらし、被害の回復が非常に困難であるなど、重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が求められている。

政府は、人身取引の防止・撲滅と被害者の保護に向け、平成16年4月には「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を設置し、同年12月に同会議において「人身取引対策行動計画」を、平成21年12月には犯罪対策閣僚会議において「人身取引対策行動計画2009」を、また平成26年12月には同会議において「人身取引対策行動計画2014」を策定したほか、関係閣僚を構成員とする人身取引対策推進会議を平成27年以降毎年開催するなどしてきたところ、人身取引に係る情勢に適切に対処し、政府一体となった総合的かつ包括的な人身取引対策を更に推進するため、令和4年12月、犯罪対策閣僚会議において、新たに「人身取引対策行動計画2022」を決定した。

また、同年6月、人身取引対策推進会議の第8回会合において、我が国における人身取引事犯による被害の状況や、関係府省庁における人身取引対策の取組状況等を取りまとめた年次報告「人身取引対策に関する取組について」を決定・公表し、人身取引事犯の撲滅を目指し、人身取引対策に係る取組を引き続き着実に推進していくことを確認した。

内閣府においては、人身取引の被害者向け及び需要者向けの2種類の啓発用ポスター並びにリーフレットを作成し、関係機関等に配布するとともに、SNSを活用し、我が国における人身取引事犯の実態、人身取引事犯の防止・撲滅及び被害者の保護に係る取組に関する広報を行い、被害に遭っていると思われる者を把握した際の通報を呼び掛けた。

人身取引(性的サービスや労働の強要等)対策のポスター
人身取引(性的サービスや労働の強要等)対策のポスター

(24) SNSを含むインターネット上の誹謗中傷等に関する相談体制の充実及び誹謗中傷等を行わないための広報啓発活動の強化

【施策番号194】

総務省においては、関係府省庁と連携し、SNSを含むインターネット上の誹謗中傷等に関する犯罪被害者等からの相談に適切に対応できる体制の充実に努めるとともに、誹謗中傷等を行わないための広報啓発活動を強化している。

平成21年度より総務省が運営を委託している違法・有害情報センターで受け付けている相談件数は高止まり傾向にあり、令和4年度の相談件数は5,745件(前年度:6,329件)であった。こうした状況を踏まえ、令和3年度から違法・有害情報相談センターの相談員の増員等の体制強化を図るとともに、行政機関や民間団体等の相談窓口との連携体制を構築し、各機関の取組に関する相互の理解の促進と、機能の相互補完を目指した連携を図っている。

また、ユーザーに対する情報モラル及びICTリテラシーの向上のための啓発活動の一環として、誹謗中傷対策に関する内容を含む、青少年のインターネットの安全な利用に係る普及啓発を目的に、文部科学省、一般財団法人マルチメディア振興センター、通信事業者等の協力の下、平成18年度から児童・生徒、保護者、教職員等に対する学校等の現場での無料の出前講座「e- ネットキャラバン」を全国で開催し、令和4年4月から令和5年3月末までの間、2,226件(前年度:2,559件)の出前講座を実施した。

違法・有害情報相談センター
違法・有害情報相談センター
#NoHeartNoSNSロゴマーク
#NoHeartNoSNSロゴマーク

(25) 検察庁の犯罪被害者等支援活動における福祉・心理関係の専門機関等との連携強化

【施策番号195】

法務省においては、犯罪被害者等に配慮した捜査や公判を行うため、検察官等に対する研修において福祉・心理関係の専門機関の関係者を講師に招くなど、これらの機関との連携・協力の充実・強化を図っている。

(26) 検察庁における被害者支援員と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び情報提供の充実

【施策番号196】

地方検察庁においては、犯罪被害者等に対してよりきめ細かな配慮を行うため、犯罪被害者等支援に携わる被害者支援員を配置している。

被害者支援員は、犯罪被害者等からの様々な相談への対応、法廷への案内・付添い、事件記録の閲覧や証拠品の返還等の各種手続の補助等を行うほか、犯罪被害者等の置かれている状況に応じ、精神面、生活面、経済面等の支援を行っている関係機関・団体等の紹介等を行っている。

被害者支援員に対する研修においては、犯罪被害者等支援に携わる関係機関・団体の職員等を講師に招いているほか、平素から犯罪被害者支援団体等との意見交換の場を設けるなど、犯罪被害者等支援の状況に関する情報交換を行い、その連携・協力の充実・強化を図っている。また、被害者支援員の意義や役割について記載された犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」を犯罪被害者等支援を行っている関係機関・団体等に配布するなどして、被害者支援員制度に係る情報提供の充実を図っている。

さらに、犯罪被害者等から電話やファックスによる相談を受け付けるため、地方検察庁等に被害者相談専用電話番号(ホットライン)を設置し、被害者支援員等が対応している。

(27) 更生保護官署における被害者担当保護司との協働及び関係機関・団体等との連携・協力による支援の充実

【施策番号197】

法務省においては、全国の保護観察所に被害者担当の保護観察官及び保護司を配置し、その協働態勢の下、主として、被害に係る刑事裁判が終了した後又は加害者が保護処分を受けた後に、犯罪被害者等への相談・支援を行っている。相談・支援においては、犯罪被害者等の悩みや不安を傾聴するとともに、必要な情報提供等を行っており、令和4年中の実施件数は延べ1,563件(前年:1,634件)であった。また、支援の円滑な実施及び支援内容の充実を図るため、国や地方公共団体の関係機関、犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等との連携・協力の充実・強化を図るとともに、更生保護における犯罪被害者等施策の周知に努めている。

(28) 被害者担当の保護観察官及び被害者担当保護司に対する研修等の充実

【施策番号198】

法務省においては、刑事裁判及び少年審判の終了後の相談対応の充実を図るため、保護観察所に配置されている被害者担当の保護観察官及び保護司に対する研修において、犯罪被害者等やその支援に携わる実務家による講義、事例研究及び犯罪被害者等支援に関する実践的技能を修得させるための演習等を実施し、犯罪被害者等の心情や置かれている状況等への理解の増進を図るとともに、適切な対応を確実に行うよう努めている。

(29) 犯罪被害者等の意見を踏まえた運用改善や制度改正についての検討

【施策番号199】

法務省においては、「更生保護の犯罪被害者等施策の在り方を考える検討会」報告書を踏まえ、犯罪被害者等の意見を踏まえた運用改善や制度改正について検討を行っている。

(30) 犯罪被害者等の相談窓口の周知と研修体制の充実

【施策番号200】

法務省の人権擁護機関においては、人権相談等を通じて人権侵害の疑いがある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じているところ、このような調査救済制度を周知するためのリーフレットを作成・配布するほか、「みんなの人権110番」、「こどもの人権110番」、「こどもの人権SOSミニレター」(料金受取人払の便箋兼封筒)、「女性の人権ホットライン」、「インターネット人権相談受付窓口」等の各種相談窓口について、法務省ウェブサイト(https://www.moj.go.jp/JINKEN/index_soudan.html)や広報資料に掲載するなどしており、令和4年度に実施したモニター調査による人権相談窓口の認知度は52.8%であった。

こどもの人権110番のポスター
こどもの人権110番のポスター

さらに、人権相談や調査救済事務に従事する職員及び人権擁護委員に対する研修を実施し、犯罪被害を含む人権侵害の被害の救済に適切に対応するための体制の強化を図っている。

(31) 犯罪被害者である子供等の支援

【施策番号201】

法務省の人権擁護機関においては、人権相談等を通じ、いじめ・体罰・児童虐待事案といったこどもに対する人権侵害の疑いがある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、児童相談所等の関係機関と連携して事案に応じた適切な措置を講じている。

(32) 高齢者や障害のある人等からの人権相談への対応の充実

【施策番号202】

法務省の人権擁護機関においては、法務局の人権相談窓口に自ら赴くことが困難な老人福祉施設等の社会福祉施設の入所者やその家族が施設内で相談することができるよう、施設の協力を得て特設の人権相談所を開設し、入所者等からの人権相談に応じている。令和4年度は、老人福祉施設等の社会福祉施設における特設相談所を85回(前年度:64回)開設した。また、介護サービス施設・事業所に所属する訪問介護員等の高齢者と身近に接する機会の多い社会福祉事業従事者等に対し、人権相談について周知し、人権侵害の疑いがある事案を認知した場合の情報提供を呼び掛けるなど、連携を図っている。

(33) 法テラスによる支援

【施策番号203】

ア 【施策番号2】参照

【施策番号204】

イ 法テラスの犯罪被害者支援業務においては、警察庁、日本弁護士連合会等の関係機関・団体と十分に連携することが求められている。このため、法テラスにおいては、その活動についてこれらの関係機関・団体に周知するとともに、都道府県警察等が主催する被害者支援連絡協議会やその分科会に参加したり、犯罪被害者週間における広報啓発活動等を協力して行ったりするなど、犯罪被害者支援に関係する機関・団体との連携・協力の充実・強化を図っている(犯罪被害者週間については、トピックス「犯罪被害者週間」参照)。

また、弁護士会や犯罪被害者支援団体と連携し、犯罪被害者等を必要な支援につなげるため、犯罪被害者等の置かれている状況に応じた関係機関・団体を紹介する、コーディネーターとしての役割を果たせるよう努めている。

法テラスにおいて運用している犯罪被害者支援ダイヤル(0120-079714) では、損害の回復や苦痛の軽減に役立つ情報や、犯罪被害者支援を行っている関係機関・団体の相談窓口情報等を提供しているところ、令和4年度における問合せ件数は2万889件であり、主な問合せ内容は、DV被害、刑事手続・犯罪の成否等に関する問合せ、生命・身体犯被害であった。

また、同年度中の全国の法テラスの地方事務所における電話又は面談による犯罪被害者支援に関する対応件数は、1万4,644件であった。

法テラスの犯罪被害者支援ダイヤルへの問合せに対する紹介先(令和4年度)
法テラスの犯罪被害者支援ダイヤルへの問合せに対する紹介先(令和4年度)
法テラスの地方事務所への問合せに対する紹介先(令和4年度)
法テラスの地方事務所への問合せに対する紹介先(令和4年度)
法テラスによる犯罪被害者支援業務の実施状況
  平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
犯罪被害者支援ダイヤルへの問合せ件数 15,145 15,343 14,309 15,908 20,889
地方事務所での対応件数 14,035 11,262 10,768 12,108 14,644
提供:法務省

【施策番号205】

ウ 法テラスにおいては、犯罪被害を受けた時からの時間的経過の長短を問わず、情報提供等を通じた支援を行っている。

【施策番号206】

エ 【施策番号138】参照

【施策番号207】

オ 改正総合法律支援法が平成30年1月に施行され、認知機能が十分でないために弁護士等による法的サービスの提供を自発的に求めることが期待できない高齢者、障害者等を対象とした、資力にかかわらない法律相談援助制度(特定援助対象者法律相談援助)が創設されるとともに、それまで民事裁判等手続の準備及び追行に限定されていた代理援助及び書類作成援助の対象行為が、認知機能が十分でない高齢者、障害者等に関しては、生活保護給付に係る処分に対する審査請求等、一定の行政不服申立手続の準備及び追行にも拡大された。これを踏まえ、法テラスにおいては、福祉機関等の関係機関・団体と連携し、同制度を周知している。

特定援助対象者法律相談援助件数
  平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
特定援助対象者
法律相談援助件数
570 668 743 789 999
提供:法務省

【施策番号208】

カ 改正総合法律支援法が平成30年1月に施行され、ストーカー事案、配偶者等からの暴力事案及び児童虐待事案の被害者を対象とした資力にかかわらない法律相談援助制度(DV等被害者法律相談援助)が創設されたことを踏まえ、法テラスにおいては、犯罪被害者支援に関係する機関・団体と連携するとともに、弁護士の確保等により、支援体制の強化を図り、令和4年4月からはこれまで対面で実施していた法律相談を電話やオンラインでも利用できるようにするなど、相談しやすい環境の整備に努めている。

また、児童虐待をテーマにした広報用のポスター及びポケットカードや、制度周知用アニメーション動画を作成するなど、DV等被害者法律相談援助の周知に努めている(【施策番号94】参照)。

令和4年度におけるDV等被害者法律相談援助実施件数は1,292件(前年度:972件)であり、主な相談内容はDV被害であった。

(34) 弁護士による犯罪被害者支援に対する経済的援助に関する検討

【施策番号209】

法務省では、「犯罪被害者支援弁護士制度検討会」における論点整理結果を踏まえつつ、令和3年10月に設置した「犯罪被害者支援弁護士制度・実務者協議会」において、一定の犯罪被害者等が早期の段階から弁護士による継続的かつ包括的な支援及びこれに対する経済的援助を受けられるよう、「犯罪被害者等支援弁護士制度」の導入に向けた検討を行うことを内容とする取りまとめを行ったところであり、令和5年6月現在、「犯罪被害者等施策の一層の推進について」(令和5年6月6日犯罪被害者等施策推進会議決定)において同制度を創設するものとされたことも踏まえ、その具体的検討を進めている。

(35) 地域包括支援センターによる支援

【施策番号210】

地域包括支援センターにおいては、民生委員、介護支援専門員等による支援だけでは、適切なサービス等につながる方法が見付けられないなどの困難な状況にある高齢者に対し、市区町村、医療機関等と連携し、成年後見制度の活用促進や高齢者虐待への対応等を行い、専門的な観点から、高齢者の権利を擁護するため必要な継続的支援を行っている。

令和3年度における権利擁護に関する相談件数は、全国で74万7,115件(前年度:70万4,866件)であった。

(36) 学校内における連携及び相談体制の充実

【施策番号211】

ア 【施策番号53】参照

【施策番号212】

イ 【施策番号53】参照

(37) 教育委員会と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び学校における相談窓口機能の充実

【施策番号213】

児童生徒による暴力行為の発生件数が依然として相当数に上っていること、教職員による体罰や児童生徒間のいじめにより重大な被害が生じる事案が引き続き発生していること等が、学校教育において大きな課題となっている。文部科学省においては、こうした現状を踏まえ、学校における教育相談体制の充実を図るとともに、都道府県・政令指定都市の学校や教育委員会に対し、

  • 犯罪行為として扱われるべきと認められる暴力行為やいじめについては、いじめを受けている児童生徒を徹底して保護するといった観点から、早期に警察へ相談・通報し、警察と連携して対応することが重要であること。
  • 教員が体罰を目撃した場合や、学校が体罰又は体罰が疑われる事案について報告・相談を受けた場合には、事実関係の正確な把握に努めるとともに、教育委員会へ報告すること。
  • 学校が、体罰や教員等との関係に関する悩みを児童生徒が相談できる体制を整備し、相談窓口を周知すること。

等を示達し、教育委員会と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化や教育相談体制の整備を促している。令和3年度における都道府県・政令指定都市の教育相談機関は207か所である(令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査による)。

(38) 犯罪被害に遭った児童生徒等が不登校となった場合における継続的支援の促進

【施策番号214】

不登校となった児童生徒への支援について初めて体系的に定めた、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律が平成28年12月に成立し、平成29年2月に全面施行された。

文部科学省においては、同法の施行を踏まえ、同年3月、学校が不登校となった児童生徒に対する組織的かつ継続的な支援等を推進するための基本的な指針を策定し、同法及び同指針の趣旨等を教育関係者に周知した。

また、不登校となった児童生徒への支援において中核的な役割を果たす教育支援センター等の設置促進、機能強化等に要する経費の一部を補助している。令和3年度における教育委員会が設置する教育支援センターは1,634か所である(令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査による)。

(39) 医療機関等と関係機関・団体等との連携・協力の充実・強化及び医療機関等における情報提供等の充実

【施策番号215】

ア 厚生労働省においては、医療機関と犯罪被害者等支援に関係する機関・団体等との連携・協力の充実・強化や、医療機関等における犯罪被害者等の支援等に関する情報提供の適切な実施を促進することとしている。

【施策番号216】

イ 精神保健福祉センターや保健所においては、医療機関等と連携し、犯罪被害者等に対して精神保健に関する相談支援を行っている。

また、同センターにおいては、専門的知識を有する職員等による面接相談や電話相談(こころの電話)の窓口を設置し、地域住民が相談しやすい体制を整備している。さらに、必要に応じ、医師による診察、医療機関等への紹介、医学的指導等を行っている。

(40) 都道府県警察に対する犯罪被害者等への情報提供等の支援に関する指導及び好事例の勧奨

【施策番号217】

警察庁においては、情報提供をはじめとする基本的な犯罪被害者等施策が確実に実施されるよう、各種会議等を通じて都道府県警察を指導するとともに、好事例の紹介により同様の取組を勧奨している。

(41) 「被害者の手引」の内容の充実等

【施策番号218】

ア 都道府県警察においては、パンフレット「被害者の手引」を被害者連絡の対象者に配布するとともに、刑事手続の概要、犯罪被害者等のための制度等について情報提供を行う場合に広く活用している。

また、警察庁においては、犯罪被害者等のための制度に関する情報を、警察庁ウェブサイト「警察の犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/higaisya/index.html)に掲載している。

【施策番号219】

イ 【施策番号140】参照

(42) 犯罪被害者等の保護・支援のための制度の周知

【施策番号220】

警察においては、犯罪被害遺児に対する奨学金給与事業等を実施している公益財団法人犯罪被害救援基金(http://kyuenkikin.or.jp/)について情報提供を行っている。

同基金においては、昭和56年5月の設立以降、令和5年3月末までに2,182人の犯罪被害遺児を奨学生として採用し、総額約28億8,745万円の奨学金を給与している。また、平成20年12月から、基本法の趣旨を踏まえ、現に著しく困窮している犯罪被害者等であって、社会連帯共助の精神にのっとり特別な救済を図る必要があると認められる者に対して支援金を支給する事業を実施しており、令和5年3月末までに、現に著しく困窮している犯罪被害者等4人及び海外における殺傷事件の被害者等6人に、総額約2,250万円の支援金を支給している(損害賠償請求制度に関する情報提供の充実については、【施策番号3】参照)。

○ 海上保安庁においては、ウェブサイト(https://www.kaiho.mlit.go.jp/questions/hanzaihigai/shien.html)において犯罪被害者等のための制度について周知するとともに、犯罪被害者等支援に係る業務を専門的かつ総合的に取り扱う警務管理官の指導の下、犯罪被害者等支援主任者に指名された海上保安官が、関係機関との連携、情報提供等を行っている。

(43) 刑事に関する手続等に関する情報提供の充実

【施策番号221】

ア 【施策番号139】参照

【施策番号222】

イ 【施策番号141】参照

(44) 性犯罪被害者による情報入手の利便性の向上

【施策番号223】

都道府県警察においては、性犯罪被害者から被害相談等を受けるための性犯罪被害相談電話窓口の設置、相談室の整備等を推進し、性犯罪被害者による情報入手の利便性の向上を図っている。全ての都道府県警察本部において、女性警察官等による性犯罪被害相談電話の受理体制及び相談室が整備されており、平成29年8月には、性犯罪被害者がより相談しやすいよう、都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん)」の運用を開始した。令和元年度には、全国共通番号の24時間対応化及び無料化を行うなど、性犯罪被害者が相談しやすい環境の一層の整備に努めている。

また、事件化を望まない性犯罪被害者に対しても、民間被害者支援団体が提供し得る支援の内容、当該被害者の秘密が守られること等を十分に説明した上で、当該被害者の同意を得て、その連絡先や相談内容等を犯罪被害者等早期援助団体に情報提供するなど、性犯罪被害者が早期に民間被害者支援団体による支援を受けやすくなるよう努めている。

※ 犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律第23条の規定に基づき、犯罪被害等の早期軽減に資する事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものとして、都道府県公安委員会が指定した非営利法人
ハートさん

(45) 自助グループの紹介等

【施策番号224】

警察においては、犯罪被害者等の要望を踏まえ、相談対応や支援等の機会を通じ、又は犯罪被害者等の援助を行う民間の団体を介し、犯罪被害者等に自助グループを紹介している。

(46) 犯罪被害者等施策に関するウェブサイトの充実

【施策番号225】

警察庁においては、犯罪被害者等施策に関する関係法令、相談機関、総合的対応窓口等の情報や犯罪被害者白書の英語版(概要版のみ)を警察庁ウェブサイト「犯罪被害者等施策」(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/index.html)に掲載するとともに、同ウェブサイトの掲載方法を工夫するなどして、その内容の充実を図っている。

また、警察庁公式ツイッター(https://twitter.com/NPA_KOHO) を活用し、犯罪被害者等施策に関する情報提供を行っている。

(47) 海外における邦人の犯罪被害者等に対する情報提供等

【施策番号226】

在外公館においては、現地警察への犯罪被害の届出に関する助言、弁護士・通訳のリストの提供、医療機関に関する情報提供、本人が自ら連絡できない場合における家族との連絡の支援、緊急移送に関する助言、遺体の身元確認に関する支援等を行っている。

外務省においては、海外における邦人の犯罪被害を未然に防止するとともに、被害に遭った場合の対処方法について周知するため、「~海外旅行のトラブル回避マニュアル~海外安全虎の巻」を毎年改訂し、全国の旅券事務所、旅行会社、関係団体等に配布するとともに、「海外安全ホームページ」(https://www.anzen.mofa.go.jp/pamph/pdf/toranomaki.pdf)及び海外安全アプリにも掲載するなど、海外における邦人の犯罪被害に関する情報を分かりやすく発信するとともに、国民が渡航前にこれらの情報に接する機会の増加を図っている。令和3年中に在外公館及び公益財団法人日本台湾交流協会が取り扱った、海外における邦人の犯罪被害に係る援護件数・援護人数は、713件・815人であり、「窃盗被害」(343件・377人)が最も多く、「詐欺被害」(187件・198人)、「傷害・暴行被害」(60件・81人)の順で続いている。

※ 邦人旅行者や在留邦人に海外安全情報を提供するための外務省公式アプリで、滞在国や周辺国・地域の危険情報や現地の最新情報を入手することができるもの。

警察庁においては、外務省と連携し、海外における邦人の犯罪被害に関する情報収集を行っている。

都道府県警察においては、関係機関・団体と連携し、帰国する犯罪被害者等や日本国内の遺族等に対し、国外犯罪被害弔慰金等支給制度の裁定申請に係る教示、国内における支援に関する情報提供、空港等における帰国時の出迎え等の支援に努めている。

海外安全虎の巻
海外安全虎の巻
令和3年中に在外公館等が取り扱った
邦人の犯罪被害援護件数・援護人数
件名 件数 人数
殺人 11 17
傷害・暴行 60 81
強姦・強制わいせつ 9 13
脅迫・恐喝 16 21
強盗・強奪 53 68
窃盗 343 377
詐欺 187 198
テロ 0 0
誘拐 1 1
その他 33 39
合計 713 815
提供:外務省

(48) 被害が潜在化しやすい犯罪被害者等に対する相談体制の充実及び理解の促進

【施策番号227】

警察においては、全国統一番号の警察相談専用電話(「#9110」番)や性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん)」を設置するなど、相談体制の充実に努めている。また、警察庁主催の令和4年度「犯罪被害者週間」中央イベント・パネルディスカッションにおいて、「潜在化しやすい犯罪被害への支援 ~こども達の心の声に耳を傾ける~」をテーマに、こどもが被害に遭った場合の特徴やその支援の在り方等について議論が行われ、自ら被害を訴えることが困難なため被害が潜在化しやすい犯罪被害者等への理解を呼びかけた(トピックス「犯罪被害者週間」参照)。

法務省の人権擁護機関においては、法務局の人権相談窓口のほか、社会福祉施設等における特設相談所において、法務局の職員や人権擁護委員が犯罪被害者等からの人権相談に応じている。また、犯罪被害者等であるこどもからの人権相談については、専用相談電話「こどもの人権110番」を設置し、人権侵害を受けたこどもが安心して相談することができる環境の整備を図るとともに、令和4年8月26日から9月1日までの1週間を「全国一斉「こどもの人権110番」強化週間」とし、相談を受け付ける時間を延長するなどして、こどもの人権問題に関する相談体制の充実に努めている。

さらに、教職員や保護者等の身近な者に相談することができないこどもの悩みを的確に把握し、学校や関係機関と連携して様々な人権問題に対応できるよう、同年5月下旬から7月上旬にかけて、全国の小・中学校の児童生徒全員に「こどもの人権SOSミニレター」を配布するとともに、法務省ウェブサイト上に「インターネット人権相談受付窓口(SOS-eメール)」(https://www.jinken.go.jp/kodomo)を設置し、インターネットを通じてパソコン、携帯電話及びスマートフォンからいつでも相談を受け付ける体制を整備するなど、相談体制の充実・強化を図っている。

加えて、若年層が人権相談にアクセスしやすくなるよう、SNSを活用した人権相談体制の整備を進めている。

女性の犯罪被害者等からの人権相談については、専用相談電話「女性の人権ホットライン」を設置するとともに、同年11月18日から同月24日までの1週間を「全国一斉「女性の人権ホットライン」強化週間」とするなど、相談体制の充実・強化に努めている。

このほか、日本語を自由に話すことが困難な外国人等からの人権相談については、全国50か所全ての法務局において「外国人のための人権相談所」(約80の言語による人権相談に対応)を設けるとともに、「外国語人権相談ダイヤル」及び「外国語インターネット人権相談受付窓口」(英語・中国語・韓国語・フィリピノ語・ポルトガル語・ベトナム語・ネパール語・スペイン語・インドネシア語・タイ語の10言語による人権相談に対応)を設置し、外国人の犯罪被害者等にも対応できる体制を整備している。

なお、令和4年における犯罪被害者等に関する人権相談の件数は、70件(前年:44件)であった。

また、犯罪被害者等の人権に対する配慮と保護を図るため、「犯罪被害者やその家族の人権に配慮しよう」を強調事項の一つとして掲げ、啓発冊子の配布等の人権啓発活動を実施している。

法テラスにおいては、犯罪被害者支援ダイヤルにより、匿名での相談にも対応できる体制を整備しているほか、女性弁護士による支援を希望する犯罪被害者等のニーズに応えるため、弁護士会等と連携し、全ての都道府県において、女性の犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士(精通弁護士)を複数人確保しており、令和5年4月現在、その数は計986人(前年:971人)である。

内閣府においては、若年層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、性暴力に関するSNS相談「Cure time(キュアタイム)」を実施している。

(文部科学省における取組については、【施策番号53】を参照

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