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第3章 刑事手続への関与拡充への取組

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1 刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本法第18条関係)

(1) 迅速・確実な被害の届出の受理

【施策番号125】

警察においては、犯罪被害者等からの被害の届出に対し、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、迅速・確実な受理に努めている。

(2) 告訴への適切な対応

【施策番号126】

警察においては、警察本部及び各警察署に「告訴・告発センター」等を設置し、告訴・告発に係る対応の責任者及び担当者を指定することにより、担当課の決定及び受理・不受理の判断が迅速になされる体制を整備している。

また、検察庁においても、告訴・告発への適切な対応に努めている。

(3) 医療機関等における性犯罪被害者からの証拠資料の採取等の促進 

【施策番号127】

ア 警察においては、性犯罪被害者が警察への被害の届出を行うことなく医療機関を受診した場合、後に警察へ被害の届出を行うときには身体等に付着した証拠資料が滅失している可能性があることから、医師等が診療時に性犯罪被害者から証拠資料を採取するための資機材の整備に係る予算の確保、整備先となる医療機関等の拡大等を推進している。

【施策番号128】

イ 警察においては、産婦人科医会等とのネットワークを活用するなどして、性犯罪被害者からの証拠資料の採取方法を医師等に教示している。

(4) 冒頭陳述等の内容を記載した書面交付の周知徹底及び適正な運用

【施策番号129】

検察庁においては、犯罪被害者等の希望に応じ、公訴事実の要旨や冒頭陳述等の内容を説明するとともに、原則として、冒頭陳述等の内容を記載した書面を交付している。

また、法務省・検察庁においては、これらについて、会議や研修等の様々な機会を通じて検察官等への周知徹底を図り、一層適正な運用に努めている。

(5) 公判記録の閲覧・謄写制度の周知及び閲覧請求への適切な対応

【施策番号130】

検察庁においては、犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」(【施策番号139】参照)等により、犯罪被害者等から刑事事件の訴訟記録の閲覧・謄写の申出があり、相当と認められるときは、当該刑事事件が係属中であっても、原則として閲覧・謄写が可能である旨を周知している。また、検察庁において保管する訴訟終結後の刑事事件の裁判書や記録(いわゆる確定記録)の閲覧に際し、犯罪被害者等に対して被告人、証人等の住所を開示することの許否については、裁判の公正を担保する必要性と開示により生じるおそれのある弊害等を比較衡量して判断すべきものであるところ、犯罪被害者保護の要請に配慮しつつ、適切な対応に努めている。

令和4年中に犯罪被害者等に対して公判記録の閲覧・謄写を認めた事例の延べ数は、1,203件であった。

公判記録の閲覧・謄写状況
年次 記録の閲覧・謄写
平成30年 1,299
令和元年 1,195
令和2年 1,154
令和3年 1,364
令和4年 1,203
(注)
1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。
2 表中の数値は、高等裁判所、地方裁判所及び簡易裁判所において被害者等に公判記録の閲覧・謄写をさせた事例数及び同種余罪の被害者等に公判記録の閲覧・謄写をさせた事例数の合計である。
3 事例数は、事件の終局日を基準に計上している。
提供:法務省

(6) 犯罪被害者等と検察官の意思疎通の充実 

【施策番号131】

ア 法務省・検察庁においては、会議や研修等の様々な機会を通じ、犯罪被害者等の意見が適切に刑事裁判に反映されるよう、検察官が犯罪被害者等と適切な形で十分な意思疎通を図るべきことについて、検察官等への周知に努めている。

【施策番号132】

イ 検察庁においては、公判前整理手続等の経過及び結果に関し、犯罪被害者等の希望に応じ、検察官が適宜の時期に必要な説明を行うとともに、被害者参加人等が公判前整理手続等の傍聴を特に希望する場合において、検察官が相当と認めるときは、当該希望を裁判所に伝えるなどの必要な配慮を行うよう努めている。また、犯罪被害者等が公判の傍聴を希望する場合には、その機会ができる限り得られるよう、公判期日の設定に当たり、必要に応じて当該希望を裁判所に伝えるよう努めている。

さらに、法務省・検察庁においては、検察官等に対する研修において犯罪被害者等の保護・支援に関する講義を行うなどして、犯罪被害者等との意思疎通の重要性に関する検察官等への周知に努めている。

(7) 国民に分かりやすい訴訟活動

【施策番号133】

検察庁においては、犯罪被害者等を含む傍聴者等にも訴訟手続の内容が理解できるよう、難解な法律用語の使用をできる限り避けたり、プレゼンテーションソフト等を活用して視覚的な工夫を取り入れたりするなど、国民に分かりやすい訴訟活動を行うよう努めている。

(8) 保釈に関する犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

【施策番号134】

【施策番号80】参照

(9) 上訴に関する犯罪被害者等からの意見聴取等

【施策番号135】

法務省・検察庁においては、会議や研修等の様々な機会を通じ、検察官が上訴の可否を検討するに当たって犯罪被害者等の意見を適切に聴取するよう、検察官等への周知に努めている。

(10) 少年保護事件に関する意見聴取等に関する各種制度の周知

【施策番号136】

法務省・検察庁においては、会議や研修等の様々な機会を通じ、検察官等に対し、少年保護事件に関する意見の聴取制度、犯罪被害者等による記録の閲覧・謄写制度及び家庭裁判所が犯罪被害者等に対して少年審判の結果等を通知する制度を周知しており、検察官等が犯罪被害者等に対して適切に情報提供を行うことができるよう努めている。

また、犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」により、これらの制度を犯罪被害者等に周知している(【施策番号139】参照)。

少年保護事件に関する意見の聴取等の運用状況
年次 意見聴取 記録の閲覧・謄写 審判結果などの通知
申出のあった
人数
認められた
人数
申出のあった
人数
認められた
人数
申出のあった
人数
認められた
人数
平成30年 214 207 936 894 824 817
令和元年 251 240 925 903 870 869
令和2年 254 248 927 887 841 840
令和3年 272 266 821 800 780 779
令和4年 248 236 772 747 748 741
(注)
1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。
2 意見聴取、記録の閲覧・謄写及び審判結果などの通知の申出のあった人数は、その年に制度を利用したか、申出を取り下げた又はこれを認めない判断がされた被害者等の延べ人数である。
提供:法務省

(11) 少年審判の傍聴制度の周知

【施策番号137】

法務省・検察庁においては、犯罪被害者等に対し、一定の重大事件の犯罪被害者等が少年審判を傍聴することができる制度や、家庭裁判所が犯罪被害者等に対して少年審判の状況を説明する制度を周知している(【施策番号139】参照)。

少年審判の傍聴等の運用状況
年次 少年審判の傍聴の
実施状況
少年審判の状況説明
制度の実施状況
傍聴の対象となった
事件数
傍聴を許可した
事件数(人数)
申出のあった
人数
認められた
人数
平成30年 68 25(47) 301 287
令和元年 51 20(37) 294 280
令和2年 60 28(51) 313 301
令和3年 67 24(50) 326 317
令和4年 74 29(60) 286 275
(注)
1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。
2 少年審判の傍聴の実施状況の傍聴の対象となった事件数は、その年に終局決定のあった事件数である。
3 少年審判の状況説明制度の実施状況の申出のあった人数は、その年の事件終局までに申出をした被害者等の延べ人数である。
提供:法務省

(12) 法テラスにおける支援に関する情報提供の充実

【施策番号138】

法テラスにおいては、国民への制度周知のための取組として、犯罪被害者支援ダイヤル(0120-079714)において、損害の回復や苦痛の軽減に役立つ情報や、刑事手続に関与するための情報等を提供しているほか、法テラスの犯罪被害者支援をインターネット検索した際に、同ダイヤルへたどり着きやすくするための専用ページ(犯罪被害者支援専用ページ2次元コード参照)を設けている。

さらに、国民に分かりやすい表現を心掛けた、犯罪被害者支援やストーカー事案、配偶者等からの暴力事案及び児童虐待事案の被害者への支援に関するリーフレット等(法テラスウェブサイト「刊行物」:https://www.houterasu.or.jp/houterasu_gaiyou/kouhou/kankoubutsu/leaflet/index.html)を地方公共団体等に配布し、窓口に備え付けるよう依頼している。また、関係機関・団体の機関紙に法テラスの活動を紹介する記事の掲載を依頼するとともに、SNSを活用した広報を行っている。

犯罪被害者支援ポスター
犯罪被害者支援ポスター
法テラスウェブサイト
犯罪被害者支援専用ページ2次元コード
犯罪被害者支援専用ページ2次元コード

(13) 刑事に関する手続等に関する情報提供の充実 

【施策番号139】

ア 法務省においては、被害者参加制度、少年審判の傍聴制度等の犯罪被害者等の保護・支援のための制度について分かりやすく解説した、犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」(https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji_keiji11.html、法務省ウェブサイト「犯罪被害者の方々へ」2次元コード参照)を全国の検察庁に配布し、検察官が犯罪被害者等から事情聴取を行う際に必要に応じて手渡しているほか、各種イベントで配布するなどしている。同パンフレットは、法務省及び検察庁ウェブサイト上にも掲載している。

また、犯罪被害者等向けDVD「あなたの声を聴かせてください」を全国の検察庁に配布し、犯罪被害者等に対する説明に活用しているほか、YouTube法務省チャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=J49bOdmpR2Y)で配信している。

警察においては、「被害者の手引」の内容の充実を図っている(【施策番号218】参照)。

犯罪被害者等向けパンフレット
犯罪被害者等向けパンフレット
法務省ウェブサイト「犯罪被害者の方々へ」2次元コード
法務省ウェブサイト「犯罪被害者の方々へ」2次元コード

【施策番号140】

イ 警察においては、その実情に応じ、英語、中国語等の外国語版の「被害者の手引」を作成・配布している。

被害者の手引
被害者の手引
被害者の手引(交通事故事件用)
被害者の手引(交通事故事件用)
被害者の手引(外国語版)
被害者の手引(外国語版)

【施策番号141】

ウ 法務省においては、外国人や視覚障害のある犯罪被害者等に対する情報提供を行うため、犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」について、日本語版に音声コードを導入したほか、英語版や点字版等を作成し、全国の検察庁や点字図書館等に配布している。また、全編に字幕を付した犯罪被害者等向けDVD「あなたの声を聴かせてください」により、聴覚障害のある犯罪被害者等に対しても情報提供を行っている。

(14) 刑事に関する手続等に関する情報提供の充実及び司法解剖に関する遺族への適切な説明等

【施策番号142】

都道府県警察においては、検視及び司法解剖に関する手続の内容等を盛り込んだパンフレットを作成・配布し、遺族に対する適切な説明や配慮に努めている。

また、検察庁においては、捜査や公判に及ぼす支障等にも配慮しつつ、犯罪被害者等に対し、検視及び司法解剖に関する情報提供を必要に応じて適切に行っている。

(15) 犯罪被害者等の意向を踏まえた証拠物件の適正な返却又は処分の推進

【施策番号143】

警察においては、検察庁と連携し、捜査上留置の必要がなくなった証拠物件の還付方法について犯罪被害者等と協議し、その意向を踏まえた上で迅速に返却又は処分をするよう努めている。

(16) 証拠品の適正な処分等

【施策番号144】

検察庁においては、犯罪被害者等以外の者から押収した証拠品が犯罪被害者等の所有に係る物である場合、犯罪被害者等に還付の希望の有無を確認しており、還付を希望するときは、被差押人又は差出人を説得し、当該証拠品が犯罪被害者等に還付されるよう努めている。被差押人等が犯罪被害者等への還付に応じない場合には、当該証拠品の処分に先立って犯罪被害者等と連絡を取るなどして、犯罪被害者等が所有権を行使する機会を確保している。

また、捜査や公判に及ぼす支障等にも配慮しつつ、証拠品の早期還付を含めた処分について慎重に検討し、必要に応じて還付の時期、方法等について犯罪被害者等に対して説明するなど、事案に即した適正な運用に努めている。

(17) 捜査に関する適切な情報提供等 

【施策番号145】

ア 警察庁においては、「被害者連絡実施要領」(令和5年3月16日付け警察庁刑事局長等通達別添)に基づき、被害者連絡が確実に実施され、犯罪被害者等に対する情報提供が適切に行われるよう、都道府県警察を指導している。

また、都道府県警察においては、交通事故被害者等の心情に配慮した適切な対応が行われるよう、交通事故に関する被害者連絡を総括する者として都道府県警察本部に設置された被害者連絡調整官等が、警察署の交通捜査員に対する指導・教育を行っている。

さらに、被害者連絡等を通じて把握した犯罪被害者等の置かれている状況やニーズのうち、民間被害者支援団体や他の行政機関と共有すべきものについては、犯罪被害者等の同意を得た上で情報提供を行うなど、関係機関・団体との連携を図っている。

被害者連絡制度の概要
被害者連絡制度の概要

【施策番号146】

イ 法務省・検察庁においては、会議や研修等の様々な機会を通じ、捜査に及ぼす支障等も考慮しつつ、必要に応じて捜査に関する情報を捜査段階から犯罪被害者等に提供するよう、検察官等への周知に努めている。

○ 海上保安庁においては、捜査や公判に支障を及ぼしたり、関係者の名誉等を不当に侵害したりするおそれのある場合を除き、捜査に関する情報を犯罪被害者等に提供している。

(18) 適正かつ緻密な交通事故事件捜査の一層の推進等

【施策番号147】

警察においては、都道府県警察本部の交通事故事件捜査担当課に設置された交通事故事件捜査統括官及び交通事故鑑識官が、飲酒運転、信号無視、著しい速度超過、妨害行為等が疑われる交通事故や事故原因の究明が困難な交通事故等について、組織的かつ重点的な捜査並びに正確かつ綿密な実況見分及び鑑識活動を行うとともに、交通事故事件捜査の基本である実況見分等に関する教育の充実を図っている。

警察庁においては、交通事故等の真実を知りたいという交通事故被害者等の要望に応えるため、交通事故鑑識官養成研修をはじめとする研修を実施し、交通捜査員の知識・技能の向上を図るとともに、客観的証拠に基づいた事故原因の究明を図るため、ドライブレコーダー等の映像記録や3Dレーザースキャナ等の活用を推進している。

交通鑑識
交通鑑識

(19) 交通事件に関する講義の充実

【施策番号148】

【施策番号115】参照

(20) 検察官に対する児童及び女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実

【施策番号149】

【施策番号114】参照

(21) 不起訴事案等に関する適切な情報提供

【施策番号150】

ア 法務省・検察庁においては、被害者保護の要請に配慮し、犯罪被害者等に対する不起訴記録の開示制度の弾力的な運用に努めている。

不起訴記録は非公開が原則であるが、交通事故に関する実況見分調書等については、裁判所からの送付嘱託又は弁護士会からの照会がなされた場合において、開示が相当と認められるときは、これに応じている。また、被害者参加制度の対象となる事件の被害者等については、当該事件の内容を知ること等を目的とする場合であっても、捜査や公判に支障を及ぼしたり関係者のプライバシーを侵害したりしない範囲で、実況見分調書等の弾力的な開示に努めている。さらに、被害者参加制度の対象とならない事件の被害者等についても、民事訴訟等において損害賠償請求権その他の権利を行使して被害を回復するため必要と認められる場合には、捜査や公判に支障を及ぼしたり関係者のプライバシーを侵害したりしない範囲で、実況見分調書等を開示している。

不起訴記録の弾力的な開示等については、会議や研修等の様々な機会を通じて、検察官等への周知に努めている(公判記録については、【施策番号130】参照)。

【施策番号151】

イ 検察庁においては、関係者の名誉等の保護の要請や捜査に及ぼす支障等にも配慮しつつ、検察官が犯罪被害者等の希望に応じ、不起訴処分の裁定前後の適切な時期に、当該処分の内容及び理由について十分な説明を行うよう努めている。また、法務省・検察庁においては、会議や研修等の様々な機会を通じて、犯罪被害者等の保護・支援等に関する講義を行うなどして、犯罪被害者等に対する不起訴処分に関する説明について、検察官等への周知に努めている。

(22) 検察審査会の起訴議決に拘束力を認める制度の運用への協力

【施策番号152】

検察庁においては、一定の場合に検察審査会の起訴議決に拘束力を認める制度が平成21年5月に施行されたことに伴い、起訴議決に至った事件について、裁判所が指定した弁護士に対する協力を行うなど、適切な運用に努めている。同年から令和4年までの間、検察審査会の起訴議決があり公訴の提起がなされて裁判が確定した事件の人員は11人である。

(23) 受刑者と犯罪被害者等との面会・信書の発受の適切な運用

【施策番号153】

法務省においては、平成18年に、それまで原則として親族に限定されていた受刑者の面会や信書の発受の相手方について、犯罪被害者等も認めることとする旨の指針を示している。その後、受刑者と犯罪被害者等との面会が実施されるなど、刑務所、拘置所等の刑事施設において、当該指針を適切に運用している。

(24) 加害者処遇における犯罪被害者等への配慮の充実 

【施策番号154】

ア 【施策番号101】参照

【施策番号155】

イ 法務省においては、少年に係る情報について、少年鑑別所や少年院において得られるものに加え、家庭裁判所、保護観察所等の関係機関や保護者から得られるものについても、その都度少年簿に記載し、保護処分の執行に活用している。平成19年12月からは、犯罪被害者等に関する事項について必要な情報の一層の収集及び記載ができるよう、少年鑑別所や少年院において犯罪被害者等に関する事項を把握した際にも少年簿に記載することとし、加害少年の処遇に携わる職員への情報共有がより確実に行われるよう努めている。

【施策番号156】

ウ 令和4年6月に成立した刑法等の一部を改正する法律により刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律及び少年院法が改正され、刑の執行段階等における犯罪被害者等の心情等の聴取・伝達制度が導入されることから、法務省においては、同制度の具体的な運用等について、外部有識者等を招へいして検討会を実施し、現在、必要な検討を行っている(トピックス「被害者の心情等を踏まえた加害者処遇の充実について」参照)。

【施策番号157】

エ 法務省においては、性犯罪者等の特定の犯罪的傾向を有する保護観察対象者に対する専門的処遇プログラムの内容の充実等を図るとともに、犯罪被害者等の視点に立って、自己の考え方等を見直させる課題を含む当該プログラムの受講を、保護観察における特別遵守事項として設定するなどして、適切に対応している。令和4年中に特別遵守事項により専門的処遇プログラムを開始した人員は、性犯罪再犯防止プログラムが792人(前年:731人)、暴力防止プログラムが229人(前年:204人)、飲酒運転防止プログラムが193人(前年:227人)であった(前年については、成人のみの数値である。)。また、保護観察対象者に対し、再び罪を犯さない決意を固めさせ、犯罪被害者等の意向等に配慮しながら誠実に対応するよう促すため、しょく罪指導を適切に実施している(しょく罪指導については、【施策番号104】参照)。

更生保護における各種制度
更生保護における各種制度

【施策番号158】

オ 保護観察所においては、犯罪被害者等の申出に応じて犯罪被害者等から被害に関する心情、犯罪被害者等の置かれている状況等を聴取し、保護観察対象者に伝達する制度(心情等伝達制度)において、当該対象者に被害の実情を直視させ、反省や悔悟の情を深めさせるための指導監督を徹底している。

令和4年中に同制度に基づいて心情等を伝達した件数は、170件であった。

また、法務省においては、「更生保護の犯罪被害者等施策の在り方を考える検討会」報告書等を踏まえ、犯罪被害者等による心情等伝達制度へのアクセスの向上等について検討を行っている。さらに、同年6月に成立した刑法等の一部を改正する法律により改正された更生保護法(以下「改正更生保護法」という。)では、保護観察対象者に対する伝達を前提とせずに、犯罪被害者等からの申出に応じて犯罪被害者等の心情等を聴取する制度を新たに設けることとされたことから、同制度の具体的な運用等について、現在、必要な検討を行っている(トピックス「被害者の心情等を踏まえた加害者処遇の充実について」参照)。

心情等伝達制度の運用状況
年次 心情等伝達件数
平成30年 185
令和元年 158
令和2年 155
令和3年 182
令和4年 170
提供:法務省

(25) 犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実

法務省においては、法制審議会からの諮問第103号に対する答申を踏まえ、更生保護における犯罪被害者等の思いに応えるための制度等として、次の事項について、改正更生保護法により法整備が図られたほか、その他の措置を講ずることとしている(トピックス「被害者の心情等を踏まえた加害者処遇の充実について」参照)。

【施策番号159】

ア 地方更生保護委員会及び保護観察所の長は、これまでも、保護観察等の措置をとるに当たっては、当該措置の内容に応じ、犯罪被害者等の被害に関する心情、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情を考慮しているところ、改正更生保護法にその旨が明記されたことを踏まえ、一層適正な運用を図ることとしている。

【施策番号160】

イ 改正更生保護法により、犯罪被害者等の被害の回復又は軽減に誠実に努めるよう、必要な指示等の措置をとることが保護観察対象者に対する指導監督の方法として加えられ、また、犯罪被害者等の被害を回復し、又は軽減するためにとった行動の状況を示す事実について、保護観察官又は保護司に申告又は当該事実に関する資料を提示することが、保護観察における遵守事項の類型に加えられた。

【施策番号161】

ウ 地方更生保護委員会においては、これまでも、犯罪被害者等の申出に基づき、仮釈放等を許すか否かに関する審理において、犯罪被害者等から加害者の仮釈放等に関する意見等を聴取していたところ、生活環境の調整及び仮釈放等の期間中の保護観察に関する意見についても併せて聴取することが改正更生保護法に明記されたことを踏まえ、仮釈放等審理はもとより、生活環境の調整やその後の保護観察処遇をより一層適正に実施することとしている。

また、令和4年4月以降、収容中の特定保護観察処分少年について新たに設けられた退院審理についても、本制度の対象としている。

【施策番号162】

エ 法務省においては、令和4年4月から、保護観察対象者に対し、具体的な賠償計画を立て、犯罪被害者等に対しての慰謝の措置を講ずることを生活行動指針として設定し、これに即して行動するよう保護観察官等が指導すること等を内容とする新たな運用指針に基づき指導の充実を図っている。

(26) 犯罪被害者等の意見を踏まえた仮釈放等審理の実施

【施策番号163】

地方更生保護委員会においては、犯罪被害者等の申出に基づき、仮釈放又は少年院からの仮退院を許すか否かに関する審理において、犯罪被害者等から加害者の仮釈放等に関する意見等を聴取し、仮釈放等の許否の判断に当たって当該意見等を考慮するほか、仮釈放等を許可する場合には、当該意見等を特別遵守事項の設定に当たり参考としている。

また、令和4年4月以降、収容中の特定保護観察処分少年について新たに設けられた退院審理についても、本制度の対象としている。同年中に意見等聴取制度に基づいて意見等を聴取した件数は、310件であった。

意見等聴取制度の運用状況
年次 意見等聴取件数
平成30年 313
令和元年 336
令和2年 311
令和3年 329
令和4年 310
提供:法務省

(27) 更生保護官署職員に対する研修等の充実

【施策番号164】

法務省においては、地方更生保護委員会の委員をはじめとする更生保護官署職員を対象とする研修において、犯罪被害者等の意見等を仮釈放等の審理に適切に反映させるための講義を実施しており、犯罪被害者等施策に関する内容のほか、犯罪被害者等の心情や置かれている状況等について理解の増進を図るため、その講義内容の充実を図っている。

(28) 矯正施設職員に対する研修等の充実

【施策番号165】

矯正研修所においては、新規採用職員、幹部要員等を対象とする研修において、「犯罪被害者の視点」等の科目を設けるとともに、犯罪被害者等の心情や置かれている状況等に関する理解の増進を図るため、犯罪被害者団体等の関係者を講師に招くなど、研修内容の充実を図っている。

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