警察庁 National Police Agency

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第2部 第4次犯罪被害者等基本計画に盛り込まれた具体的施策の進捗状況
第2章 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

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2 安全の確保(基本法第15条関係)

(1) 判決確定、保護処分決定後の加害者に関する情報の犯罪被害者等への提供の適正な運用及び拡充の検討

【施策番号72】

検察庁においては、事件の処理結果、公判期日、裁判結果等のほか、希望があるときは不起訴裁定の主文、不起訴裁定の理由の骨子等を犯罪被害者等に通知する、全国統一の被害者等通知制度を運用している。

平成19年12月には同制度を拡充し、犯罪被害者等の希望に応じ、判決確定後における加害者の処遇状況等について、検察庁、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所が連携して通知している。具体的には、加害者の受刑中の処遇状況に関する事項、仮釈放審理に関する事項、保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。平成26年4月以降は、加害者の受刑中の刑事施設における褒賞及び懲罰の状況についても通知することとした。

また、平成19年12月以降、犯罪被害者等の希望に応じ、保護処分決定後における加害者の処遇状況等について、少年鑑別所、少年院、地方更生保護委員会及び保護観察所が連携して通知している。具体的には、少年院送致処分又は保護観察処分を受けた加害少年について、少年院における処遇状況に関する事項、仮退院審理に関する事項、保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。平成26年4月以降は、加害者の少年院在院中における賞、懲戒及び問題行動指導の状況についても通知することとした。

保護観察所においては、保護観察中の処遇状況に関する事項の一つとして、従前は保護観察の終了予定年月のみを犯罪被害者等に通知していたが、同月以降は、これを年月日まで通知するほか、特別遵守事項に基づき実施する特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇プログラムの実施状況についても通知することとした。

法務省においては、犯罪被害者等への情報提供の在り方について検討を行い、令和4年4月以降、収容中の特定保護観察処分少年について、新たに設けられた退院審理に関する事項及び再開後の保護観察中の処遇状況に関する事項についても通知することとした。

さらに、令和5年12月以降、保護観察中の処遇状況に関する事項として、しょく罪指導プログラムの実施状況等を、犯罪被害者等に対し、新たに通知することとした。

また、保護観察の開始に関する事項を通知する際、心情等聴取・伝達制度を含む更生保護における犯罪被害者等施策に関するリーフレット等を添付するなどして、被害者等通知制度を利用する犯罪被害者等に心情等聴取・伝達制度を周知し、問合せに応じて同制度の説明を行っている。

同年中の被害者等通知制度による通知希望者数は8万4,520人であり、実際の通知者数(延べ数)は13万8,266人であった。

被害者等通知制度の運用状況
年次 通知希望者数 通知者数(延べ数)
平成30年 76,144 131,209
令和元年 76,590 132,443
令和2年 79,286 131,351
令和3年 80,894 133,987
令和4年 78,377 128,987
令和5年 84,520 138,266
提供:法務省

(2) 医療観察制度における加害者の処遇段階等に関する情報提供の適正な運用

【施策番号73】

保護観察所においては、平成30年7月から、医療観察事件の犯罪被害者等の希望に応じ、医療観察制度における加害者の処遇段階等に関する情報を提供している。具体的には、加害者の氏名、加害者の処遇段階(入院処遇、地域社会における処遇又は処遇終了)及びその開始又は終了年月日、地域社会における処遇中の保護観察所による加害者との接触状況等を情報提供している。令和6年1月からは、処遇段階の終了事由についても情報提供することとした。

また、従前は、情報提供を希望する申出があった場合に、その都度情報提供を行っていたが、同月からは、被害者等の希望に応じ、一度の申出により、申出時点から加害者の処遇が終了するまでの間、継続的に情報提供を行うこととした。

令和5年中に情報提供を行った件数は、29件(前年:22件)であった。

(3) 更生保護における犯罪被害者等施策の周知

【施策番号74】

法務省においては、更生保護における犯罪被害者等施策について、パンフレットやリーフレットを作成・活用するほか、同施策を利用した犯罪被害者等の体験談等を法務省ウェブサイト(https://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo08_00011.html)に掲載するなどして、同施策の広報や関係機関・団体等に対する周知に努めている。また、令和5年12月にパンフレットやリーフレット等を刷新したほか、令和6年4月には、更生保護における犯罪被害者等施策に関する動画を法務省ウェブサイト(https://www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo_victim.html)に掲載した。

(4) 被害者等通知制度の周知

【施策番号75】

検察庁において、検察官等が犯罪被害者等の事情聴取等を行ったときは、被害者等通知制度に基づく通知の希望の有無を確認するとともに、犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」を配布するなどして、同制度を周知している。

(5) 加害者に関する情報提供の適正な運用

【施策番号76】

警察においては、「再被害防止要綱」(令和6年3月28日付け警察庁刑事局長等通達別添)に基づき、同一の加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を再被害防止対象者として指定し、再被害防止のための関連情報の収集、関連情報の教示・連絡体制の確立と再被害防止対象者の要望の把握、自主警戒指導、警察による警戒措置、加害者への警告等の再被害防止措置を実施している。

これらの再被害防止措置の実施に当たっては、関係機関が緊密に連携しており、法務省においては、犯罪被害者等が加害者との接触回避等の措置を講じることにより再被害を避けることができるよう、平成13年10月から出所情報通知制度を運用している。具体的には、警察から再被害防止措置に必要となる受刑者の釈放等に関する情報(自由刑の執行終了による釈放予定と予定年月日・帰住予定地、仮釈放による釈放予定と予定年月日・指定帰住地等)の通報要請があった場合において、通報を行うのが相当であると認められるときは、当該情報を通報している。また、犯罪被害者等が希望する場合において、検察官が相当と認めるときは、犯罪被害者等に対し、受刑者の釈放前に釈放予定を通知している。

出所情報通知制度については、会議等において周知するとともに、実務担当者から犯罪被害者等に案内している。

令和5年中の出所情報通知制度による通知希望者数は517人であり、実際に通知を受けた者の数は432人であった。

出所情報通知制度の運用状況
年次 通知希望者数 通知者数
平成30年 523 416
令和元年 459 417
令和2年 460 413
令和3年 588 418
令和4年 570 410
令和5年 517 432
提供:法務省

(6) 警察における再被害防止措置の推進

【施策番号77】

ア 警察においては、16歳未満のこどもを被害者とした不同意わいせつ等の暴力的性犯罪で服役して出所した者について、法務省から情報提供を受け、各都道府県警察において、その所在確認を実施しているほか、必要に応じて当該出所者の同意を得て面談を行うなど、再犯防止に向けた措置を講じている。

平成17年6月から令和5年12月末までに法務省から情報提供を受けた対象者数は2,636人である。

【施策番号78】

イ 【施策番号76】参照

(7) 警察における保護対策の推進

【施策番号79】

警察においては、暴力団による犯罪の被害者や暴力団との関係を遮断しようとする事業者等に対する危害行為を防止し、その安全確保の徹底を図るため、総合力を発揮した保護対策を推進している。

具体的には、「保護対策実施要綱」(令和6年3月28日付け警察庁次長通達別添)に基づき指定した身辺警戒員に対する教育訓練を実施し、防犯カメラ等の必要な装備資機材を整備するとともに、保護対象者が警備業者の機械警備を利用する場合には、その費用の一部を補助することとしている。

(8) 保釈に関する犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

【施策番号80】

検察庁においては、加害者の保釈に関し、検察官が、犯罪被害者等からの事情聴取の結果等を踏まえ、その安全の確保を考慮して裁判所に意見を提出するとともに、保釈申請の結果を犯罪被害者等に連絡するなど、適切な対応に努めている。また、会議や研修等の様々な機会を通じ、犯罪被害者等に対する安全配慮についての検察官等への周知に努めている。

(9) 再被害の防止に向けた関係機関の連携の強化

【施策番号81】

ア 警察においては、配偶者等からの暴力事案等に関し、配偶者暴力相談支援センター等の関係機関・団体と連携した支援を行うなど、犯罪被害者等の視点に立った適切な対応を図っている。

また、人身取引(性的サービスや労働の強要等)事犯の被害者等に対して警察等への被害申告を呼び掛ける10か国語によるリーフレットを作成し、関係国の在京大使館、非政府組織等の犯罪被害者等の目に触れやすい場所等に広く配布するなどしている。

さらに、同リーフレットのほか、複数の被害事例を警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/hoan/jinshintorihiki/index.html)上に掲載するなどして、警察等への通報を呼び掛けている。これらのリーフレットや被害事例の作成に当たっては、非政府組織等と意見交換を重ね、犯罪被害者等の視点に立った分かりやすい内容とするよう努めている。加えて、人身取引事犯の被害者等の早期保護を図るため、平成19年10月から、警察庁の委託を受けた民間団体が市民から匿名で事件情報の通報を受け付け、これを警察に提供して捜査等に役立てる匿名通報事業を実施している(【施策番号184】参照)。

なお、人身取引事犯の検挙状況等については、「令和5年における風俗営業等の現状と風俗関係事犯等の取締り状況について」を警察庁ウェブサイト(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/hoan/R6kouaniinnkaihoukoku3.pdf)上に掲載している。

児童虐待事案については、街頭補導、少年相談等のあらゆる警察活動を通じ、被害の早期発見及び児童相談所への確実な通告に努めている。また、平成22年2月から匿名通報事業の対象に児童虐待事案を追加しているほか、児童相談所長又は都道府県知事による児童の安全確認、児童の一時保護及び立入調査を円滑に実施するための援助や要保護児童対策地域協議会等への参画等、児童相談所、学校等の関係機関との連携強化に努めている。

厚生労働省においては、配偶者等からの暴力事案の被害者、人身取引事犯の被害者等の保護・支援に関し、婦人相談所と児童相談所、警察等の関係機関との緊密な連携が不可欠であることを踏まえ、当該連携の充実を図っている。特に、配偶者等からの暴力事案の被害者の保護・支援については、関係機関相互の認識の共有・調整が不可欠であることから、婦人相談所においては、警察、福祉事務所等の関係機関との連携を図るため、連絡会議や事例検討会議を開催するとともに、広報・啓発活動も行っている。

令和3年度から、婦人相談員を配置している市区における婦人相談所等の都道府県の関係機関や、市区の関係機関、民間団体の参画による横断的な連携・協働のためのネットワーク(協議会)の構築・運営を支援する「困難な問題を抱える女性支援連携強化モデル事業」を実施している。

また、こども家庭庁においては、児童相談所において、触法少年・ぐ犯少年の通告、棄児・迷子・虐待を受けたこども等の要保護児童の通告等について、警察との連携を図っている。児童虐待事案については、「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」(平成30年7月20日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定。以下「緊急総合対策」という。)に基づき、児童相談所と警察との間で共有する情報を明確化し、情報共有の充実・強化を図るなど、児童虐待事案への対応における連携を強化している。

【施策番号82】

イ 警察庁及び文部科学省においては、警察と学校等関係機関の通報連絡体制や要保護児童対策地域協議会の活用、加害少年やその保護者に対する指導等の一層の充実を図り、いじめ等の問題行動による再被害の防止に努めている。

また、警察においては、いじめ等の学校における問題行動等への対応等を行うため、退職した警察官等をスクールサポーターとして警察署等に配置しており、令和6年4月現在、44都道府県で約850人を配置しているほか、非行や犯罪被害等の個々の少年が抱える問題に応じた的確な対応を行うため、学校、警察、児童相談所等の担当者から成る少年サポートチームを編成し、それぞれの専門分野に応じた役割分担の下、少年に対する指導・助言を行っている。令和5年度も、同チームの効果的な運用等を図るため、警察及び関係機関・団体の実務担当者を集めた協議会を開催した。

文部科学省においては、学校と警察が連携して児童生徒の問題行動に対応できるよう、教育委員会に対し、生徒指導担当者を対象とした会議や通知等を通じて連携体制の整備を促している。

また、「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」(平成17年2月25日付け厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)を踏まえ、虐待を受けているこどもをはじめとする支援対象児童等の適切な保護を図るための関係機関との連携について、教育委員会等に周知している。

少年サポートチーム
少年サポートチーム

(10) 犯罪被害者等に関する情報の保護

【施策番号83】

ア 検察庁においては、裁判所の決定があった場合、被害者の氏名及び住所その他の被害者が特定されることとなる事項を公開の法廷で明らかにしない制度や、検察官が、証拠開示の際に、弁護人に対し、被害者の氏名又は住居を被告人に知らせてはならない旨の条件を付すなどの措置をとることができる制度等について円滑な運用を図っている。また、法務省・検察庁においては、会議や研修等の様々な機会を通じ、検察官等への周知に努めている。なお、令和5年5月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律により、犯罪被害者等の情報を一層保護するための規定が整備された(トピックス「刑事手続において犯罪被害者等を保護するための近時の法改正について」参照)。

更生保護官署においても、犯罪被害者等に関する情報を適切に管理するよう、会議や研修等の機会を通じて周知徹底を図っている。

【施策番号84】

イ 検察庁においては、ストーカー事案に関し、事案に応じた適切な対応を行うとともに、捜査・公判の各段階において、犯罪被害者等に関する情報の保護に配慮した適切な対応に努めている。また、法務省・検察庁においては、会議や研修等の様々な機会を通じ、検察官等への周知に努めている。

【施策番号85】

ウ 法テラスにおいては、常勤弁護士を含む職員に対し、個人情報保護に関する研修を実施するなどして、犯罪被害者等の個人情報の取扱いに十分配慮するよう指導している。

【施策番号86】

エ 総務省においては、平成16年に関係省令等を改正し、ストーカー事案及び配偶者等からの暴力事案の被害を申し出た者のうち、支援の必要性が確認された者(以下「支援措置対象者」という。)の住民票の写しの交付等を制限する支援措置を講じた。また、平成18年6月に成立した住民基本台帳法の一部を改正する法律により、犯罪被害者等の保護の観点も含めた住民基本台帳の閲覧制度等の抜本的な見直しを行い、何人でも住民基本台帳の閲覧を請求できる従前の制度を廃止し、個人情報保護に配慮した制度として再構築した。平成20年には、同様の観点から住民基本台帳法を再度改正し、住民票の写し等の交付制度の見直しを行った。平成24年には、関係通知を改正し、支援措置の対象として、ストーカー行為及び配偶者等からの暴力等に加え、児童虐待その他これらに準ずる行為を追加した。令和4年には、支援措置の申出者が申出を行う市区町村以外の市区町村に所在する固定資産を所有している場合の、市区町村間の連携等に係る留意点を示した。

選挙人名簿の抄本の閲覧制度については、平成29年に、それ以前の関係通知の内容を踏まえ、支援措置対象者の申出の相手となる者から支援措置対象者が記載されている選挙人名簿の抄本の閲覧の申出があった場合には拒否すること並びに当該相手となる者以外の第三者から選挙人名簿の抄本の閲覧の申出があった場合であっても、当該申出に係る選挙人が支援措置対象者であるときは、閲覧を拒むに足りる相当な理由があると認め、閲覧を拒否できること等、一層の厳格な取扱いについて通知した。

令和3年10月に行われた衆議院議員総選挙、令和4年7月に行われた参議院議員通常選挙及び令和5年4月に行われた統一地方選挙に際しても、支援措置対象者が記載されている選挙人名簿の抄本の閲覧については、平成29年の通知を踏まえて運用を行うよう各都道府県選挙管理委員会へ通知しており、選挙人名簿の抄本の閲覧制度の厳格な取扱いについて周知徹底を図っている。

【施策番号87】

オ 法務省においては、平成24年から、戸籍事務について、戸籍法第48条第2項の規定に基づき、支援措置対象者の住所、電話番号等の記載がある届書等の閲覧請求又は当該書類に記載された事項に関する証明書の交付請求がなされた場合であって、支援措置対象者から市区町村長に対してその住所等が覚知されないよう配慮を求める旨の申入れがなされ、かつ、住民基本台帳事務における支援措置が講じられているときは、同事務における支援期間が満了するまでの間、支援措置対象者の住所等が覚知されないよう適宜の方法でマスキングを施した上で、閲覧請求又は交付請求に応じることとしている。平成26年からは、支援措置対象者の保護の観点から、申入れを行った支援措置対象者から再度申入れを行う意思がないことを確認できるまでの間は、同事務における支援期間が満了していないものとみなして、マスキングを施した上で、閲覧請求又は交付請求に応じることとしている。令和6年3月から開始された、戸籍法第120条の6の規定に基づいて市区町村において発行される届書等情報内容証明書についても、同様の取扱いとしている。

不動産登記事務については、令和3年4月に成立した民法等の一部を改正する法律により不動産登記法の一部が改正され、登記所に保管されている登記申請書及びその附属書類については、正当な理由がある場合に、正当な理由があると認められる部分に限って閲覧が認められることとなった(令和5年4月施行)。

また、登記記録に記録されている自然人の住所が明らかにされることにより、人の生命・身体に危害を及ぼすおそれがある場合又はこれに準ずる程度に心身に有害な影響を及ぼすおそれがある場合において、その者からの申出があったときは、登記事項証明書等にその住所に代わる事項が記載されることとなった(不動産登記法第119 条第6項。令和6年4月施行)。

加えて、供託事務について、平成25年から、支援措置対象者から被害の相談に関する公的証明書をもって供託官に対して申出があった場合には、支援措置対象者が供託物払渡請求書に記載する住所について、都道府県までの概括的な記載にとどめることを認める取扱いとするとともに、供託物払渡請求がなされた後に当該申出がなされた場合であって、利害関係人から供託物払渡請求書の閲覧請求がなされたときは、支援措置対象者の住所等が覚知されないようマスキングを施した上で閲覧請求に応じることとしている。

【施策番号88】

カ 国土交通省においては、登録事項等証明書の交付事務を行っている運輸支局等に対し、「登録事項等証明書の交付請求に係る配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための取扱いについて」(平成26年7月11日付け国土交通省自動車局自動車情報課長通達)により、軽自動車検査協会に対し、「検査記録事項等証明書交付請求に係る配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の保護のための取扱いについて」(平成27年1月26日付け国土交通省自動車局整備課長通達)により、それぞれ犯罪被害者等に関する情報の保護に係る手続の厳格な運用を示達するとともに、犯罪被害者等に関する情報管理の徹底を図っている。犯罪被害者等からの当該通知に基づく取扱いの実施に係る申請件数は、令和6年3月末時点、運輸支局等が686件、軽自動車検査協会が392件であった。

また、平成26年9月から、登録事項等証明書に関し、自動車登録検査業務電子情報処理システム(MOTAS)において出力制限を実施することができるようにしており、犯罪被害者等に関する情報管理の一層の徹底を図っている。

さらに、登録官研修等において、犯罪被害者等の保護のための取扱い及び個人情報保護の重要性に関する研修を実施している。その際、被害相談窓口において、当該取扱いを犯罪被害者等に周知してもらうため、当該窓口を所管する相談機関等と平素から緊密に連携するよう指導している。

【施策番号89】

キ 警察庁においては、犯罪被害者等の実名発表・匿名発表について引き続き適切な発表がなされるよう、都道府県警察の広報担当者が参加する会議等の機会を通じて都道府県警察を指導している。

(11) 一時保護場所の環境改善等

【施策番号90】

【施策番号25】参照

(12) 被害直後及び中期的な居住場所の確保

【施策番号91】

【施策番号26】参照

(13) 児童虐待の防止及び早期発見・早期対応のための体制整備等

【施策番号92】

ア 令和元年6月に成立した児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律により児童虐待の防止等に関する法律が改正され、国及び地方公共団体は、関係地方公共団体相互間並びに市区町村、児童相談所、福祉事務所、配偶者暴力相談支援センター、学校及び医療機関の間の連携強化のための体制の整備に努めなければならないと規定され、児童相談所においては、配偶者暴力相談支援センター等と連携をさらに強化し、児童心理司等によるこどもに対する精神的ケア等の支援を行っている。

一方、児童虐待の相談対応件数の増加等、子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化している状況等を踏まえ、必要な体制強化やサービスの充実を図るため、令和4年6月に成立した児童福祉法等の一部を改正する法律により改正された児童福祉法及び母子保健法において、こどもや家庭に対し包括的な相談支援等を行う「こども家庭センター」や訪問による家事支援を行う事業等が創設された。

内閣府においては、配偶者等からの暴力事案がそのこどもにも悪影響を及ぼすことに鑑み、こどもに対する精神的ケア等の支援の充実を図るとともに、配偶者暴力相談支援センター等の配偶者等からの暴力事案への対応機関と児童相談所等の児童虐待への対応機関との連携・協力を推進している。令和2年度から、「性暴力・配偶者暴力被害者等支援交付金」(配偶者暴力被害者等支援調査研究事業)を実施して、民間シェルターがDVや児童虐待の被害親子を受け入れる体制整備や心理専門職によるメンタル面のケア等を支援している。また、配偶者暴力の被害者に対する相談・支援に従事する官民の関係者を対象としてオンライン研修教材を作成・提供し、研修項目に児童虐待に関連した項目を設けるとともに、児童相談所等の児童虐待対応の関連部署職員も研修対象者としている(トピックス「改正配偶者暴力防止法の施行について」参照)。

【施策番号93】

イ 警察においては、児童虐待の早期発見等に資する教育訓練を徹底し、児童虐待担当者の専門的知識・技能の向上に努めるとともに、都道府県警察本部に「児童虐待対策官」を設置し、児童相談所等の関係機関との連携や児童虐待の疑いがある事案等を認知した際の初動対応、被害児童の心理を踏まえた事情聴取等の児童虐待に係る専門的対応に関する指導教養等に従事させるなど、児童虐待への対応力の一層の強化を図っている。

【施策番号94】

ウ 法テラスでは、全国の地方事務所において、児童虐待の被害児童又は被害を受けるおそれのある児童に対し、必要に応じて、弁護士による法律相談を実施している(DV等被害者法律相談援助)。

この取組を周知するため、各地の弁護士会、各地方公共団体の所管課、児童相談所等の関係機関に対し、業務説明を行うとともに、広報用のポスターやポケットカードを作成し、小中学校や関係機関等へ配布している(令和5年度は小中学校等宛てにポスター1万1,196枚配布)。さらに、児童虐待をテーマにした制度周知用アニメーション動画を法テラス公式YouTube(https://www.youtube.com/channel/UC0PpTUQPriW83GX8CFONJEg)へ掲載するとともに、動画広告としても放映するなどしている。

児童虐待をテーマにした制度周知用アニメーション動画
児童虐待をテーマにした制度周知用アニメーション動画
2次元コード
2次元コード
児童虐待をテーマにしたDV等被害者法律相談援助広報用ポスター
児童虐待をテーマにしたDV等被害者法律相談援助広報用ポスター
同ポスター添付のポケットカード
同ポスター添付のポケットカード
同ポスター添付のポケットカード

【施策番号95】

エ 文部科学省においては、緊急総合対策を踏まえ、<1>学校における児童虐待事案の早期発見に向けた取組及び通告、<2>関係機関との連携強化のための情報共有、<3>児童虐待防止に係る研修の実施等の積極的な対応等について、都道府県教育委員会等に通知した。

また、平成31年2月には、千葉県野田市における小学4年生死亡事案の発生を受け、文部科学副大臣を主査とする省内タスクフォースを設置して再発防止策を検討するとともに、「「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」の更なる徹底・強化について」(平成31年2月8日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)を踏まえ、児童虐待事案に係る情報の管理及び関係機関の連携に関する新たなルールについて、都道府県教育委員会等に通知した。

さらに、令和元年5月には、学校・教育委員会等が児童虐待事案への対応に当たって留意すべき事項をまとめた「学校・教育委員会等向け虐待対応の手引き」を作成・公表し、令和2年6月に児童福祉法等の一部改正等を踏まえ、改訂を実施した。

このほか、児童生徒の相談をいつでも受けることができるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用等、教育相談体制の整備を支援している。

【施策番号96】

オ 文部科学省においては、地域における児童虐待事案の未然防止等に資する取組として、子育てに関する悩みや不安を抱えながら、自ら学びの場や相談の場等にアクセスすることが困難な家庭等に配慮しつつ、地域の多様な人材を活用した家庭教育支援チーム等による保護者に対する学習機会や情報の提供、相談対応等、地域の実情に応じた家庭教育支援の取組を推進している。令和5年度におけるチーム数は1,124(前年度:1,031)である。

また、地域において児童虐待事案に早期に対応できるよう、地域における家庭教育支援関係者や放課後子供教室等の地域学校協働活動関係者等が児童虐待事案への対応に当たって留意すべき事項をまとめた「児童虐待への対応のポイント~見守り・気づき・つなぐために~」(令和元年8月作成、令和5年10月一部改訂)を活用するよう周知している。

【施策番号97】

カ こども家庭庁においては、緊急総合対策に基づき、こどもの安全確認ができない場合における立入調査の実施等、全てのこどもを守るためのルールの徹底等に取り組んでいる。また、緊急総合対策を受けて決定された「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(平成30年12月18日児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決定)では、令和4年度末までに児童相談所の児童福祉司を2,020人程度増員することとしていたところ、令和3年度末までに概ね達成したことから、令和4年度は更に505人増員を目標とし、同年度内に5,783人の体制となり、この目標も達成した。令和5年度以降の児童相談所の体制については、「児童虐待防止対策の更なる推進について」(令和4年9月2日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)に基づき、児童相談所や市区町村の体制強化を計画的に進めていくため、「新たな児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(令和4年12月15日児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決定)を策定し、令和6年度末までに児童福祉司を約6,850人体制とすること等を目標とした。

また、虐待を受けたと思われるこどもを発見した際等にためらわず児童相談所に通告・相談できるよう、児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」を運用している。これまで、児童相談所に電話がつながるまでの時間を短縮するため、平成28年4月に音声ガイダンスの短縮を行うとともに、平成30年2月には携帯電話等からの着信についてコールセンター方式を導入するなどの運用改善を進めてきたところ、令和元年12月から、従来の「児童相談所全国共通ダイヤル」の名称を「児童相談所虐待対応ダイヤル」に変更するとともに、新たに「児童相談所相談専用ダイヤル」を開設した。その上で、「児童相談所虐待対応ダイヤル」及び「児童相談所相談専用ダイヤル」の通話料の無料化を順次行い、利便性の向上を図った。

さらに、こどもや保護者にとって、より相談しやすい環境を整備し、児童虐待の未然防止や早期発見につなげることを目的とし、電話による相談だけでなく、SNSによる相談を受け付ける仕組みを構築し、令和5年2月より「親子のための相談LINE」の全国運用を開始した。

親子のための相談LINE
親子のための相談LINE
児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」
児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」

【施策番号98】

キ 厚生労働省においては、令和2年度から、婦人相談所における、DV被害者等が同伴するこどもへの支援の充実を図るため、児童相談所等の関係機関と連携するための「児童虐待防止コーディネーター」を婦人相談所に配置するための補助を実施している。令和5年度は10都府県で実施した。

(14) 児童虐待防止のための児童の死亡事例等の検証の実施

【施策番号99】

こども家庭審議会児童虐待防止対策部会の下に設置されている児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会においては、平成16年から、児童虐待による死亡事例等について分析・検証し、当該事例等から明らかになった問題や課題への具体的な対応策を、提言として毎年取りまとめている。令和5年9月には、「こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第19次報告)」を取りまとめた。

第19次報告においては、心中以外の虐待死(50例・50人)中、0歳児が最も多く(24人)、妊娠期・周産期における問題として「妊婦健康診査未受診」及び「予期しない妊娠/計画していない妊娠」が高い割合を占めること等が特徴として挙げられた。

(15) 再被害の防止に資する教育の実施等

【施策番号100】

ア 内閣府においては、配偶者等からの暴力による被害者支援の一環として、加害者に働き掛けることで加害者に自らの暴力を自覚させる加害者プログラムについて、地方公共団体の協力を得て行った試行実施の成果や課題等を踏まえ、令和5年5月、「配偶者暴力加害者プログラム実施のための留意事項」を整理し、地方公共団体に配布した。これを活用した取組の全国的な展開に向けて、被害者支援を行う地方公共団体や民間団体の関係者等に対し、その内容の普及を行っている。

【施策番号101】

イ 法務省においては、矯正施設に収容されている加害者のうち必要な者に対し、「被害者の視点を取り入れた教育」の受講を義務付けている。同教育は、被収容者に対し、自らの犯した罪と向き合い、その大きさや犯罪被害者等の心情等を認識させ、犯罪被害者等に誠意を持って対応するとともに、再び罪を犯さない決意を固めさせることを目標としており、犯罪被害者等のゲストスピーカーによる直接講話を実施するなど、犯罪被害者等の心情等の理解を深め、謝罪や被害弁償等の具体的な行動を促す指導に努めている。刑事施設においては、令和2年度に外部有識者を招いた「刑事施設における「被害者の視点を取り入れた教育」検討会」を開催して、標準プログラムの改訂方針等について検討を行い、令和3年度から同教育の改訂作業を進め、令和5年12月からは、入所から出所まで継続した指導を実施できるように改訂したプログラムによる指導を開始した。また、同月から、被害者等の被害に関する心情、被害者等の置かれている状況及び聴取した心情等を考慮して策定した処遇要領に基づく矯正処遇を行うこととなった。刑事施設における同年度の同教育の受講開始人員は481人(前年度:530人)であった。また、少年院における同年度の同教育の受講修了人員は45人(前年度:41人)であった。

加えて、矯正施設においては、家庭裁判所や検察庁等から送付される処遇上の参考事項調査票等に記載されている犯罪被害者等の心情等の情報について、被収容者に対する指導に活用しているほか、同年度から「被害者の視点を取り入れた教育」に係る効果検証の在り方に関する検討を開始した。

(16) 再被害の防止に資する適切な加害者処遇

【施策番号102】

ア 法務省においては、性犯罪者、ストーカー事案等の加害者である保護観察対象者について、事案に応じ、違反した場合に仮釈放の取消し等の不良措置がとられることを前提に、個々の保護観察対象者ごとに定められる特別遵守事項として、被害者等への接触の禁止等の事項を設定し、これを遵守するよう指導監督している。

また、性犯罪者等の特定の犯罪的傾向を有する保護観察対象者に対し、専門的処遇プログラムの受講を特別遵守事項として設定し、これを遵守するよう指導監督している。

さらに、事案に応じ、再被害の防止に資する生活行動指針を設定し、これに即して行動するよう指導監督している。

仮釈放者、少年院仮退院者等については、仮釈放等審理において、犯罪被害者等から聴取した意見等を踏まえ、一層適切に特別遵守事項を設定している。また、令和4年4月以降、収容中の特定保護観察処分少年について新たに設けられた退院審理についても、本制度の対象としている。

【施策番号103】

イ 警察においては、ストーカー事案や配偶者等からの暴力事案等の加害者として刑事施設に収容され仮釈放となった者及び保護観察付執行猶予者について、保護観察所と緊密かつ継続的に連携し、これらの者の特異動向等を双方で迅速に把握した上で、必要な措置を講じている。

(法務省における取組については、【施策番号102】参照

【施策番号104】

ウ 法務省においては、保護観察対象者に対し、再び罪を犯さない決意を固めさせるとともに、犯罪被害者等の意向等に配慮しながら誠実に対応するよう促すため、一定の重大な罪を犯した保護観察対象者に対し、平成19年から、しょく罪指導のためのプログラムを策定し、全国の保護観察所において指導を行ってきた。令和4年10月からは、同プログラムの内容を充実させるとともに、実施対象を拡大した改訂後のプログラムにより、次のとおり個別指導を行っている。

(ア) 自己の犯罪行為を振り返らせ、犯した罪の重さを認識させるとともに、加害者が負うべき責任について考えさせる。

(イ) 犯罪被害者等の心情や置かれている状況等を理解させる。

(ウ) 犯罪被害者等に対する謝罪及び被害弁償に関する対応の状況や考えについて整理させる。

(エ) 具体的なしょく罪計画を策定させる。

令和5年にしょく罪指導プログラムの実施が終了した人員は1,502人(前年:373人)であった。

(17) 再被害防止のための安全確保方策の検討

【施策番号105】

警察庁においては、関係府省庁等と連携し、ストーカー事案及び配偶者等からの暴力事案の被害者が同一の加害者から再被害を受けている実態の把握等を目的として、令和5年12月、「犯罪被害類型別等調査」を実施した(トピックス「令和5年度犯罪被害類型別等調査」参照)。

内閣府においては、配偶者等からの暴力の実態の把握等を目的として、令和5年度に「男女間における暴力に関する調査」において、配偶者からの暴力の被害経験の有無(回数を含む。)等について調査した。

法テラスにおいては、各地の弁護士会、児童相談所等の関係機関と連携し、児童虐待の被害児童や被害を受けるおそれのある児童を速やかに法律相談につなぐことができるよう体制の整備に努めている。

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