第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

2 国民の身近で発生する犯罪

(1)国民の身近で発生する犯罪の認知・検挙状況

① ひったくり

 ひったくりの認知件数は、平成3年から14年にかけて増加を続けていたが、15年から減少に転じ、23年中は1万2,476件と前年より2,083件(14.3%)減少した。また、検挙件数は6,327件と前年より4件(0.1%)増加したが、検挙人員は1,098人と前年より93人(7.8%)減少した。検挙人員の52.0%は少年である。
 
図2-15 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
図2-15 ひったくりの認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
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② 万引き

 万引きの認知件数は、23年中は14万1,564件と前年より6,807件(4.6%)減少しているが、刑法犯認知件数が平成15年以降9年連続で減少する中、平成14年以降14万件以上で推移し、高止まりの状況にある。23年中の検挙件数は10万4,516件、検挙人員は10万1,340人とそれぞれ前年より3,168件(2.9%)、3,464人(3.3%)減少した。
 
図2-16 万引きの認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
図2-16 万引きの認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
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③ 侵入窃盗

 侵入窃盗の認知件数は、10年から14年にかけて増加を続けていたが、15年から減少に転じ、23年中は12万6,079件と前年より1万473件(7.7%)減少した。検挙件数及び検挙人員は16年以降減少しており、23年中の検挙件数は6万5,272件、検挙人員は1万586人とそれぞれ前年より5,035件(7.2%)、180人(1.7%)減少した。
 
図2-17 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
図2-17 侵入窃盗の認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
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④ 侵入強盗

 侵入強盗の認知件数は、10年から15年にかけて急増した後、16年から減少傾向にあり、23年中は1,489件と前年より191件(11.4%)減少した。検挙件数及び検挙人員は17年から減少傾向にあり、23年中は検挙件数995件、検挙人員886人とそれぞれ前年より99件(9.0%)、71人(7.4%)減少した。
 このうち、23年中における住宅を対象とした強盗事件の認知件数は273件と前年より63件(18.8%)減少したほか、コンビニエンスストア等の店舗を対象とした強盗事件の認知件数も1,074件と前年より129件(10.7%)減少した。
 
図2-18 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
図2-18 侵入強盗の認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
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⑤ 自動車盗

 自動車盗の認知件数は、11年から13年にかけて急増した後、16年から減少に転じたが、23年中は2万4,928件と前年より1,153件(4.8%)増加した。また、検挙件数は8,377件と前年より56件(0.7%)減少したが、検挙人員は1,856人と前年より19人(1.0%)増加した。
 
図2-19 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
図2-19 自動車盗の認知・検挙状況の推移(平成14~23年)
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(2)地域の犯罪情勢に即した犯罪抑止対策

 犯罪情勢や社会構造の変化に伴って、警察活動を取り巻く環境が非常に複雑になってきていることなどを背景に、国民の警察に対する要請が多様化している。これに応えるため、警察では、地域の犯罪情勢に即して警察活動を戦略的に展開し、地域住民に不安感を生じさせる身近な事案や事件に迅速かつ的確に対応することを目的とした、以下のような内容を大きな柱とする総合的な犯罪抑止対策を推進している。

① 犯罪抑止計画の策定

 地域の犯罪情勢に即した効果的な犯罪抑止対策とするため、警察署ごとに、相談、警ら、捜査その他の警察活動により収集した情報等を分析し、その管轄区域において重点的に抑止すべき種類の犯罪を定め、犯罪抑止計画を策定することとしており、また、警察本部においても、全国的な犯罪情勢を勘案し、関係する警察本部及び警察署が連携して広域的な抑止活動を行う必要がある種類の犯罪を定めて、犯罪抑止計画を策定することとしている。

② 地域住民等との連携協働

 治安上の脅威に対して十分な耐性のある地域社会を構築するためには、地域住民、事業者、関係団体、自治体等と連携協働した取組が必要不可欠である。したがって、犯罪抑止計画には、犯罪抑止に係る地域住民等の役割や、警察が行う地域住民等に対する地域の犯罪情勢等の情報提供等の支援について、できる限り具体的に定めることとし、また、地域住民等との連携協働を図る際には、既に警察と協力関係にある者・団体にのみ依存することなく、より広範な連携協働を目指すこととしている。
 
防犯情報を提供する電子メールに係る広報
防犯情報を提供する電子メールに係る広報
 
地域住民による防犯パトロール
地域住民による防犯パトロール

(3)個別の犯罪類型に応じた抑止対策

① ひったくり対策

 警察では、ひったくり事件の発生状況や手口を分析して、ひったくりの被害防止に効果のあるかばんの携行方法や通行方法等について指導啓発を行うほか、防犯協会等と協力し、自転車の前かごに取り付けるひったくり防止カバー等の普及を促進するなどしている。

② 万引き対策

 警察では、“たかが万引き”といった風潮を一掃し、万引きを許さない社会気運の醸成や規範意識の向上を図るため、社会を挙げた万引き対策を推進している。警察庁では、この取組を全国的に展開するため、22年10月、関係機関・団体と「万引き防止官民合同会議」を開催するとともに、被害の届出に伴う被害者の負担軽減を図るため、万引きに係る捜査書類を簡素化した。また、書籍やCD・DVD等の換金を目的とする万引きの被害が増加していることを受け、23年4月から、古物商に対して、安価で買い受ける場合であっても本人確認義務を課すこととするなど、万引き防止対策を強化している。
 
図2-20 万引き防止のための防犯責任者養成講座
図2-20 万引き防止のための防犯責任者養成講座

③ 侵入犯罪対策

 警察庁、経済産業省、国土交通省及び建物部品関連の民間団体から成る「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」では、16年4月から、侵入までに5分以上の時間を要するなど一定の防犯性能があると評価した建物部品(CP部品)を掲載した「防犯性能の高い建物部品目録」をウェブサイトで公表するなどして、CP部品の普及に努めている。24年3月末現在で17種類3,157品目が目録に掲載されている。
 さらに、警察庁のウェブサイトに「住まいる防犯110番」(http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki26/index.html)を開設し、侵入犯罪対策の広報を推進している。
 
CPマーク CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの
CPマーク CP部品だけが表示できる共通標章でCrime Prevention(防犯)の頭文字を図案化したもの
 
住まいる防犯110番
住まいる防犯110番

④ 店舗対象の強盗対策

 コンビニエンスストアや金融機関等を対象とした強盗対策として、警察では、防犯体制、現金管理の方法、店舗等の構造、防犯設備等に関して基準を定め、各店舗・団体等に対し指導を行うとともに警察官の巡回や機会を捉えた防犯訓練等を実施している。また、大手飲食チェーン店舗を対象とした強盗事件が夜間に多発したことを受けて、運営会社に対し防犯対策の強化を要請したほか、各店舗における複数勤務体制の実施、店舗等の構造、防犯設備等に関し、各店舗に対する防犯診断・防犯指導等を継続実施している。
 
大手飲食チェーン店舗に対する防犯指導
大手飲食チェーン店舗に対する防犯指導

⑤ 自動車盗対策

 警察庁、財務省、経済産業省、国土交通省及び民間18団体から成る「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」では、「自動車盗難等防止行動計画」(平成14年1月策定、22年1月改定)に基づき、イモビライザ等を備えた盗難防止性能の高い自動車の普及、使用者に対する防犯指導及び広報啓発、盗難自動車の不正輸出防止対策等を推進している。
 
自動車盗難防止の広報ポスター
自動車盗難防止の広報ポスター

 第1節 犯罪情勢とその対策

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