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JAFICと国際機関等の連携

1 FATF

1 FATFとは

FATF(Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会)は、マネー・ローンダリング対策における国際協調を推進するために、1989年のアルシュ・サミット経済宣言を受けて設立された政府間会合であり、2001年9月の米国同時多発テロ事件発生以降は、テロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進にも指導的役割を果たしています。

2 FATF参加国等

FATFへは、2024年6月末現在、OECD加盟国を中心に、以下の38の国・地域及び2つの地域機関が参加しています。

我が国は、FATFの設立当初からのメンバーであり、1998年7月から1999年6月までは議長国も務めました。

アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベルギー、ブラジル
カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ
香港、アイスランド、インド、インドネシア、アイルランド、イスラエル
イタリア、日本、ルクセンブルク、マレーシア、メキシコ、オランダ
ノルウェー、ポルトガル、ロシア、シンガポール、南アフリカ、韓国
ニュージーランド、サウジアラビア、スペイン、スウェーデン、スイス
トルコ、英国、米国、欧州委員会(EC)、湾岸協力理事会(GCC)

3 FATFの主な活動内容

FATFの主な活動内容は以下のとおりです。

  1. ① マネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策に関する国際基準(FATF勧告)の策定及び見直し
  2. ② FATF参加国・地域相互間におけるFATF勧告の遵守状況の監視(相互審査)
  3. ③ FATF非参加国・地域におけるFATF勧告遵守の推奨
  4. ④ マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の手口及び傾向に関する研究
  1. ※ ①のFATF勧告と②の相互審査については、次の項目で詳しく説明します。

4 FATF勧告について

(1)「40の勧告」(The Forty Recommendations)

FATFは、1990年に、マネー・ローンダリング対策のために各国が法執行、刑事法制及び金融規制の各分野でとるべき措置を「40の勧告」としてまとめ、提言しました。

その後、FATFは、1996年に、疑わしい取引の届出制度の義務づけ等を含む改訂を行い、さらに、その後の世界的なマネー・ローンダリングの方法・技術の巧妙化・複雑化を踏まえ、その対策を向上させるため、2001年から、各国の民間部門等の協力も得つつ、新たな見直し作業を開始し、2003年6月には、再改訂された「40の勧告」を発出しました。

再改訂に際して、「40の勧告」に新たに盛り込まれた主な点は以下のとおりです。

  • マネー・ローンダリングの罪として処罰すべき範囲の拡大及び明確化
  • 本人確認等顧客管理の徹底
  • 法人形態を利用したマネー・ローンダリングへの対応
  • 非金融業者(不動産業者、宝石商・貴金属商等)・職業専門家(法律家、会計士等)へのFATF勧告の適用
  • FIU、監督当局、法執行当局など、マネー・ローンダリング対策に携わる政府諸機関の国内及び国際的な協調

なお、FATF勧告は、IMF/世界銀行が行うマネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策に関する各国審査(FSAP)においても基準とされるなど、現在では、マネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策に関する国際的基準となっているといえます。

(2)「9の特別勧告」(FATF Special Recommendations on Terrorist Financing)

FATFは、2001年9月の米国同時多発テロ事件発生後のG7財務大臣声明(同年10月)を受けて、同月中に、テロ資金対策に関する特別会合を開催し、テロ資金供与に関する「8の特別勧告」を策定・公表しました。この「8の特別勧告」については、2004年10月に「キャッシュ・クーリエ(現金運搬人)」に関する9つ目の特別勧告が追加されて「9の特別勧告」となりました。
「9の特別勧告」の主な内容は以下のとおりです。

  • テロ資金供与行為を犯罪とすること(特別勧告Ⅱ)
  • テロリズムに関係する疑わしい取引の届出の義務付け(特別勧告Ⅳ)
  • 電信送金に対する正確かつ有用な送金人情報の付記(特別勧告Ⅶ)(注)

(注)「特別勧告Ⅶの解釈ノート」(Interpretative Note to Special RecommendationⅦ)により、各国は1,000ドル/ユーロを超える送金に正確かつ有用な送金人情報を付記することが求められています。

(3)新たな「FATF勧告」(The FATF Recommendations)

FATFは、2012年2月の全体会合において、大量破壊兵器の拡散や腐敗などの脅威にも、限りある資源を効果的に配分して的確に対処すること等を目的として、新たな「FATF勧告」に改訂しました。主な改訂点は以下のとおりです。

  • 従来の「40の勧告」及び「9の特別勧告」を統合
  • マネー・ローンダリング対策(40の勧告)とテロ資金供与対策(9の特別勧告)は密接に関係するため、これらの従来の勧告を統合し、双方の対策をカバーする40の勧告とした。
  • リスク・ベース・アプローチの強化
  • リスク・ベース・アプローチのコンセプトを明確にするとともに、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与関連のリスク評価をより幅広く行い、高リスク分野では厳格な措置を求める一方、低リスク分野では簡便な措置の採用を認め、より効率的な対応を求めることとした。
  • 法人、信託、電信送金システムに関する透明性の向上
  • 犯罪者やテロリストによる悪用を防止するために、法人や信託の実質的支配者に関する情報、電信送金を行う際に必要な情報等について基準を厳格化し、これらの透明性を高めることとした。
  • マネー・ローンダリング対策及びテロ資金供与対策のための当局機能や国際協力体制の強化
    • 国内においてマネー・ローンダリング対策及びテロ資金供与対策に責任を持つ法執行機関及びFIUの役割と機能を明確にし、より幅広い捜査手法や権限を求めることとした。
    • グローバルなマネー・ローンダリング及びテロ資金供与の脅威拡大に対応するため、捜査当局等に求める国際協力の範囲を拡充した。
  • 新たな脅威への対応
    • 腐敗行為防止の観点から、PEPs(重要な公的地位を有する者:Politically Exposed Persons)の定義を拡大し、外国だけでなく国内のPEPs等に関しても、金融機関等による厳格な顧客管理を求めることとした。
    • 第三次相互審査を通じて、税犯罪とマネー・ローンダリングが密接に関係していることが明らかになったため、税犯罪をマネー・ローンダリングの前提犯罪とすることを求めることとした。
    • 国連安保理決議の要請に沿って、大量破壊兵器の拡散に関与する者に対し、金融制裁を実施することを新たに勧告化した。

  ※ 新たな「FATF勧告」(英語)(PDF形式 1.5 MB) 

5 相互審査について

FATFは、各メンバー国・地域に対し、順次、その他のメンバー国により構成される審査団を派遣して、審査対象国におけるマネー・ローンダリング対策及びテロ資金対策の法制、監督・取締体制、マネー・ローンダリング犯罪の検挙状況など様々な観点から、FATF勧告の遵守状況について相互に審査しています。

我が国に対する相互審査は、過去、1994年、1998年、2008年及び2021年の4度にわたり実施されました。

FATF第4次対日相互審査報告書の内容については、以下リンクを参照ください。

   国内のマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策(財務省ホームページ)
          ※リンク先(財務省ホームページ)の「(参考)日本の審査結果」参照。


6 政策会議について

FATFによる第4次対日相互審査結果を契機として、政府一体となって対策を進めるため、2021年8月に警察庁及び財務省を共同議長とする「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」(以下「政策会議」)が設置されました。

政策会議では、以後3年間の「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画」を策定するとともに、2022年5月、関係省庁間の連携を図り、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の効果を高めるため、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」を決定し、我が国のマネロン等対策の強化を進めて参りました。

今般、上記行動計画の実施期限が到来したことに伴い、第5次対日相互審査も見据え、国内マネロン等対策の実効性を高めるとともに、リスク環境の変化に対応するため、2024年4月、政策会議を開催し、新たに「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024-2026年度)」を策定しました。

マネロン等対策に関する基本方針や行動計画については、以下リンクを参照ください。

   「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議」(財務省ホームページ)

2 APG

1 APGとは

APG(Asia/Pacific Group on Money Laundering:アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ)は、アジア・太平洋地域のFATF非参加国・地域に対してマネー・ローンダリング対策を促進するため、1997年2月に設立された国際協力の枠組みです。

その主な目的は、アジア・太平洋地域におけるマネー・ローンダリング対策が不十分で「抜け穴」となり得るような国・地域をなくすことにあります。そのために、APGは、FATF同様の相互審査を行うことにより、参加国・地域における法制度、法執行体制の改革を促すとともに、マネー・ローンダリング対策が不十分な国・地域に対しては、技術的・財政的支援を行って、その整備を推進しています。

2 APG参加国・地域

2024年6月末現在、APGには、以下の42の国・地域が参加しています。
我が国は、APGの設立当初からのメンバーであり、2004年7月から2006年6月までは、オーストラリアとともに共同議長国を務めました。

アフガニスタン、オーストラリア、バングラディシュ、ブータン
ブルネイ、カンボジア、カナダ、台湾、中国、クック諸島
フィジー諸島、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス
マカオ、マレーシア、モルディブ、マーシャル諸島、モンゴル、ミャンマー
ナウル、ネパール、ニュージーランド、ニウエ、パキスタン、パラオ
フィリピン、パプアニューギニア、サモア、シンガポール、ソロモン諸島、
スリランカ、タイ、ツバル、東ティモール、トンガ、米国、バヌアツ、ベトナム

3 APGの主な活動内容

APGの主な活動内容は以下のとおりです。

  1. ① アジア・太平洋地域におけるFATF勧告の実施の推奨・促進
  2. ② 域内諸国・地域におけるマネー・ローンダリング防止、テロ資金供与防止に関する法律の立法化の促進
  3. ③ 参加国のマネー・ローンダリング対策、テロ資金供与対策の実施状況の相互審査
  4. ④ 域内におけるマネー・ローンダリングの手口、傾向等についての情報交換、分析等

3 エグモント・グループ

1 エグモント・グループとは

エグモント・グループ(Egmont Group)は、各国FIU(注1)の交流、情報交換等の促進を目的とした非公式なフォーラムで、1995年4月に欧州主要国及び米国のFIUを中心的なメンバーとして発足しました。エグモント・グループという名称は、その際の会合の開催地(ベルギーのエグモント宮殿)に由来します。エグモント・グループは、2007年5月に開催されたバミューダ年次会合において、エグモント・グループ憲章が採択されたほか、カナダに常設の事務局が設置されるなど、現在は公式機関として国際的に認められています。2024年6月末現在、エグモント・グループには、177の国・地域のFIUが加盟しています。

(注1)FIU(Financial Intelligence Unit:資金情報機関)とは、マネー・ローンダリングやテロ資金に係る資金情報を一元的に受理・分析し、捜査機関等に提供する単一の政府機関のことです。

我が国は、2000年2月施行の組織的犯罪処罰法(第5章)に基づき、金融庁に日本版FIUとして特定金融情報室が設置されたことを踏まえ、エグモント・グループへの加盟申請を行い、同年5月にパナマで開催された第8回会合において加盟が承認されました。なお、2007年4月の犯罪収益移転防止法の施行により、FIUの機能を国家公安委員会が担うことになったことに伴い、我が国は、同年5月にバミューダ諸島において開催された第15回会合において、改めて、エグモント・グループへの加盟が承認されました。

2 エグモント・グループの主要会合

エグモント・グループにおいては、各国FIUの代表が一堂に会する年次会合のほかに、以下のような作業部会があり、年2回の会合が開催されています。

  1. ① マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の情報交換に関する作業部会
  2. ② 加盟審査、支援及び法令遵守に関する作業部会
  3. ③ 政策と手続に関する作業部会
  4. ④ 技術支援と訓練に関する作業部会

4 資金情報機関との情報交換枠組み

JAFICは、2024年6月末現在118の国・地域のFIUとの間で、マネー・ローンダリング及びテロ資金対策に係る情報交換の枠組みを設定するための当局間文書に署名を行っています。

本情報交換枠組みは、我が国のFIU(JAFIC)と各国のFIUとの間で、疑わしい取引に関する情報の交換を円滑に行うために、情報交換の手続等を定めたものであり、情報交換の枠組みを設定することにより、両国FIU間で犯罪収益やテロ資金の疑いのある取引に関する情報を迅速に交換することが可能となるものです。

国境を超えた組織犯罪、国際テロリズム等の脅威に対応するためには、各国のFIU当局間における情報共有、国際協調が重要な課題となっており、FIU間において情報交換を推進することが国際的な合意となっています。

また、各国との間において犯罪収益やテロ資金の疑いのある取引に関して迅速に情報交換を行うことは、我が国におけるマネー・ローンダリング対策やテロ資金対策の見地からも重要であり、本情報交換枠組みは極めて意義のあるものと考えています。

JAFICは、より多くの国・地域のFIUとの間で、積極的な情報交換を可能とするために、外国FIUとの間で情報交換枠組みを設定するための交渉に取り組んでいます。

諸外国、地域との情報交換枠組みの設定状況

なお、2022年3月、JAFICはオーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランド、英国、米国の各FIUと「対露関連制裁及び不正資金作業部会」(PDF形式 64KB)を立ち上げました。

5 国際会議への参加

国際会議への参加(令和6年)

  • 〇 FATF全体会合    
  •  1 全体会合(フランス)            
  •    令和6年2月21日から2月23日まで    
  •  2 全体会合(シンガポール)            
  •    令和6年6月24日から6月28日まで                        
       
  • 〇 エグモント・グループ会合    
  •  1 作業部会会合(マルタ)           
  •    令和6年1月29日から2月2日まで          
  •  2 年次会合(フランス)            
  •    令和6年6月2日から6月7日まで

令和5年以前の国際会議への参加