第2章 犯罪被害者等のための具体的施策と進捗状況

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第5節 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

1 国民の理解の増進(基本法第20条関係)

(1) 学校における生命のかけがえのなさ等に関する教育の推進

【施策番号214】

文部科学省においては、道徳教育の一層の充実を図るため、「心のノート」を全面改訂して作成した道徳教育用教材「私たちの道徳」を全国の小・中学生に配布した。本冊子においては、児童生徒が生命の尊さや大切さについて自らの考えを深められるような題材を盛り込むなどし、命を大切にする心の育成を図っている。また、教育再生実行会議の第一次提言等を踏まえ、道徳の時間を新たに「特別の教科 道徳」として位置付けること等に係る学習指導要領の一部改正等を行った。さらに、内閣府が作成した犯罪被害者等に関する啓発教材について、文部科学省ウェブサイト(http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/jinken/sankosiryo/1322248.htm)においても紹介している。そのほか、児童生徒の健全育成を目的とした、小・中・高等学校等における2泊3日以上の宿泊体験活動の取組を支援している。

(2) 学校における犯罪被害者等の人権問題も含めた人権教育の推進

【施策番号215】

文部科学省においては、「人権教育・啓発に関する基本計画」(平成23年4月1日閣議決定)を踏まえ、学校・家庭・地域社会が一体となった総合的な取組や、学校における指導方法の改善充実について実践的な研究を行う人権教育研究推進事業を実施している。

また、学校における人権教育に関する指導方法の在り方等について調査研究を行う、人権教育の指導方法の在り方等に関する調査研究等を実施し、20年3月に「人権教育の指導方法等の在り方について【第三次とりまとめ】」(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/024/report/08041404.htm)をまとめた。

さらに、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者が参加する人権教育担当指導主事連絡協議会を開催するとともに、独立行政法人教員研修センターにおいて人権教育指導者養成研修を実施している。

(3) 学校における犯罪抑止教育の充実

【施策番号216】

文部科学省においては、平成18年5月に「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を作成して、各教育委員会・学校等に配布し、これらを活用して警察との連携の下、非行防止教室の実施を始めとした犯罪抑止教育の充実を図っている。

(4) 子どもへの暴力抑止のための参加型学習への取組

【施策番号217】

文部科学省においては、上記「児童生徒の規範意識を育むための教師用指導資料(非行防止教室を中心とした取組)」を活用した非行防止教室の実施を始め、子供への暴力防止のための参加型学習の取組を推進している。

(5) 家庭における命の教育への支援の推進

【施策番号218】

文部科学省においては、命の大切さを実感させる意義等を記述している「家庭教育手帳」を文部科学省ウェブサイトに掲載し(http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/katei/2006_techou/mokuji.htm#1)、情報提供を行っている。

(6) 中学生・高校生を対象とした講演会の実施

【施策番号219】

警察においては、教育委員会等の関係機関と連携し、中学生や高校生を対象とした犯罪被害者等による講演会である「命の大切さを学ぶ教室」を開催し、犯罪被害者等への配慮や協力への意識の涵養に努めている(平成26年度は1,142回実施)。また、あらゆる機会において、広く国民の参加を募り犯罪被害者等による講演会を実施したり、大学生を対象にした犯罪被害者支援に関する講義を行ったりするなど、「社会全体で被害者を支え、被害者も加害者も出さない街づくり」に向けた気運を醸成し、犯罪被害者支援の充実を図っている。

(7) 生命・身体・自由の尊重を自覚させる法教育の普及・啓発

【施策番号220】

法務省においては、法律専門家ではない一般の人々が、法や司法制度、これらの基礎となっている価値を理解し、法的なものの考え方を身につけるための教育(法教育)を推進しており、法教育に関する取組について多角的な視点から検討するため、法教育推進協議会を開催している。

同協議会においては、現在、現行の学習指導要領を踏まえた、学校教育における法教育の実践の在り方や、教育関係者と法曹関係者による連携・協働の在り方について多角的な視点から検討を行うため、学校における法教育の実践状況について調査を実施している。平成24年度には小学校、25年度には中学校、26年度には普通科高等学校、27年度には専門学科及び総合学科高等学校において調査を行った。そして、その結果を踏まえ、25年度には小学生向け、26年度には中学生向けの法教育教材を作成の上、全国の小学校、中学校等へそれぞれ送付した。

また、学校現場等へ法教育情報を提供することによって、法教育の積極的な実践を後押しするため、法教育に関するリーフレットを作成し、全国の教育委員会等に配布している。

(8) 「犯罪被害者週間」にあわせた集中的な啓発事業の実施

【施策番号221】

コラム10「犯罪被害者週間の実施」 参照

(9) 犯罪被害者等施策の関係する特定期間における広報啓発事業の実施

【施策番号222】

ア 内閣に置かれている男女共同参画推進本部においては、毎年11月12日から同月25日(国連が定めた「女性に対する暴力撤廃国際日」)までの2週間、「女性に対する暴力をなくす運動」を実施している。内閣府においては、期間中、地方公共団体、女性団体その他の関係団体との連携・協力の下、意識啓発等の女性に対する暴力に関する取組を一層強化している。

なお、運動の初日には、女性に対する暴力根絶のシンボルであるパープルリボンにちなんで、東京タワーをパープルにライトアップした。

東京タワーのパープルライトアップ(平成27年11月12日)
東京タワーのパープルライトアップ(平成27年11月12日)

【施策番号223】

イ 内閣府においては、春(平成27年は5月11日から同月20日)と秋(同年9月21日から同月30日)の「全国交通安全運動」において、子供と高齢者の交通事故防止を基本として、交通事故被害者等の視点に配意しながら、交通事故の悲惨さや生命の尊さを広く国民に訴えた。

全国交通安全運動のポスター
全国交通安全運動のポスター

【施策番号224】

ウ 法務省においては、犯罪被害者等の人権問題に対する配慮と保護を図るため、「犯罪被害者とその家族の人権に配慮しよう」を啓発活動の年間強調事項の一つとして掲げ、人権週間(毎年12月4日から同月10日)を始めとする様々な機会に、犯罪被害者等の人権や犯罪被害者支援をテーマとした講演会等の開催、啓発冊子の配布等の啓発活動を実施している。

【施策番号225】

エ 厚生労働省においては、児童虐待に対する社会的関心の喚起を図るため、16年から、毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け、関係府省庁や地方公共団体、関係団体等と連携した広報・啓発活動を実施している。27年度においては、「『もしかして』あなたが救う 小さな手」を月間標語として決定し、子どもの虐待防止推進全国フォーラムの神奈川県横浜市での開催(同月8日)、広報用ポスター・リーフレット及び児童相談所全国共通ダイヤル紹介しおりの作成・配布並びに政府広報を通じ、児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることを周知・啓発した。

児童虐待防止推進月間のポスター
児童虐待防止推進月間のポスター

(10) 犯罪被害者等の置かれた状況等について国民理解の増進を図るための啓発事業の実施

【施策番号226】

ア 内閣府における啓発事業の実施状況については、 コラム10「犯罪被害者週間の実施」 参照

【施策番号227】

イ 地方公共団体に対して、犯罪被害者等施策主管課室長会議や地方公共団体職員を対象とする研修会の場等を通じ、犯罪被害者等の参加・協力を得て、犯罪被害者等への理解の増進を図るための啓発事業を実施するよう要請した。平成27年度は、犯罪被害者週間の前後を通じて、全国各地で広報啓発事業が実施された(コラム10「犯罪被害者週間の実施」参照)。

(11) 様々な広報媒体を通じた犯罪被害者等施策に関する広報の実施

【施策番号228】

ア 【施策番号210】 参照

【施策番号229】

イ 【施策番号210】 参照

【施策番号230】

ウ 警察庁においては、広報啓発用の冊子「警察による犯罪被害者支援」の作成、ウェブサイト上での警察の犯罪被害者支援施策の掲載(http://www.npa.go.jp/higaisya/home.htm)等により、犯罪被害者支援に関する国民の理解増進に努めている。

警察による犯罪被害者支援のパンフレット
警察による犯罪被害者支援のパンフレット

(12) 交通事故被害者等の声を反映した国民の理解増進

【施策番号231】

ア 警察においては、交通事故の被害者等の実態や交通事故の惨状等に関する国民の理解増進のため、交通事故被害者等の手記を取りまとめた冊子等の作成・配布や交通安全の集い等における交通事故被害者等の講演を実施している。平成27年中は、手記を取りまとめた冊子等を約261万部配布するとともに、講演会等を545回実施した。

交通事故被害者等の手記
交通事故被害者等の手記

【施策番号232】

イ 都道府県公安委員会による運転者等に対する各種講習において、交通事故被害者等の切実な訴えが反映された映画、手記等を活用しているほか、交通事故被害者等の講話を取り入れるなどし、交通事故被害者等の声を反映した講習を実施している。

(13) 国民の理解の増進を図るための情報提供の実施

【施策番号233】

内閣府においては、施策推進のための情報提供を行うため、平成28年3月、犯罪被害者等支援団体の関係者を講師に招き、関係省庁及び地方公共団体の職員を対象として、犯罪被害者等の置かれた状況等に関する講演会を開催した。

これまでに開催した講演会の概要は、内閣府犯罪被害者等施策ウェブサイトに掲載し、広く一般に情報提供を行った。

(14) 調査結果の公表等を通じた犯罪被害者等の置かれた状況についての国民理解の増進

【施策番号234】

内閣府においては、犯罪被害者等に関して実施した調査研究について、内閣府犯罪被害者等施策ウェブサイトに掲載したほか、各種の講演・講義において、犯罪被害者等への理解を深めることを目的に、当該調査結果を踏まえた啓発を行った。

(15) 学校における犯罪被害者等である児童生徒への的確な対応のための施策の促進

【施策番号235】

ア 【施策番号167】 参照

【施策番号236】

イ 【施策番号63】 参照

【施策番号237】

ウ 文部科学省においては、虐待を含む事件・事故に遭遇した子供の心のケアに関して、教職員用の指導参考資料「学校における子供の心のケア」を作成・配布し、本指導参考資料の活用により、養護教諭を始め教職員が子供の心のケアに対する知見を深め、心身の健康問題の早期発見、早期対応が可能となるよう取り組んでいる。

また、児童虐待に関して「養護教諭のための児童虐待対応の手引」を作成・配布し、本手引書の活用により、養護教諭を始め教職員が児童虐待に対する知見を深め、児童虐待の早期発見、早期対応が可能となるよう取り組んでいる。

(16) 犯罪被害者等に関する個人情報の保護

【施策番号238】

【施策番号74】参照

(17) 犯罪被害者等に関する個人情報の保護に配慮した地域における犯罪発生状況等の情報提供の実施

【施策番号239】

都道府県警察においては、ウェブサイトを開設し、犯罪発生の情勢や不審者に係る情報等の防犯情報を掲載するとともに、ウェブサイトの防犯情報コーナーへのアクセスが容易となるよう、トップページに明示的にリンクを掲げるなど、工夫を行っている。また、防犯対策に係る冊子やチラシ、ビデオをウェブサイトに掲載している。

ウェブサイト以外での情報提供としては、都道府県警察において、あらかじめ登録した住民に対して犯罪発生の状況や不審者(声かけ)情報等の身近な情報をメールで発信する取組が行われている。さらに、地元テレビやラジオを通じて、定期的に情報を提供する体制を構築したり、新聞の折込みチラシ等を活用した情報提供を行ったりしている。

また、重要凶悪事件の連続発生のおそれのある場合には、連続発生を抑止するため、マスメディアへの情報提供のほか、インターネットの活用による情報発信、防災行政無線による広報等各種広報媒体を活用した迅速かつ確実な情報提供を行っている。

なお、これらの犯罪発生情報等を提供するに当たっては、犯罪被害者等の個人情報の保護に十分配意している。

(18) 交通事故の実態及びその悲惨さについての理解の増進に資するデータの公表

【施策番号240】

警察においては、交通事故の実態やその悲惨さについての理解の増進のため、事故類型や年齢層別等交通事故に関する様々なデータを刊行物や警察庁ウェブサイト(http://www.npa.go.jp/koutsuu/index.htm)等で公表し、その実態等についての周知を図っている。

(19) 交通事故被害者に関する統計の周知

【施策番号241】

内閣府においては、交通安全白書に、厚生統計の死者数(交通事故発生後1年以内の死者数)を含め、道路交通事故による交通事故発生件数、死者数及び負傷者数を掲載している。

また、犯罪被害者白書でも、厚生統計の死者数を第2次基本計画の初年度である平成23年から掲載し、交通事故被害者に関する統計の充実を図っている。

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