特集 高齢化の進展と警察活動

第2節 高齢者による犯罪・事故への対応と防止に向けた取組

1 高齢者による犯罪

(1)犯罪情勢

近年、刑法犯の検挙人員が減少している中、高齢者人口及び総人口に占める高齢者人口の割合の増加もあり、高齢者の刑法犯検挙人員は、平成10年代に大幅に増加し、その後も高い水準を維持している。また、検挙人員総数に占める高齢者の割合は、平成元年(1989年)から令和元年(2019年)にかけて2.1%から22.0%に上昇した。

 
図表特2-1 高齢者の刑法犯検挙人員及び高齢者の割合の推移(平成元~令和元年)
図表特2-1 高齢者の刑法犯検挙人員及び高齢者の割合の推移(平成元~令和元年)
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高齢者による犯罪の主なものは、万引き、占有離脱物横領、暴行及び傷害で、これらの犯罪の検挙人員で高齢者の刑法犯検挙人員の約7割を占める。これらの犯罪の検挙人員の推移について年齢層別に比較すると、万引きについては、他の年齢層と比べて高い水準を維持しているほか、暴行については、高い増加率を示している。

 
図表特2-2 年齢層別検挙人員の推移(平成22~令和元年)
図表特2-2 年齢層別検挙人員の推移(平成22~令和元年)
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また、初犯者・再犯者別に高齢者の検挙人員の推移をみると、万引きについては、初犯者は減少傾向にあるのに対し、再犯者は依然として高い水準にあり、平成24年以降、再犯者が初犯者を上回っているほか、暴行については、初犯者・再犯者とも増加傾向にある。

 
図表特2-3 初犯者・再犯者別検挙人員の推移(平成22~令和元年)
図表特2-3 初犯者・再犯者別検挙人員の推移(平成22~令和元年)
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(2)高齢被留置者の処遇

警察の留置施設における被留置者の留置期間は比較的短期間であるものの、図表特2-4のとおり、刑法犯及び特別法犯の全逮捕人員に占める高齢者の割合は増加傾向にあることなどから、日常生活に支援を要する高齢被留置者にも適切な処遇を行うための備えが必要となる。

警察では、このような被留置者に対し、かゆ食等を提供したり、浴槽の形状に配慮したりするなどの措置を講じている。また、一部の府県警察において、留置担当官等に対し、介護の専門家による介助研修を実施し、必要な知識・技能を習得させるための取組を行っている例もある。

 
図表特2-4 刑法犯及び特別法犯の全逮捕人員に占める高齢者の割合の推移(平成22~令和元年)
図表特2-4 刑法犯及び特別法犯の全逮捕人員に占める高齢者の割合の推移(平成22~令和元年)
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介助研修の状況(京都)
介助研修の状況(京都)

(3)犯罪を防止するための取組

令和元年中の刑法犯検挙件数全体に占める高齢者による刑法犯の検挙件数の割合は17.0%で、そのうち万引きの割合は48.7%と約半数を占めている。高齢者による万引きに関しては、背景として、血縁、地縁、その他のコミュニティとの関係が希薄になっていることなどがうかがわれることを踏まえ、警察では、高齢者の社会との絆の強化を目的とした取組を推進している。

MEMO 高齢者による犯罪を防止するための取組

万引きの背景には、身近に話し相手がいない寂しさや生活困窮があるとみられたことから、和歌山県警察では、万引きで検挙した高齢者について、最寄りの警察署の警察官が巡回連絡の一環として自宅を訪ね、困りごとの相談にのって生活上のアドバイスを行っている。また、万引きの背景として、孤立や困窮といった要因があり、万引きの再犯防止のため行政機関による支援が必要であると認められる場合には、高齢者やその家族等に対し、地域包括支援センター等関係機関に引き継ぐ取組を実施している。



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