トピックス

トピックスII 特殊詐欺の現状と高齢者被害防止のための新たな取組

(1)特殊詐欺の現状

① 特殊詐欺の情勢等

特殊詐欺(注1)は、振り込め詐欺(オレオレ詐欺(注2)、架空請求詐欺(注3)、融資保証金詐欺(注4)及び還付金等詐欺(注5))及び振り込め詐欺以外の特殊詐欺(注6)に分類され、平成30年(2018年)中の認知件数と被害額はいずれも前年より減少したものの、高齢者を中心に一日当たり約1億円もの被害が生じているなど、依然として深刻な情勢にある。

注1:被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝を含む。)の総称

注2:親族を装うなどして電話をかけ、会社における横領金の補填金等の様々な名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺

注3:架空の事実を口実に金品を請求する文書を送付して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺

注4:融資を受けるための保証金の名目で、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺

注5:市区町村の職員等を装い、医療費の還付等に必要な手続を装って現金自動預払機(ATM)を操作させて口座間送金により振り込ませる手口による電子計算機使用詐欺

注6:例えば、金融商品等取引名目、ギャンブル必勝法情報提供名目、異性との交際あっせん名目等の詐欺がある。

 
図表II-1 特殊詐欺の認知件数・被害額の推移(平成21~30年)
図表II-1 特殊詐欺の認知件数・被害額の推移(平成21~30年)
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警察では、だまされた振り作戦(注)、犯行拠点の摘発、上位者への突き上げ捜査、犯行に利用された携帯電話の利用制限等の犯行ツール対策といったこれまでの取組に加え、特殊詐欺事件の背後にいるとみられる暴力団、準暴力団等に対する多角的な取締りを推進している。

注:特殊詐欺の電話等を受け、特殊詐欺であると見破った場合に、だまされた振りをしつつ、犯人に現金等を手渡しする約束をした上で警察へ通報してもらい、自宅等の約束した場所に現れた犯人を検挙する、国民の積極的かつ自発的な協力に基づく検挙手法

 
図表II-2 特殊詐欺の検挙件数・検挙人員の推移(平成21~30年)
図表II-2 特殊詐欺の検挙件数・検挙人員の推移(平成21~30年)
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② 主な手口別の認知状況

平成29年に大幅に増加したオレオレ詐欺については、平成30年中の認知件数は9,145件と前年比で649件(7.6%)増加したが、被害額は約188.9億円と前年比で約19.0億円(9.2%)減少した。

一方、架空請求詐欺については、平成30年中の認知件数は4,844件と前年比で909件(15.8%)減少したが、被害額は約138.4億円と前年比で約10.7億円(8.4%)増加した。

なお、これら2つの手口で、特殊詐欺の認知件数全体の84.8%を占めている。

また、平成29年に減少に転じた還付金等詐欺については、平成30年中の認知件数は1,904件と前年比で1,225件(39.1%)減少し、被害額も約22.5億円と前年比で約13.3億円(37.2%)減少した。

 
図表II-3 振り込め詐欺の手口別認知件数・被害額の推移(平成21~30年)
図表II-3 振り込め詐欺の手口別認知件数・被害額の推移(平成21~30年)
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③ 高齢者等の被害状況

特殊詐欺の被害全体に占める65歳以上の高齢者の割合(高齢者率)は、引き続き高水準で推移しており、平成30年の高齢者率は、78.1%に上っている。特に、オレオレ詐欺では96.9%、還付金等詐欺では84.6%と、高齢者率が極めて高く、高齢者の被害防止が喫緊の課題となっている。

 
図表II-4 特殊詐欺被害者の高齢者率の推移(平成26~30年)
図表II-4 特殊詐欺被害者の高齢者率の推移(平成26~30年)
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図表II-5 特殊詐欺被害者の高齢者率(平成30年)
図表II-5 特殊詐欺被害者の高齢者率(平成30年)
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他方、架空請求詐欺については、高齢者のみならず幅広い世代で被害が発生しており、例えば、有料サイトの利用料金の未納等を理由に現金や電子マネーをだまし取る手口の架空請求詐欺については、20代から40代の比較的若い世代の女性が多く被害に遭っている状況も認められる。

(2)高齢者の被害防止に向けた新たな取組

① オレオレ詐欺の被害者等に対する調査の実施

警察庁では、オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺の効果的な被害防止対策に役立てるため、親族を装うオレオレ詐欺の被害者等に対する調査を実施した。

 
図表II-6 親族を装うオレオレ詐欺の被害者等に対する調査概要
図表II-6 親族を装うオレオレ詐欺の被害者等に対する調査概要
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その結果、図表II-7のとおり、被害者のうち78.2%が「自分は被害に遭わないと思っていた」と回答しており、自ら看破した者と比較して、被害に遭う可能性を過小評価する傾向が強いことが認められた。

また、図表II-8のとおり、被害者のうち70.3%は電話を受けた時点でだまされていたことから、犯人からの電話に出ないための対策として、迷惑電話防止機能を有する機器の活用等が有効であると認められた。

さらに、図表II-9のとおり、被害者のうち75.1%が、だましの電話を受けた後、誰にも相談していないことが明らかになった。加えて、図表II-10のとおり、自ら看破した者のうち53.3%は「親族の声と違っていた」という理由を挙げているほか、40.2%が「親族の元の電話番号にかけたりして確認できた」と答えており、電話を受けた時点で親族と連絡・相談すること、さらには、普段から親族と連絡を取っておくことが重要であると認められた。

このような調査の結果を踏まえ、警察では、各種被害防止対策をより効果的に推進することとしている。

 
図表II-7 被害に対する意識
図表II-7 被害に対する意識
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図表II-8 だまされたタイミング
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図表II-9 他者への相談の有無
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図表II-10 見破った理由 ※複数回答
図表II-10 見破った理由 ※複数回答
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② 幅広い世代に対する広報啓発

高齢者の特殊詐欺の被害防止に向けた広報啓発については、これまで高齢者を対象に犯行手口を紹介するなどの注意喚起を中心に行ってきた。

これらに加えて、高齢者の子供や孫世代も含めた幅広い世代に対して、日常的に家族間で連絡を取り合うことを促して被害防止を図るなど、より効果的な広報啓発の取組を実施している。

 
児童による「家族の絆」メッセージチラシのプレゼントキャンペーン(茨城)
児童による「家族の絆」メッセージチラシのプレゼントキャンペーン(茨城)

CASE

平成30年10月、和歌山県に住む80歳代女性の自宅に、息子を名のる男から「夫のいる女性を妊娠させて、示談金400万円を請求されている。どうにかならないか」との電話があり、女性はお金を準備して指定された場所に持って行こうとしたが、心配になり、普段からよく連絡を取り合っている娘に電話した。その結果、オレオレ詐欺の手口に似ていると思った娘がすぐに警察へ通報し、被害を防ぐことができた(和歌山)。

MEMO 「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」
プロジェクトチーム(略称:SOS47)について

平成30年9月、オレオレ詐欺をはじめとする特殊詐欺の被害を防止するため、幅広い世代に対して発信力を有する著名な方々で構成されるプロジェクトチームが発足した。

プロジェクトチームは、全国警察と連携し、広報イベントへの参加、SNSやウェブサイト等による情報発信等の活動を通じて、日常的に家族間で連絡を取り合うことによりオレオレ詐欺の被害に遭わないようにすることなどを呼び掛けている。

 
「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(SOS47)と国家公安委員会委員長
「ストップ・オレオレ詐欺47~家族の絆作戦~」プロジェクトチーム(SOS47)と国家公安委員会委員長
 
ウェブサイト等で公開している広報啓発用動画
ウェブサイト等で公開している広報啓発用動画


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