第2節 精神的・身体的被害の回復・防止への取組
2 安全の確保(基本法第15条関係)
(1) 加害者に関する情報提供の拡充
【施策番号70】
ア 出所情報通知制度については,「1 「再被害防止要綱」に基づく再被害防止措置と出所情報通知制度」参照
犯罪被害者等が希望する場合に,検察官が相当と認めるときは,犯罪被害者等に対し,受刑者の釈放前に釈放予定に関する通知を行っている。
本施策については,実施後13年経過したところであるが,各会議等において制度について周知を図り,実務担当者からも犯罪被害者等に対して案内をしている。
通知希望者数 | 通知者数 | |
---|---|---|
平成14年 | 264 | 125 |
平成15年 | 344 | 250 |
平成16年 | 622 | 440 |
平成17年 | 787 | 559 |
平成18年 | 1,135 | 779 |
平成19年 | 1,080 | 782 |
平成20年 | 855 | 663 |
平成21年 | 371 | 487 |
平成22年 | 391 | 490 |
平成23年 | 298 | 395 |
平成24年 | 300 | 361 |
平成25年 | 423 | 398 |
平成26年 | 414 | 338 |
合計 | 7,284 | 6,067 |
提供:法務省 |
【施策番号71】
イ 「1 「再被害防止要綱」に基づく再被害防止措置と出所情報通知制度」参照
(2) 判決確定,保護処分決定後の加害者に関する情報提供拡充の検討及び施策の実施
【施策番号72】
検察庁においては,事件の処理結果,公判期日,裁判結果等のほか,希望があるときは不起訴裁定の主文,不起訴裁定の理由の骨子等を通知する,全国統一の被害者等通知制度を実施している。なお,平成19年12月からは,同制度を拡充し,犯罪被害者等の希望に応じて,判決確定後の加害者に関する処遇状況等の情報について,検察庁,刑事施設,地方更生保護委員会,保護観察所が連携して通知を行っているほか,保護処分決定後の加害者に関する処遇状況等の情報について,少年鑑別所,少年院,地方更生保護委員会,保護観察所が連携して通知を行っている。
「判決確定後の加害者に関する情報提供」の内容として,加害者の受刑中の処遇状況に関する事項,仮釈放審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等について通知している。
また,「保護処分決定後の加害者に関する情報提供」の内容として,少年院送致処分又は保護観察処分を受けた加害少年について,犯罪被害者等の希望に応じて,少年院における処遇状況に関する事項,仮退院審理に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項等を通知している。
被害者等通知制度の平成26年の実施状況については,通知希望者数は,7万9,660人であり,実際に通知を行った延べ数は13万5,545人であった。また,判決確定後の加害者に関する情報のうち,刑の執行終了予定時期について延べ1万4,562件,刑事施設における処遇状況について延べ1万6,933件,受刑者の釈放について延べ2,572件,執行猶予の言渡しの取消しについて延べ170件の通知がそれぞれ行われた。
また,保護処分を受けた少年に関する情報のうち,少年院での処遇に関する事項について延べ246件,仮退院審理に関する事項について延べ117件,保護観察状況に関する事項について延べ779件の通知がそれぞれ行われた。
法務省では,上記のとおり加害者に関する情報提供拡充について取り組んできたところ,第2次基本計画により,加害者の受刑中の処遇状況に関する事項,仮釈放又は刑の執行終了による釈放に関する事項及びこれに準ずる事項,仮釈放審理に関する事項,保護観察の開始に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項並びに保護観察の終了に関する事項について,また,保護観察処分及び少年院送致処分を受けた加害少年についても,少年院における処遇状況等に関する事項,仮退院審理に関する事項,保護観察の開始に関する事項,保護観察中の処遇状況に関する事項及び保護観察の終了に関する事項について,適切に情報提供を行うとともに,被害者等通知制度の更なる充実について,通知制度の運用状況や加害者の改善更生,個人のプライバシーの問題等を総合的に考慮しつつ検討を行い,3年以内を目途に結論を出し,必要な施策を実施することとされた。
上記検討の結果,平成26年4月1日から,加害者の受刑中の刑事施設における処遇状況に関する事項として,懲罰及び褒賞の状況を,加害者の少年院在院中における処遇状況に関する事項として,賞,懲戒及び問題行動指導の状況を新たに通知することとした。
また,保護観察の開始に関する事項の一つとして,従来から保護観察の終了予定年月を通知してきたが,これを年月日まで通知するほか,保護観察の処遇状況に関する事項として,特別遵守事項に基づき実施する特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇プログラムの実施状況を新たに通知するなどの充実を図った。
通知希望者数 | 通知者数 | |
---|---|---|
平成14年 | 47,690 | 76,691 |
平成15年 | 44,442 | 76,087 |
平成16年 | 45,967 | 75,877 |
平成17年 | 46,953 | 74,813 |
平成18年 | 50,504 | 76,377 |
平成19年 | 51,676 | 77,487 |
平成20年 | 55,330 | 91,818 |
平成21年 | 61,007 | 107,464 |
平成22年 | 62,993 | 114,996 |
平成23年 | 63,542 | 118,933 |
平成24年 | 67,750 | 122,376 |
平成25年 | 75,516 | 129,036 |
平成26年 | 79,660 | 135,545 |
合計 | 753,030 | 1,277,500 |
提供:法務省 |
(3) 犯罪被害者等に関する情報の保護
【施策番号73】
ア 法務省・検察庁においては,刑事訴訟法に基づき,裁判所の決定があった場合,起訴状の朗読等の訴訟手続を被害者の氏名等を明らかにしない方法により行う制度や,検察官が,証拠開示の際に,弁護人に対し,被害者の氏名等がみだりに他人に知られないようにすることを求める制度について,円滑な運用に取り組んでいる。また,会議や研修等の機会を通じて検察官等への周知に努めている。
【施策番号74】
イ 警察庁においては,犯罪被害者等の実名発表・匿名発表について,引き続き適切な発表がなされるよう,都道府県警察の広報担当者を招致した会議等を通じて,都道府県警察を指導している。
○ 総務省においては,平成16年に,関係省令等を改正し,ドメスティック・バイオレンス及びストーカー行為等の被害者の住民票の写し等の交付等を制限する支援措置を講じ,各市区町村において実施している。その後,18年に,犯罪被害者等の保護の観点も含め住民基本台帳の閲覧制度等の抜本的見直しを行い,何人でも閲覧を請求できるという従前の制度を廃止し,個人情報保護に十分留意した制度として再構築するための住民基本台帳法の一部改正を行った。20年には,同様の観点から,住民票の写し等の交付制度を見直すための同法の一部改正を行った。24年には,支援措置の対象について,ドメスティック・バイオレンス及びストーカー行為等に加え,児童虐待及びその他これらに準ずる行為を明示的に追加する関係通知の改正を行った。
また,選挙人名簿の抄本の閲覧制度については,平成17年に,住民票の写し等の交付等に関する関係省令等の改正を踏まえ,ドメスティック・バイオレンス及びストーカー行為等の加害者から,支援対象者が記載されている選挙人名簿の抄本の閲覧申立てがあった場合は拒否するなどの留意事項について通知した。その後,18年には,閲覧事項を不当な目的に利用されるおそれがあるなど市町村選挙管理委員会が閲覧を拒むに足りる相当な理由があると認めるときは閲覧を拒否できるとするなど,個人情報保護に配慮した規定の整備を内容とする公職選挙法の一部改正を行った。さらに,その厳格な取扱いについて21年,27年にも周知徹底を行っている。
(4) 一時保護場所の環境改善等
【施策番号75】
ア 【施策番号23】参照
【施策番号76】
イ 【施策番号24】参照
(5) 警察における再被害防止措置の推進
【施策番号77】
「1 「再被害防止要綱」に基づく再被害防止措置と出所情報通知制度」参照
(6) 警察における保護対策の推進
【施策番号78】
警察においては,暴力団による犯罪の被害者や暴力団との関係を遮断しようとする事業者等に対する危害行為を防止し,その安全確保の徹底を図るため,組織の総合力を発揮した保護対策を実施している。
保護対策実施要綱に基づき指定した身辺警戒員(略称「PO」(Protection Officer))に対する教養訓練を強化するとともに,防犯カメラ等必要な装備資機材の拡充,民間警備業の活用にも努めている。
(7) 保釈に関しての犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実
【施策番号79】
法務省・検察庁においては,加害者の保釈に関し,検察官が,犯罪被害者等から事情を聞くなどによりその安全確保を考慮して裁判所に意見を提出するほか,保釈申請に対する結果について犯罪被害者等に連絡するなど,適切な対応に努めている。また,会議や研修等の様々な機会を通じて検察官等への周知に努めている。
(8) 配偶者等からの暴力被害者の安全確保の強化についての検討及び施策の実施
【施策番号80】
第2次基本計画により,配偶者等からの暴力の被害者の安全確保策を強化することについて検討し,3年以内を目途に結論を出し,必要な施策を実施することとされた。
平成25年6月に配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号。以下「配偶者暴力防止法」という。)が改正され,生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係にある相手からの暴力及びその被害者についても同法の適用対象となったことに伴い,同法に基づく基本方針について,所要の規定の整備を行うとともに,警察における被害者の意思決定を支援する手続や保護命令制度の適切な運用の実現のための施策等について規定するなどの改正を行った。同法及び同基本方針は26年1月3日に施行された。
内閣府においては,保護命令制度の実態とそれを取り巻く状況等の分析のため,関係省庁と協力して,配偶者暴力相談支援センターを対象にアンケート調査を実施し,男女共同参画会議の下の女性に対する暴力に関する専門調査会では,配偶者からの暴力の防止等に関する対策の実施状況のフォローアップを行った。
警察では,配偶者からの暴力事案等に一元的に対応するための体制を全国の警察本部に確立し,迅速かつ的確な対応の徹底を図っているほか,被害者に対し事案の危険性や警察の執り得る措置等を分かりやすく説明する「被害者の意思決定支援手続」や事案の危険性等を判定する「危険性判断チェック票」を導入するなど被害者の安全の確保を最優先とした対応を行っている。
法務省入国管理局においては,配偶者からの暴力による被害者である外国人に対し,関係機関と連携して被害者の身体の保護を確実なものにする一方,配偶者からの暴力の被害のために別居を余儀なくされたり,提出資料が用意できない被害者から,在留期間更新許可申請又は在留資格変更許可申請があった場合には,被害者本人の意思及び立場に十分配慮しながら,個々の事情を勘案し,人道上の観点から適切に対応している。また,配偶者からの暴力の被害を要因として不法残留等の出入国管理及び難民認定法違反となっている場合も,個々の事情を勘案し,人道上の観点から適切に対応している。
婦人相談所においては,配偶者暴力防止法に基づき,配偶者暴力相談支援センターの機能を担い,配偶者からの暴力被害者・同伴する家族を自ら一時保護したり,婦人保護施設等への一時保護委託を実施している。
加えて,配偶者からの暴力被害者等が入所する婦人保護施設については,夜間警備体制の強化を図るとともに,心理療法担当職員や同伴児童のケアを行う指導員の配置を進めている。
(9) 再被害防止に向けた関係機関の連携の充実
【施策番号81】
ア 警察においては,配偶者等からの暴力事案に対し配偶者暴力相談支援センターなど関係機関・団体と連携した被害者支援を講ずるなど,犯罪被害者等の立場に立った適切な対応を図っている。
人身取引事犯の被害者については,その適切な保護がなされるよう関係機関・団体と連携を図るとともに,犯罪被害者等が人身取引の被害を訴えることが容易となるようリーフレット約28万部を作成し,関係省庁,在京関係国大使館,関係国在外公館,NGO等の犯罪被害者等の目に触れやすい場所に広く配布したほか,人身取引事犯の広報啓発用映像ソフトを作成し,ホームページに掲載している(http://www.npa.go.jp/safetylife/index.htm#hoan)。また,平成26年7月,人身取引に関係する国の在京大使館・国際機関・NGO等を集めてコンタクトポイント会議を開催し,人身取引被害者の発見・保護等に関する意見交換を行うなどした。さらに,人身取引事犯等の被害者となっている女性等の早期保護を図るため,警察庁の委託を受けた民間団体が,市民から匿名で事件情報の通報を受け,これを警察に提供して,捜査等に役立てる「匿名通報ダイヤル」を,19年10月から運用している。なお,「平成26年中における人身取引事犯の検挙状況等について」の広報資料をホームページに掲載している(http://www.npa.go.jp/safetylife/hoan/h26_zinshin.pdf)。
児童虐待の被害者については,街頭補導,少年相談等様々な活動の機会を通じ,その早期発見と児童相談所への確実な通告に努めている。また,各都道府県警察においては,国民に児童虐待事案の通告・通報を促すためのリーフレットを広く配布しているほか,平成22年2月から「匿名通報ダイヤル」の対象に児童虐待事案を追加し,運用している。さらに,都道府県知事・児童相談所長による児童の安全確認や一時保護,立入調査を円滑化するための援助を実施するとともに,要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)等へ積極的に参加するなど,学校,児童相談所等の関係機関との情報交換や連携強化に努めている。
厚生労働省においては,配偶者からの暴力(DV)の被害者,人身取引の被害者等の保護に関しては,婦人相談所と警察や児童相談所等の関係機関との連携が不可欠であることから,その充実を図っている。特に,配偶者からの暴力被害者の保護と支援については,関係機関相互の共通認識・総合調整が必要不可欠であることから,連携を強化するためのネットワークの整備に係る費用を補助している。
具体的には,婦人相談所は,配偶者からの暴力被害者の相談,保護,自立支援において,警察や福祉事務所等の関係機関との連携を図るため,連絡会議や事例検討会議を開催するとともに,事例集や関係機関の役割等の内容を掲載したパンフレットを作成し,関係機関に配布している。
児童相談所においては,触法少年・ぐ犯少年の通告,棄児,迷子,虐待を受けた子供など要保護児童の通告等について,警察と連携を図っている。
【施策番号82】
イ 警察庁・文部科学省においては,警察と学校等関係機関の通報連絡体制の活用,要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)の活用,加害少年やその保護者に対する指導等の一層の充実を図り,再被害の防止に努めている。
警察においては,非行や犯罪被害等個々の少年の抱える問題行動に応じた的確な対応を行うため,学校,警察,児童相談所等の担当者からなる「少年サポートチーム」を編成し,それぞれの専門分野に応じた役割分担の下,少年への指導・助言を行っている。平成26年度においても,少年サポートチームの効果的な運用等連携を図るため,警察庁と文部科学省と合同で,都道府県警察,関係機関・団体の実務担当者に対する協議会を実施した。
文部科学省においては,各教育委員会に対し,学校と警察が連携し,児童生徒の問題行動に対応できるよう,会議の場や通知等で促している。
また,要保護児童等に関し,「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」を踏まえ,虐待を受けている子供を始めとする要保護児童の適切な保護を図るための関係機関との適切な連携について教育委員会等へ周知している。
(10) 児童虐待の防止,早期発見・早期対応のための体制整備等
【施策番号83】
ア 警察においては,児童虐待防止対策に従事する職員,検視の専門官,少年補導職員等に対し,早期に児童虐待を発見するための観点や,関係機関との連携の在り方,カウンセリング技術等について指導・教育を行うなど,児童虐待防止に関する専門的な知識・技能の向上のための教育を実施している。
警察庁においては,平成22年2月から「匿名通報ダイヤル」の通報対象に児童虐待事案を追加するとともに,24年4月,「児童虐待への対応における取組の強化について(通達)」を発出し,児童虐待対策の中核である児童相談所との一層緊密かつ適切な連携や警察における的確な対応の徹底について,各都道府県警察に指示するなどして,児童虐待の早期発見・早期対応に努めている。
【施策番号84】
イ 文部科学省においては,平成24年3月29日付けで,児童虐待の速やかな通告を推進する上で留意すべき事項を整理した「児童虐待に係る速やかな通告の一層の推進について」を通知し,取組の充実を求めている。
平成26年度においても,児童虐待等の問題へ対応するため,教育分野に関する知識に加えて,社会福祉の専門的な知識・技術を用いて児童生徒を支援するスクールソーシャルワーカーを,各地域の実情に応じて学校等の教育機関に配置する地方自治体の取組に対して補助を行っている。
また,平成26年度は,「いじめ対策等生徒指導推進事業」において,児童虐待等の問題を抱える児童生徒に対する効果的な支援について,子供の状況の把握の在り方,関係機関とのネットワークを活用した早期からの支援の在り方等の観点から,調査研究を実施している。
さらに,都道府県・政令指定都市教育委員会に対し,生徒指導担当者の会議等において,継続的に児童虐待防止対策を取り上げ,通告義務の周知徹底等に取り組むよう指導を行うとともに,教育機関と児童相談所の職員による合同研修への積極的な参加を促すなどにより,児童虐待の早期発見・早期対応のための体制の整備に努めている。
【施策番号85】
ウ 厚生労働省においては,児童虐待の発生予防に関しては,生後4か月までの乳児がいる全ての家庭を訪問し,子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握,育児に関する不安や悩みの相談等の援助を行う「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」や,養育支援が特に必要であると判断される家庭に対して,保健師・助産師・保育士等が居宅を訪問し,養育に関する相談に応じ,指導,助言等により養育能力を向上させるための支援を行う「養育支援訪問事業」,子育て中の親子が交流・相談できる「地域子育て支援拠点事業」の推進,妊娠期から子育て期にわたるまで様々なニーズに対して総合的相談支援を提供するワンストップ拠点「子育て世代包括支援センター」の整備等,相談しやすい体制の整備等を進めている。早期発見・早期対応に関しては,虐待に関する通告の徹底,児童相談所の体制強化のための児童福祉司の確保,市町村の体制強化,専門性向上のための研修やノウハウの共有,「要保護児童対策地域協議会(子どもを守る地域ネットワーク)」の機能強化を進めている。保護・自立の支援,保護者への支援に関しては,社会的養護の質・量の拡充,家族再統合や家族の養育機能の再生・強化に向けた取組を行う保護者支援の推進等の取組等を進めている。
また,平成21年10月から運用を開始している児童相談所全国共通ダイヤル(0570-064-000)について,覚えやすい3桁番号にすることで,より広く一般に周知し,児童虐待を受けたと思われる子供を見つけた時等に,ためらわずに児童相談所に通告・相談ができるように,27年7月1日から,これまでの10桁番号から3桁番号(189)に変更し,運用を開始する。
平成24年4月より,児童虐待の防止等を図り,児童の権利利益を擁護する観点から,親権の停止制度を新設し,法人又は複数の未成年後見人を選任することができるようにするなどの措置を講ずるための改正民法等が施行されるとともに,里親委託中等の親権者等がいない児童の親権を児童相談所長が行うこととすることや,児童の福祉のために施設長等がとる監護等の措置について親権者等が不当に妨げてはならないこととするなどの措置を講ずるための改正児童福祉法が施行されている。
平成24年及び25年には,「『要保護児童対策地域協議会』の実践事例集」を発出し,要保護児童対策地域協議会の活用促進・機能強化を図っていけるよう,同協議会を積極的に活用している自治体の取組事例を紹介しているほか,児童相談所や市町村が医療機関と連携するに当たり留意すべき事項を周知する「児童虐待の防止等のための医療機関との連携強化に関する留意事項について」(通知)や,要支援児童及び特定妊婦の把握や支援に関する留意事項を示した「養育支援を特に必要とする家庭の把握及び支援について」(通知)等を発出し,関係機関が連携して適切な対応を行うことを推進している。
また,児童虐待への対応に関し,通告・相談への対応や調査,児童や保護者への支援における着眼点や事例等を盛り込み,虐待対応の参考となる「子ども虐待対応の手引き」(通知)や,「児童相談所運営指針」(通知)を改正した。
さらに,平成26年には,児童虐待問題における深刻な状況を踏まえ,8月に関係府省庁による児童虐待防止対策に関する副大臣等会議が開催され,同年12月の同会議においては,居住実態が把握できない児童への関係省庁で連携して行う新たな取組と併せて,児童虐待を未然に防ぐとともに,虐待を受けたとしても重篤化する前に迅速に発見し,的確に対応するための対応策について,以下の5項目を柱として取りまとめられた。
I.妊娠期からの切れ目ない支援のあり方
II.初期対応の迅速化や的確な対応のための関係機関の連携強化
III.要保護児童対策地域協議会の機能強化
IV.児童相談所が,虐待通告や子育ての悩み相談に対して確実に対応できる体制整備
V.緊急時における安全確認,安全確保の迅速な実施
(11) 児童虐待防止のために行う児童の死亡事例等の検証の実施
【施策番号86】
児童虐待による死亡事例等について,平成16年より,社会保障審議会児童部会の下に設置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」において,分析,検証し,事例から明らかになった問題点・課題から具体的な対応策を提言として,毎年取りまとめている。
(12) 再被害の防止に資する教育の実施等
【施策番号87】
ア 法務省においては,矯正施設に収容されている加害者に対し,被害者感情を理解させるためのオリジナルビデオ教材等を活用した「被害者の視点を取り入れた教育」を実施している(刑事施設においては,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」(平成19年6月からは「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」に名称変更)の施行に伴い,18年5月から,必要な者に対し同教育を義務付けて実施している。)。また,同教育の充実を図るため,18年度以降は,犯罪被害者等や支援団体から被収容者に対し直接講話するゲストスピーカー制度を拡大するとともに,23年度は,犯罪被害者等や犯罪被害者支援に係る関係者等を構成員として「被害者の視点を取り入れた教育」検討会を開催した。検討会の結果を受けて,ゲストスピーカーの協力を得つつ,同教育の充実を図ることとしている。
「被害者の視点を取り入れた教育」は,被収容者に対し,自らの犯罪と向き合い,犯した罪の大きさや犯罪被害者等の心情等を認識させ,犯罪被害者等に誠意を持って対応するとともに,再び罪を犯さない決意を固めさせることを目標としており,社会復帰後の犯罪被害者等への対応,再犯の防止等にいかされることが期待できる。
【施策番号88】
イ 法務省においては,性犯罪事犯者,ストーカー事犯者等の保護観察対象者に対しては,事案に応じて,違反した場合に仮釈放の取消し等の不良措置が執られることを前提とし,個々の保護観察対象者ごとに定められる特別遵守事項として,当該被害者への接触を禁止するなどの事項を設定していることに加えて,性犯罪者など,特定の犯罪的傾向を有する保護観察対象者に対し,専門的処遇プログラムを受講することについての特別遵守事項を設定し,これを守るよう指導監督している。また,事案に応じて,慰謝の措置や被害弁償に努めることなどの生活行動指針を設定し,これを守る努力をするよう指導監督している。
仮釈放等審理における意見等聴取制度の施行(平成19年12月)後は,仮釈放者及び少年院仮退院者については,犯罪被害者等から聴取した意見等を踏まえ,より一層適切に特別遵守事項を設定している。
【施策番号89】
ウ 法務省においては,保護観察対象者に対して,再び罪を犯さない決意を固めさせるとともに,犯罪被害者等の意向に配慮しながら誠実に対応することを促すため,しょく罪指導のためのプログラムを策定し,全国の保護観察所において,一定の重大な犯罪をした保護観察対象者に対し,以下のとおり個別指導を実施している。
〈1〉 自己の犯罪行為を振り返らせ,犯した罪の重さを認識させる。
〈2〉 犯罪被害者等の実情(気持ちや置かれた立場,被害の状況等)を理解させる。
〈3〉 犯罪被害者等の立場で物事を考えさせ,また,犯罪被害者等に対して,謝罪,被害弁償等の責任があることを自覚させる。
〈4〉 具体的なしょく罪計画を策定させる。
【施策番号90】
エ 「4 家庭教育支援チーム」参照