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第2章 犯罪被害者等のための具体的施策と進捗状況

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第2節 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

コラム10 児童ポルノ禁止法の改正について

平成26年6月18日,第186回通常国会において,児童ポルノ禁止法が改正され,同年7月15日から施行されました。

ここでは,本改正の経緯及び概要を説明します。

1 児童ポルノ禁止法改正の経緯

児童ポルノ禁止法とは,本改正後の正式名称を「児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(平成11年法律第52号)といいます。

この法律は,児童に対する性的搾取や性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性に鑑み,児童買春,児童ポルノに係る行為を規制し,処罰するとともに,これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることによって,児童の権利を擁護することを目的とするものです。

この法律は,平成11年に制定され,16年に改正されたところ,この改正から約10年の間,インターネット等の発達により児童ポルノ被害に遭う児童の数が増え続けたこと,国際社会から,日本においてもいわゆる単純所持罪(他人に提供する目的のない所持罪)を設けるべきとの強い要請があることに鑑み,議員立法による改正法案が国会に提出され,26年6月に衆・参両議院で審議の上可決されました。

2 改正の概要

(1) 児童ポルノの定義規定の改正

児童ポルノの定義は,児童ポルノ禁止法第2条第3項に定められていますが,そのうち第3号に定められている児童ポルノの定義が明確化され,「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に性的な部位(性器等若しくはその周辺部,臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの」(下線部が追加部分)となりました。

(2) 一般的禁止規定の新設

児童ポルノ禁止法第3条の2に,何人も,児童買春をし,又はみだりに児童ポルノを所持し,児童ポルノに係る電磁的記録を保管し,その他児童に対する性的搾取又は性的虐待に係る行為をしてはならない旨の一般的禁止規定が新設されました。

(3) 自己の性的好奇心を満たす目的での所持・保管罪の新設

児童ポルノ禁止法第7条第1項に,自己の性的好奇心を満たす目的で,児童ポルノを所持し,又は児童ポルノに係る電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて所持又は保管するに至った者であり,かつ,当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は,1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとする罰則が新設されました。

このような改正がなされたのは,これまでのような児童ポルノの供給側を中心とした処罰だけでは児童ポルノを根絶することはできず,需要側をも処罰対象とすることが必要であると考えられたことによるものです。

この罪については,本改正の施行日から1年間は適用しないと定められ,具体的には平成27年7月15日から適用が開始されることとなりました。

これは,この1年の間に,自己の性的好奇心を満たす目的で所持等している児童ポルノ及びこれに係る電磁的記録について,適切に廃棄等の措置を講ずることのできるよう猶予期間を設ける趣旨です。

(4) 盗撮による児童ポルノ製造罪の新設

児童ポルノ禁止法第7条第5項に,ひそかに児童ポルノに係る児童の姿態を写真,電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより,当該児童に係る児童ポルノを製造した者は,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処することとする罰則が新設されました。

「ひそかに」とは,「描写の対象となる児童に知られることのないような態様で」という意味であり,児童が利用する脱衣所に隠しカメラを設置して盗撮するような場合が典型例です。

(5) 心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等

児童ポルノ禁止法第15条が改正され,心身に有害な影響を受けた児童に対し,保護のための措置を講じる関係行政機関として,厚生労働省,法務省,都道府県警察,児童相談所及び福祉事務所が例示され,措置を講ずる主体及び責任が明確化されました。

また,第16条の2が新設され,社会保障審議会及び犯罪被害者等施策推進会議は,相互に連携して,心身に有害な影響を受けた児童の保護に関する施策の実施状況等について,当該児童の保護に関する専門的な知識経験を有する者の知見を活用しつつ,定期的に検証及び評価を行うものとされました。

(6) インターネットの利用に係る事業者の努力義務規定の新設

児童ポルノ禁止法第16条の3が新設され,インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその閲覧等のために必要な電気通信役務を提供する事業者は,捜査機関への協力,その管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとされました。


※ 本改正法やその要綱等は,法務省のホームページに掲載していますので,御覧ください
(http://www.moj.go.jp/keiji1/keiji11_00008.html)。

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