第2節 再被害防止のための連携
多くの犯罪被害者等は,被害に遭ったことにより,生命,身体等に重大な被害を受けるのみならず,加害者からの更なる被害ないしは更なる被害を受ける恐怖,不安に苦しめられる。再被害が現実になった場合には,より重大な結果が生じることもある。再被害に対する恐怖や不安は,犯罪被害者等の回復を妨げる大きな障害となり得るものであり,犯罪被害者等が再び平穏な生活を取り戻すためには,関係機関が連携して,再被害防止のための取組を適切に進めていくことが必要である。
ここでは,関係機関等の連携による再被害防止のための取組について紹介する。
1 「再被害防止要綱」に基づく再被害防止措置と出所情報通知制度
(1) 警察においては,「再被害防止要綱」に基づき,同じ加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を「再被害防止対象者」に指定し,再被害防止のための関連情報の収集,関連情報の教示・連絡体制の確立と要望の把握,自主警戒指導,警察による警戒措置,加害者への警告等の再被害防止措置を実施している。
これらの再被害防止措置の実施に当たっては,関係機関が密接に連携しており,法務省においては,犯罪被害者等が加害者との接触回避等の措置を講じることにより再被害を避けることができるよう,出所情報通知制度を実施し,警察から再被害防止措置上必要とする受刑者の釈放等に関する情報の通報要請があった場合,通報を行うのが相当であると認められるときは,受刑者の釈放等に関する情報(自由刑の執行終了による釈放予定と予定年月日・帰住予定地,仮釈放による釈放予定と予定年月日・指定帰住地等)を通報している(【施策番号70】,【施策番号77】参照)。
(2) また,警察においては,子供を対象とした暴力的性犯罪により刑事施設に服役している者の出所予定日,出所後の帰住予定先等の出所情報について,平成17年6月から,法務省から提供を受けている。出所者の更生や社会復帰を妨げないように配慮しつつ,犯罪の予防等への活用を図り,運用状況を検証して制度の見直しを経て,23年4月から訪問による所在確認や同意を前提とした面談を取り入れるなどの再犯防止措置を行っている(【施策番号71】参照)。