第2節 精神的・身体的被害の回復・防止への取組
コラム11 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律について
平成26年11月27日,私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成26年法律第126号)(いわゆる「リベンジポルノ防止法」)が成立しました。
この法律は,私事性的画像記録の提供等を処罰するとともに,特定電気通信役務提供者の損害賠償責任及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号)(以下「プロバイダ責任制限法」という。)の特例等について定めることにより,個人の名誉及び私生活の平穏の侵害による被害の発生又はその拡大を防止することを目的としています。
下記2については平成26年12月17日から,下記3については26年12月28日から施行されています。
1 定義
「私事性的画像記録」とは,性交又は性交類似行為に係る人の姿態や,衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって,殊更に人の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものなど,人の性的な姿態が撮影された画像に係る電磁的記録その他の記録をいい(第2条第1項),「私事性的画像記録物」とは,そのような画像を記録した写真や記録媒体等の有体物をいいます(同条第2項)。ただし,いずれも,撮影対象者において,第三者が閲覧することを認識した上で,任意に撮影を承諾し又は撮影をした画像に係るものは除外されます。
2 罰則
私事性的画像記録の提供等の行為は,名誉毀損罪(刑法第230条),わいせつ物頒布等の罪(同法第175条)や児童ポルノ禁止法違反の罪など,既存の犯罪に該当する場合もあると考えられますが,これらの規定により,処罰すべき行為の全てに対応できるとは言い切れず,処罰の間隙となる部分が生ずるおそれがあったことから,本法においては,そのような間隙をカバーするものとして,次のような罰則が新設されました。
○ 第三者が撮影対象者を特定することができる方法で,電気通信回線を通じて私事性的画像記録を不特定多数の者に提供した者や,私事性的画像記録物を不特定多数の者に提供し,又は公然と陳列した者に対しては,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金(第3条第1項,第2項)
○ 上記の行為をさせる目的で,電気通信回線を通じて私事性的画像記録を提供し,又は私事性的画像記録物を提供した者に対しては,1年以下の懲役又は30万円以下の罰金(同条第3項)
これらの罰則は,撮影対象者の性的プライバシーを保護することを目的とするものですが,公訴が提起された場合には,裁判手続を通じて更なるプライバシー侵害が生じるおそれがあることから,被害者等による告訴がなければ公訴を提起することができないこととされています(同条第4項)。
3 プロバイダ責任制限法の特例
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律の第4条にプロバイダ責任制限法の特例が設けられています。
具体的には,私事性的画像記録に係る情報がインターネット上に流通することによって名誉又はプライバシーを侵害されたとする人から,プロバイダが削除の申出を受け,当該情報の発信者に対して削除に同意するか否かについて照会し,照会から2日を経過しても発信者から削除に同意しないという回答がない場合,当該情報を削除したプロバイダは損害賠償責任を負わないことが規定されています※。
また,当該画像又は動画を撮影された人が亡くなっている場合,その人の「配偶者,直系の親族又は兄弟姉妹」であれば,プロバイダに当該情報の削除の申出ができることとされています。