第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



(8) 受刑者の作業報奨金を損害賠償に充当することを可能とする制度の十分な運用

 法務省において、これまでも、監獄法施行規則第76条第1項の規定に基づき、作業賞与金計算高を有している受刑者が、犯罪被害者に対する賠償のため同計算高の使用を申し出た場合は、情状により在監中であっても同計算高の三分の一を超えない金額で支給することができるとしていたが、平成18年5月24日に施行された、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」第77条第4項に規定を設け、受刑者が釈放前に作業報奨金の支給を受けたい旨の申出をした場合、その使用目的が被害者に対する損害賠償への充当等相当なものと認められるときは、支給時における報奨金計算額に相当する金額の範囲内で、申出の額の全部又は一部の金額を支給することができるとした。

 また、この制度を十分に運用するため、本制度について刑執行開始時における指導等の際に告知しているほか、居室内に整備している所内生活心得等の冊子に記載して周知を図っている。

(9) 暴力団犯罪による被害の回復の充実

 警察において、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)(以下「暴力団対策法」という。)等により、暴力団員による暴力的要求行為の相手方や暴力団員による犯罪の被害者等に対して、本人からの申出に基づき、暴力団員から受けた被害の回復等のための助言や交渉場所の提供等の援助を積極的に推進している。

 また、民間の活力を結集させ、暴力団追放運動を強力に推進することを目的とする都道府県暴力追放運動推進センター(以下「都道府県センター」という。)においては、暴力団対策法に基づき、民事訴訟費用の無利子貸付を行っている。

 平成10年ごろからは、暴力団を相手方とする民事訴訟支援を一層推進するため、各都道府県において、警察、都道府県センター、弁護士会の三者が、民事介入暴力事案の民事訴訟等において共同して対処することを内容とする「三者協定」を締結し、その後、そのための情報交換等を行う「民暴研究会」の設立が進められ、訴訟関係者に対する暴力団情報の提供や訴訟関係者の保護対策等の支援を行っている。

【事例《1》】

 平成7年に発生した山口組傘下組織と四代目会津小●(「金」へんに「矢」)傘下組織との対立抗争事件において、警戒中の警察官が誤射され、殺害された事案につき、遺族が山口組組長の使用者責任を問う民事訴訟を提起したため、京都府警察等は、情報提供、遺族や弁護団の保護対策の実施等により、遺族側を全面的に支援した。平成16年11月、最高裁判所は、山口組組長の使用者責任を認める判決を言い渡した(京都)。

【事例《2》】

 平成15年7月、神奈川県横浜市内において、稲川会傘下組織幹部らが、解体工事会社の会社員に暴行を加え、死亡に至らしめた事件につき、神奈川県警察は、弁護士会、都道府県センターと三者協定を締結して必要な支援を実施し、平成18年6月20日、稲川会総裁稲川角二等に対して使用者責任を追及する損害賠償請求訴訟が提起された(神奈川)。

暴力団追放ポスター1

暴力団追放ポスター2

出典:警察庁及び全国暴力追放運動推進センターホームページ



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