2「地方における途切れない支援の提供体制の強化に関する有識者検討会」の取りまとめ概要
本検討会の取りまとめでは、地方における途切れない支援の提供体制の強化に向け、以下のとおり、提言がなされた。
(1) 犯罪被害者等支援に携わる機関・団体に期待される役割
犯罪被害者等支援に携わる国、都道府県、市区町村、都道府県警察、民間被害者支援団体及びその他の関係機関・団体に期待される役割が整理され、各機関・団体において、自己の役割を認識することはもとより、相互に認識を共有した上で、その役割を積極的に果たしつつ、連携して対応すべきであるとされた。
特に、都道府県について、広域自治体として、(2)イで後述する「多機関ワンストップサービス」の中核的役割を担い、域内の犯罪被害者等施策を総合的に推進すること、市区町村について、住民に最も身近な基礎自治体であり、生活を支援する各種制度・サービスの実施主体として、犯罪被害者等のニーズに応じた支援を提供すること等が期待されているとされた。
(2) 地方における途切れない支援の提供体制の構築
ア 犯罪被害者等支援を充実させるための社会的基盤の充実強化
地方における犯罪被害者等支援を充実させるため、社会的基盤の充実強化として、全ての地方公共団体において、犯罪被害者等支援を目的とした条例※等の犯罪被害者等支援のための実効的な事項を盛り込んだ条例(以下「犯罪被害者等支援を目的とした条例等」という。)の制定及び犯罪被害者等支援のための計画等の策定がなされることが望ましいとされた。
また、日頃から、支援に携わる関係機関・団体が目的や基本認識を共有して、円滑な連携・協力を行うことができる相互に顔の見える関係作りが求められ、そのため、都道府県及び市区町村それぞれのレベルで関係機関・団体が参加する会議体を設け、犯罪被害者等支援の現状・課題の把握・改善、参加者の意識向上に向けた取組を行うことが望ましいとされた。
これらを受け、国に対し、地方公共団体における取組の後押しを行うための情報提供の充実や好事例の紹介等の取組が求められた。
イ 犯罪被害者等支援におけるワンストップサービスの実現
個別事案におけるワンストップサービスを実現するため、複数の異なる機関・団体で構成される「多機関ワンストップサービス」及び一つの機関・団体内における複数の部署で構成される「機関内ワンストップサービス」の双方を確立する必要があるとされた。
多機関ワンストップサービスとは、都道府県単位で構築することが想定され、犯罪被害者等からいずれかの機関・団体に相談や問合せを行えば、その相談等を受けた機関・団体を起点として、犯罪被害者等支援コーディネーター(以下「コーディネーター」という。)に情報が集約され、コーディネーターの調整の下、様々な機関・団体から犯罪被害者等のニーズに応じた支援が一元的に提供される仕組みであり、コーディネーターは都道府県に配置することが有効であるとされた。また、犯罪被害者等のニーズに応じた支援を提供するに当たり、それら支援を提供する関係機関・団体が集まる会議体(支援調整会議)を開催することが最も効率的かつ迅速な方法であるとされた。
機関内ワンストップサービスとは、都道府県や市区町村のように、複数の部署が様々な支援を所管している場合、犯罪被害者等がいずれの部署に相談や問合せを行っても、そのニーズを一元的に把握した上で、必要な情報・支援が積極的に提示・提供される仕組みであり、都道府県及び市区町村では、それぞれの総合的対応窓口を設置している部署が中核的役割を担うべきであるとされた。
これらを受け、国に対し、地方公共団体職員やコーディネーター向けの研修の実施、「地方公共団体アドバイザー」の配置・運用、専門的知見・ノウハウの活用、ワンストップサービスの手引きの作成・提供、ワンストップサービス実現のための援助の検討等の取組が求められた。

(3) 地方における途切れない支援を実現するための社会資源の充実強化
犯罪被害者等支援においては、犯罪被害者等を含む国民が利用できる既存の各種制度・サービスが確実に活用される必要があるとともに、犯罪被害者等に特化した支援制度・サービスの一層の充実強化が望まれるとされた。これを受け、国に対し、令和5年6月推進会議決定の項目<5>「犯罪被害者等のための制度の拡充等」の取組である各種社会保障・社会福祉等制度を犯罪被害者等も利用し得ることの周知等を継続的に行うこと、地方公共団体が犯罪被害者等に特化した支援制度・サービスの導入を検討するに当たってその検討に資する情報提供を行うこと等の取組が求められた。
犯罪被害者等支援におけるDX推進については、犯罪被害者等の負担軽減と支援者の利便性向上のため、国に対し、犯給制度の裁定申請等手続のオンライン化、ポータルサイトの充実の検討等の取組が求められた。