2 「犯罪被害給付制度の抜本的強化に関する有識者検討会」の取りまとめ概要
(1) 犯罪被害給付制度の見直しに関する提言
犯給制度について速やかに見直しを図り、早期に犯罪被害者等に対する経済的支援を充実させるために、以下の提言が取りまとめられた。
ア 遺族給付金の支給最低額の一律引上げ
幼いこども等、犯罪被害者に収入がない場合における遺族に対する給付額が低い水準にとどまっている現状にあることから、生計維持関係遺族(犯罪行為が行われた当時、犯罪被害者の収入によって生計を維持していた一定の遺族をいう。以下同じ。)がない場合であっても、少なくとも、他の公的給付等制度において遺族に当たる方が受給できる最低額を下回る部分については、これと同程度の水準にまで、遺族給付金の支給最低額を引き上げるべきとされた。

イ 遺族自身に生じる影響を踏まえた遺族給付金の支給額の増額
遺族には、犯罪被害者が死亡したことによる収入の途絶以外にも、残された遺族が精神的ショック等から十分に就労できなくなったり、犯罪被害に関連した支出により経済的に打撃を受けたりするなど、犯罪被害に起因する様々な生活上の経済的負担が生じていることから、このことを踏まえた遺族給付金の支給額の増額が図られるべきであるとされた。
ただし、犯罪被害によって遺族が置かれる状況は様々である中で、休業した方に追加的な給付をするような制度とすると、無理をおしてまで仕事を継続したような方に給付することができなくなってしまい適当ではない点が指摘された。また、速やかに給付することが可能な制度とする必要があるほか、給付額の多寡で精神的ショックの程度が評価されるかのような制度はふさわしくないことから、他の制度との均衡にも配意しつつ、画一的な基準によって対象・金額を定め、遺族給付金の支給額の増額を図るべきとされた。
ウ 休業加算額及び障害給付金の支給最低額の一律引上げ
上記アのとおり、遺族給付金の支給最低額を他の公的給付等制度の給付水準を参考に引き上げることに伴い、遺族給付金と同様に犯罪被害者の収入を基礎としつつ最低額を設けている重傷病給付金における休業加算額及び障害給付金についても、他の公的給付等制度より低い給付水準となっている部分については、引上げを図るべきとされた。
(2) 残された課題
犯罪被害者等には犯罪被害を原因とする様々な経済上の負担があることや、加害者から損害賠償を十分に受けることができていない現状について、本検討会においては、提言の内容に加え、現行の犯給制度の算定式を前提としつつも個別の項目について更に見直しが考えられるのではないか、犯罪被害者等が民事訴訟で取得した債務名義に基づいて、加害者の犯罪被害者等に対する損害賠償債務を国が犯罪被害者等に立て替えて支払った上で、国が加害者に対して求償するいわゆる「立替払制度」等の新たな制度が考えられないのかなど、必ずしも現行の犯給制度にとらわれることなく、制度の性格を含めた経済的支援の在り方についての議論があった。
これらの議論は、加害者に一義的責任がある中で国の責務・役割をどう考えるか、財源をはじめ、公的な給付制度・社会保障制度等の中で、給付水準や国民負担との関係をどう考えるかなど、国家財政や社会保障等の様々な制度にも関わるものであり、一致した結論を得るに至らなかったが、犯罪被害者等の損害を回復し、犯罪被害者等を経済的に支援するための取組(損害回復・経済的支援等への取組)を考えるに当たって必要となる様々な視点も示されたことから、「残された課題」として、以下の各項目について議論が整理された。
○ 現行の犯給制度の算定式の各構成要素を見直すことによる給付額の引上げについて
○ 「立替払」について
○ 損害回復・経済的支援の在り方について
○ 財源について
○ 過去の犯罪被害により現在も困難な状況にある犯罪被害者等に対する支援について
(3) 損害回復・経済的支援等への取組
加害者の損害賠償責任をいかにして履行させるかということを含め、損害回復・経済的支援等への取組の在り方については、本検討会における議論で示されたような様々な観点から検討する必要があり、その財源も含め、広く国民の理解が得られるよう努めながら、犯罪被害者等施策推進会議の下で犯罪被害者等基本計画に盛り込むべき事項の検討並びに施策の実施状況の検証、評価及び監視の補佐を行う基本計画策定・推進専門委員等会議での議論を中心として、刑事、民事、社会保障、財政等の様々な専門分野からの視点も踏まえて、犯罪被害者等施策に関係する府省庁が連携し、政府全体として引き続き検討すべきであるとされた。