特集 緊急事態への備えと対応

第1部 特集・トピックス
特集 緊急事態への備えと対応

特集に当たって

本年の警察白書の特集テーマは、「緊急事態への備えと対応」です。

警察は、大規模災害の発生に際して、被災者の避難誘導や救出救助、各種交通対策、行方不明者の捜索、検視・身元確認、被災地における各種犯罪等への対策等の幅広い災害警備活動に取り組んでいます。平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災をはじめ、これまでの災害への対応を通じて得られた様々な反省や教訓を踏まえ、災害派遣部隊の設置・強化、装備資機材の整備等、大規模災害発生時の対処能力の向上を図ってきましたが、近年も、長期間に及ぶ複雑かつ困難な対応を要する災害が続発しており、発生が懸念される首都直下地震及び南海トラフ地震はもとより、様々な事態に的確に対処できるよう、引き続き、人的・物的体制を不断に点検し、必要な拡充を図っていく必要があります。

テロ対策については、その未然防止のため、国内外の情報収集・分析の強化、テロ対処部隊の充実強化、官民連携の推進等、各種対策を講じてきました。近年、外国においては、ISILやAQ(アル・カーイダ)等によるインターネット上のプロパガンダに影響されて過激化した者によるテロ事件が発生しているほか、邦人が被害に遭う事件も発生しています。また、車両、刃物等を用いたテロ事件や社会の機能を麻痺(ひ)させるサイバーテロが発生するなど、テロの手法も変容してきており、我が国においても、情勢に応じた対策を講じていくことが必要となります。

天皇陛下の御即位に伴う儀式等やG20大阪サミット、ラグビーワールドカップ2019等の大規模行事が開催される令和元年(2019年)に続き、令和2年には、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会も控えており、警察は、個々の行事を捉えたテロ対策にも万全の対応が求められます。

この特集では、第1節で大規模災害における警察活動や災害対処能力向上のための警察の取組について記述し、第2節では、国内外のテロの発生状況、課題、それらに対する警察のテロ対策について記述します。そして第3節では、今後の警察の大規模災害、テロ等緊急事態への対応を展望するとともに、これら緊急事態への対処能力向上のために平成31年に新設された警備運用部について記述します。

この特集が、大規模災害、テロ等の緊急事態における警察の役割や取組についての国民の皆様の理解を深めるとともに、今後の緊急事態における警察活動の在り方について考えていただく一助となれば幸いです。



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