トピックス

トピックスIII 大麻事犯の状況と警察の取組

(1)大麻事犯の状況

我が国において、大麻事犯は、覚醒剤事犯に次いで検挙人員の多い薬物事犯である(注)

大麻事犯の年齢別検挙人員の推移は、図表III-1のとおりである。大麻事犯の検挙人員は、平成22年から25年にかけて減少したが、26年に増加に転じ、29年中は3,008人と、警察庁が保有する昭和33年以降の統計で最多となった。近年の大麻事犯の特徴としては、全検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。

また、高校生グループによる大麻事犯を複数検挙したことなどにより、29年中の高校生の検挙人員は過去20年間で最多の53人となるなど、若年層による大麻の乱用の拡大が深刻化している。

注:大麻の押収量については、140頁参照

 
図表III-1 大麻事犯の年齢別検挙人員の推移(平成10~29年)
図表III-1 大麻事犯の年齢別検挙人員の推移(平成10~29年)
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MEMO 大麻の有害性

近年、大麻は無害であるなどの誤った情報がインターネット上等でみられるが、大麻の花穂や葉等に含まれるTHC(注)は、記憶障害等を引き起こすほか、知的水準の低下や幻覚、妄想等が発現する大麻精神病の原因になると考えられている。また、大麻の使用の影響による交通事故や、大麻の乱用者による犯罪や自殺等が発生していることから、大麻の乱用は、人体にとって有害であるだけでなく、社会の安全を脅かすものといえる。

注:「テトラヒドロカンナビノ-ル(Tetrahydrocannabinol)」の略名

(2)警察の取組

① 供給の遮断

大麻は、その大半が密輸入されている覚醒剤等と異なり、国内で栽培されたものも多く取引されており、平成29年中は、暴力団員等が倉庫や雑居ビル等で大量の大麻を栽培していた事案が相次いで検挙された(注)。警察では、薬物犯罪組織の壊滅や供給ルートの解明に向け、大麻の栽培事犯、密売事犯等の徹底検挙に努めている。

注:大麻事犯への暴力団の関与については、141頁参照

CASE

東組傘下組織組長(54)らは、28年7月頃から同年10月にかけて、和歌山県内の倉庫において大麻を栽培した。同年11月までに、同組長ら4人を大麻取締法違反(営利目的栽培等)で逮捕した。また、同事件の捜査を端緒として、東組傘下組織幹部(43)らが、同月頃から29年2月にかけて、岐阜県内の倉庫において大麻を栽培していたとして、同年3月までに、同幹部ら5人を同法違反(営利目的栽培等)で逮捕した。

両事件において、合計約2万2,000本の大麻草、乾燥大麻約6.7キログラム等を押収した(奈良、岐阜)。

 
栽培されていた大麻
栽培されていた大麻

MEMO 違法な大麻の栽培場所の特徴

違法な大麻の栽培が行われている雑居ビルやマンション等の部屋には、大麻の開花時期を調節するなどの理由から、

○ 常時エアコンを稼働させている

○ 窓を黒色のビニール等で塞いで遮光している

○ 園芸用の資材や枯葉等が廃棄される

などの不審な点がみられるため、警察では、地域住民に対して情報提供を呼び掛けている。

② 需要の根絶

近年、海外の法制度に関する断片的な情報等に基づき、国民の間に大麻の有害性やその乱用の違法性は低いなどといった誤った認識が広まっていることが強く懸念される。警察では、大麻事犯の検挙の徹底を図るとともに、関係機関・団体と連携し、大麻の乱用の拡大が深刻化している若年層を対象とした広報啓発活動を通じて大麻の有害性等を訴え、その乱用の拡大防止に努めている。

 
薬物乱用防止教室
薬物乱用防止教室

MEMO 様々な形状の大麻

我が国において押収される大麻は、大麻草を乾燥させて砕いた乾燥大麻が一般的であるが、近年では、大麻草からTHCを高濃度で抽出した液状又はワックス状の大麻や、大麻草から抽出したTHCを混ぜた食品等も押収されている。警察では、これらの形状の大麻が更なる大麻の乱用の拡大につながるおそれがあることから、徹底した取締りに努めている。


乾燥大麻 大麻樹脂 液状の大麻 ワックス状の大麻 THCを含むあめ
乾燥大麻 大麻樹脂 液状の大麻 ワックス状の大麻 THCを含むあめ


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