トピックス

トピックスII 犯罪被害給付制度の充実

(1)犯罪被害給付制度の概要

犯罪被害給付制度は、日本国内において行われた通り魔殺人等の故意の犯罪行為により不慮の死亡、重傷病又は障害という重大な被害を受けたにもかかわらず、公的救済や損害賠償を得られない犯罪被害者又はその遺族に対し、社会の連帯共助の精神から、国が一定の給付金を支給するものである。この制度は、犯罪被害者支援法(注)に基づき、昭和56年1月に開始され、犯罪被害者及びその遺族の犯罪被害等を早期に軽減するとともに、これらの者が再び平穏な生活を営むことができるよう支援することを目的としている。

注:犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律

 
図表II-1 犯罪被害給付制度
図表II-1 犯罪被害給付制度
 
図表II-2 犯罪被害給付制度の運用状況
図表II-2 犯罪被害給付制度の運用状況
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(2)犯罪被害給付制度の改正

平成28年4月に閣議決定された第3次犯罪被害者等基本計画(注1)においては、犯罪被害給付制度の課題について、警察庁において実態調査等を行い、その結果を踏まえた検討を速やかに行って、必要な施策を実施する旨が盛り込まれた。

これを踏まえ、警察庁では、29年4月から、「犯罪被害給付制度に関する有識者検討会」を開催し、同年7月に提言が取りまとめられた。30年3月、同提言を踏まえ、犯罪被害者支援法施行令(注2)及び犯罪被害者支援法施行規則(注3)の一部を改正し、同年4月に施行された。

当該改正の主な内容は、次のとおりである。

注1:218頁参照

注2:犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律施行令

注3:犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律施行規則

① 重傷病給付金の給付期間の延長

重傷病給付金の給付期間について、犯罪行為により負傷し、又は疾病にかかった日から起算して1年を経過するまでの間とされていたものを、3年を経過するまでの間に延長した。

② 仮給付金の額の制限の見直し

犯罪被害に係る事実関係に関し、速やかに裁定をすることができない事情があるときに支給することが可能な仮給付金の額について、支給決定時点で認定が可能な犯罪被害者等給付金に相当する額の3分の1が上限とされていたところ、当該犯罪被害者等給付金に相当する額までの支給を可能とした。

③ 幼い遺児がいる場合における遺族給付金の額の引上げ

遺族給付金の額については、生計維持関係遺族の人数に応じ、一般に遺族の生活の回復及び自立に必要とされる期間(10年)を勘案して定められているところ、犯罪行為が行われた時から10年が経過しても18歳に満たない遺児がいる場合についての遺族給付金の額を引き上げた。

④ 親族間犯罪における減額又は不支給事由の見直し

親族間の犯罪被害に係る犯罪被害者等給付金について、犯罪行為が行われた時に親族関係が破綻していたと認められる事情がある場合等には、当該親族関係を理由とした支給の制限を行わないこと、犯罪行為が行われた時に18歳未満の者が犯罪被害者等給付金を受給する立場にあるときは、その者と加害者との間の親族関係を理由とした支給の制限を行わないこととするなどの見直しを行った。

 
図表II-3 犯罪被害給付制度の改正の概要
図表II-3 犯罪被害給付制度の改正の概要


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