トピックス

トピックスI サイバー犯罪・サイバー攻撃対策に関する国際連携の推進

(1)国際捜査共助

国境を越えて行われるサイバー犯罪・サイバー攻撃(注1)について、国内における捜査で犯人を特定できない場合は、外国捜査機関の協力を求める必要がある。

警察庁では、サイバー犯罪に関する条約(注2)、刑事共助条約(協定)(注3)、ICPO(注4)、サイバー犯罪に関する24時間コンタクトポイント(注5)等の国際捜査共助の枠組みを活用し、国境を越えて行われるサイバー犯罪・サイバー攻撃に対処している。

注1:118頁参照

注2:サイバー犯罪から社会を保護することを目的として、コンピュータ・システムに対する違法なアクセス等一定の行為の犯罪化、コンピュータ・データの迅速な保全等に係る刑事手続の整備、犯罪人引渡し等に関する国際協力等につき規定している。平成24年に我が国について発効した。

注3:229頁参照

注4: International Criminal Police Organization(国際刑事警察機構)の略

注5:平成9年(1997年)12月のG8司法内務閣僚会合で策定された「ハイテク犯罪と闘うための原則と行動計画」等に基づき設置されたもので、30年5月現在、82の国・地域に設置されている。

MEMO 「WannaCry」感染事案におけるICPOと連携した取組

平成29年5月、世界各国において政府機関、病院、銀行、企業等のコンピュータが、「WannaCry」等と呼ばれるランサムウェア(注)に感染させられる事案が発生し、30年5月末現在、我が国でも37件の被害が確認されている。警察庁では、ICPOが開催した同事案に関する電話会議に参加し、各国の被害状況や捜査状況等について情報交換を行ったほか、ICPOが発行する国際手配書の作成に協力した。

注:感染したコンピュータの機能を制限し、その制限の解除と引換えに金銭を要求するコンピュータ・ウイルス

 
「WannaCry」が仮想通貨を要求するコンピュータ画面
「WannaCry」が仮想通貨を要求するコンピュータ画面

CASE

警察庁では、29年度から、ICPOに対し、警察庁ウェブサイト「@police」において公開しているインターネット観測結果(注)の提供を行うことで、ICPO及びICPO加盟国におけるサイバー攻撃対策に貢献するとともに、ICPO及びICPO加盟国とのサイバー攻撃に関する連携強化を図っている。

注:126頁参照

(2)外国捜査機関等との連携の推進

① 外国捜査機関等との情報交換等

警察庁では、外国捜査機関等との情報交換を通じ、サイバー空間の脅威に対する対処能力を強化している。

例えば、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、これまでのオリンピック・パラリンピック競技大会開催国であるブラジル及び韓国の捜査機関等と、各大会において実施したサイバーセキュリティ対策等について情報交換を行っている。

また、FBI(注)による米国内外の捜査機関等の職員を対象としたサイバー犯罪対策等に関する研修に我が国の警察職員を派遣するなどして、サイバー空間の脅威への対処に関し、外国捜査機関等との連携を強化している。

注:Federal Bureau of Investigation(米国司法省連邦捜査局)の略

② 国際会議等を通じた情報共有等

警察庁では、多国間における情報交換や協力関係の確立等に積極的に取り組んでおり、平成29年中は、G7ローマ/リヨン・グループ(注)に置かれたハイテク犯罪サブグループ、ICPOが主催するサイバー犯罪に関するユーラシア地域作業部会、日米サイバー対話、日・ASEANサイバー犯罪対策対話等の国際会議に参加したほか、東京でICPOと日中韓香サイバー犯罪対策課長級会合を共催するなど、サイバー空間の脅威に関する情報の共有や、国際捜査共助に関する連携強化等を推進している。

また、アジア大洋州地域サイバー犯罪捜査技術会議を12年度から毎年度開催し、情報技術解析に関する知識・経験等の共有を図っている。29年度は、アジア大洋州地域の国等の情報技術解析担当官やサイバー犯罪捜査官のほか、この分野で先進的な取組を行う英国国家犯罪対策庁、フランス国家憲兵隊、FBI、外国の学術機関等が参加し、情報技術解析の高度化・効率化や、サイバー犯罪対策に係る国際連携及び官民連携に関する発表・討議、情報技術解析に関する演習等を実施した。

注:昭和53年(1978年)にボン・サミットを契機に発足したG8テロ専門家会合(G8ローマ・グループ)と平成7年(1995年)にハリファックス・サミットで設置されたG8国際組織犯罪対策上級専門家会合(G8リヨン・グループ)が、平成13年(2001年)の米国における同時多発テロ事件以降合同で開催されているもので、国際組織犯罪対策やテロ対策等について検討している。なお、平成26年(2014年)3月より、G7として実施している。

 
アジア大洋州地域サイバー犯罪捜査技術会議
アジア大洋州地域サイバー犯罪捜査技術会議

(3)国際協力の推進

警察庁では、サイバー空間の脅威への諸外国の対処能力の向上を図るため、外務省や独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携して外国捜査機関等に対する支援を行っている。

MEMO 外国捜査機関等の職員に対する研修の実施

警察庁では、平成26年度から、外国捜査機関等のサイバー犯罪対策等に従事する職員を招へいし、サイバー空間の脅威への対処に関する知識・技術を習得させるとともに、外国捜査機関等との協力関係を強化することを目的とした研修を実施している。29年1月から同年2月にかけての研修では、ICPOとの共催により、「デジタルセキュリティチャレンジ」と呼ばれる実践的な訓練を実施し、各国の研修員及び我が国の警察職員から構成される複数の班が、医療機関のコンピュータがランサムウェアに感染して機能が制限され、その制限の解除と引換えに仮想通貨を要求されたことを想定した訓練に共同で取り組んだ。

また、29年度から、ベトナム公安省の職員を受け入れて、サイバーセキュリティ対策等に関する知識・技術の習得を目的とした研修を行っている。

 
研修の状況
研修の状況


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