特集 近年における犯罪情勢の推移と今後の展望

第1部 特集・トピックス
特集 近年における犯罪情勢の推移と今後の展望

特集に当たって

本年の警察白書の特集テーマは、「近年における犯罪情勢の推移と今後の展望」です。

我が国の犯罪情勢は、平成に入って徐々に悪化し、特に街頭犯罪及び侵入犯罪の増加によって、刑法犯認知件数が平成8年以降7年連続で戦後最多を更新し、14年には約285万件に達しました。この頃、安全な居場所であるべきはずの自宅で白昼強盗の被害に遭ったり、路上でひったくりの被害に遭ったりするという事案が後を絶たず、国民の体感治安も悪化しました。

こうした状況を受け、政府は、15年12月、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を策定し、国民、地方公共団体、民間事業者等の協力を得つつ、同計画に基づく施策を着実に推進しました。また、警察庁では、捜査力・執行力の充実・強化に取り組むとともに、同年8月、街頭犯罪及び侵入犯罪対策の推進等を内容とする「緊急治安対策プログラム」を策定するなどして、総合的な犯罪対策を開始しました。このような取組や様々な社会的背景もあって、街頭犯罪及び侵入犯罪は大幅に減少し、29年中の刑法犯認知件数は14年の3分の1以下にまで減少するなど、治安情勢及び体感治安には一定の改善がみられます。

一方、近年、ストーカー事案・配偶者からの暴力事案、児童虐待等の人身の安全を早急に確保する必要の認められる事案(以下「人身安全関連事案」という。)、特殊詐欺、サイバー犯罪等のこれまでの街頭犯罪及び侵入犯罪に重点を置いた犯罪対策では捉えられない治安事象が生じており、世論調査等からも国民が不安を感じていることがうかがわれます。これらの犯罪は、少子高齢化に伴う人口・家族構造の変化、サイバー空間における国民生活や経済活動の一層の広がり等、社会情勢が変化していく中で、これまで以上に重要な課題となると考えられます。

本年の警察白書では、まず第1節で犯罪情勢として、主に14年にピークとなった刑法犯認知件数の推移を概観します。第2節では、政府、警察、地方公共団体、民間事業者等による具体的な取組事例を紹介するなど、これまでの犯罪対策を振り返るとともに、犯罪情勢をめぐる社会的背景を紹介します。第3節では、治安に関する国民の意識の現状のほか、人身安全関連事案、特殊詐欺、サイバー犯罪等の犯罪情勢とその対策を紹介し、今後の犯罪対策の方向性について述べます。

良好な治安は、様々な社会制度や経済活動によって支えられていることから、関係機関・団体、国民一人一人の理解と協力を得ながら、社会全体で犯罪対策に取り組む必要があります。

この特集が、国民の皆様の警察の取組に対する理解を深めるとともに、今後の犯罪対策の在り方について考えていただく一助となれば幸いです。



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