第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動 

3 地域社会との連携による治安回復への取組み

(1)防犯ボランティア団体の活動
 犯罪の発生を抑止し、安全で安心なまちづくりを実現するためには、警察活動を充実強化させるだけでなく、国民が防犯意識を高め、自主的な防犯活動を推進することにより、犯罪に強い社会を構築することが重要である。
 警察では、地域住民の自主防犯活動に対する支援を行っているが、近年の地域の治安の悪化について強く懸念する住民等によって、多くの防犯ボランティア団体が結成されている。平成17年12月末現在、警察が把握している団体数は全国で19,515団体(前年比11,436団体増)(注1)であった。また、これらに所属して活動するボランティアの総数も約119万人(前年比約67万人増)であり、その多くは、町内会、自治会その他の地域住民による団体や子どもの保護者の団体である。

注1:平均して月1回以上の活動実績(単に意見交換や情報交換のみを行う会議を除く。)があり、かつ、構成員が5人以上の団体に限る。また、防犯協会、少年警察関係団体、2以上の都道府県にまたがって活動している団体は除く。


 
 図2-31 防犯ボランティア団体数の推移(平成15~17年)
図2-31 防犯ボランティア団体数の推移(平成15~17年)
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(2)自主防犯活動に対する支援
 警察では、平成16年6月に警察庁が取りまとめた「『犯罪に強い地域社会』再生プラン」及び17年6月に犯罪対策閣僚会議で決定された「安全・安心なまちづくり全国展開プラン」に基づき、自主防犯活動に対する支援を推進している。
 17年度及び18年度には、活動拠点を設置して行われる自主防犯活動を支援する「地域安全安心ステーション」モデル事業を全国で実施している。この事業は、警察が、消防、学校及び市区町村と連携して、地域住民やボランティア団体が管理・運営する「地域安全安心ステーション」の整備を推進するものである(注2)。この「地域安全安心ステーション」は、防犯パトロールの活動拠点、地域安全情報(注3)の集約・発信拠点、自主的活動への参加拡大の拠点となるものである。この事業では、地域住民による防犯パトロール等の自主防犯活動に対し、地域安全情報の提供、防犯講習・防犯訓練や警察との合同パトロールの実施、防犯パトロール用品(懐中電灯、防犯ブザー、腕章等)の無償貸付け等の支援を行っている。また、警察では、青色回転灯を装備した自動車による自主防犯パトロール活動に対する支援を行っている。
 さらに、17年11月、警察庁は、ウェブサイト内に自主防犯ボランティア活動支援サイトを立ち上げた。このサイトでは、既存の自主防犯ボランティア団体の全国ネットワークの形成や新たな団体の結成を促進するため、活発な活動を行っている自主防犯ボランティア団体の好事例を紹介するなど、約3,500の団体の活動状況を掲載している。

注2:「犯罪から子どもを守るための対策」(第2章第3節第1項コラム1(117頁)参照)を受け、登下校時の警戒等子どもの安全確保のための活動に対する支援としても推進している。
注3:地域住民にとって身近な犯罪等の発生状況や犯罪類型別の被害防止方法等、地域の安全確保にとって必要な情報


 
 青色回転灯を装備した自動車による自主防犯パトロール
写真 青色回転灯を装備した自動車による自主防犯パトロール

(3)犯罪情報や地域安全情報の提供
 犯罪の防止に関する地域住民の意識を高め、また、地域住民が行う自主防犯活動が効果的なものとなるよう、警察では、地域住民に向けて、警察の有する犯罪情報や地域安全情報を様々な手段・媒体を用いて提供している。
 また、情報提供がより具体的で有用なものとなるよう、地域ごとの犯罪の発生件数やその増減の状況を伝えるだけでなく、多発している犯罪の種類や犯行手口を分析し、特にどのようなことに気を付けなければならないことを分かりやすく示し、ひったくり、空き巣、性犯罪等から身体や財産を守るための方法の普及を図っている。
 さらに、情報提供の手段・媒体についても、警察官が巡回連絡で家庭や事業所等を訪問する機会や自治会の会合に出席する機会を活用したりするほか、電子メールやウェブサイト、地方公共団体の広報誌等の各種媒体を活用したりするなど、できる限り多くの者に情報が届くよう工夫している。

事例1
 茨城県警察では、平成17年4月からウェブサイトで、小学校の校区ごとに調べることができる地域安全情報を提供している。このウェブサイト上では、注意が必要な場所、危険箇所等に印が付けられているほか、子ども110番の家等の防犯関連施設、事件・事故の発生場所、避難場所等が掲載されている。

事例2
 大阪府警察では、18年1月から、「安まちメール」と称して電子メールによる情報発信を行っている。これは、事前に携帯電話のメールアドレスを登録した利用者に対し、犯罪情報等を電子メールによりリアルタイムで提供するものである。利用者は、子どもへの声掛け事案や痴漢等の子ども被害情報、通り魔、ひったくり、路上強盗の被害情報の4種類の情報から提供を希望するものを選択することが可能なほか、電子メールを受信する時間帯については、24時間のほか、朝、昼又は晩の3種類の時間帯を、対象地域については市区町村単位で、それぞれ自由に選択することができるようになっている。

 
 ウェブサイトによる情報発信
写真 ウェブサイトによる情報発信

 
 携帯電話の電子メールによる情報発信
写真 携帯電話の電子メールによる情報発信

 第3節 安全で安心な暮らしを守る施策

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