第1章 組織犯罪との闘い 

カ 銃器の密輸・密売事犯における関係

 我が国で犯罪に使用されている真正けん銃の8割以上は外国製のものであり,これらは,何らかの経路で我が国に密輸入されたものである。一方,けん銃は,暴力団にとって最も重要な武器とされ,暴力団がけん銃の密輸入を図るため,けん銃の仕出地出身の外国人と接近し関係を構築している状況がうかがわれる。
 共犯事件に関する調査では,日本向け貨物船のフィリピン人船員が,フィリピン国内において,フィリピン人から日本へのけん銃の密輸を依頼され,一定額の報酬と引き換えに運び屋となって,日本側荷受人である暴力団関係者に引き渡そうとするなど,日本の暴力団組織と外国のけん銃ブローカーが密接な関係を構築していると推察される事例が見受けられた。
 また,けん銃不法所持事件では,台湾マフィアがけん銃の譲受け・譲渡しを通じて,暴力団と密接な関係を有していることがうかがわれる事例が見受けられた(銃器の密輸入については3(3)イ参照)。

事例1
 フィリピン人A,Bは,貨物船の船員であるが,埠(ふ)頭に係留中の同船において,けん銃5丁とこれらに適合する実包81発,大麻19キログラムを所持していたところ,警察,税関及び海上保安庁による同船に対する合同の船内検査により,同けん銃及び実包が発見され,10年3月,逮捕された。
 Aは,取調べで,「フィリピンの港に入港中,2人のフィリピン人男性X,Yに「金になる仕事がある」と声を掛けられ,港近くのホテルに連れて行かれ,X,Yのボスと思われる男の部屋において報酬25万ペソでけん銃と大麻の密輸を引き受けた。その日のうちに,Xと知らない男と3人で,けん銃と大麻の入ったバッグを自分の船室まで運び,ロッカー内に隠匿した。一人での密輸は困難であると判断して,船員仲間のBを報酬5万ペソで仲間に入れた」と供述するとともに,日本側荷受人について,写真から指定暴力団関係者である男を特定した(岩手,警視庁,熊本)。

事例2
 台湾人Aは,台湾人Xと飲食店の共同経営をめぐってトラブルとなり,台湾人B,Cを連れて,Xの経営する飲食店に赴き,準備していたけん銃をXに突き付けてタクシーに連れ込み,別の店舗に逮捕監禁し,脅迫するなどした。しかし,被害関係者からの110番通報により,A,B,Cの3名は警察に逮捕され,使用したけん銃2丁が押収された。けん銃の入手先について,指定暴力団員から100万円を担保に借り受けた旨供述し,写真により指定暴力団幹部Dを特定した。同人は覚せい剤中毒で事故死した(鹿児島)。

 

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