警察庁 National Police Agency

警察庁ホーム  >  犯罪被害者等施策  >  公表資料の紹介:犯罪被害者白書  >  平成24年版 犯罪被害者白書  >  2 第2次犯罪被害者等基本計画による施策内容

[目次]  [戻る]  [次へ]

2 第2次犯罪被害者等基本計画による施策内容

第2次犯罪被害者等基本計画(以下「第2次基本計画」という。)の策定に当たっては、合計35の犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体から要望を聴取する機会を設けた。そして、寄せられた要望について論点整理を行った上、基本計画策定・推進専門委員等会議において第2次基本計画に盛り込むべき施策を検討し、犯罪被害者等推進会議において第2次基本計画案を決定し、平成23年3月25日、第2次基本計画が閣議決定された。

犯罪被害者団体・犯罪被害者支援団体等からは、とりわけ、性犯罪被害者の被害の深刻さ及びその後の被害者等がおかれる環境にかんがみ、より性犯罪被害者のニーズに寄り添う施策の充実を強く望む意見が出されていたことを受け、第2次基本計画においては、犯罪被害者等一般に向けた施策の充実もさることながら、性犯罪被害者支援に焦点を当てた施策が多数掲げられている。

もとより、第2次基本計画は、平成27年度末までの5年間を計画期間とするものであり、まだ途中経過に過ぎない施策も含まれてはいるが、各施策を推進する上でも、性犯罪被害に対する国民の理解の増進が望ましく、本特集では、第2次基本計画の各施策の中でも、特に、性犯罪被害者の支援に重点をおいた施策、あるいはその趣旨を踏まえて実施されている施策について紹介する。

(1) 損害回復・経済的支援等への取組

○ カウンセリング等心理療法の費用の公費負担についての検討

平成23年3月、犯罪被害者等施策推進会議の下に、有識者及び関係省庁職員から構成される「犯罪被害者等に対する心理療法の費用の公費負担に関する検討会」が設置された。

同検討会では、これまで、性犯罪被害者等犯罪被害による心理的外傷を原因とした深刻な精神的被害を受けた犯罪被害者等に対する心理療法の必要性・有効性や、費用負担を含めた実施状況等について、有識者構成員、精神科医、臨床心理士、カウンセラー等からのヒアリングを行った。また、既存の心理療法の公費負担に関する制度について現状を把握するとともに、論点整理を行った。

今後は、各論点について検討をしていくこととなる。

○ 性犯罪被害者の医療費の負担軽減

警察庁において、平成18年度から、性犯罪被害者に対し、緊急避妊などに要する経費(初診料、診断書料、性感染などの検査費用、人工妊娠中絶費用などを含む。)を公費により負担することにより、犯罪被害者等の精神的・経済的負担の軽減を図っている(性犯罪被害者に対する緊急避妊などに要する経費(国庫補助金):23年度114百万円、24年度109百万円)。

今後も、都道府県警察に対して、性犯罪被害に伴う精神疾患についても犯罪被害給付制度の対象になることの周知も含め、本制度の適切な運用について指導していく。

(2) 精神的・身体的被害の回復・防止への取組

○ 警察における性犯罪被害者に対するカウンセリングの充実

警察において、カウンセリングに関する専門的知識や技術を有する職員の配置、精神科医や民間のカウンセラーとの連携などにより、犯罪被害者等の精神的被害を軽減するための相談・カウンセリング体制を整備している。現在、全ての都道府県警察において、部外の精神科医、臨床心理士などに対し、犯罪被害者等へのカウンセリングや職員のカウンセリング技術向上を図るためのアドバイザー業務の委嘱を行っている。また、被害少年に対しては、少年補導職員などの専門職員が、部外専門家などから助言を得つつ、カウンセリングを実施している。また、警察庁では、平成24年度からカウンセリング指導係を設置し、臨床心理士の資格を有し、犯罪被害者等へのカウンセリング経験豊富な係員を配置して、全国警察に対するカウンセリングの指導を行う体制を構築している。

さらに、平成19年度から、臨床心理士の資格を有する職員やその他の警察職員に対し、カウンセリング技能の向上を図るための専門的な研修への参加の促進を図っている(カウンセリング専門職員に対する専門研修に要する経費(国庫補助金):23年度9百万円、24年度9百万円)。

犯罪被害者等に対応するカウンセラー
犯罪被害者等に対応するカウンセラー
提供:警察庁
○ 性犯罪被害者に対する緊急避妊に関する情報提供

厚生労働省において、性犯罪被害者を含め、緊急避妊を必要とする者が緊急避妊の方法等に関する情報を得られるよう、保健所や「女性健康支援センター」等を通じ情報提供を図っている。

○ 医療機関における性犯罪被害者への対応の体制の整備

厚生労働省において、内閣府が作成する「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引~地域における性犯罪・性暴力被害者支援の一層の充実のために~」について、都道府県等を通じ医療機関等周知を行っていく。

○ 性犯罪被害者対応における看護師等の活用

厚生労働省では、「チーム医療推進会議」において、「チーム医療推進のための基本的な考え方と実践的事例集」を取りまとめ、医師・看護師等の職種が連携し、各々の専門性を発揮して性犯罪も含めた暴力被害者支援に取り組んでいる実践的な事例を盛り込み、HP等で周知している。

○ ワンストップ支援センターの設置促進

内閣府において、性犯罪被害者支援現場の一線で活躍されている医療関係者、支援者・当事者、弁護士などの有識者及び関係省庁の協力を得て、「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引~地域における性犯罪・性暴力被害者支援の一層の充実のために~」を作成している。(P15第2節「性犯罪被害者のための総合的支援としてのワンストップ支援センター」参照

警察において、性犯罪被害者の負担軽減、性犯罪の潜在化防止を目的として、性犯罪被害を受けた被害者が心身の治療、民間支援員等による支援、警察官による事情聴取等を1か所で受けられる「ワンストップ支援センター」を、平成22年度のモデル事業として、平成22年7月から平成23年3月まで、愛知県一宮市所在の大雄会第一病院内に開設し(性犯罪被害者対応拠点「ハートフルステーション・あいち」)、同事業の結果の検証を実施した。

なお、同拠点については、現在も愛知県警察により運営されている。

厚生労働省においては、内閣府による「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター開設・運営の手引~地域における性犯罪・性暴力被害者支援の一層の充実のために~」の作成に協力するとともに、都道府県等を通じて、同手引きを医療機関等に周知することにより、ワンストップ支援センターの啓発を行うこととしている。

○ 性暴力被害者のための医療体制の整備に資する施策の検討及び実施

厚生労働省において、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」に基づき創設された医療機能情報提供制度(P50(27)「犯罪被害者等に対する医療機関に関する情報の周知」参照)によって、性暴力被害者であれば必要と考えられる、婦人科、精神科、心療内科などを有する医療機関の医療機能に関する情報について得ることができるようにしている。

また、併せて医療に関する広告の規制の見直しを行い、これまで認められていなかった、性暴力被害者のカウンセリングを実施している旨などの広告を医療機関が行うことができることとした。

○ 配偶者等からの暴力被害者の安全確保の強化についての検討及び施策の実施

内閣府において、関係者から保護命令の手続等について聴取するなど、今後の検討のための情報収集に努めている。

婦人相談所において、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(平成13年法律第31号)に基づき、配偶者暴力相談支援センターの機能を担い、配偶者からの暴力被害者・同伴する家族を自ら一時保護したり、婦人保護施設などへの一時保護委託を実施している。

加えて、配偶者からの暴力被害者などが入所する婦人保護施設については、夜間警備体制の強化を図るとともに、心理療法担当職員や同伴児童のケアを行う指導員の配置を進めている。

○ 検察官に対する児童又は女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実

検察官などの研修において、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点などを熟知した専門家を講師とする講義を実施し、児童や女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実に努めている。

○ 婦人保護施設職員等への研修取組促進

配偶者からの暴力被害者や人身取引の被害者等を保護する公的シェルターである、各都道府県に設置された婦人相談所において、適切な対応を確実にするための職員に関する研修を、毎年、厚生労働省の主催において行うとともに、各都道府県において実施する専門研修や啓発にかかる費用を補助している。

また、厚生労働省では、児童相談所職員などへの研修の支援を行っており、都道府県において、婦人相談所、婦人保護施設、母子生活支援施設、福祉事務所、民間団体などで配偶者からの暴力被害者などの支援を行う職員を対象に、専門研修を実施している。

○ 女性警察官の配置等

警察庁において、性犯罪被害者が捜査の過程において受ける精神的負担を少しでも緩和するためには、性犯罪被害者の望む性別の警察官によって対応する必要があることなどから、警察本部や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置を推進するとともに、性犯罪捜査の研修を行うなどして性犯罪捜査を担当する職員の実務能力の向上を図っている。また、事情聴取における相談室や被害者支援用車両の積極的な活用や、産婦人科医会や民間被害者支援団体等との連携強化に努めるなどして、犯罪被害者の心情に配慮した対応を強化している。

平成23年4月現在、性犯罪事件において、性犯罪被害者から事情聴取などを行う性犯罪指定捜査員として指定された女性警察官などは、全国の都道府県警察において6,494名である。

性犯罪指定捜査員等の推移
性犯罪指定捜査員等の推移
○ 性犯罪捜査指導官等の設置

警察において、性犯罪被害者の精神的負担の軽減、性犯罪被害の潜在化の防止を図るため、性犯罪捜査指導官などの設置を推進している。

性犯罪の被害者は、精神的なショック、しゅう恥心から、警察に対する被害申告をためらうことも多く、また、捜査の過程における性犯罪被害者に対する警察官の言動などによっては、当該被害者に二次的被害を与えかねず、そのことが被害の潜在化、ひいてはこうした潜在化が同様な被害を拡大させる要因ともなりかねないものとなっている。

全国の都道府県警察本部において、性犯罪捜査担当課への性犯罪捜査指導官の設置、同課の性犯罪捜査指導係への女性警察官の配置を図ることなどにより、性犯罪捜査に関する指導体制の拡充を行っている。

全国の都道府県警察本部の性犯罪捜査担当課において、性犯罪捜査指導官を設置しており、全国の性犯罪捜査指導係員は295名、うち女性警察官は144人である(平成23年4月現在)。

今後も、性犯罪捜査指導係への女性警察官の配置の拡充などを指示するなど、引き続き、本施策の推進について指導するとともに、性犯罪捜査指導体制の把握に努める。

○ 女性被害者への配慮

海上保安庁において、性犯罪などに係る女性被害者の捜査の過程において受ける精神的負担を少しでも緩和するために、女性海上保安官による事情聴取や付添いなどを行っている。

○ 性犯罪捜査証拠採取セット・性犯罪被害者捜査用ダミー人形の整備

全国の都道府県警察において、性犯罪事件の認知後、証拠採取を行うに当たって、犯罪被害者等の精神的負担を軽減するため、証拠採取に必要な用具や当該被害者の衣類を預かる際の着替えなどをまとめた性犯罪捜査証拠採取セットを平成23年4月現在、全国で2,448セット保有している。

また、性犯罪事件の被害状況の再現を行う際、犯罪被害者等の精神的負担を軽減するため、当該被害者の代わりとして使用する性犯罪被害者捜査用ダミー人形を平成23年4月現在、全国で1,796体整備している。

性犯罪捜査証拠採取キット
性犯罪捜査証拠採取キット
○ 産婦人科医会とのネットワーク構築

全国の都道府県警察において、事件発生時における迅速・適切な診断・治療、証拠採取や女性医師による診断などを行うため、産婦人科医会とのネットワークを構築し、具体的支援を受けるための連携対策の強化などを図り、適正かつ円滑な性犯罪捜査を推進している。

(3) 刑事手続への関与拡充への取組

○ 医療機関における性犯罪被害者からの証拠採取等の促進

警察庁において、医療機関における性犯罪被害者からの証拠採取及び採取した証拠の保管について医療機関に対するアンケート調査を実施するなどの取組を推進している。

(4) 支援等のための体制整備への取組

○ 性犯罪被害に遭った児童生徒への対応の充実

文部科学省では、性犯罪の被害者を含めて児童生徒等の相談等に対して適切に対応できるよう、スクールカウンセラーや子どもと親の相談員の配置の拡充や、スクールカウンセラーの緊急支援のための派遣に対して補助を行ってきた。

また、児童虐待などの問題へ対応するため、教育分野に関する知識に加えて、社会福祉の専門的な知識・技術を用いて児童生徒を支援するスクールソーシャルワーカーを、各地域の実情に応じて学校などの教育機関に配置する地方自治体の取組に対して補助を行い、学校における教育相談体制の充実を支援している。

○ 性犯罪被害者による情報入手の利便性の拡大

都道府県警察において、性犯罪被害者から被害相談などを受けるための性犯罪相談専用電話窓口の設置、相談室の整備などを推進し、性犯罪被害者による情報入手の利便性の拡充を図っている。

また、事件化を望まない性犯罪被害者に対しても、民間被害者支援団体が提供し得る支援の内容や秘密が守られることなどを十分に説明した上で、犯罪被害者の同意を得て当該被害者の連絡先や相談内容等を犯罪被害者等早期援助団体に提供するなど、当該被害者が早期に犯罪被害者支援団体による支援を受けやすくなるように努めている。

平成23年4月現在、全国の都道府県警察本部において、女性警察官などによる性犯罪電話相談の受理体制、相談室が整備されている。

レディースサポートライン(兵庫県警察、性犯罪被害相談専用電話窓口)
レディースサポートライン(兵庫県警察、性犯罪被害相談専用電話窓口)
○ 交際相手からの暴力に関する調査の実施・性犯罪被害者に関する調査の実施

内閣府において、3年に1度を目途に配偶者からの被害経験など男女間における暴力による被害の実態把握に関する調査を行っている。平成23年度は、異性から無理やりに性交された被害も含む暴力の被害実態を把握するための調査を実施し、平成24年4月に内閣府ホームページに調査結果を公表した(「女性に対する暴力」に関する調査研究http://www.gender.go.jp/e-vaw/chousa/h24_boryoku_cyousa.html)。

(5) 国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組

○ 犯罪被害者等施策の関係する特定期間における広報啓発事業の実施「女性に対する暴力をなくす運動」

男女共同参画推進本部は、毎年11月12日から11月25日(国連が定めた「女性に対する暴力撤廃国際日」)までの2週間、「女性に対する暴力をなくす運動」を実施している。内閣府においては、期間中、地方公共団体、女性団体その他の関係団体との連携・協力の下、意識啓発等、女性に対する暴力に関する取組を一層強化している。

女性に対する暴力をなくす運動
女性に対する暴力をなくす運動
[目次]  [戻る]  [次へ]
警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)