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第3章 刑事手続への関与拡充への取組

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1 刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等(基本法第18条関係)

コラム3 性犯罪に対処するための刑法の一部改正

平成29年6月、刑法の一部を改正する法律が成立し、同年7月から施行された。

刑法(以下このコラムにおいて、改正前の刑法を「旧法」、改正後の刑法を「新法」という。)における性犯罪の罰則については、明治40年の制定以来、基本的に維持されてきたところ、今回の改正は、近年における性犯罪の実情等に鑑み、事案の実態に即した対処ができるようにするため、110年ぶりに性犯罪の罰則等が大きく改正されたものであり、その概要については、次のとおりである。

1 強姦罪等の非親告罪化

旧法においては、強姦罪、強制わいせつ罪等の性犯罪については、親告罪とされ、被害者の告訴がなければ起訴することができなかった。その趣旨は、加害者が起訴され、裁判になることによって被害者のプライバシー等が害されるおそれがあることから、被害者の告訴がなければ起訴することができないこととすることにより被害者の意思を尊重するためであると考えられていた。

しかし、被害者等からのヒアリングによれば、「被害者にとって告訴するかどうかの選択を迫られているように感じられることがある」など、かえって親告罪であることが被害者に精神的な負担を生じさせている場合が少なくないと考えられた。

そこで、このような被害者の精神的負担を軽減するため、性犯罪について親告罪とする規定が削除され、告訴がなくても起訴することができるように改められた。

2 強姦罪の構成要件及び法定刑の見直し等

○ 旧法では、「姦淫」、すなわち「性交」のみが強姦罪の処罰対象とされ、被害者も女性に限られていた。

しかし、「性交」ではない「肛門性交」及び「口腔性交」についても、被害者にとっては、濃厚な身体的接触を伴う性交渉を強いられるものであって、「性交」と同等の悪質性・重大性があるものと考えられた。

また、被害を受けた者が被る身体的・精神的な苦痛は、性差によって異なるものではないと考えられた。

そこで、これらの行為について、「性交」と同様に重い類型の犯罪として処罰するとともに、被害者の性別は問わないこととされ、これに伴い、強姦罪の罪名が「強制性交等罪」に改められた。

○ 旧法では、強姦罪の法定刑の下限が強盗罪より低いこと等から、強姦罪の法定刑の引上げを求める指摘が多くなされていた。

そこで、このような状況や実際の事件の量刑傾向を踏まえ、新法では、強制性交等罪の法定刑の下限が懲役3年から5年に、同罪に係る致死傷の罪の法定刑の下限が懲役5年から6年に、それぞれ引き上げられた。

3 監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪の新設

18歳未満の者は、一般に、精神的に未熟である上、生活全般にわたって自己を監督・保護している監護者に経済的にも精神的にも依存している。そして、監護者が、このような依存・被依存ないし保護・被保護の関係により生ずる「監護者であることによる影響力」があることに乗じて18歳未満の者と性的行為をすることは、強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同様に、これらの者の性的自由ないし性的自己決定権を侵害するものであると考えられた。

そこで、このような事案の実態に即した対処を可能とするため、新法では、強制わいせつ罪や強制性交等罪とは別に、これらを補充する規定として、暴行や脅迫がなされなかった場合や、抵抗できない状態にあったとはいえない場合であっても、強制わいせつ罪又は強制性交等罪と同じ法定刑で処罰することができる監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪が新設された。

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