平成16年12月,基本法が制定され,我が国の犯罪被害者等施策は,新たな段階に進んだ。
それまでも,警察庁,法務省その他の関係省庁による施策が実施されていたが,これらの施策は,個別の省庁が時々の課題に対処して行ってきたものであり,犯罪被害者等の有する広範かつ多様なニーズの全般に応え得ていたわけではなかった。
そのような中,「様々な犯罪が跡を絶たず」,「国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ,犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ,その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな一歩を踏み出さなければならない」(基本法前文)として,平成16年12月,犯罪被害者等の権利利益の保護を図ることを目的とし,犯罪被害者等のための施策の基本理念を明らかにして,犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するための基本構想を示した基本法が制定された。
基本法により,政府は,総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱等を盛り込んだ基本計画を策定することとされ,平成17年12月,各府省庁が実施すべき施策を5つの重点課題(<1>損害回復・経済的支援等への取組,<2>精神的・身体的被害の回復・防止への取組,<3>刑事手続への関与拡充への取組,<4>支援等のための体制整備への取組,<5>国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組)に整理した第1次基本計画が策定された。
第1次基本計画は,平成22年度末までを計画期間としていた。同計画については,「おおむね着実な推進が図られ,一定の成果をあげている。特に,『刑事手続への関与拡充への取組』『損害回復・経済的支援等への取組』については,被害者参加制度の創設,損害賠償命令制度の創設,犯罪被害給付制度の拡充など,大幅な制度改正がなされており,大きな進展が図られた」と評価され(平成22年10月13日犯罪被害者等施策推進会議決定),23年3月,犯罪被害者等の権利利益の保護が一層図られる社会を目指し,第2次基本計画が策定された。
現在は,平成27年度末までを計画期間とする第2次基本計画に沿って,関係府省庁において,各種施策を実施しているところであり,第2章では,第2次基本計画に基づき26年度に講じた施策について,上記5つの重点課題ごとに記述する。