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3 保護,捜査,公判等の過程における配慮等(基本法第19条関係)

(1) 職員等に対する研修の充実等

【施策番号91】

ア 警察において,警察官の採用時や昇任時に,各階級の役割又は職に応じた犯罪被害者支援に関する必要な知識について教育しているほか,専門的知識を必要とする職務に従事する実務担当者に対して,犯罪被害者支援や被害者カウンセリング技術など,個別の犯罪被害者支援に関する教育,研修の機会を設けている。

特に,犯罪被害者等の心情を理解するための教育として,犯罪被害者・遺族等による講演会や支援の現場で被害者に向き合い被害者の心情に関する共感と造詣が深い警察官や部外有識者による講演会の実施,犯罪被害者支援担当者による体験記の配布などを実施している。また,警察本部犯罪被害者支援担当課による各警察署に対する巡回教育,民間支援団体との連携要領についての教育,性犯罪被害者への支援要領についての教育など,犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育の充実を図っている。

【施策番号92】

イ 法務省において,矯正施設・更生保護官署における研修の充実を図っている(P67【施策番号140】参照)。

法務省・検察庁において,検察幹部が参加する各種会議や研修の機会に犯罪被害者等の心情を理解し,適切な対応に努めるよう指示しているほか,検察官に市民感覚を学ばせるため,犯罪被害者支援団体などの公益的活動を行う民間団体や民間企業に一定期間派遣する研修(P46【施策番号56】参照)や,被害者支援員に対し,犯罪被害者等に関する諸問題についての講義などの研修を実施するなどして(平成24年度は,被害者支援員53名に対して実施),職員の対応の向上に努めている。

【施策番号93】

ウ 上記【施策番号92】参照

【施策番号94】

エ 法務省・検察庁において,検察官などの研修の機会に,児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点などを熟知した専門家を講師とする講義を実施し,児童や女性の犯罪被害者等への配慮に関する研修の充実に努めており,平成24年度は新任検事73名及び任官後おおむね3年前後の検事114名に対する,「児童・女性への配慮」の講義等を実施した。

【施策番号95】

オ 法務省・検察庁において,副検事を含む検察官などに対する研修では,交通事件の留意点などを熟知した専門家などによる講義を行うとともに,交通事件の被害者・被害者遺族の立場などへの理解を深めるための機会を設けるなど,交通事件をテーマとした講義科目を設け,交通事件に関する講義の充実を図っており,平成24年度は副検事117名に対する「被害者支援」の講義等を実施した。

【施策番号96】

カ 「PTSD 対策専門研修会」については,P41【施策番号35】参照

また,厚生労働科学研究では,平成17年度から「犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究」を3年計画で行い,平成23年度からは,「大規模災害や犯罪被害等による精神疾患の実態把握と対応ガイドラインの作成・評価に関する研究」を行い,「犯罪被害者に対する急性期心理社会支援ガイドライン」を作成した。

「思春期精神保健対策専門研修」については,P43【施策番号44】参照

【施策番号97】

キ 看護教育においては,今般,「看護教育の内容と方法に関する検討会」において,保健師及び助産師の基礎教育の内容の見直しを行い,卒業時の到達目標として性犯罪等の予防と被害相談者への対応と支援についての項目を設定し,強化を図ったところである。

【施策番号98】

ク 厚生労働省において,犯罪被害者等への適切な対応を図るため,民生委員が相談援助活動を行う上で必要不可欠となる守秘義務の遵守等の知識と技術を修得するための研修を実施する都道府県などに対する支援を行っている。さらに,民生委員の全国組織である「全国民生委員児童委員連合会」では,民生委員に対する研修カリキュラム体系の見直しや各種研修会で資料を配布するなど,研修内容の整備及び広報と理解促進を行っている。

【施策番号99】

ケ 厚生労働省において,全国婦人保護施設長連絡協議会や全国婦人保護施設指導員研修会の場を活用して職員の専門的な資質向上を図るほか,配偶者からの暴力被害者や人身取引の被害者等を保護する公的シェルターである,各都道府県に設置された婦人相談所において,適切な対応を確実にするための職員に関する研修を,毎年,厚生労働省の主催において行うとともに,各都道府県において実施する専門研修や啓発にかかる費用を補助している。

また,犯罪被害者等の治療,保護などを行う施設の職員などの研修の充実を図る方向での検討を実施している。

さらに,児童相談所職員などへの研修の支援を行っており,都道府県において,婦人相談所,婦人保護施設,母子生活支援施設,福祉事務所,民間団体などで配偶者からの暴力被害者などの支援を行う職員を対象に,専門研修を実施している。

○ 海上保安庁において,基本的人権を尊重した適正な職務執行ができるようにするため,海上保安学校などにおいて,犯罪被害者等の人権に関する教育を行っている。

(2) 女性警察官の配置等

【施策番号100】

警察において,性犯罪被害者が捜査の過程において受ける精神的負担を少しでも緩和するためには,性犯罪被害者の望む性別の警察官によって対応する必要があることなどから,警察本部や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官の配置を推進するとともに,性犯罪捜査の研修を行うなどして性犯罪捜査を担当する職員の実務能力の向上を図っている。

平成24年4月現在,性犯罪事件において,性犯罪被害者から事情聴取などを行う性犯罪指定捜査員として指定された女性警察官などは,全国の都道府県警察において6,712名である。

性犯罪指定捜査員等の推移

また,全国の都道府県警察本部の性犯罪捜査担当課に性犯罪捜査指導官の設置を推進しているほか,同課の性犯罪捜査指導係への女性警察官の配置を図ることなどにより,性犯罪捜査に関する指導体制の拡充を行っており,平成24年4月現在,都道府県警察の性犯罪捜査指導係員は297名,うち女性警察官は147名である。

さらに,性犯罪事件の認知後,証拠採取を行うに当たって,犯罪被害者等の精神的負担を軽減するため,証拠採取に必要な用具や当該被害者の衣類を預かる際の着替えなどをまとめた性犯罪捜査証拠採取セットを平成24年4月現在,全国で2,898セット保有し,また,性犯罪事件の被害状況の再現を行う際の犯罪被害者等の精神的負担を軽減するため,当該被害者の代わりとして使用する性犯罪被害者捜査用ダミー人形を平成24年4月現在,全国で1,915体整備している。

このほか,事情聴取における相談室や被害者支援用車両の積極的な活用や,事件発生時における迅速・適切な診断・治療,証拠採取や女性医師による診断などを行うため,産婦人科医会とのネットワークを構築し,具体的支援を受けるための連携の強化などを図り,適正かつ円滑な性犯罪捜査を推進している。

○ 海上保安庁においても,性犯罪などに係る女性被害者の捜査の過程において受ける精神的負担を少しでも緩和するために,女性海上保安官による事情聴取や付添いなどを行っている。

(3) ビデオリンク等の措置の適切な運用

【施策番号101】

刑事訴訟に関して,法務省において,犯罪被害者等の意見をより適切に裁判に反映させるための犯罪被害者等の意見陳述の制度や,証人の証言時の負担・不安を軽減するためのビデオリンクなどの制度の運用について,適切な対応が行われるよう,会議や研修などの様々な機会を通じて,検察の現場への周知徹底を図るとともに,施策の実施状況の把握に努めている。また,犯罪被害者等向けパンフレット「犯罪被害者の方々へ」にもこれらの制度の情報を掲載している(P64【施策番号117】参照)。

平成24年1月から同年12月までの間に,証人尋問の際に付添いの措置が採られた証人の延べ数は121人,証人尋問の際に遮へいの措置が採られた証人の延べ数は1,757人,ビデオリンク方式による証人尋問が行われた証人の延べ数は288人であった。

証人の保護等の状況
年次 付添い 遮へい ビデオリンク
平成20年 86 1,007 202
平成21年 79 1,094 235
平成22年 102 1,295 261
平成23年 136 1,317 242
平成24年 121 1,757 288
(注)
1 最高裁判所事務総局の資料(概数)による。
2 いずれも高等裁判所,地方裁判所及び簡易裁判所における証人の数(延べ人員)である。
提供:法務省

民事訴訟に関して,平成19年6月20日に成立した「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」により,「民事訴訟法」が一部改正され,民事訴訟において,犯罪被害者等を証人などとして尋問する場合に,付添い,遮へい,ビデオリンクの各措置をとることが認められた(平成20年4月1日施行)。

平成24年1月から同年12月までの民事訴訟における付添回数は14回,遮へい回数は134回,ビデオリンク回数は13回である(いずれも証人尋問及び当事者尋問の数値である)。

ビデオリンク方式

(4) 警察における犯罪被害者等のための施設の改善

【施策番号102】

警察において,犯罪被害者等が安心して事情聴取に応じられるようにするため,その心情に配意し,応接セットを備えたり,照明や内装を改善した部屋を利用できるようにするなどして,全国の全ての警察署に「被害者用事情聴取室」を整備している。

また,犯罪被害者等は,警察署や交番などに立ち入ること自体に抵抗を感じる場合があることから,機動的に犯罪被害者等の指定する場所に赴くことができ,犯罪被害者等のプライバシー保護などに配意しながら必要な事情聴取や実況見分などを行えるよう,移動式被害者用事情聴取室ともいえる「被害者支援用車両」を導入して,犯罪被害者等からの相談や届出の受理,事情聴取などに活用している。さらに,県施設,ホテル,大学などの警察施設以外の相談会場の借上げも行っている(警察施設外の相談会場借上げ(国庫補助金):24年度7百万円,25年度7百万円)。

犯罪被害者等専用の事情聴取室

(5) 検察庁における犯罪被害者等のための待合室の設置

【施策番号103】

法務省において,被疑者などの事件関係者と顔を合わせたくないという犯罪被害者等の心情への配慮と精神的負担の軽減のため,平成24年度に新営された検察庁3庁舎に被害者専用待合室を設置した。平成25年度中に建て替えが完了する見込みの検察庁2庁舎についても,同室を設置することとしており,それ以外の検察庁については,スペースの有無,設置場所などを勘案しつつ,今後も同室の設置について検討していく。

また,犯罪被害者等のための待合室には,犯罪被害者等の心情に配慮するとともに,精神的負担の軽減を図るための備品を順次整備している。

犯罪被害者等のための待合室
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