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コラム2 犯罪被害に関する参加型啓発事業に参加した大学生の手記

平成24年度内閣府「地域における犯罪被害者等支援普及促進事業」として,石川県において,大学等の高等教育機関の学生を対象としたフォーラムの開催(2回),広報啓発グッズ等の作成,街頭キャンペーン活動及びスポットCMの作成・放送を実施しました。

これら各事業の企画・実施にあたっては,学生の方が若い世代により効果的に犯罪被害者等支援の重要性を訴えていただけるのではないか,また少なくとも参加者にとっては,自ら考え工夫すること等を通じて広報啓発の趣旨をより深く理解できるのではないかとの期待から,50人弱の学生に様々な形で参加していただきました。以下の参加学生からの感想(一部)にあるように,期待された成果は上がったのではないかと思われます。内閣府において,引き続き,学生に協働を呼び掛け,より効果的な広報啓発活動に取り組んで行きたいと考えています。

○ H.S 金沢星稜大学人間科学部スポーツ学科4年(当時)

今回,学生ボランティアとして犯罪被害者等支援施策に関わり,犯罪被害者について考える機会を頂き,犯罪被害者等支援に触れることが出来て良かったなと思っています。今まで,ゼミの活動などで犯罪防止に取り組んだことはありましたが,犯罪が起きた後の事は考えた事がありませんでした。また,私は犯罪被害者という言葉を聞いたことも無かったですし,犯罪に遭われた方のことをよく考えたこともなかったので,そういった方の心情や,どんなサポート・支援をしているのか,また,周りの方の目線などを考える良い機会でとても良かったな,と思っています。

私は打ち合わせに2回参加し,キャンペーングッズ製作に携わり,キャンペーン活動である小松空港での犯罪被害者支援の呼び掛けにも1回参加しました。グッズ製作に関しては,グッズを受け取る人がどんな印象を受けるかを考えて色やフォントを設定しました。様々なパターンを考えたのですが,犯罪被害者支援を訴えるにはどのようにすれば良いか非常に難しかったです。また,今回の啓発活動などを通して,犯罪被害者等支援が社会全体に浸透していないということを肌で感じました。実際,小松空港利用者にチラシなどを配った時に「犯罪被害者支援って何のことかわからない」という声を耳にしました。チラシを見て首をかしげている方もいらっしゃいました。

広報啓発グッズ

そこで,少しでも犯罪被害者支援というものを知ってもらうために,大学を会場とした犯罪被害者支援フォーラムなどを開催すればいいのではないか,と思います。なぜ大学を会場にするのかと言うと,大学周辺の地域住民が足を運びやすいだけでなく,学生も気軽に行けるからです。遠い会場ならば行くのが億劫になってしまうことが考えられますが,大学ならば大学周辺で暮らしている学生も気軽に参加でき,学生・地域住民どちらにも犯罪被害者支援を普及出来るのではないかと考えています。大学を中心とした地域展開です。こういったフォーラムを通して,学生や地域住民に犯罪被害者支援を知ってもらって知識を増やしてもらう事が支援の第一歩だと思います。

今回のモデル事業の改善点ですが,他大学の学生ともっと交流できる機会を増やして意見交換ができればいいなと感じました。他大学の学生も参加しているのに大学ごとのメンバーでの活動になってしまい,啓発活動や広報活動(グッズ製作・CM作成・フォーラム運営)などの活動で他大学の意見を取り入れられませんでした。大学を混ぜて各活動のメンバーを構成したり,グループディスカッションしたりするなど,他大学の学生の犯罪被害者支援に関する意見を聞いてみたかったです。

私自身,いつ犯罪被害に遭うかわかりませんし,家族や友だちもいつ犯罪被害者になるかわかりませんので犯罪というのはすごく身近にあるのではないか,と本当に思います。また,今後も犯罪被害に遭われた方に触れる可能性があるので,もっと敏感になってアンテナを立てて犯罪被害者支援に,関わっていきたいなと感じました。私は「犯罪被害者支援を何も知らない」状況から,「ステップアップして知っている」立場になったので,これからもいろいろ勉強もして,今後犯罪被害者支援を知らない人に「こういうことをやっているよ」「簡単なことでも支援ができるよ」というのを伝えていきたいです。

街頭キャンペーン活動

○ T.H 中京大学法学部3年(当時)

私は,第2回目のフォーラム,しいのき迎賓館にてパネリストとして参加しました。今回のフォーラムでパネリストとして参加できたことで,自分の考えを持ち,自分の意見を述べる良い機会となりました。

大学では多くの人たちの前で話し合う機会がなく,高校までは学校全体または学年全体で,課外授業の一環として講演会に出席することがありましたが,大学ではそういったことはなく個人的に参加することとなり,実際に足を運ぶ機会が減って,犯罪被害に遭われた方のようなご本人による講演を聴く機会も少なくなりました。そういったなかで今回のボランティアを通じて,岡本さんの講演を直接お聴きし,多くの大学生や警察学校の学生を前にして率直な感想や意見を述べることができました。やはり,岡本さんご本人の講演を直接聴くことができたことが一番貴重な体験であったと思います。

大学生等を対象としたフォーラム

私は大学に進学してから,サークル活動を通じて県警と協力したボランティアや震災ボランティア等,様々なボランティアをしてきました。そのなかでも今回は,内閣府・県・県警・その他団体が関与した事業ボランティアであり,規模も大きく,学生が主体という面でとてもやりがいがあったように思います。

今回パネリストとして難しく感じたことは,直接被害にあった話をお聴きした上で,学生という立場において何をすることができるかを考えることや,将来,就職してから何ができるかを具体的に考えることでした。普段,私自身に何ができるかを考えることが少なかったことから,自分なりに実態を踏まえて,深く考えました。

当日のフォーラムに関しては,始まる前は正直,時間が余ってしまうのではないかと心配に思っていましたが,司会者の方のスムーズな運びや,実際に意見交換を行うことで結果的には,まだ話したかったことや伝えたいことが残っていました。

今回のボランティア事業を進行していく上で,直接岡本さんご本人にお会いしたのが当日のみであり,打ち合わせの回数も比較的少なく感じました。そういったことから,個人的に他のパネリストと考える場を設けたりもしました。もっとパネリスト同士の話し合いやご本人の講演以外のところでお話を伺い,コミュニケーションを図る場があれば,より充実したパネルディスカッションになったと思います。

今後,犯罪被害者等支援に関して,多くの学生に知ってもらい,ボランティアに参加してもらうためには様々な工夫が必要だと思いました。学生自ら見つけ出すことは難しく,私自身,紹介がなければ携わっていなかったと思います。初めて,犯罪被害者等支援と聞くと,なにか難しそうなイメージもあり,なかなか興味を持ってもらうには難しいと思います。学生には大学側からの連絡を通じて広めて頂けると良いと思います。県のボランティア団体や自治体が,大学との連携を図ることや,最近流行りのツイッターやフェイスブックなどを活用した広報が効果的だと考えました。

フォーラム自体に関しては,今回のような規模であるならば,回数を数回に分け参加できる日を多く設けることで,足運びをしやすく,反対に1回でより多くの人数を集めることも,伝えることができる範囲が拡大し,効果的だと思います。

最後に,今回のボランティア事業では,数多くの人の前で話すことや岡本さんご本人の講演を聴くことができる貴重な体験となりました。学生である私たちが,感じるものや意見を主張し,フォーラム後も学校のゼミ活動等を通じて,他の学生に広めることもできました。近い将来に就職をし,これから社会の主体となっていく大学生の間に,今回のような事業があると,学生だけでなく,様々なメリットが生まれると思うので,活性化していくべきだと思いました。

○ T.H 金沢星陵大学人間科学部スポーツ学科1年(当時)

僕は高校時代の先輩の誘いを受けてこの被害者支援の活動に参加しようと決めました。最初は,時間があったからボランティアを行おうという正直安易な気持ちで参加したことを覚えています。まず初めに石川県県庁に集まり,被害者支援の大まかな説明を受けました。活動の内容としてはパネルディスカッション,グッズ作成,CM作成の3つがあり,僕はパネルディスカッションのパネリストをやってみないかとの誘いがあり,パネリストに選ばれました。正直,最初はやったことのないパネリストという役割を受けて戸惑いしかありませんでした。しかしこれもいい経験だと考え,この経験を将来の自分のために活かそうと思い切ってパネリストになることを決意しました。

まずパネルディスカッションを行うにあたって,被害者の方の実際に受けた被害のことについて書かれてあるものを読ませていただきました。正直,読んでいてとても胸が苦しかったことを今でも覚えています。ガソリンをかけられて火をつけられた。しかしそれだけで終わらず,救急隊員が先に加害者を病院に搬送するという行動や生活保護の担当の方たちの対応の仕方など,僕ではとても耐えられないと感じさせられる内容でした。これを一通り読み,当日被害者の方たちとランチを食べながらパネルディスカッションの流れについて大まかな打合せを行いました。その時初めてお会いした被害者の方の痛々しい傷跡が今でも頭から離れません。それでもこれまで闘ってきたというその方はとても強い人だと感じました。

打合せが終わりいざ本番を迎え,実際の方の話を聞いて,自分でその方の体験談を読んだ時とは比べ物にならない感情などが湧き起りました。その方の一言一言がダイレクトに心に響いてきました。僕一人の力ではこの方に何をしてあげられるだろうか,僕の発言で何か救ってあげることができるだろうか,軽はずみな発言で被害者の方の傷口を開いてしまわないだろうかと,とても考えさせられました。それでも自分の思ったこと,感じたことをみんなに聞いてほしい,いろんな人にもこの問題について一緒に考えてほしい。そう考え,僕はパネリストとして感じたことを全て話そうと思いました。このようにして犯罪被害者支援フォーラムは進行していきました。

このパネルディスカッションを通じて,人前で喋るということの大切さや難しさ,話をまとめる能力の重要性について学びました。正直なところ,自分の話したいことを全てお伝えすることはできませんでした。しかしとてもいい経験をすることができたと思いましたし,これは自分の財産になると感じています。

もう一つは,人の輪ということです。僕はパネルディスカッションに大学の友人を誘いました。たった一人ではありますが,これがだんだんと広がりやがて大きな輪になればこの支援について多くの人が知ることができ,今まで以上に犯罪被害者支援を大きなものにしていくことができると考えています。今回だけの参加に終わらず,これからも積極的に参加していきたいと考えています。

僕は,犯罪の被害に遭い苦しんでいる人がいる,そしてその被害者の方たちを支援しようとこのような活動を行っている,ということを世間の人に知ってもらい,みんなで被害者の方々をサポートして二次被害や三次被害,そして犯罪そのものの存在を抑えていけたらと考えています。そして,この手記を読んでもらい,犯罪被害者支援の輪を全国に広げていけたらという気持ちでいます。

スポットCM (学生が出演)

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