3節 地方公共団体による犯罪被害者等への支援実施状況
多くの地方公共団体において,国における基本計画や,これに基づく関係府省からの働きかけとは別に,条例の制定や計画・指針の策定により,当該地方公共団体としての総合的な施策の展開に取り組んでいる。
ここでは,条例・基本計画等の広がりの状況,見舞金等の諸制度の導入状況及び住宅提供の取組状況について紹介する。
1 犯罪被害者等施策に関する条例の制定状況等
平成25年4月1日現在,31都道府県・政令指定都市,332市区町村において条例が制定され,35都道府県・政令指定都市,24市区町村において計画・指針が策定されている。なお,岡山県では平成24年4月までに,秋田県では平成25年4月1日以降,県及び県内の全市町村において犯罪被害者等支援に関する条例が施行されるに至った。
2 見舞金制度等の導入状況
犯罪被害者等に対しては,犯罪被害給付制度等各種給付制度が存在しているものの,特に支給までの間の経済的負担の軽減の必要性が指摘されている。また,見舞金の給付や緊急に必要な資金の貸付等による地域社会からの支援は,犯罪被害者等の精神的被害軽減にも資することが期待できるといわれている。
平成25年4月1日現在で,犯罪被害者等を対象とし得る見舞金の制度を導入しているのは,政令指定都市では2市,普通地方公共団体としては84市町,貸付金の制度を導入しているのは,2県,7市区町である。
昨年度からは,12地方公共団体が新規に制度を導入している。
見舞金制度は,犯罪被害者等にとれば,支給額を返済する必要がないことから,比較的利用しやすい制度ではないかと推察されるが,全国86制度において,平成25年4月1日現在,実施例の合計は92件であった。
また,貸付金や金融機関への融資あっせん制度などについては,全国で9の制度がある中,実施例は下記の表のように8件にとどまり,うち,5件が神奈川県の制度に集中している。
地方公共団体名 | 見舞金の実績 | 貸付金の実績 |
山形県 | - | 1件/ 300,000円 |
神奈川県 | - | 5件/2,485,615円 |
京都市 | 8件/2,400,000円 | - |
秋田県能代市 | 1件/300,000円 | - |
秋田県横手市 | 1件/300,000円 | - |
秋田県大館市 | 1件/100,000円 | - |
東京都杉並区 | - | 1件/100,000円 |
神奈川県秦野市 | 1件/100,000円 | - |
福井県越前市 | 1件/100,000円 | - |
愛知県犬山市 | 16件/2,080,000円 | - |
山梨県韮崎市 | 1件/100,000円 | - |
滋賀県大津市 | 6件/1,000,000円 | - |
滋賀県彦根市 | 3件/300,000円 | - |
滋賀県長浜市 | 4件/1,200,000円 | - |
滋賀県草津市 | 3件/500,000円 | - |
京都府福知山市 | 1件/100,000円 | - |
京都府舞鶴市 | 1件/100,000円 | - |
京都府宇治市 | 3件/300,000円 | - |
京都府城陽市 | 2件/200,000円 | - |
京都府京丹後市 | 1件/100,000円 | - |
大阪府松原市 | 22件/1,100,000円 | - |
兵庫県宝塚市 | 3件/300,000円 | - |
兵庫県たつの市 | 2件/400,000円 | - |
兵庫県明石市 | 4件/400,000円 | 1件/500,000円 |
兵庫県姫路市 | 6件/800,000円 | - |
岡山県総社市 | 1件/100,000円 | - |
合計 | 92件 12,380,000円 | 8件 3,385,615円 |
3 居住場所確保等支援状況
犯罪被害者等の中には,自宅が事件現場となったことによって物理的に居住困難な状況になったり,耐え難い精神的な苦痛を受けることで居住ができなくなったり,その他犯罪等による被害に起因する様々な要因により転居を余儀なくされる者が少なくない。そうした犯罪被害者等にとって,再び平穏な生活を営むことができるようになるためには,安定した新たな居住先の確保が必要である。
かかる観点から,地方公共団体においても,犯罪被害者等の公営住宅への入居に関して様々な配慮が行われている。
平成25年4月1日現在,公営住宅や借り上げ住宅への入居に関し,犯罪被害者等に特別の配慮をする何らかの制度を設けているのは,50都道府県・政令指定都市,128市区町村に認められる。
この配慮の中身としては,当該被害者等の生活状況等が地方公共団体で定める入居要件を満たす場合の優先入居(抽選倍率の優遇,抽選なしの入居),入居要件の緩和,その他入居要件を満たさない場合でも一時使用を許可するなどであり,これら様々な配慮を複数組み入れた制度設計を行っている例も多い。
また,近隣市町村や県の住宅状況を問い合わせたり,地元の不動産業界の協力を仰ぎ,民間賃貸住宅へのあっせん・紹介を行ったりする等,できるだけ犯罪被害者等のニーズに応えようとする取組が広がっている。また,県の協定に基づきあっせんした民間賃貸住宅についての仲介手数料を無料とする取組(神奈川県),賃料の一部補助(大阪府摂津市,兵庫県明石市,三木市,篠山市)といった独自の支援制度を設けている例もある。
(制度あり/全体数) | 抽選によらず入居 | 入居要件の緩和 | 抽選倍率の優遇 | その他 |
都道府県(39/47) | 9 | 7 | 26 | 12 |
政令指定都市(11/20) | 4 | 3 | 6 | 4 |
市区町村(128/1,722) | 39 | 40 | 37 | 40 |