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コラム4 「犯罪被害者としての私」と「犯罪被害者支援の実情と今後の課題」(抜粋)

認定特定非営利活動法人全国被害者支援ネットワーク理事長 平井 紀夫 氏

私は,1996年に長男が北京で殺害されるという事件に遭遇した,被害者遺族の一人です。自分が被害者になるということはそのときまで全く考えたこともありませんでした。

今まで私は,率直に申し上げて,会社の仕事が全てでありました。ですけれども,これからは「息子とともに歩む人生」と思って,今もこういった活動をしているということです。 支援があるから犯罪被害者の方が被害が回復できるのだということでは決してありません。犯罪被害者自身が自分の人生を歩み始める,それを被害者支援がどう寄り添っていくのかという活動です。

ヨーロッパの犯罪被害者支援の歴史だけ見ても,我々は非常に遅れをとっています。しかし,国民の様々なものの考え方,その国の社会保障制度等の中で,この犯罪被害者支援というものも考えていかないと,多くの人から納得の得られる仕組みにはならないのではないか。日本は日本らしい犯罪被害者支援活動というものを創り出していかなければいけないということで,ネットワークは丁度この4月から第2期の3年計画をスタートさせます。

方向性として3つ(人材育成,中央機関としての機能,広報啓発)ございます。

特に重要なのは人材育成です。初級,中級,上級,その上にコーディネーターというように設定し,それぞれカリキュラムを明示しました。そして,実際に裁判所に行って直接支援の勉強をするというようなことも含めて,去年の4月から研修体系をスタートしました。

我々の団体は,年間1万7,000件ぐらいの相談に応じていて,1,300人ぐらいのボランティアと160名ぐらいの事務局員。全国各都道府県にある,センターの多くは朝10時から夕方5時まで,しかも,土曜・日曜は休んでいる。犯罪被害者からすると,本当は夜とか休みに相談したいと思うのです。これからの支援の充実を議論しているところです。

また,公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体という指定を受けますと,警察から犯罪被害者の同意を得て,犯罪被害者の情報を提供いただくことができるので,犯罪被害者の最も重要な,できるだけ早い時期に支援をするということが可能になります。ですが,島根,愛媛,徳島,北ほっかいどうという4つの組織がまだ早期援助団体の指定を受けられておりません。何とかこれは早急にこういう状況を解消したいと思っています。

受けている相談の内容としては,35%は犯罪被害ではない。65%が犯罪被害の相談。被害者からの相談の多くは,身体犯被害と性犯罪被害。特に最近は性犯罪被害の相談が急増しています。今,所謂,ワンストップセンターということで,性犯罪被害の方が1カ所で,お医者さんも,あるいは弁護士も,警察もというような形で解決できるという取組が進められています。我々も,宮城,高知,岡山,福岡,福島などでそういう形での被害者支援というものに大変力を注ぎつつあるということです。

犯罪被害者等早期援助団体

相談対応としては,電話相談だけで一応完了するというのが過半数です。裁判所や病院に一緒に付き添って行く「直接支援」が,非常に増えてきている。

財政状況は,約42.6%が赤字です。

小さな人口の所ほど地方自治体の助成に頼っている。逆に言えば,自分たちで会員を増やし,寄付金を増やすという努力が中々できない。

以上に加えて,大きな課題は,連携の問題です。犯罪被害者が真ん中にいて,支援をする人たちがそれを取り囲んで犯罪被害者支援をするという体制にしたい,するべきだと。ワンストップは物理的には難しいと思いますけれども,お互いの連携でそれを解決できるのではないか。我々のセンターに相談に来られたら,連携はできる限りやろうとしていますけれども,県や市といったつなげた組織の中の更に関係する所までの連携というのは無理だと思いますので,是非各組織内での連携のことをお考えいただければ有り難いと思います。

また,いかに犯罪被害者の声を国民一人一人に伝えるか。100人は100人とも,「犯罪被害」のことは御存知ですが,「犯罪被害者」のことは御存知でありません。決定的に違うことです。ですから,いかに犯罪被害者の声を届けるか。これが原点です。是非直接の声をお伝えいただきたい。我々に御要請があれば,可能な範囲で協力をさせていただきたいと思います。少しでも我々の活動を知っていただければ有り難いと思いますし,被害者のことを御理解いただけると有り難いと思います。

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