コラム1 男女共同参画局における性犯罪被害者支援体制整備に係る施策の取組状況等
第3次男女共同参画基本計画
政府では平成22年12月に第3次男女共同参画基本計画を策定し、平成23年度からその計画に基づく男女共同参画社会の実現、また、それに向けての様々な施策を展開しています。
この計画においては、性犯罪への対策の推進に関する施策の基本的方向として、性犯罪被害者が、被害を訴えることを躊躇せずに必要な相談を受けられるような相談体制及び被害申告の有無に関わらず被害者の心身回復のための被害直後及び中長期の支援が受けられる体制を整備するとともに、被害者のプライバシーの保護及び二次的被害の防止について万全を期することとされています。
性犯罪被害者を取り巻く現状
内閣府男女共同参画局では、平成22年度補正予算により、平成23年2月8日午前10時から3月27日午後10時までの約7週間、「パープルダイヤル-性暴力・DV相談電話」(以下、「パープルダイヤル」という。)を実施し、緊急かつ集中的に相談対応を行いました。パープルダイヤルでは、「強姦・強制わいせつ」に関する相談の約6割が知っている者からの被害であったこと、こうした被害者への支援が十分には行われていないケースもあったことなど、女性に対する暴力被害の深刻な状況と支援の課題が改めて明らかになりました。
また、内閣府男女共同参画局が平成23年度に行った「男女間における暴力に関する調査」の結果を見ますと、異性から無理やり性交された経験を持つ女性が7.7%あり、加害者は面識のある者が76.9%でした。その被害を誰にも相談しなかったという割合は67.9%で、その理由は様々であり、最も多かったのが「恥ずかしくて言えなかった」(46.2%)、次いで、「そのことについて思い出したくなかったから」(22.0%)でした。一方で、相談したという割合は28.4%、その相手は「友人・知人」が18.7%と最も多く、警察に相談したのは3.7%でした。
このような結果から、多くの被害が潜在化していること、そのため、警察、医療機関等の関係機関がより一層連携を強化し、被害を潜在化させず支援を受けられる体制づくりを進めていくことが課題であると考えられます。そこで、それらの結果等を踏まえて、男女共同参画会議の下の女性に対する暴力に関する専門調査会でも性犯罪に関する問題を取り上げ、検討を行っています(http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/boryoku/siryo/bo56-1.pdf)。
身近な相談窓口としての男女共同参画センター
地方公共団体が設置している男女共同参画センターは、それぞれの地域の最も身近なセンターとして様々な事業を展開しており、従来、女性のための相談、あるいは、男女共同参画全般の相談を行っているところも多くあります。実際の相談の中にも、性犯罪被害に関係するものがあり、その相談対応は被害申告を前提とはしていません。性犯罪の捜査機関である警察とはまた異なった意義を持って、身近な相談窓口としての受け皿になりうると考えています。
性犯罪被害者が、自分は性犯罪の被害者だとはっきり認知し、相手を訴えたいということであれば、警察の窓口に行くことを考えることもできるかもしれません。そこまではっきりと認識しておらず、自分が受けた被害はどこに相談したらいいのかわからない場合には、警察の窓口に行くことを躊躇することも多いと思われます。性犯罪被害者は、相談することによって、あるいは、支援を求めることによって、自分が再び傷つくのを恐れており、本当にここに相談していいのか躊躇しがちです。そこで、性犯罪被害の相談を受けることを明示することが、被害者に対して、「ここに相談してもよい」という安心感を与えることにつながると考えられるのです。
平成22年に地方公共団体に対して行った調査では、性犯罪被害に関する相談を受けることを広報誌やリーフレット、ホームページ等で対外的に明示している相談窓口を設けている男女共同参画センターがあるかどうかを聞いたところ、22都道府県には最低1か所はあることがわかりました。実際に相談があれば対応している場合も多いにも関わらず、明示していない理由としては、性犯罪被害の相談に対応できる相談員や相談体制がないこと、体制整備や人材育成をするためのノウハウがないことなどが挙げられていました。
性犯罪被害の相談については、相談者の話を聞いて受けとめること、「あなたのせいではない」というメッセージを繰り返し伝えること、医療受診やリラックス法などの心身のケアを提案すること、回復は自分のペースでよいことを伝えること、ニーズに応じた情報提供をすること、弁護士相談を行っている場合には法律相談につなぐことなど、男女共同参画センターにおける相談対応でできることはたくさんあります。性犯罪被害者の相談対応のできる相談員の育成や相談体制の整備により、明示して対応する窓口を増やすことが求められています。
内閣府男女共同参画局での研修事業等の取組状況について
内閣府男女共同参画局では、平成22年度補正予算において、男女共同参画センター等の相談員向けに性犯罪被害者の相談を受けるための1泊2日の研修を全国3か所で実施し、約230名の参加がありました。研修プログラムは、男女共同参画センターにおける性犯罪被害に関する基本的知識の習得に重点を置くものとし、具体的には、性犯罪被害の実態、心身への影響の理解、支援に必要となる公的制度、性犯罪被害者への相談対応などの内容での研修を実施し相談員の育成を図っています。
平成23年度には、都道府県・政令指定都市男女共同参画主管課長及び同男女共同参画センター長を対象とした性犯罪被害者支援体制整備促進に係る課長等会議を1泊2日で開催し、男女共同参画センターで行う相談事業を拡充するなどして、性犯罪被害者の相談にも対応できるようにするよう働き掛けを行いました。また、相談体制を整備していく上で押さえておくべき事項等について情報提供をし、具体的には、先進的に性犯罪被害者の相談を行っている男女共同参画センター等の取組事例報告、被害直後の医療的な支援、通報しない要因、何年も前の被害に苦しむ被害者への精神的支援に関する講義を行いました。
平成24年度にも同様の事業を予定するなど、これまで十分な支援を受けられてこなかった性犯罪被害者に対して、必要な支援を提供できるよう引き続き施策に取り組みます。