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第3節 刑事手続への関与拡充への取組


コラム4:被害者参加制度の運用状況

1 被害者参加制度の概要

平成19年に法律が改正され、平成20年12月1日から、「被害者参加制度」が施行され、殺人、自動車運転過失致死傷など(注)の被害者の方やそのご遺族の方等(以下「被害者の方等」といいます。)から申出がなされ、裁判所が許可したときには、被害者の方等は、「被害者参加人」として、刑事裁判の公判期日に出席することができるようになりました。

また、「被害者参加人」は、被告人質問、情状に関する事項に関して証人尋問を行うことや、事実又は法律の適用についての意見を述べることもできるようになりました。

(注)被害者参加制度の対象となる事件は、法律上、<1>故意の犯罪行為によって人を死傷させた罪、<2>強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、<3>業務上過失致死傷、自動車運転過失致死傷、逮捕及び監禁、未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐等、<4>上記<2>、<3>のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(例えば、強姦致傷等)、<5>上記<1>ないし<4>の罪の未遂罪とされている(刑事訴訟法316条の33)。

法廷内イメージ図の図

2 被害者参加制度の運用状況

(1) 被害者参加の申出及び許可決定

「被害者参加制度」がスタートして、昨年11月末で1年が経過しましたが、被害者の方等からの申出がなされた件数は、552件926名に上っています。被害者参加の申出がなされた罪名別の内訳は表1のとおりであり、被害者参加申出をした人員の内訳は表2のとおりです。また、被害者参加許可決定がなされたのは、522件850名です。

被害者参加人は、被告人質問等の行為を弁護士に委託することができますが、資力の乏しい方でも弁護士の援助を受けることができるよう、裁判所が被害者参加弁護士を選定し、国がその費用を負担する「被害者参加人のための国選弁護制度」も同時にスタートしており、日本司法支援センターを通じて、同期間内に国選被害者参加弁護士の選定請求をされた方は、153件177名です。

▼表1 主な罪名別被害者参加申出件数の内訳
罪名 件数
自動車運転過失致死傷 265件(21件)
強姦、強制わいせつ等 85件(50件)
殺人、殺人未遂 65件(35件)
傷害 56件(26件)
強盗殺人、強盗致死 28件(7件)
傷害致死 19件(7件)
業務上過失致死傷 17件(1件)
危険運転致死傷 10件(0件)
誘拐、逮捕・監禁等 4件(4件)
重過失致死傷 3件(2件)
( )内の数字は、国選被害者参加弁護士の選定請求件数である。
▼表2 被害者参加申出人員の内訳
本人 175名
配偶者 89名
直系親族(父母) 237名
直系親族(子) 146名
直系親族(その他) 25名
兄弟姉妹 64名
法定代理人 15名
委託を受けた弁護士 175名

(2) 公判期日への出席、証人尋問・被告人質問、事実又は法律の適用に関する意見陳述について

従来から、被害者の方等には、優先的に傍聴席が確保されるように配慮されていましたが、被害者参加人は、傍聴席からではなく、法廷内に座り、正に「事件の当事者」として、刑事裁判の公判期日に出席することができるようになりました。

また、被害者参加人は、例えば、被告人やその親族による示談や謝罪の状況といった、いわゆる一般情状に関する事柄について証人を自ら尋問することが認められています。

さらに、被害者参加人は、自ら法廷で、被告人に質問することができますし、事実又は法律適用に関する意見を述べることができます。法律適用に関する意見の中には、例えば、被告人を懲役○年にしてもらいたいといった量刑に関する意見も含まれています。

「被害者参加制度」がスタートして1年が経過した時点において、被害者参加人がこれらの行為を行った件数等は表3のとおりです。

▼犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度の概要
犯罪被害者等が刑事裁判に参加する制度の概要の図
▼表3 被害者参加人による公判期日への出席件数等
裁判の公判期日への出席 410件657名
証人尋問 80件105名
被告人質問 266件329名
事実又は法律の適用に関する意見陳述 226件282名

3 今後の運用について

被害者の方等で、「被害者参加制度」を利用するか、その判断に迷われている場合など、お気軽に検察官にご相談ください。


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