第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



《基本計画において、「速やかに実施する」とされたもの》

(13) 職員等に対する研修の充実等

 警察において、採用時及び上位の階級又は職に昇任した際に行われる教育、専門的知識を必要とする職務に従事する実務担当者に対する教育・研修、被害者・遺族等を招請して行う講演会、被害者対策室担当者による各警察署に対する巡回教育、被害者支援の体験記の配布等、職員の犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための教育・研修等の充実を図り、職員の対応の改善を進めることとされた。

 各級警察学校においては、新たに採用された警察職員に対する採用時教育、専門分野に任用する警察官に対する部門別任用時教育、昇任した警察職員に対する昇任時教育、被害者対策に従事する警察職員に対する専科等の教育において、被害者対策の教育を行っている。

 また、警察署等の職場においては、集合時等の機会を利用した教育、警察本部主管課指導者による巡回指導、部外専門家による講演会等を実施し、被害者対策の教育を行っている。

 法務省において、検察官等に対する研修の充実等を図ることとされた。

 矯正施設の新規採用職員や初級幹部要員に対する研修について、平成17年4月から、科目として「犯罪被害者の視点」を新設するとともに、矯正施設の上級幹部要員や更生保護官署職員を対象とする研修において、犯罪被害者団体等の関係者を講師として招へいし、講義を行っている。検察官等に対する研修等については、被害者遺族による講演を実施したほか、犯罪被害者の声を収めたビデオを研修等に活用し、検察官等に対し、検察庁内外における被害者支援の現状等につき必要な情報提供を随時行っている。

 また、検察幹部が犯罪被害者等の心情等に理解を深めるとともに、市民感覚を失い又は独善に陥ることを防止することに資するためのセミナーの実施や検察官に市民感覚を学ばせるため、犯罪被害者支援団体等公益的活動を行う民間団体や民間企業に一定期間派遣する研修の実施及び被害者支援員を対象とする研修における犯罪被害者等に関する諸問題についての講義・講演及び討議等を実施している。

 検察官の研修において、児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等を熟知した専門家等による講義を実施し、児童及び女性に対する配慮に関する科目の内容の一層の充実を図っていくことについては、検察官等の研修において、専門家を講師として招く等して児童や女性の犯罪被害者等と接する上での留意点等に関する講義を実施している。

 さらに、副検事に対する研修の中で、交通事件の留意点等を熟知した専門家等による講義を行うとともに、被害者及び被害者遺族の立場等への理解を深めるための機会を設ける等、交通事件をテーマとした科目の内容について一層の充実を図ることについては、これまでも、副検事に対する研修において、交通事件をテーマとした講義科目を設け、交通事件の留意点等を熟知した専門家等による講義を実施してきたところであるが、被害者遺族を講師として招き、講演の機会を設ける等、交通事件をテーマとした科目の内容の充実を図っている。

 厚生労働省において、看護教育の充実及び資質の向上を図るため、平成17年度から看護基礎教育のカリキュラム等改正に係る検討を行い、当該検討を踏まえた教育の実施等により、看護にかかわる者の対応の改善を進めることとされた。

 平成18年3月より、「看護基礎教育の充実に関する検討会」を開催し、看護基礎教育の更なる充実を図ることを目的に国民の看護ニーズに的確に応えられる看護職員の養成の在り方について検討しており、平成18年6月末時点で第3回まで開催している。

 民生委員に対し、犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための守秘義務の遵守等を指導していくことについては、都道府県(指定都市)が実施する民生委員が相談援助活動を行う上で必要不可欠な知識等の習得を目的とした研修を支援するため、国庫補助事業である「民生委員・児童委員研修事業」を実施している。

 また、研修実施のための環境整備に努めるとともに、平成18年2月28日に開催した「厚生労働省社会・援護局関係主管課長会議」において、都道府県等に対し、民生委員活動の適正な遂行と充実が図られるよう努めるとともに、研修等を通じて、民生委員の資質向上が図られるよう助言を行っている。

 さらに、民生委員の全国組織である「全国民生委員児童委員連合会」と随時意見交換を行っている。当該連合会では、犯罪被害者等への適切な対応を図るため、平成17年度に犯罪被害者等の人権の配慮について掲載されている教育・啓発関係資料を全国民生委員児童委員大会を始めとする各種研修会や事務局会議等において、民生委員や関係者等に配布する等、その広報と理解促進に努めているとの報告を受けている。

 厚生労働省では、引き続き、都道府県等が行う研修の支援や全国民生委員児童委員連合会との意見交換等を通じて、民生委員の資質向上に努めることとしている。

 公的シェルターにおける犯罪被害者等への適切な対応を確実にするための研修及び啓発を実施していくことについては、児童虐待問題や非行・暴力等の思春期問題に対応するため、第一線の専門的援助者の養成等を行う「日本虐待・思春期問題情報研修センター(子どもの虹情報研修センター)」が平成14年に設立され、児童相談所、児童福祉施設、市町村職員、保健機関等の職員を対象とする各種の専門研修を行い、これら職員の資質の向上が図られている。都道府県においては、婦人相談所、婦人保護施設、母子生活支援施設、福祉事務所、民間団体等における、配偶者からの暴力被害者等から直接相談を受ける職員を対象に、専門研修を実施している。

(14) 女性警察官等の配置

 警察庁において、性犯罪被害者への対応等に資するよう、警察本部や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性警察官等の配置に更に努めることとされた。

 性犯罪の被害者が捜査の過程において受ける精神的負担を少しでも緩和するためには、被害者の望む性別の警察官によって対応することが必要である。

 このため、各都道府県警察では、警察本部の性犯罪捜査指導係や警察署の性犯罪捜査を担当する係への女性の警察官の配置を進めるとともに、性犯罪が発生した場合に捜査に当たる性犯罪捜査員として女性の警察官を指定している。

 これらの女性の警察官は、被害者からの事情聴取を始め、証拠採取、証拠品の受領、病院等への付添い、捜査状況の連絡等性犯罪の被害者にかかわる様々な業務に従事している。

 平成8年2月、性犯罪捜査において、被害女性から女性警察官が事情聴取をすることができるよう、捜査能力を有する女性警察官の育成、配置等について通達し、同年5月、全国の都道府県警察本部の性犯罪捜査指導係において、女性警察官を配置することを通達した。

 平成17年4月1日現在、全国の都道府県警察本部の性犯罪捜査指導係において、女性警察官114名が配置され、また、性犯罪指定捜査員として指定された女性警察官は、全国の都道府県警察において、4,933名であった。

▼事情聴取する性犯罪捜査員

事情聴取する性犯罪捜査員 事情聴取室

事情聴取室

事情聴取する性犯罪捜査員 被害者対策用車両内

被害者対策用車両内

提供:警察庁

 平成18年4月1日現在、全国の都道府県警察本部の性犯罪捜査指導係において、女性警察官128名が配置され、また、性犯罪指定捜査員として指定された女性警察官は、全国の都道府県警察において、5,369名であった。

 また、平成18年7月に全国性犯罪捜査指導官等会議を開催し、性犯罪指導係への更なる女性警察官の配置等を指示する等、引き続き、本施策の推進について指導するとともに、女性警察官の配置状況等を把握することとしている。



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