第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



《基本計画において、「速やかに実施する」とされたもの》

(8) 加害者に関する情報提供の拡充

 法務省において、再被害防止のため、警察の要請に応じ、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所が警察に対して行う釈放予定、帰住予定地及び仮釈放中の特異行動等の情報提供、再度の加害行為のおそれを覚知した検察官、刑事施設、地方更生保護委員会及び保護観察所による警察への当該情報の連絡について、関係者に周知徹底させ、一層円滑な連携を図っていくこととされた(法務省における再被害防止のための被害者等に対する出所情報通知制度については、上記(4)を参照)。法務省においては、引き続き当該制度実施に係る円滑な連携を図るため、各種会議・研修等の機会を活用する等して、制度の趣旨等について関係者への周知を行い、一層の周知徹底を図っている。

 警察においては、再被害防止措置の一環として、加害者の釈放等に係る情報の被害者等への提供のための刑事施設等への釈放等に係る情報の照会や通報の要請を行うとともに、刑事施設等が把握した新たに加害のおそれ等を示す情報の提供を受ける等、刑事施設等と綿密な連携を図り実施している。また、平成17年6月からは、子どもを対象とする暴力的性犯罪に係る出所者について、帰住予定地等に関する情報を共有をしている。

(9) 犯罪被害者等に関する情報の保護

 法務省において、証拠開示の際に証人等の住居等が関係者に知られることがないよう求める制度について、また、性犯罪の被害者等について公開の法廷では仮名を用いる運用がなされていることについて周知徹底させるとともに、検察官等の意識を向上させることとされた。

 平成18年1月、最高検察庁から各高等検察庁及び各地方検察庁あてに、制度の運用において適切な対応が行われるよう留意事項を通知しているほか、会議や研修等の様々な機会を通じて検察の現場への周知徹底を図っている。

 総務省において、「住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会」の報告書を踏まえ、犯罪被害者等の保護の観点も含め住民基本台帳の閲覧制度等の抜本的見直しを行うこととされた。

 「住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会報告書」(平成17年10月20日)を踏まえ、第164回通常国会に提出された住民基本台帳法の一部を改正する法律は、平成18年6月9日に可決・成立し、同年6月15日に公布されており、現在、公布後6月以内の施行に向け、準備をしている。

 検討会報告書及び法律案については、総務省ホームページ上で確認することができる(住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会:http://www.soumu.go.jp/menu_03/shingi_kenkyu/kenkyu/daityo_eturan/index.html、住民基本台帳の閲覧制度等のあり方に関する検討会報告書:http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/051020_4.html、住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成18年法律第74号):http://www.soumu.go.jp/menu_04/s_hourei/new_hourei.html)。

 警察による被害者の実名発表、匿名発表については、第5節1「国民の理解の増進(基本法第20条関係)」(15)を参照。

(10) 一時保護所の環境改善等

 児童虐待、配偶者等からの暴力(DV)や人身取引の被害者等の保護については、年々増加している状況であるが、各都道府県等に設置された児童相談所及び婦人相談所の一時保護所や、厚生労働省の定める基準を満たす婦人保護施設や民間シェルター等において一時保護を実施しており、被害者の個々の状況に応じて保護期間を柔軟に延長するとともに、適切な運用に努めている。

 また、配偶者等からの暴力被害者等が入所する婦人保護施設及び母子生活支援施設における支援の充実を図るため、夜間警備体制の強化や心理療法担当職員を配置する等適切なケア体制の充実を図っており、平成18年度からは母子生活支援施設に配置される心理療法担当職員の常勤化についての予算措置を行っている。

(11) 警察における再被害防止措置の推進

 警察において、同じ加害者により再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等を「再被害防止対象者」に指定し、防犯指導・警戒等を実施して行っている再被害防止の措置を推進することとされた。

 再被害の防止については、「再被害防止要綱の制定について」(平成13年8月)の規定に基づき、再被害防止対象者に指定された者に対して、

 ・再被害防止のための関連情報の収集

 ・関連情報の教示

 ・連絡体制の確立と要望の把握

 ・非常時の通報指導

 ・自主警戒指導

 ・警察による警戒措置

 ・加害者への警告

等を実施している。

 また、先述のとおり、刑事施設等と綿密な連携を図っている。

 再被害防止要綱の徹底のため、再被害防止の指定状況や再被害指定事件に係る刑事施設との連絡状況等について、定期に報告を求めることによって状況の把握に努め、制度の周知徹底を図ることとし、再被害防止のための各規定に報告要領を盛り込み、改正を行う予定である。

(12) 警察における保護対策の推進

 警察では、暴力団犯罪の被害者等の安全を確保するため、保護対策を推進しており、同対策を推進するため、暴力団等による危害行為を未然に防止するための基本的な事項を定めた保護対策実施要綱を策定するとともに、

 ・暴力団犯罪被害者保護対策用資機材

 ・保護対策用住居借上げ

 ・保護対象者居宅への警備用資機材借上げ

の予算を措置したところである(平成17年度:保護対策関連予算 117百万円、平成18年度:保護対策関連予算 167百万円)。

(13) 保釈に関しての犯罪被害者等に対する安全への配慮の充実

 法務省において、加害者の保釈に関し、検察官が、犯罪被害者等から事情を聴くなどによりその安全確保を考慮して裁判所に意見を提出するよう、適切な対応に努めていくこととされた。

 そこで、平成18年1月、最高検察庁から各高等検察庁及び各地方検察庁あてに、本施策につき適切な対応が行われるよう留意事項を通知しているほか、会議や研修等の様々な機会を通じて検察の現場への周知徹底を図っている。

(14) 再被害防止に向けた関係機関の連携の充実

 警察庁及び厚生労働省において、配偶者等からの暴力(DV)被害者、人身取引被害者、虐待を受けている児童等の保護に関する警察、婦人相談所及び児童相談所等の連携について、現状に対する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえ、一層充実していくこととされた。

 警察においては、配偶者暴力防止法に基づいて裁判所から出された保護命令に違反した場合の検挙措置、被害者の申出に基づく援助措置や配偶者暴力相談支援センターその他の関係機関団体と連携した被害者支援を講じる等、配偶者からの暴力事案に対し、被害者の立場に立った適切な対応を図っている。

 人身取引事犯の被害者については、その適正な保護がなされるよう関係機関・団体と連携を図るとともに、被害者が人身取引の被害を訴えることを容易とするようリーフレットを作成し、関係機関・団体に配布するなどして、被害者の早期発見、保護に努めている。

 また、街頭補導、少年相談等様々な活動の機会を通じ、児童虐待事案の早期発見と児童相談所等への確実な通告に努めるとともに、都道府県知事・児童相談所長による児童の安全確認や一時保護、立入調査を円滑化するための援助を実施しているほか、被害児童のカウンセリング、保護者への助言・指導、訪問活動による家庭環境の改善等の支援に取り組んでおり、要保護児童対策地域協議会等へ積極的に参画する等、学校、児童相談所等の関係機関との情報交換や連携強化に努めている。

 厚生労働省においては、配偶者からの暴力被害者の保護と自立支援について、関係機関相互の共通認識及び総合調整が必要不可欠であることから、連携を強化するためのネットワークの整備に係る費用について予算措置している。

 配偶者からの暴力については、婦人相談所は、配偶者からの暴力被害者の相談、保護、自立支援において、警察や福祉事務所等関係機関との連携を図るため、連絡会議や事例検討会議を開催するとともに、事例集や関係機関の役割等の内容を掲載したパンフレットを作成し関係機関に配布している。

 また、児童相談所は、触法少年、ぐ犯少年の通告、棄児、迷子、虐待を受けた子どもその他警察署で発見した要保護児童の通告、一時保護に関する事項、虐待を受けた子どもの調査、保護等に関する事項、少年補導、非行防止活動等に関して、警察との連携を図っている。

 警察庁及び文部科学省において、警察と学校等関係機関の通報連絡体制の活用、児童虐待防止ネットワークの活用、加害者少年やその保護者に対する指導等の一層の充実を図り、再被害の防止に努めることとされた。

 警察においては、非行や犯罪被害等個々の少年の抱える問題行動に応じた的確な対応を行うため、学校、児童相談所等とともに少年サポートチームを編成し、それぞれの専門分野に応じた役割分担の下、少年への指導・助言を行っている。警察庁では、平成16年4月、「少年非行防止・保護総合対策推進要綱」を発出し、学校その他の関係機関との連携の強化、少年サポートチームの普及促進及び活動の活性化、少年及び保護者に対する相談活動の強化、被害少年対策について都道府県警察に指示し、同年10月、少年サポートチームの効果的な運用を図るため、文部科学省と合同で、都道府県警察、関係機関・団体の実務担当者に対する研修会を実施した。

 平成17年度は、少年サポートチームの効果的な運用を図るため、警察庁と文部科学省が合同で、全国6か所において、都道府県警察や関係機関・団体の実務担当者等に対する研修を実施するとともに、同年12月、「犯罪から子どもを守るための対策に関する関係省庁連絡会議決定に係る各種対策の推進について」及び平成18年1月、「スクールサポーター制度の拡充について」を発出し、子どもを非行や犯罪被害から守る施策の一環として、スクールサポーター制度の拡充を図ることを都道府県警察に指示した。

 文部科学省においては、各教育委員会に対し、学校警察連絡協議会等の取組を通じ、学校と警察が連携し児童生徒の問題行動に対応できるよう、会議の場や通知等において促しており、平成17年6月には、「児童生徒の問題行動等への対応の在り方に関する再点検について」において、学校と警察の連携体制の確保、学校と教育委員会等との緊密な連絡等、学校と学外の諸機関との連携・連絡体制の再点検をするよう通知した。

 また、要保護児童等に関し、「児童福祉法の一部を改正する法律」(平成16年法律153号)を踏まえ、厚生労働省、警察庁、法務省及び文部科学省が連携して、「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv03/index.html)を作成したことを受けて、「要保護児童対策地域協議会設置・運営指針について」(平成17年2月)を、各都道府県・指定都市教育委員会等に通知し、虐待を受けている子どもを始めとする要保護児童の適切な保護を図るための関係機関との適切な連携について周知している。

▼少年サポートチームの概要

少年サポートチームの概要

提供:警察庁



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