第1部 犯罪被害者等のための施策と進捗状況

第2章 犯罪被害者等のための具体的施策



《基本計画において、「1~3年以内を目途に検討の結論を得て、施策を実施する」とされたもの(「1~2年以内を目途に実施する」とされたものを含む。)》

(23) 重度のPTSD等重度ストレス反応の治療等のための高度な専門家の養成及び体制整備に資する施策の検討及び実施、犯罪被害者に係る司法関連の医学知識と技術について精通した医療関係者の在り方及びその養成のための施策の検討

 厚生労働省において、犯罪被害者等の重度のPTSD等重度ストレス反応について、犯罪被害者等に特有の対応を要する面があることを踏まえ、診断・治療等を行う専門家が全国的に不足していることを前提に、実態を把握し、その上で、「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」の在り方を含め、必要とされる高度な専門家の養成及び体制整備に資する施策を検討し、3年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施することとされた。

 平成17年から厚生労働科学研究で「犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究」を3年計画で行っており、

 《1》 犯罪被害者の精神状態についての実態とニーズの調査

 《2》 医療場面における犯罪被害者の実態とニーズの調査

 《3》 精神保健福祉センター等の職員が犯罪被害者にかかわる場合のマニュアル作り

等を進めている。また、併せて、同研究において犯罪被害者への心理的支援について、司法専門家の意見を把握する調査も行っている。これらの研究成果も踏まえ、「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」等における犯罪被害者に対応可能な専門家の養成に資するカリキュラムの見直し、精神保健福祉センター等における相談支援方法の見直し等必要な措置を検討する。

 また、「PTSD対策に係る専門家の養成研修会」を平成18年度においても実施する予定であり、同年度からは、より高度な診断評価・治療の技法を身に付けるため、医師、保健師等を対象にアドバンスコースを設ける。

(24) PTSDの診断及び治療に係る医療保険適用の範囲の拡大

 厚生労働省において、PTSDの診断及び治療に係る医療保険適用の範囲について科学的評価を行い、これを踏まえ、平成18年度診療報酬改定において、必要に応じて措置を講ずることとされた。

 平成18年度診療報酬改定においては、PTSDを対象とした精度の高い臨床診断面接尺度として国際的に定評があり、PTSD診断に広く用いられているCAPS(Clinician‐Administered PTSD Scale for DSM‐IV:PTSD診断のための心理テストの一種)について、新たに保険適用としたほか、20歳未満の者に対して心身医学療法を行った場合の評価を引き上げた。

(25) 救急医療に連動した精神的ケアのための体制整備

 厚生労働省において、救急医療に連動した精神的ケアのための体制整備に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施することとされた。

 医師の臨床研修の必修化に伴い、精神科での研修も必修化されたことにより、すべての研修医が、精神疾患に対する初期的対応、精神的ケアと治療の実際を学ぶことになっている。

 また、救命救急センターにおいて、犯罪被害者が搬送された場合にも、救急医療の実施と併せて、精神科の医師による診療等が速やかに行われるよう、必要に応じた精神科の医師の確保を求めている。

 さらに、救命救急センターに対する運営費補助に反映される、「救命救急センターの評価」の評価項目に、救急医療と精神科との連携の強化を図る観点から、精神科との連携を評価する項目の追加を検討している。

(26) 長期療養を必要とする犯罪被害者のための施設の検討及び実施

 厚生労働省においては、犯罪被害者を含め、長期療養を必要とする患者が必要な医療や介護サービスを受けられる方策について、医療機能の分化、連携を含めた平成18年の医療提供体制の改革の中で検討して、1年以内を目途に結論を出し、必要な施策を実施することとされた。

 地域における医療機能の分化、連携を進める医療計画制度の見直し等を内容とする、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」が平成18年6月に成立したことを受け、犯罪被害者等を含め、長期療養を必要とする患者が必要な医療や介護サービスを受けられる方策について、必要な施策を検討している。

 経済的支援に関する検討会については、第1節2「給付金の支給に係る制度の充実等(基本法第13条関係)」(7)を参照。

(27) 性暴力被害者のための医療体制の整備に資する施策の検討及び実施

 厚生労働省において、性暴力被害者について、特有の対応を要する面があることを踏まえ、性暴力被害者が利用しやすく、十分な治療・配慮等を受けることができるような医療体制の整備に資する施策を検討し、1年以内を目途に結論を出し、当該施策を実施することとされた。

 そこで、性暴力被害者も含め、患者等が医療に関する情報を十分に得られるような医療体制の整備を内容とする、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法の一部を改正する法律」が平成18年6月に成立した。

 患者等が医療に関する情報を十分に得られ、適切な医療を選択できるよう支援するために、医療機関管理者に対し、医療に関する一定の情報について報告を義務化しており、都道府県が医療機関に関する情報を集約し、インターネット等で分かりやすく住民に提供し、住民からの相談に応じ助言を行う仕組みを制度化している。


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