我が国における犯罪被害者等施策の経緯等 -年次報告書の第1回の作成に当たって-

第3章 総合的な取組に向けて



2 基本計画の概要

 基本計画では、犯罪被害者等が直面している困難な状況を打開し、権利利益の保護を図るという目的を達成するために、個々の施策の策定・実施や連携に際し、実施者が目指すべき方向・視点を示すものとして、「基本方針」を設定した。基本法は、国及び地方公共団体が犯罪被害者等のための施策を策定・実施していく上で基本となる3つの「基本理念」を掲げているとともに、国民の配慮と協力を責務と定めている。施策の実施者において目指すべき方向・視点は、これらの理念・責務に立脚すべきであり、こうした考え方から、基本方針は下図の4つとした。

▼基本計画策定までの経緯

基本計画策定までの経緯

▼基本計画の作成方針及び手順について

基本計画の作成方針及び手順について

犯罪被害者等基本計画検討会の検討経過

○第1回犯罪被害者等施策推進会議(平成17年4月28日)

・犯罪被害者等施策推進会議の議事運営に関する決議等

◇第1回犯罪被害者等基本計画検討会(4月28日)

・骨子案の検討について(1:基本方針、重点課題、計画期間)

◇第2回犯罪被害者等基本計画検討会(5月23日)

・骨子案の検討について(2:損害回復・経済的支援への取組(第12・13・16・17条関係))

◇第3回犯罪被害者等基本計画検討会(6月6日)

・骨子案の検討について(3:精神的・身体的被害の回復・防止への取組(第14・15・19条関係))

◇第4回犯罪被害者等基本計画検討会(6月27日)

・骨子案の検討について(4:刑事手続への関与拡充への取組(第18条関係))

◇第5回犯罪被害者等基本計画検討会(7月11日)

・骨子案の検討について(5:支援等のための体制整備への取組(第11・21・22条関係))

◇第6回犯罪被害者等基本計画検討会(7月26日)

・骨子案の検討について(6:国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組(第20条関係)、推

 進体制(第23条関係を含む。)、基本方針・重点課題・計画期間(再検討))

◇第7回犯罪被害者等基本計画検討会(8月2日)

・骨子案の検討について(7:骨子案まとめ)

○第2回犯罪被害者等施策推進会議(8月9日)

・骨子案決定

☆骨子案に対する意見募集

国民からの意見募集(8月12日~9月5日)

犯罪被害者団体等からの意見募集(8月23日~9月4日、全国9か所)

◇第8回犯罪被害者等基本計画検討会(10月11日)

・基本計画案の検討について(1:基本方針・重点課題・計画期間、推進体制(第23条関係を含む。)、損害回復・経済的支援等への取組(第12・13・16・17条関係))

◇第9回犯罪被害者等基本計画検討会(10月25日)

・基本計画案の検討について(2:精神的・身体的被害の回復・防止への取組(第14・15・19条関係)、刑事手続への関与拡充への取組(第18条関係))

◇第10回犯罪被害者等基本計画検討会(11月7日)

・基本計画案の検討について(3:支援等のための体制整備への取組(第11・21・22条関係)、国

 民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組(第20条関係))

◇第11回犯罪被害者等基本計画検討会(11月21日)

・基本計画案の検討について(4:基本計画案まとめ)

○第3回犯罪被害者等施策推進会議(12月26日)

・基本計画案決定

▼基本計画策定過程での犯罪被害者等からの意見募集等

・平成17年2月  犯罪被害者団体等からヒアリング(2回開催、延べ20団体出席)

・平成17年5月  性暴力等被害者からの要望把握のためのヒアリング(当該要望に詳しい有識者等12名から個別にヒアリング)

・平成17年6月  犯罪被害者団体等(3団体)から追加的にヒアリング

→上記の計4回のヒアリングにより、合計615の意見・要望に集約。

・骨子決定後、8月中旬から9月上旬にかけて、国民からの意見募集を実施し、309人・団体から意見が寄せられ、また、全国9か所で犯罪被害者団体等から直接、骨子に対する意見・要望をヒアリング。

→これらによって寄せられた意見・要望について、重複するものや単に賛意を示すものなどを除き、改めて検討が必要と思われる451の意見・要望に集約。

 また、基本計画は、犯罪被害者等及びその支援に携わる者の具体的な要望を基に策定されたが、広範囲・多岐にわたるそれらの要望を総覧し整理する中で、大局的な課題として浮かび上がってくるものとして指摘できる次ページ上図の5つの課題を「重点課題」として設定した。これらの課題は、関係府省庁がそれぞれに対応していくのみならず、各府省庁が、有機的な施策体系の一部を担っているという意識の下で横断的に取り組んでいく必要のあるものである。各府省庁は、個々の施策の実施に当たっては、各課題に対する当該施策の位置付けを明確に認識し、各課題ごとに各府省庁横断的かつ総合的な施策の推進・展開が図られるよう努める必要があり、それによって、一層効果的な取組が可能となるものである。

 5つの重点課題の下、258に上る具体的施策を位置付けている。258の施策のうち、約8割に当たる212の施策については、直ちに取り組むこととし、約2割に当たる46の施策は、実施までに検討を要する施策のため、検討の方向性を示し期限を設定した上で検討を行い、検討の結論に従って施策を実施することとした。

  また、府省庁横断的に取り組むものとして、「経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討並びに施策の実施」、「どの関係機関・団体等を起点としても、必要な情報提供・支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りのための検討及び施策の実施」、「民間の団体に対する財政的支援の在り方の検討及び施策の実施」の3つについては、推進会議の下に有識者と関係府省庁から成る検討のための会を設け、調査・検討を行い、2年以内に結論を出し、結論に従った施策を実施することとした。

▼基本方針・重点課題の概略について

基本方針・重点課題の概略について

▼重点課題に係る具体的施策

〈重点課題《1》「損害回復・経済的支援等への取組」に係る具体的施策〉

□ 損害賠償請求に関し刑事手続の成果を利用する制度を新たに導入する方向での検討及び施策の実施

 附帯私訴、損害賠償命令、没収・追徴を利用した損害回復等、損害賠償の請求に刑事手続の成果を利用できる我が国にふさわしい制度を新たに導入する方向で、2年以内に検討し、施策を実施。【法務省】

□ 犯罪被害給付制度における重傷病給付金の支給範囲等の拡大

 犯罪被害給付制度における支給範囲等について、拡大の必要があることを前提に、1年以内に調査し、施策を実施。【警察庁】

□ 経済的支援を手厚くするための制度のあるべき姿及び財源に関する検討並びに施策の実施

 犯罪被害者等に対する経済的支援制度について、現状より手厚くする必要があることを前提に、社会保障・福祉制度全体の中でのあるべき姿や財源を、推進会議の下に有識者、内閣府、警察庁、法務省、厚生労働省から成る検討のための会を設置して、2年以内に検討し、施策を実施。【検討のための会】 

□ 公営住宅への優先入居等

 自宅に住めないなどの事情のある犯罪被害者等に対する公営住宅への優先入居等に資する措置の実施。【国土交通省】

□ 事業主等の理解の増進

 犯罪被害者等に対する理解に基づき、公共職業安定所におけるきめ細かな就職支援等を実施。【厚生労働省】等42の施策

〈重点課題《2》「精神的・身体的被害の回復・防止への取組」に係る具体的施策〉

□ 重度のPTSD(外傷後ストレス障害)等重度ストレス反応の治療等のための高度な専門家の養成及び体制整備に資する施策の検討及び実施

 犯罪被害者等のPTSD等について、診断・治療を行う専門家が不足していることを前提に、高度な専門家の養成等に資する施策を3年以内に検討し、実施。【厚生労働省】

□ 犯罪被害者に係る司法関連の医学知識と技術について精通した医療関係者の在り方及びその養成のための施策の検討

 犯罪被害者に係る司法関連の医学知識と技術について精通し、捜査・裁判等を見通したケア、検査等を行うことのできる専門家の養成のための施策を3年以内に検討し、実施。【厚生労働省】

□ 加害者に関する情報提供の拡充

 更生保護官署と保護司の協働態勢により、加害者の釈放予定等を含む刑事裁判終了後の加害者に関する情報を犯罪被害者等に提供できるよう、更生保護官署に被害者支援専任の担当者を配置することを含め検討し、2年以内に実施。【法務省】

□ 犯罪被害者等に関する情報の保護

 《1》公開の法廷において被害者の氏名等を明らかにしないようにする制度、《2》証拠開示の際に被害者の氏名等が関係者に知られないように求めることができる制度の導入に向け2年以内に検討し、実施。【法務省】

 犯罪被害者等の保護の観点も含め住民基本台帳の閲覧制度等の抜本的見直し。【総務省】

□ 職員等に対する研修の充実等

 関係省庁において、二次的被害を防止し、犯罪被害者等への適切な対応を確実にするため、職員への研修を更に充実。等69の施策

〈重点課題《3》「刑事手続への関与拡充への取組」に係る具体的施策〉

□ 犯罪被害者等が刑事裁判に直接関与することのできる制度の検討及び施策の実施

 公訴参加制度を含め、犯罪被害者等が刑事裁判手続に直接関与することのできる我が国にふさわしい制度を新たに導入する方向で、2年以内に検討し、施策を実施。【法務省】

□ 冒頭陳述等の内容を記載した書面の交付についての検討と施策の実施

 犯罪被害者等に冒頭陳述等の内容を記載した書面を交付することについて、1年以内に検討し、施策を実施。【法務省】

□ 少年保護事件に関する犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた制度の検討及び施策の実施

 平成12年の改正少年法施行後5年を経過した際に行う検討において、犯罪被害者等の意見・要望を踏まえた検討を行い、施策を実施。【法務省】

□ 犯罪被害者等の意見を踏まえた仮釈放審理の検討及び施策の実施

 仮釈放の審理をより犯罪被害者等の意見を踏まえたものとすることについて、犯罪被害者等の意見陳述の機会を設けることを含め検討し、2年以内に施策を実施。【法務省】等43の施策

〈重点課題《4》「支援等のための体制整備への取組」に係る具体的施策〉

□ どの関係機関・団体等を起点としても、必要な情報提供、支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りのための検討及び施策の実施

 犯罪被害者等が、どの関係機関・団体等を起点としても、必要な情報の提供、支援等を途切れることなく受けることのできる体制作りについて、推進会議の下に有識者、内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省から成る検討のための会を設置し、2年以内に検討し、施策を実施。【検討のための会】

□ 犯罪被害者団体等専用ポータルサイトの開設

 犯罪被害者等の出会いや、各団体の活動紹介のため、犯罪被害者団体等専用ポータルサイトを開設。【内閣府】

□ 更生保護官署と保護司との協働による刑事裁判終了後の支援についての検討及び施策の実施

 更生保護官署が、保護司との協働態勢の下、犯罪被害者等に対し、刑事裁判終了後の支援を行うことについて、犯罪被害者等の支援に適する保護司の配置も含め、2年以内に検討し、施策を実施。【法務省】

□ 犯罪被害者等の状況把握等のための継続的調査の実施

 犯罪被害類型別、被害者との関係別に、犯罪被害者等の置かれた状況やその経過を把握するため、一定の周期で継続的調査を実施。【内閣府】

□ 民間の団体に対する財政的援助の在り方の検討及び施策の実施

 民間の団体に対する財政的援助について、現状より手厚くする必要があることを前提に、財源も含めた総合的な在り方を、推進会議の下に有識者、内閣府、警察庁、総務省、法務省、厚生労働省から成る検討のための会を設置し、2年以内に調査し、施策を実施。【検討のための会】

等75の施策

〈重点課題《5》「国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組」に係る具体的施策〉

□ 学校における生命のかけがえのなさ等に関する教育の推進

 学校教育の中で、生命のかけがえのなさ等を積極的に取り上げる教育を推進するため、事業の実施、教材開発等。【文部科学省】

□ 「犯罪被害者週間」にあわせた集中的な啓発事業の実施

 「犯罪被害者週間(11月25日から12月1日まで)」を設定し、当該週間にあわせて、啓発事業を集中的に実施。【内閣府】

□ 犯罪被害者等の置かれた状況等について国民理解の増進を図るための啓発事業の実施

 国民が犯罪等による被害について考える機会として、様々なテーマを議論する啓発事業を開催。【内閣府】

□ 犯罪被害者等に関する個人情報の保護

 警察による発表については、犯罪被害者等のプライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容となるよう配慮。【警察庁】

等29の施策

▼今後検討を行っていく事項について

今後検討を行っていく事項について

 推進体制について、施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項として、基本計画に下記が盛り込まれている。

 ・国として施策の推進に必要な事項として、《1》国の行政機関相互の連携・協力、《2》地方公共団体との連携・協力、《3》その他様々な関係機関・関係者との連携・協力

 ・国として施策の策定及び実施において踏まえるべき事項として、《4》犯罪被害者等の意見の施策への適切な反映、《5》施策策定過程の透明性の確保

 ・推進会議の所掌事務等に関連して、《6》施策の実施状況の検証・評価・監視、《7》フォローアップの実施、《8》基本計画の必要な見直し



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