我が国における犯罪被害者等施策の経緯等 -年次報告書の第1回の作成に当たって-

第3章 総合的な取組に向けて


第1節  犯罪被害者等基本法の制定

1 制定の経緯

 第1章で見たとおり、これまでの個別の取組が相当の成果を上げる一方、そうした各府省庁単位での取組は一定の壁に突き当たった感も生じていた。また、第2章で見たとおり、依然として犯罪被害者等の置かれた状況には深刻なものがあり、満たされない様々なニーズが存在していた。そうしたことから、民間ボランティアによる被害者支援組織や、被害者や遺族らによる自助グループが相次いで結成され、総合的な取組を求める声が高まっていった。

 こうした状況から、犯罪被害者等の視点に立った施策を講じ、その権利利益の保護が図られる社会の実現に向けた新たな第一歩を踏み出す必要があった。

▼基本法制定までの経緯

基本法制定までの経緯

 総合的な取組に向けて更なる進展が求められる中、犯罪被害者等の悲痛な叫びが契機となり、政治主導による基本法制定に向けた動きが始まった。

 平成15年、約39万余の署名を持参した被害者団体のメンバーと面会した小泉総理大臣が、犯罪被害者のための施策の検討を進めるように指示をしたことを受け、平成16年2月より、自民党司法制度調査会において検討が開始され、平成16年6月、「犯罪被害者のための総合的施策のあり方に関する提言」がとりまとめられた。本提言の中では、今後の方向性として、「《1》一日も早く基本法を制定し、犯罪被害者の権利を守り、支援する原則を明らかにした上、犯罪被害者のための施策の理念、総合的施策、施策を実施・推進していくための体制を含むグランドデザインを明らかにすること、《2》基本法にのっとり、総合的施策の全体像を盛り込んだ基本計画を作成すること、《3》基本計画に従ってさまざまな施策を、期限を定めて着実に実行していくこと、が必要である(注3)」とされた。

 その後、自民党と公明党との間で設置された犯罪被害者等基本法案プロジェクトチームでの検討、民主党との協議を経て、同年11月17日、第161回国会衆議院内閣委員会において、犯罪被害者等基本法案を委員会提出法律案とすることが決せられた。同法案は、11月18日に衆議院本会議で全会一致で可決され、参議院送付後、11月30日の参議院内閣委員会での審議・採決を経て、翌日の12月1日に参議院本会議で可決、基本法が成立、同月8日に公布され、翌年の平成17年4月1日、施行された。

(注3)自民党司法制度調査会「犯罪被害者のための総合的施策のあり方に関する提言」(平成16年6月15日)



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