我が国における犯罪被害者等施策の経緯等 -年次報告書の第1回の作成に当たって-

第1章 基本法制定以前の取組



第2節  犯罪被害者等給付金支給法の成立等

 昭和49年8月30日、いわゆる三菱重工ビル爆破事件により、多数の死傷者が出るに至ったが、その際、その場に偶然居合わせて被害に遭った者などが救済を受けられなかったことをきっかけとして、公的な犯罪被害者補償制度の確立の必要性がマスコミ等で大きく議論され、また、被害者の遺族、被害者学の研究者等からも、制度の確立を求める声が高まった。

 昭和55年5月1日、犯罪被害者等給付金支給法が制定された。同法によって創設された犯罪被害給付制度は、通り魔殺人等の故意の犯罪行為により、不慮の死を遂げた被害者の遺族又は身体に障害を負わされた被害者等に対して、社会の連帯共助の精神に基づき、給付金を支給することによって、被害者等の精神的、経済的打撃の緩和を図ろうとするものである。

 具体的には、日本国内又は日本国外にある日本船舶若しくは日本航空機内において行われた人の生命又は身体を害する罪に当たる行為(過失犯を除く。)による死亡、重傷病又は障害を対象とし、被害者等からの申請を受けて行われる各都道府県公安委員会の裁定により、被害者の年齢や勤労による収入の額等に基づいて遺族給付金や障害給付金が算定され、支給される制度である。

 本制度は、「犯罪被害者等のため」という視点を正面に据えた施策として、新たな性格を有していた。

 また、国際的にも、被害者支援を求める声が高まり、1985年、国連総会において「犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言」が採択された。宣言では、「被害者は、その尊厳に対し共感と敬意をもって扱われるべきであること」、「被害者が必要な物質的、医療的、精神的、社会的援助を受けられるようにし、その情報を被害者に提供すべきこと」などが盛り込まれ、各国政府における適切な制度整備を求めるものであった。



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