第4章 支援等のための体制整備への取組
1 相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)
手記 犯罪被害者等支援の担当になって
大阪市市民局ダイバーシティ推進室人権企画課
中野 智貴
中野 智貴
「ここでは犯罪被害者への支援をしてるねん。」令和5年4月、人生初となる上司にそう言われました。犯罪被害に遭われた方へ、見舞金の支給や日常生活の支援等などを行う。なるほど。確かに重要そうだけど、『まさか市役所でこのような業務に就くことになるとは思わなかった』というところから私の社会人生活はスタートしました。
犯罪被害により亡くなられた方の御遺族や重大な犯罪被害に遭われた方等に対して見舞金を支給する、精神医療費用や転居費用等を助成する、被害により食事に困っている方に対して配食サービスを提供する。要綱やパンフレットを見て、なんとなく概要が分かったような気になるも、いざ自分が窓口となり相談を受けるようになると、この業務の難しさが見えてきました。特に、被害者の方々に対してどう接すればよいのか、ということが分からず悩みました。
とある御遺族の方がおっしゃっていた忘れられない言葉があります。「申し訳ないけど、自分のこどもを殺された人の気持ちは経験していないと分からない」というものです。すごく衝撃を受けました。直接言われたわけではありませんが、支援する側として、突き放されたようで、自分の無力さを感じました。それまで被害者の方々のお気持ちを理解したい、と思いながらお話をしていましたが、思い返せば、相談を聞いていて、簡単に「分かります」なんて相づちを打てなかったり、上手く言葉が出てこなかったりするのは、どこか自分でもそのことを感じていたからだと思います。
いま、私が感じているのは、『必ずしも被害に遭われた方の感情全てを理解できなくてもよい』ということです。大阪市の犯罪被害者等支援の特徴であるアウトリーチ型支援を生かして被害者居住地の最寄りの区役所で面談をし、必要とあらば申請に必要な住民票の取得にも同行しています。このような被害者と長時間共に過ごすような経験を通して、確かに被害に遭われた方の感情を完璧に理解することは難しいかもしれませんが、理解できなくてもできることはあると気付きました。話を聞くことはできるし、大阪市で支援できることもある。この考えが正しいのかは分かりませんが、とある御遺族が「こどもをなくしてから、友人が何を話すわけでもないけどただ隣にいてくれたのが嬉しかった」とおっしゃっていたのを聞いて、『大きくは間違っていないのかな』と感じました。日々模索しながらではありますが、これからも犯罪被害者等支援と向き合っていこうと思います。
また、大阪市では、啓発活動にも力を入れています。私自身この担当になるまで「犯罪被害者等支援」というものを知りませんでした。イベントで啓発を行うと、比較的年齢の高い方は関心を持ってくれることが多いのですが、若年層はあまり足を止めてくれません。今までの私もきっとそうだったでしょう。しかし、この担当になり、様々な経験をしました。世の中の犯罪の多さ、被害者に降りかかる数々の困難を知り、また、それがいかに身近なものであるかを知りました。だからこそ、『この事業について知ってほしい』という想いで、若年層への声掛けを意識しています。
現在、市役所職員を志したときには想像のできなかった日々を過ごしています。友人との会話で、仕事でどのようなことをしているかという話題になれば必ず驚かれます。業務概要を話せばみんな「大切やな」と言ってくれるので、知ってもらえれば分かってくれるのだと思います。まだまだ認知度が高いとはいえない犯罪被害者のことを、支援のことを、もっと知っていただけるように、犯罪被害者週間を中心に啓発にも力を入れて頑張りたいと思います。
大阪市 ダイバーシティ推進室 人権企画課員(執筆時)