第1部 特集 犯罪被害者等施策推進会議決定に基づく取組の進捗状況
第2章 犯罪被害者等支援弁護士制度の創設

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1 経緯と背景

(1) 近時の課題

犯罪被害者やその家族は、その被害の実情等に応じて、被害直後から、刑事・民事関連を始めとする様々な対応が必要となるにもかかわらず、精神的・身体的被害等によって自ら対応できないばかりか、その被害に起因するなどして経済的困窮に陥ることにより弁護士等による援助を受けられない場合がある。

日本司法支援センター(以下「法テラス」という。)は、国等の責務(総合法律支援法第8条から第11条まで)に基づく総合法律支援の事業を適切に行い、あまねく全国において、法による紛争の解決に必要なサービス等の提供が受けられる社会の実現を目指して、平成18年の設立・業務開始以来、民事法律扶助業務・国選弁護等関連業務のみならず、犯罪被害者支援業務を実施し、犯罪被害者等に対する支援において一定の成果を挙げてきた。

しかしながら、現行の法テラスによる犯罪被害者等への援助は、その対象や内容が限定的であるとの指摘がなされ、とりわけ、犯罪被害者等への支援に関する施策を一層推進する観点から、上記の精神的・身体的被害等によって自ら対応できず、経済的にも困窮している犯罪被害者等に対し、必要な援助を行うための施策を実施することが求められている。

(2) 「犯罪被害者支援弁護士制度検討会」及び「犯罪被害者支援弁護士制度・実務者協議会」

法務省においては、令和2年7月、弁護士による犯罪被害者の支援を充実させる観点から、支援の対象とすべき犯罪被害者の範囲、支援の在り方等について、法制度化に向けた課題を含め広く検討し、論点整理を行うことを目的として、「犯罪被害者支援弁護士制度検討会」(委員:弁護士、学識経験者、被害者支援団体関係者)を設置し、同検討会は、関係機関・団体等からヒアリングを行うなどした上、令和3年4月、論点整理の結果を公表した。

さらに、同年10月、法務省において、真に援助が必要な犯罪被害者に対する法的支援の方策・在り方について、実務的な観点から引き続き検討を行い、運用面における改善・見直し事項を洗い出し、犯罪被害者支援に反映させるとともに、法制度化に向けた課題を含む諸課題の更なる検討を進めることを目的として、「犯罪被害者支援弁護士制度・実務者協議会」(構成員:弁護士、法テラス、法務省)を設置した。同協議会は、令和5年4月、早期の段階から弁護士による継続的かつ包括的な支援を受けられるようにするとともに、これに対する必要な経済的援助を行うことを内容とする制度(犯罪被害者等支援弁護士制度)の導入を求めることを内容とする取りまとめを公表した。

(3) 犯罪被害者等施策推進会議決定

令和5年6月推進会議決定の項目<2>「犯罪被害者等支援弁護士制度の創設」において、「犯罪被害者等支援弁護士制度について、法務省において、犯罪被害者等が弁護士による継続的かつ包括的な支援及びこれに対する経済的援助を受けることができるよう、同制度の導入に向けて速やかに具体的検討を行い、必要に応じ、関係機関等との調整を図るなどして、1年以内をめどに結論を出し、これらを踏まえて所要の法整備を含めた必要な施策を実施する」こととされた。

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