警察庁 National Police Agency

犯罪被害者等施策  >  犯罪被害者白書  >  令和4年版 犯罪被害者白書  >  トピックス 多機関連携による被害者支援~大津市における保育園児等多数被害の過失運転致死事件における被害者支援~

第4章 支援等のための体制整備への取組

目次]  [戻る]  [次へ

1 相談及び情報の提供等(基本法第11条関係)

トピックス 多機関連携による被害者支援
~大津市における保育園児等多数被害の過失運転致死事件における被害者支援~

滋賀県警察本部警務部警察県民センター

1 はじめに

第4次基本計画では、その重点課題の一つに「支援等のための体制整備への取組」が挙げられています。被害直後から様々な困難な状況に直面する犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、全ての犯罪被害者等が、必要なときに必要な場所で情報の入手や相談を行い、専門的な知識・技能に裏付けられたきめ細かな支援を受けることができるよう、警察、地方公共団体や犯罪被害者等の援助を行う民間の団体等が協力して、切れ目のない支援体制を構築していく必要があるからです。

滋賀県警察は、令和元年5月8日に発生した、保育園児等が多数被害に遭った過失運転致死事件において、地方公共団体等と連携して支援に当たった中で、「支援等のための体制整備への取組」の重要さを実感しました。

2 事故の概要

令和元年5月8日午前10時14分、大津市内の丁字路信号交差点において、右折レーンに進入した乗用車が対向から直進してきた軽乗用車に衝突し、衝突された軽乗用車が交差点角の歩道上で信号待ちをしていた保育園児の列に突っ込みました。

園児2名が亡くなられ、園児と保育士14名が重軽傷を負われました。

事故の概要

3 滋賀県警察による被害者支援現地対策室の設置と支援室員の派遣

事件発生直後に行う支援は、後の被害者等支援の流れを作る上で重要な役割を持ちます。滋賀県警察では、死傷者多数の事件・事故が発生した場合に被害者支援現地対策室を設置するという規定を設けており、これに基づき、発生現場を管轄する大津警察署に被害者支援現地対策室を設置し、すぐさま支援室員を派遣しました。

搬送先の病院が決まると、順次、警察署捜査員及び支援室員が向かいました。事情聴取をする捜査員とは別に、支援室員は御遺族及び被害者とその御家族に寄り添うことにしました。捜査員と支援室員それぞれが連携しながら被害者等への支援に当たったことは、初期の支援において重要であったと思います。

4 関係機関との早期連携

滋賀県、大津市、滋賀県犯罪被害者等支援推進協議会とは早期から連携をとりました。保育園児が多数巻き込まれた交通事故であったことから、発生直後から県や市の子ども支援関係課である、

滋賀県 県民活動生活課、障害福祉課、子ども・青少年局、精神保健福祉センター、子ども・家庭相談センター

大津市 幼児政策課、教育委員会、保健所

滋賀県臨床心理士会

が、被害者等の支援を行いました。

滋賀県では、特にいじめなどの問題が重大なものとなったとき、すぐに学校や保育園の支援を行う緊急支援体制がとられており、事故直後から事故関係者以外の園児や保育士に対して県と臨床心理士会を中心とした支援が入り、警察の支援と併せて行われました。

事故発生翌日の5月9日には、県精神保健福祉センターや障害福祉課、大津市教育委員会から職員が保育園に派遣されて保育園の要望等をお聴きし、翌10日には県子ども・青少年局や滋賀県臨床心理士会を加えて、今後の支援に関する会議が開催されました。

滋賀県臨床心理士会では、5月13日以降、保護者に向けて子供に起こりやすいストレス反応や対応を紹介する文書の配布や、ストレスアンケートを実施されました。

また、民間支援団体との早期連携も図りました。公益社団法人おうみ犯罪被害者支援センターは、平成12年の設立以来、常に被害者等に寄り添い続ける活動を続け、滋賀県公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体に指定を受けている県内唯一の民間支援団体です。その公益社団法人おうみ犯罪被害者支援センターは、滋賀弁護士会と連携し、5月19日には有志の被害者支援弁護士による相談会を開催して、事故後の補償や被疑者とのやり取り等について、参加された御家族に説明する等の支援を行いました。

その上で、5月20日に関係機関会議が行われました。これまでの支援状況を報告・共有し、今後の連携を確認するとともに、御遺族、被害者とその御家族への支援には警察が、保育園の関係者には県が、被害者の御家族で市立小中学校に在籍する兄弟姉妹には市教育委員会が、他の通園児童とその保護者には大津市の福祉部局が担当するなど、対象となる方に応じた支援が行われるよう、各関係機関が役割分担することになりました。

その後も関係機関との担当者会議を開いてお互いに意見を出し合い、御遺族や被害者等への支援を継続できるよう、支援状況や被害者等の困りごとを共有しました。

地方公共団体やその他の関係機関、民間の支援団体等がそれぞれの立場で支援を行うことで、被害直後から各関係機関の連携・協力の下で重層的な支援を行うことができる体制を構築するとともに、中・長期的な支援へと移行する中でも、時間の経過等とともに変化していく被害者等のニーズにきめ細かく対応できるよう、現在も必要な支援を継続しているところです。

5 社会全体で行う被害者等支援

被害者等支援を行う中で、病院関係者や学校関係者の方々には、同じ気持ちで支援していただき、感謝しています。今回のケースでは、保育園の保育士を対象に、臨床心理士会が中心となって、乳幼児期の子供の心のケアや保護者の支援についての研修会が早期に行われました。警察の被害者等支援は、被害者やその御家族、御遺族を中心に行われますが、多機関連携による被害者等支援を通じて、被害者の周囲にいる方々への幅広い支援や被害者等の心情理解の醸成等、社会全体で被害者等を支えていくことの大切さを強く認識しました。

また、各関係機関と共に被害者等支援に携わったことで、各機関とも被害者等を支援する準備はあるものの、被害者等と関わるきっかけがなく、被害者等へのアプローチに苦労をしているということを知りました。こうした点については、最初に事件・事故を取り扱う警察が、被害者等の意向を大切にしながら、各関係機関の支援につながるよう連携していくことが重要であると感じました。今後も、御遺族や被害者等が再び平穏な生活に戻ることができるような支援を大切にし、各関係機関・団体と連携したきめ細かな支援を続けていきたいと考えています。

目次]  [戻る]  [次へ

警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
電話番号 03-3581-0141(代表)