徳島大会:パネルディスカッション

「性暴力被害後に求められる支援について」

コーディネーター:
内海 千種(徳島大学大学院社会産業理工学研究部准教授、公益社団法人徳島被害者支援センター理事)

パネリスト:
永本 能子(弁護士、徳島弁護士会犯罪被害者支援センター委員長)
柳谷 和美(基調講演者)
仁木 伸一(徳島県中央こども女性相談センター所長、性暴力被害者支援センター「よりそいの樹とくしま中央」)

多田 卓司(徳島県警察本部刑事部捜査第一課長)

内海: それでは、ただいまよりパネルディスカッションを始めます。私は、今回コーディネーターを務めさせていただきます徳島大学大学院の内海と申します。私自身は徳島被害者支援センターで活動のお手伝いをさせていただくとともに、事件、事故、災害の後に生じる心身の変化についての調査研究や、PTSDを対象とした心理療法などを実施しています。よろしくお願い致します。

 本日は、柳谷和美さんの講演を受けて、「性暴力被害後に求められる支援について」というテーマで、パネリストの方々にそれぞれのお立場での支援策等々についてお話をいただいた上で、皆さんと一緒に本テーマについて考えていきたいと思います。

 まずは徳島県ではどのような支援があるのかということについて、それぞれの立場でお話をいただこうと思います。パネリストの方には、各所属機関等での支援について御紹介いただく予定になっております。配布資料も併せてご覧いただきながら、お話を聞いていただきたいと思います。

 まずは、徳島県警察本部刑事部捜査第一課長の多田卓司様から、徳島県で発生した性暴力被害および支援の現状等についてお話をいただきたいと思います。

多田: 警察本部の捜査一課の多田と申します。よろしくお願いします。

 【スライド1】私からは県警における性暴力被害者支援の取組の概要について説明します。

 【スライド2】今日、お話しするのは、性暴力事件の発生や検挙数、最近の主な事件、性暴力に関する刑法改正の概要、性暴力被害者の支援の取組、性暴力の事件捜査の流れを説明します。最後に、性暴力に限らず被害者支援要員の取組。そして、私の考える今後の課題という柱で進めていきたいと思います。

 【スライド3】まず、徳島県内で性暴力事件がどれぐらい発生しているのかということですが、各方面のデータを表にしています。認知というのは、その事件の届出を受けたりして警察に発覚した件数を言います。上が強制性交等、刑法が改正される前は強かんという罪名で言われていました。皆さん方も強かんと言う方が聞きなれているかもしれませんけれども、その件数です。かっこ書きは13 歳未満の年少者が被害に遭った数です。下の段は強制わいせつです。強制性交というのは、異性が性器を挿入すること。新しい刑法を後で説明しますけれども、刑法が改正になってからは口でのかん淫やこうもんのセックスも入ってくるようになりました。それに至らない、例えば、体を触る、キスをする、陰部に触るといったものが強制わいせつという罪です。先ほど知事や県本部長から刑法犯認知件数が年々減少しているという話がありましたが、平成15 年をピークに年々認知件数は下がっています。これは、このような性暴力を含む犯罪を言うわけですが、平成15 年をピークに下がっているのは主に窃盗事件の件数が減っているということで、見ていただいても過去5年間、性暴力の事件の件数は、そんなに減っていないというのがお分かりだと思います。

 【スライド4】最近の主な事件ですけれども、徳島市内の路上におきまして成人女性が被害に遭いました。わいせつ略取というのは、簡単に言えば、性暴力をする目的で違う場所に引っ張って行くという罪ですが、それと強制性交等未遂。これは、早朝、人通りの少ないところへ女性を連れ込んで、強制性交をしようとしたのですが、女性の抵抗を受けて未遂に終わったという事件です。これは刑法改正後、徳島で初めて強制性交という罪の適用をした事件です。

 次に、10 月に徳島市内の路上における小学女児被害の強制わいせつ未遂事件。これは犯人を捕まえましたが、複数の小学女児に対して、こういう行為をしていたということです。

 板野郡内の路上における連続強制わいせつ事件。これはオートバイに乗った男が自転車で帰宅途中の女子高生や女子大生に対して、いきなりわいせつをするという事件でした。

 昨年には徳島市内の徳大や文理大学のキャンパス周辺2か所で、犯人は別々ですけれども、連続の強制わいせつ事件がありました。

 【スライド5】先ほど刑法改正と言いましたが、この刑法改正をされたのが今年です。強かん罪と言っていたのが強制性交等罪という罪名に変わりました。どういうことが強かんになるかというと前は男性が女性に対して暴力行為を加えたり、脅迫をしたりして、無理やりセックスをするというものでした。今回、強制性交等罪となって被害者が女子のみであったものが、被害者の性別を問わないと改正されました。それから、前は性交のみだったのですが、口あるいはこうもんの性交も、この強制性交に当たるということになります。それと刑罰が引き上げられ、3年以上の懲役だったものが改正され重くなり5年以上の懲役、けがをさせたりすると6年以上の懲役ということです。「以上の懲役」は、なかなか分かりにくいのですけれども、刑法には罪と刑が決められており、3年以上というのは最低3年ですという意味です。上限は書いていないのですが刑法の前の方に書いてあり、3年以上といえば最低3年で上が何年と決まっています。そこの間で裁判所が刑を決めるということですから、最低でも5年という罪に重くなったということです。

 それと前は被害者の告訴が必要でした。告訴というのは、告訴がなければ警察が捕まえて検察に事件を送っても検察官が起訴できない、裁判にできない。こういう罪だったのですけれども、今回の改正で告訴という手続が不要になりました。告訴というのは「こういうことをされました。この人を処罰してください」という被害者の意志ですけれども、改めてそういう意思がなくても検察官は裁判に掛けることができるということです。

 強制性交等で罪の行為、対応が加わり、罪の重さが重くなったほか、監護者わいせつ罪・性交等罪が新設をされました。先ほども紹介されていましたけれども、これは18 歳未満の者に対して、監護する者が暴力をふるったり脅迫がなくても、性交したりするとこの罪に当たるということです。

 【スライド6】性暴力被害者支援の警察の取組ですが、相談ダイヤルを設置しました。これは全国共通で#8103、通称「ハートさん」というダイヤルです。これは、それぞれ各都道府県の警察本部に設置された専用相談窓口につながるようになっています。徳島県警察は、この#8103で昼間は相談受理の専門の部門につながりますし、夜間も宿直で受理できるようにしています。それと女性捜査員をいろいろなところに配置して、被害者へ対応していく。

 あとは、証拠採取キットの配分、匿名被害者への対応というものがありますが、これを少し紹介します。警察に届け出るか、届け出ないか迷っているという被害者の方が産婦人科を訪れて、暴力的に意図しない性交を受けたために、例えば緊急避妊をしたり、診察を受けたときに、警察へ届けてくれるのであれば、警察がそういうキットを持っていってお医者さんに、例えば男性が射精した精液だとか、なめられた唾液だとかを採取できるのですけれども、警察へ届け出ることを「どうしようかな」と悩んでいる方であっても、同意があれば、お医者さんが匿名の被害者から試料を採取して、匿名のまま警察が保管したり、同意を得てDNA型鑑定などの措置がやれたりできるということです。

 【スライド7】事件の捜査の流れです。届出を受理してからの流れが書いてあるとおりですけれども、ここで御紹介をしたいのが聴取というところです。特に年少者被害のわいせつがあったときには、年少者の被害者の精神的な負担を軽減して、1回限りで話を終えさせようということで、一番事件を確知しやすい児童相談所や警察、事件を裁判にかける検察の三者が共同して、その中から一番適した聞く人を選んで、ある部屋でその年少者と一対一で話を聞きます。これまでは、主に警察がやっています。そういうスキルを学んだ女性捜査員が聴取し、それをビデオで撮り、証拠化を図るという手続を今やっています。

 【スライド8】被害者支援要員の取組ですが、警察には被害者支援要員がおり、現場検証や医療機関への付添いなどもやっていますし、捜査終了後も相談を受けたりしています。いま現在、県警で176 人の被害者支援要員がいます。このほかに性暴力専門に捜査に当たる女性を中心とした指定捜査員が10人、それを補助する女性警察官が32 人います。被害者支援は、いかに被害者の精神的負担を軽減するかということです。被害者支援要員は捜査をする者として被害者を支援してあげるというよりは、むしろ被害者側に立って被害者側と同じ目線で、警察のいろいろな捜査要請を「ちょっと待ってあげてください」などと、被害者の代弁となるような支援ができるのが一番なのですが、176 人指定がありながら、まだまだ組織として弱いかなとは思っています。

 【スライド9】今後の課題ですけれども、警察内部における支援体制を強化すること。それから、警察だけではなし得ない支援ということで医師、その他関係機関との更なる連携。先ほども言いましたような匿名被害者の対応策を十分に図っていく。一番大事なのは、やはり警察が事件を知り、そして、きちんと処罰を受けさせる。そして、社会に安心感を与えるためには、被害者に届けてもらわなければいけない。ですから、相談ダイヤルなど相談機関を周知することが重要であり、今後の課題だと思っています。被害を防止する策も大事ですが、一旦発生すれば、それを早期に検挙するということが我々の仕事ですので、これも今後の課題として挙げました。警察からは、以上です。

内海: 多田様、どうもありがとうございました。徳島県の犯罪認知件数、聴取の際の工夫や支援策等々についてお話をいただきました。本日は、このようにパネリストの方から、まずは一通りお話をしていただいた上で具体的な議論に入っていきたいと考えています。引き続き、パネリストのお二人目、徳島県中央こども女性相談センター所長の仁木伸一様からお話をいただきたいと思います。

仁木: 中央こども女性相談センター所長の仁木と申します。こども女性相談センターは、児童相談所と女性相談所の機能を兼ねています。児童相談所は、もちろん18 歳未満の子供たちに対する虐待であるとか、養育のいろいろな悩みに答えて相談に乗っているのが仕事です。それともう一つ、女性相談所部門はDV相談を始めとして、本日のテーマにもなっている性暴力被害者支援センターとしての機能も持っています。また、DVや性暴力の被害を受けて身が危ないといったような場合には、一時保護を行ったり、また、一定期間安定して過ごしていただくような場所を提供する取組もしています。

 【スライド1】私からは本日、性暴力被害者支援センター「よりそいの樹とくしま」について説明をします。中央、南部、西部と書いてありますけれども、県内を3つの圏域に分けて、それぞれにこども女性相談センターがあり、この性暴力被害者支援センターも3か所あります。こちらは昨年の7月1日からスタートをさせました。

 【スライド2】性暴力とはということで、自分自身の意に沿わない強要された性的な行為はすべて性暴力です。性暴力の被害者の方は心身に深刻なダメージを受けていますので、場合によってはパニックに陥るとか、誰にも相談できずに悩む場合が多いということで、被害の潜在化が問題とされています。

 【スライド3・4】「『よりそいの樹とくしま』にできること」ということで、まずはお電話をいただきたいと思います。決して一人では悩まず、被害を受けられた場合、相談をいただければと思います。

 【スライド5】主な支援の概要ですが、「よりそいの樹とくしま」においては関係機関と連携しています。本日、出席いただいている警察の皆さん、弁護士さん、それから医師、産婦人科の皆さん、臨床心理士さん、いろいろな関係団体の皆様と協力、連携して性暴力被害者の方に寄り添い、一人ひとりのニーズに合わせる形でオーダーメイドの専門的な支援を提供します。

 【スライド6】次に具体的な支援内容について、少し詳しく全体の流れとスキームを説明します。機能としては大きく分けて①「相談機能」、②「支援のコーディネート」機能があります。まず、①相談機能についてですけれども、支援に向けた第一段階になるのが、「気付き」であると思っています。この「気付き」ということについては、相談機関として被害の存在に気付くこと。これと併せて被害者本人にも、今どんなリスクがあるのか、自分に非があるのではない、自分を大切にしなければいけないのだということについても気付いてもらいたいと思います。

 電話相談は24 時間受付で、来所による面接の相談も利用いただいています。相談では、専門的な研修を受けた女性の相談員が、思い切って相談をしていただいたことをまずねぎらい、そして、心に傷を負った心情に寄り添いながら、お話を傾聴します。そして、暴力を受けた状況、事実関係、それとどう思ったのか、本人がどうしたいのかという気持ちを、無理のない範囲で聞いて、今後について一緒に考えていきます。

 次が②「支援のコーディネート」です。ここでキーワードとなるのは、「つながる支援」です。つまり、支援そのものに、被害者の方がつながっていただくということはもとより、被害者一人一人のニーズは違うので、そのニーズに合わせて関係機関がしっかりと連携をして支援する。そういう意味での関係機関がつながる、顔の見える関係を作って、つなげているのだ、つながっているのだという両面が重要ではないかと思います。

 医療としては、産婦人科医療機関における緊急避妊や性感染症の検査など。捜査関係としては、警察相談や被害届などを出したり、110 番登録等を勧めたりといったこと。それから、心理関係では臨床心理士によるカウンセリング。また弁護士相談など。こうした支援については公費での費用負担制度もありますので、本人の負担なしで対応することも可能になっています。

 さらに「でも、自分で警察に相談に行きにくいよ」という方もいらっしゃいますので、そのような場合には、担当者が同行をして捜査関係機関に相談に行くといったようなこともしています。逆に、女性警察官の方にセンターへ来ていただいて相談に乗っていただくという対応もしています。

 先ほど柳谷先生の講演の中で、子供の頃の被害ということについてお話がありました。私どもは児童相談所も併せ持っている組織ですので、例えば「よりそいの樹とくしま」に児童年齢に当たる若年女性、子供からの相談があった場合、本人のほかに保護者などが相談に来るという場合もありますが、特に若い方の場合には、周りに相談をしにくいという場合が多いと思いますので、子供の目線に立って気持ちをより一層丁寧に聞く。また保護者が同伴される場合には、どうしたいのかといったそれぞれの気持ちを聞いた上で、支援につなげていきます。また、子供の頃に受けた暴力によって、大人になってもずっと心の傷があって悩んでしまうといった場合も相談を受けています。

 【スライド7】共通相談ダイヤルは0570-003889、「さあ、早く」です。こちらはナビダイヤルで最寄りの相談窓口につながります。

 【スライド8】この「よりそいの樹とくしま」のPRについて紹介をします。幾ら相談窓口があっても知られていなければ意味がないということがあるので、まずは「よりそいの樹とくしま」の幅広い啓発として、周知用の水色のリーフレットがあります。県内の公共施設等のほか、小中学校や高校、大学、専門学校、また県内のコンビニエンスストアに配布しています。ほかにもポスターの掲示、県内の大型量販店の女性トイレに電話番号等を書いたステッカーを貼ったり、女性用タウン誌などにおいても広報を行っています。さらに重点的な啓発として、女性に対する暴力をなくす運動の期間、また11 月、12 月のストップDV推進月間などにおいて、様々な広報を展開しています。

 本日、薄いピンク色のチラシを資料に入れています。12 月4日にDV・児童虐待防止講演会を予定していますが、こちらはまだ会場に空きがあると聞いていますので、御参加をいただければ幸いです。

 【スライド9】最後に、県の本年度の9月補正予算で、支援体制を強化するための取組を実施しております。被害に遭われた皆さんを的確に支援することができるよう、支える側のスキルアップと、必要としている方に確実に支援を届けるということが重要になってきます。そこで3つの視点ですが、まず県内すべての産婦人科医療機関のスタッフを対象とした研修の実施。相談員に対する二次受傷対策として、臨床心理士によるカウンセリング。そして、特に被害の多い若年女性への重点的な啓発などを展開しております。性暴力の被害を受けた皆さんは心身ともに大きく傷ついています。そうした皆さんに「あなたは一人じゃない」と話をじっくりと聞いて一緒に考え、そして未来に向けた一歩を踏み出すためのお手伝いをするのが、この「よりそいの樹とくしま」です。また、こども女性相談センターには、様々な関係機関があります。多くの女性の皆さんに知っていただき、気付き、共に考え、そして支援をつなげるといったサイクルを進めていくことで、被害者の皆さんにしっかりと寄り添っていける徳島の実現 につなげていければと思っています。どうか、よろしくお願いします。

内海: 仁木様、どうもありがとうございました。徳島県で立ち上がりました性暴力被害者支援センターのこれまでの、そしてこれからの取組を具体的にお話していただきました。被害を受けた方が、自費でカウンセリングを受けるということがないように制度化された公費負担制度のカウンセリングをはじめ、様々な支援に関する動向も併せて、丁寧支援の様子をお話しいただいたかと思います。

 では、引き続きまして、徳島県弁護士会の犯罪被害者支援センター委員長の永本能子様よりお話をいただきたいと思います。

永本: 永本です。よろしくお願いします。私の方から簡単に、弁護士と徳島弁護士会の犯罪被害者支援の取組を、ざっとお話したいと思います。

 【スライド1】まず、弁護士の性暴力被害者支援業務ということで、最初に3点、御説明します。

 まずは性犯罪に限らず、弁護士にできる犯罪被害者支援業務とは何かということです。2点目に、では徳島弁護士会でどんな支援をやっているか。特に性暴力被害の支援、どんなことをやっているか、ということです。最後に、弁護士として性暴力被害者支援の業務の際に気を付けなければいけない注意点を皆さんにお話したいと思っています。

 弁護士が、先ほどお話しいただいた多田さん、仁木さんと一番違うのは、やはり加害者側の代理人にもなり得る立場にあるということだろうと思います。私自身、刑事弁護の弁護人として性犯罪の被告人の担当をしたことも何回もあります。

 あとは、被害者の方と関わる期間が、すごく長いです。場合によっては、被告人が、性犯罪の加害者が刑務所に入って出てから、じゃあ、損害賠償命令で取ったお金をどうやって取り立てるか。本当に、5年10 年という長いスパンでのお付き合いをすることになるので、そこが大きく違うかなと思っています。

 【スライド2】時系列に簡単なのですが説明します。まず、事件が発生しました。ここでこれ警察に届けようかと悩まれている方に、被害届とか、あるいは告訴状を提出するということがありますし、警察からお話を聞かせてほしいと言われたけれども、一人ではちょっと嫌だという場合に、事情聴取等に一緒に付き添うというときもあります。捜査中の場合は、捜査の進捗状況を、被害者に代わって確認するとか、人によっては電話に出るのも嫌だという方もいるので、そういうことをする場合もあります。

 大きいのが、弁護人からの示談申入れの対応です。国選で弁護人が付く犯罪、性犯罪被害もそうですが、加害者である被告・被疑者の弁護人から、示談をさせてほしいという申入れがあったりします。この段階で、弁護士相談に来られる方が多いです。これを受け取ったらどうなるのですか、罪が軽くなるのですか、でも早く終わらせたい、どうしよう。示談金って幾らぐらいが相場ですか。こんなことについて、いろいろと法律相談をする。これは多いです。ニーズも結構多いかと思います。

 最後に、起訴された後、要するに、正式に裁判になる場合に、裁判に出される記録のコピーとか、被害者参加というものもあるので、裁判で意見を陳述したいと言われたら、相談に乗るとか。あとは、損害賠償命令といって、刑事事件の公判が終わったらすぐに、刑事事件の裁判官が民事的な責任について審理してくれる、そんな制度があるので、その申立てをするなどをします。

 【スライド3】裁判での被害者参加、証人尋問では、被害者が証人尋問に立つ場合もありますし、被告人質問を被害者に代わってやるような活動もします。ようやく判決が出た後は、加害者から民事的に損害賠償を受けられない場合に、被害回復の給付金を支給する制度がありますが、そういった申請をお手伝いすることもあります。

 あとは、加害者がいつ出所するのかを知らせてくれる制度を利用する。それから債権回収です。民事的な責任について金額が決まったのに、一銭も払ってくれないという人に対して、出所後、債権回収していくとか、あるいは、警察の方に、そろそろ出てくると思うので、御礼回りに来ないかどうかパトロールしてください、と要請することもあります。

 【スライド4】徳島弁護士会で、どのような犯罪被害者支援をしているかということですけれども、弁護士を一番上に置いていますが、他の関係機関の方々の協力で成り立っています。いろいろな捜査機関、保護観察所、県警の被害者支援室、徳島被害者支援センター、医療機関の先生などとも連携してやっています。

 経済的支援、弁護士に相談したいけどお金がないよという場合は、法テラスというところを使って、ある一定の資力条件を満たす方は、事件として受任する場合であっても着手金が不要であるなどの制度もあって、経済的支援も、提携しながらやっています。

 【スライド5・6】今日の資料の中に弁護士会のパンフレットがありますので、御覧になっていただければと思います。弁護士会の中で、委員会で議論してやっとできあがったものですが、犯罪被害者支援は、先ほどの講演でもありましたが、とにかく不謹慎であってはならないというのがあります。最初、このパンフレットの欄には、笑っているすだちくんが入っている案があって、不謹慎だという意見が複数出ました。犯罪被害者支援のパンフレットには、駄目だということでボツになりました。

 【スライド7・8】次のページにいきますが、徳島弁護士会犯罪被害者支援センターというのは、弁護士会内の委員会の名前でして、ここに弁護士会の中の弁護士が委員として登録されています。ここにずらりと書いてある名簿は、一応名簿ごとに登録要件があって、例えば、ちょうどお話に出た、「よりそいの樹とくしま」の法律相談に対応にするのは、上から二つ目ですね、性暴力被害者支援センター対応名簿というもの、ここは性暴力の被害に対応できるような研修を受けた弁護士でないと登録できないようになっています。二次被害を極力防ぐために、細かく名簿ごとに研修要件を設けて、それぞれ専門的な知識がある前提の弁護士が登録をしています。

 【スライド9】最後に弁護士として、性暴力被害者支援業務で何を注意しないといけないかということですけれども、本当によくあるのがとにかく性暴力の被害者さんに限らず、犯罪被害者の方にとって弁護士というと相談するのがすごくハードルが高い。何か怒られるのではないか。お金がかかりそうなどの印象があるようです。確かにそういう一面はあると思います。

 弁護士による二次被害もあるというように結構聞きます。性暴力の被害者さんが弁護士に相談したけれども、法律相談なのでできるだけ頑張って冷静に話をしていたら、「そういう冷静な話し方をしていたら誰もあなたのことを信用しない」と言われてそれで法律相談など嫌になったという方もいると聞いたことがあります。

 傾聴・事実確認・法的アドバイスと書いておりますが、やはり寄り添って聞いてあげる。とにかく弁護士は結論を急いで、あなたの言うことは分かった、これはいらないから、こうすればいい、のように結論を押し付けたがるのですが、そうではなくて、とにかく被害者の方に寄り添って聞いてあげることが大事かなと思っています。

 最後の、結論を急がずというところは本当に大事で、被害者さんはよく悩んで揺れて揺れて、やはり被害届出しますといった翌日にやはりやめますということもあるので、そこは、もうイライラしないで気長に待つというのが大事だなと思っています。

 【スライド10】二次被害の防止のところは、連携機関からきた情報がそのまま共有される場合があります。

 例えば「よりそいの樹とくしま」から許可された場合は、ファックスでどういう事件概要かを書いた相談票が届いたりするので、弁護士の方でまたもう1回聞かなくてもいいような仕組みにはなっています。今回のパネルディスカッションのテーマとも関係がある部分であり、適切に情報共有して二次被害を防止することが大切と思っています。

内海: 永本様、どうもありがとうございました。関係機関の取組の3つ目ということで、実際に相談業務をされている弁護士の立場から、現在取り組んでおられる内容について具体的にお話をいただきました。ここまでの3人の方々のお話に共通するキーワードとして“「つながり」の大切さ”が挙げられるのではないかと思います。例えば、警察の聴取の段階で、性暴力被害者支援センターの職員さんが同行するようなつながりをあげることができるかと思います。

 一方で、機関同士のつながりは、まずは当事者の方が何れかの支援機関につながることがなければ始まらないという課題点もあがっているかと思います。特に今回、最初の基調講演でお話しいただきました、和美さんのような幼少期の被害の場合、はじめの支援機関との「つながり」をどうサポートするのか、ということが課題になることと思います。今までのお話、徳島県の現状というのを聞いていただいて、よりよい形の支援を作っていくために御提案いただけること等がありましたら、和美さんの方からお願いいたします。

柳谷: こういう活動をしはじめて、母に、実は5歳のときこういう被害にあったのだと言ったら、母が、「あなた、覚えてい たの」と言って、逆に私は、「え、知っていたの」みたいなことがありました。結局、私は隣の人からの被害で、そのとき母は弟2人と家にいて、私は遊びに行ってくるって言って送り出したのですね。本当に壁一枚の向こう側だったので、母は、「遊びに行った割にはお姉ちゃんたちと遊んでいる声がしないな、おかしいな」と思っていたそうなのです。で、1回隣に行ったらしいのですが、誰も出てこなかったので、「わあ、和美はどこにいったのだろう」って、探し回っていたのです。近所の公園に行ったかなと。

 それで、ひと回りして、もう1回隣の家に行ったらいて、それこそ、私は一通りの被害に遭った後に、「ココアを飲むか」と言われて、ココアを飲んでいたのです。そしたら、母がそのおうちの玄関をがらっと開けて、「あ、和美いたじゃないの」みたいなふうになって、これは私は分からなかったのですが、そのおじさんが、「ココアを飲んでいた」と言ったのです。

 子供的に、例えば鬼ごっこをしていて、ちょっと水を飲んでいたら、「水を飲んでいたのです」と言うのおかしくないですか。「鬼ごっこしていたのです」って言います。子供ながらに、「いや、ココアは今飲み出したけど、メインはあれだったみたいな。何でこのおじさんは言わないのだろう」って、子供心にすごく不思議に思って、それで、結局家に帰って、母が「何していたの」みたいな話をしたときに、私がそうこうこうこうこうって言ったら、母はそのときに性被害に遭ったって認識したらしくて、父親に言って、実は当時大阪府の枚方市に住んでいたのですが、枚方警察署に届出をしたらしいのです。

 でも、もう44 年も前で、本当に今でこそ皆さんみたいに、何とか二次被害を防ごうとか、そういう被害に遭った人の心のこととかを、すごく皆さんがいろいろとしてくださっているのですが、当時はそれこそ被害届出しました、でも当然証拠も何もない、子供がただ言っているだけ。でも、やっぱり子供が言うには、ちょっと遊びとしてはヘビーじゃないかというので、一応警察の人が隣のおじさんに事情を聞きにきたようですが、それはそれっきりで終わったみたいで。父親はそれ以降、もう隣の人に会うたびに、「馬鹿野郎、殺してやろうか」みたいなことをずっと言っていたらしくて、それで、隣の奥さんがうちに謝りに来て、そのときに母と話をしていて、隣のおばさんが玄関でペコペコしているのを私は覚えていたのですが、それはそれで終わってしまって、結局いつの間にか隣の人は引っ越していったのです。

 親にしてみれば、なかったことにしたいみたいなところがあって、結局、一切触れるな、両親の話のときには、その話を触れないということで、結局私は、心のケアとか、そういうカウンセリングというのから、ポーンと外されてしまったのです。

 去年とか今年に、保育園の保育士さんが子供たちに性暴力をしていましたけど、捕まった容疑者が、子供たちは自分たちが何をされているのか分かっていなかったようだったからどんどんできたみたいな話をしていますが、皆さんの話を聞いていて、特に子供の被害の場合は、やはり親の方がたとえ子供のときの被害であっても、本当に、まずは大人がしっかり知っておいてあげるというのと、たとえ小さい頃の被害であっても、体の感覚として心地いいスキンシップも覚えているけど、やはり不快な感じとか、ちょっと気持ち悪いな、というタッチというのは覚えているものなので、そのあたりのケアを。というので言うと、本当に「よりそいの樹とくしま」さんから、いろいろなところにつながっていくというのはすごく大事だなと思います。

 あとは、結構、性被害にあった後、何もなかったように振る舞うのですね。やはり自分自身がそんな被害に遭ったということをみんなにまず知られたくない、そういう性的に侵害されたことを知られたくないというのがあるので、本当に、冷静に淡々と話すというのも結構あります。隠し慣れているとか、私の場合は本当に長きにわたって沈黙を守るということをしているので、そのあたりも認識してもらったらいいと思います。

 余りにもショックなことがあると逆に笑ってしまうとか、被害者の人が笑いながら話すというのも皆さんが認識してくれるといいのかなと。ショックすぎると笑ってしまうとか、固まってしまう。すごく抵抗すればよかったじゃないかというのも、先日テレビで話題になっていましたが、やはりそのとおりです。子供ながらに、この次殺されるかもしれないとか、何か嫌だと言ったら殴られるかもとか、凶器を出されるかもしれないと、子供でもそういう恐怖は感じるので、「何で抵抗しなかったの」っていう言葉が、被害者を傷つけるということを知ってもらえればいいと思います。

 家庭では限界があるので、大人もそうですが、まずは子供たちが本当に幼稚園・保育園ぐらいから、そういう性教育としての、自分の体をまず守るということなどを学校とかで徐々に進めていってもらって、自分を守るイコール他人を守れる、大きく言うといじめにもならないような教育というのが本当に必要と思いました。

内海: ありがとうございます。被害後に心の中に起こっている想い、支援へのつながりにくさをもたらすであろう周囲の言動や当時の体制など多くをお話しいただきました。届出から先の支援につながらない、ということがないよう、被害に遭われた本人はもちろん保護者の方なども、経過や現状にあわせて心理的支援や弁護士さんの支援につながっていくことができればと思います。

 そこでもし、今回の和美さんのような子供さんがいた場合に、本県だったらどういう支援ができるのかについて、それぞれの立場でパネリストの方から話していただければと思います。まずは多田様からお願いします。

多田: 先ほどの御説明の中で、被害児童・児童虐待を含めた性暴力を受けた児童・年少者の聴取のやり方についてちょっと触れましたが、もう少し掘り下げて御説明をいたします。子供というのは、大人に対して迎合する傾向もあります。それから、なかなか固まってしまって本当のことが言えないというような、そういう心理状態になることもあるというので、普通の大人の被害者でもなかなかそういう聴取は難しいのですが、子供はなおさら難しいということ。

 それと、こういう性暴力の事件の場合は一対一で行われる犯罪が多くて、裁判になるとやってないという加害者側の話と、被害者はやられたという話と、どちらが信用できるのかということが天びんにかけられて、極端に言えば、加害者側がやってないということを信用されれば無罪になってしまう。そこで我々は、その被害者、児童・年少者も含めてですが、いかにその被害者の方が被害についてしゃべっていることが正しいか、信用されるかということを念頭に捜査しています。

 無論、その話の内容だけではなくて、そのほかにもDNA型鑑定であったり、現場の指紋であったり、いろいろそういう科学的な証拠を集めるのは、これは基本中の基本ですが、重要になってくるのは被害者の語る言葉です。

 警察がそういう聴取するということ自体が被害者にとっては二次被害なのですが、そういう精神的な負担をできるだけ軽くしようという趣旨もありますが、特に年少者の場合は、被害の話の内容が本当に正しく信用できる話なのだということを担保するためにビデオでその聴取の内容を録音・録画しています。

 その聞き方も先ほどスキルを学んだということを言いましたが、最初に信頼関係を築く。それから、右ですか、左ですかというようなそういうクローズドな質問ではなくて、何があったの、という、自由な発問で自由に話してもらう。その中で子供が、素直にそういう被害のことをポツポツ話し始める。そこでもいろいろなことをこちらが性急にどんどん質問するのではなく、それで、それで、という形で児童に語らせる、年少者に語らせる。

 そういったことで、それを録音・録画して、児童・年少者とはいえ被害について語っていることは信用できるのだということ。それと、それを聞くのは1回きりにしようということで、前は、警察の次に検察官が聞いてという二重に聞いていたのを、検察官もそれをバックヤードで見ていて検察官もそれ以降の取調べはやらない。

 場合によっては、普通は供述調書という被害の方がしゃべったことを書面にしますが、それが不可能であれば、その録音・録画の内容をテープ起こしして、それを書類で証拠化するということで、その被害児童・年少者の精神的な負担を軽減するということをやっています。

 これは、児童相談所と警察と検察が、こういう事件があったときには早期にその三者で連携をして、誰が聞くのが適切なのか、今までずっと児相の指導員の方が聞いていたから児相の先生に聞いてもらいましょうとか、やはりそれは警察が聞きましょうということで、相談をして決めて、1回のみでやろうということでやっています。

 この施策も最近始まった施策なのでまだまだこれからというところはありますが、非常に効果的だと思います。運用し始めて効果的だと考えていまして、今後もこれでスキルアップとか、そういう聴取ができる女性警察官の育成などに努めていきたいと考えています。

内海: 引き続き、仁木様お願いいたします。

仁木: 性的な虐待、児童への虐待ですが、件数的には、やはり精神的な虐待とか、身体的な虐待が非常に多くありますが、性的虐待の件数は少ないですが、残念ながら毎年出てきています。もちろん出てきているのは氷山の一角といいますか、全てではないのでしょう。その陰には本当に多くの性暴力があるのではないかと思います。

 性的虐待については、厚生労働省から対応のガイドラインが出ています。これは実の父とか母、つまり保護者が虐待者になる場合を基本的には想定していますが、そうではなくて、例えばおじいちゃんだったり、おじさんだったり、隣のおじさんだったり、それから兄弟だったり、そのような保護者以外が性的な虐待をするといった場合、それはネグレクトという形での分類になりますが、この場合にも子供が性的な被害を受けて傷ついているということですから、配慮すべきポイントということでまとめられています。

 これに基づいて、我々児童相談所では子供や保護者の方に聞き取りをしていますが、そこで、第一にポイントとして重視しているのが安心してもらうことです。子供は、家族を裏切ってしまったとか、自分がカミングアウトすることによって、家族やおじさんとかがひどい目に遭うのではないかとか、そのような恐れを持っているということがありますので、大丈夫だということを安心させてあげて、自分のペースで無理をせずに話をしてもらいます。このときには児童心理司がいますので、そういった職員も一緒に入れながら話を聞いたりしています。

 もちろん、先ほど多田課長の話にもありましたように、警察・検察の皆さんとの合同での聞き取りとか、合同のカンファレンスだとかもやっています。それで、聞き取りには、当たり前ですが同性の職員が対応するようにしています。

 次に二番目にポイントになるのは安全です。子供の安全。まず性被害が発生してこれは危ない、子供をこの加害者と一緒に家庭の中で過ごさせるのはまずい、駄目だということであればまず切り離します。そのために子供を一時保護します。子供を安全な環境に置いて、その上でお話を聞くというような形をとっています。

 そして、第三は、これが児童福祉法の理念となっていますが、「子供の最善の利益」といったところがあります。その子供の、本人の成育歴であるとか、生活環境、家庭環境、家族・支援者の状況、そういったいろいろな状況を調査して、その子供に最も安全で、安心して健やかに育っていける環境はどういうものがいいのかといったことを考えます。そして例えば、里親さんに委託をする場合もありますし、施設に入るというような場合もあります。また、親に関してもカウンセリングや、指導といったことも継続的にしていきます。

 そういうことで、本人はもとより家族の在り方を含めた形で支援をしていくということにしています。

内海: ありがとうございました。最後に弁護士の活動として永本様、お願いいたします。

永本: 弁護士として、一つが被害を受けたお子さんを監護している親御さんの支援ということです。矛盾しているようですが、被害を受けたお子さん自身と、監護している親御さんの利益が相反する場合があるので、切り離して考えることが私は重要と思っています。

 例えばお父さんから子供が虐待を受けていて、私はお母さんから依頼を受ける場合、お母さん自身が問題を抱えているというのがすごく多いのです。お母さん自身がちょっと心身に障害があったりとか、精神疾患だったりとか、自分自身苦しみがあって、それによって傷ついている。そういうときに家庭内で起こっている虐待について、よくあるのは言った言わないとか、やったやらないとか、これはどちらからも聞きますがどっちを信用してもらえるか。これを加害者はよく知っています。

 被害を受けたお子さんとかDVを受けた女性からよく言われるのは、こう言われましたと。「お前と俺の話、警察はどちらを信用すると思っているのか。俺に決まっているだろう。」子供にしても、「子供の話、俺の話どちらを信用すると思っているのか。子供なんかだますのは簡単だ。」そういうのを本当によく言われますし、聞きます。たくさんそういう例が、家庭、また家庭に限らずあるのだと思います。ある一定の支配関係というか、そういう中でやはり犯罪被害とか、性犯罪とかが起こっているのだと思います。

 それを言われると、被害者、あるいはその被害を受けている子供の母親が、余り力がないと、結局母親も自分もネグレクトになって虐待をしているという自責の念もありますが、一人で被害を申告すらできない、ということをずっと悩んでいる。そこでちょっとどこかに糸口があれば、というところはあるかと思います。

 私は、県子ども女性相談センターの西部の担当で、児童相談所の非常勤弁護士として月2回は勤務しています。そこで、性的虐待を受けたお子さんについての法律相談を職員から聞く場合もありますが、やはりそのように児童相談所の職員としての立場からものを言うよりは、弁護士として依頼を受けて話を聞く方が難しい感じです。例えば、性犯罪を受けた娘の被害を母親が発見した。父親が自分の娘に性虐待をした。じゃあ離婚しますと言って別居しました。そこからどうするかというと、お母さんの希望としては生活費をもらえればそれでいいわと。娘のカウンセリングなどは面倒だからいいです、というふうに流れてしまうお母さんがいて、そういった場合に、いや本当にそれがお子さんのためになるのかと。それが児童相談所の職員としてこのようにしてくださいというように判断する場合は、子供の利益を優先して考えればいいわけですが、弁護士として相談を受ける場合は、お母さん自身が相談者・依頼者になるので、相談者・依頼者の要望と子供の利益とがずれるわけです。

 そこで、「あなたの言っていることは間違っているから、私は依頼を受けられません。あなたもネグレクトでしょ。」と言うとします。しかし、そう言ったら、そこでお母さんと娘さんはどこにもつながらなくなってしまう。ですからそのお母さんの説得をどこまですればいいかとか、そのお子さんのためにとって本当にいいのはどうすることか、悩みながらいろいろと、本当にケースバイケースでやっています。

内海: ありがとうございます。支援者が子供さんと保護者とのあいだで、どうやって支援につなげていくのかというような課題もあるものの、子供さんへの配慮が最大限になされているところをお話しいただきました。今回のテーマ「性暴力被害後に求められる支援について」、基調講演者の和美さんの被害体験が幼少期であったことを受けて、パネリストの方々には幼少期の被害への支援についてもお話しいただきました。子供さんへの支援の際の丁寧な配慮というのは、大人の被害者の方への配慮にもつながっていくことではないかと思います。

 まだまだ議論したいところですが、これらのことを経て、最後に和美さんの方から一言いただきたいと思います。

柳谷: 今日は、いろいろ本当に話を聞かせていただいて、44 年前にこういう方々が私のそばにいたら、私の人生はどんなに変わっていたのだろうと思いますが、今となっては本当にその被害があって、自分で本当にもがきながら、何度も何度も死にたいと思いながらも、ここまで生きてきて、こうやって皆さんの前で話をする立場になりました。

 本当に、被害はないに越したことはないと思います。ただし、やはりまだまだこういう性暴力被害が、どれだけその後の人生をしんどくさせるのかということが、まだまだ認知されていない。その被害そのものしかまだまだ見えていないのかと思います。その後の人生がしんどくなるのを知っていただいた上での、やはり長期的なケアが必要だということを、また皆さんが知っておいてくれたらいいかと思うし、とにかくそもそも被害が本当にない方がいいわけです。そもそも家族、家族の一番中心である夫婦というのがチームであり、チームワークがいい家庭であれば、こういったことは起こらないのかなと。そんな生やさしいものではないと思うかもしれませんが、本当に、自分の足下からやっていかないといけないというのを本当に痛感しました。

 今日来られた皆さん、日々の苦労が何とも言えずしんどくて、本当につながりたいけどつながれないとか、そういったこともあると思いますが、本当に小さな小さな歩みではあるけれども、やはり被害に遭ったら一日も早くそういう支援につながってもらうということ。何よりも予防教育ということで、性教育というのをしっかりやっていきたいと思うし、チームワークのよい家族というもののモデルになっていきたいなと思います。

 皆さんおうちに帰られたら、奥さんや旦那さんに、今日も無事でありがとう。一日健康でありがとうと、ハグは恥ずかしいので、握手していただいたらいいかと思います。

内海: パネリストの皆様ありがとうございました。本日のお話、いろいろとありましたが、大きく二つのポイントを挙げられるのではないかと思います。まず一つ目は、私たちが「知る」こと。和美さんのお話にありましたが、被害内容そのものだけではなくその後、被害者はどうなるのか。心理面での変化のお話、身体の変化のお話、人生の変化のお話、いろいろあったと思います。被害者をさらに傷つけるような言動をしないためにも、まず被害後の変化を知っていただくということ。そして、和美さんの話に、デートDV被害のときに、周りの人がまず気付いてくれたということがありました。気づくという意味での「知る」ということ。被害に気づく(「知る」)ことと、その後に起こることを「知る」ことの大事さがあったかと思います。

 それから二点目は、「つながり」です。これには被害にあわれた方が支援機関につながること、支援機関同士がつながることが含まれます。後者は今回のパネリストの方々に今後も頑張っていただくというところではありますが、私たち自身も、もしものときにはこういった機関につながることを忘れないようにしていきたいと思います。そのための策として、今回の和美さんのお話では、御家族が日頃からチームとしてつながっていくことの大事さを教えてくださいました。

 家族全体がチームとして、にこにことしながらやっていけるようにという和美さんからの提案をうけ、家族だけでなく支援機関同士もチームを組んで、チーム徳島として支援活動をすすめていきたいと思います。皆さん、今後ともよろしくお願いいたします。改めて、ありがとうございました。

    警察庁 National Police Agency〒100-8974 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号
    電話番号 03-3581-0141(代表)