トピックス

トピックスIV 組織的窃盗・盗品流通事犯に対する取組

1 被害発生状況

近年、金属盗(注1)、大量万引き(注2)、自動車盗といった組織的窃盗が実行され、その被害品が不正に買取業者に売却されるなどの事案が多発している。こうした犯罪には複数の不法滞在外国人等が関与し、指示役等の上位被疑者の存在も認められるなど、一定の組織性がうかがわれる。また、こうした犯罪を実行するグループは、その中核部分の構成等が外部からは見えず、末端のメンバーを入れ替えながら犯行を繰り返すなど、匿名・流動型犯罪グループとしての特徴を有しており、国民経済や国民生活に大きな影響を及ぼす事犯として、治安上の大きな課題となっている。

注1:被害品が金属類(銅板、銅線、溝蓋・マンホール等)に係る窃盗

注2:被害総額10万円以上の万引き

(1)金属盗

金属盗については、メンバーが流動的に入れ替わる外国人グループにより太陽光発電施設内の金属ケーブルが大量に盗み出され、金属くず買取業者に売却されるなど、窃盗等が組織的かつ計画的に行われている実態も確認されている。

CASE

タイ人の男(31)らは、令和6年(2024年)5月、太陽光発電施設において、銅線ケーブル約100メートル等(時価合計約123万円相当)を窃取した。捜査を進めたところ、外国人コミュニティを通じて知り合ったメンバーがグループを形成して繰り返し犯行に及んでいた実態が明らかになった。同年11月までに、同男ら3人を窃盗罪等で逮捕した(茨城)。

 
窃取された銅線ケーブル
窃取された銅線ケーブル

(2)大量万引き

大量万引きについては、海外に所在する首謀者が、通信アプリを利用して実行役に窃取する物品を指示し、指定した場所に大量の盗品を送らせるという手口での犯行も確認されている。

CASE

ベトナム人の女(31)らは、令和6年1月から同年2月にかけて、商業施設の衣料品店において、衣料品約146点(販売価格合計約36万円)を窃取した。同月、同女ら3人を窃盗罪で逮捕し、更に捜査を進めたところ、本国にいる首謀者からの指示で、来日のたびにメンバーを入れ替えてグループを形成し、実行役、見張り役、搬送役等に役割を細分化させて複数の犯行に及んでいた実態が明らかになった(大阪)。

(3)自動車盗

自動車盗については、悪質な自動車解体ヤード業者と結託した首謀者が、実行役に自動車を窃取するよう指示し、こうした悪質なヤードを通じて海外に自動車を輸出している実態も確認されている。

CASE

アルバイト従業員の男(33)らは、令和4年10月から令和5年1月にかけて、複数の府県において、普通乗用自動車5台(時価合計約2,400万円相当)を窃取した。捜査を進めたところ、同男らが首謀者から指示を受けていたことや、窃取した自動車を海外に輸出する目的で複数の犯行に及んでいたことなどが判明し、同年11月までに、首謀者を含む同男ら6人を窃盗罪等で逮捕した。また、令和5年6月、窃取された自動車を海外に輸出していたヤード経営者であるパキスタン人の男(50)ら2人を盗品等保管罪で逮捕するとともに、令和6年1月までに、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)等で追送致した(兵庫、愛知)。

2 対策状況

警察では、こうした組織的窃盗・盗品流通事犯に対応するため、部門横断的なプロジェクトチームを設置するなど、捜査と抑止を含む総合対策を一元的かつ強力に推進している。

(1)金属盗

金属盗については、犯罪グループに係る各種違法行為について、あらゆる法令を駆使した積極的な検挙を図ることにより、犯行抑止や関連情報の収集に努めている。

また、被害が多発している太陽光発電事業者等に対する情報発信や、効果的な防犯対策についての働き掛けを行うとともに、金属くず買取業者に対し、持ち込まれた金属くず等について、盗品の疑いを認めた場合の通報依頼を実施している。

MEMO 盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の制定

金属盗をめぐる情勢を踏まえ、警察庁では、令和6年9月から令和7年1月にかけて、学識経験者及び業界関係者による「金属盗対策に関する検討会」を開催し、「金属盗対策に関する検討会報告書」が取りまとめられた。こうした中、令和7年6月、第217回国会において、金属くずの買受けを行う営業に係る措置に関する規定や、金属盗に用いられる犯行用具の規制に関する規定の整備等を内容とする盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律が成立した(注)

注:金属くずの買受けを行う営業に係る措置に関する規定については令和8年6月までに、その他の規定については令和7年9月までに、それぞれ施行することとされている。
法律の概要については、QRコード参照。
QRコード 金属盗対策

 
図表IV-1 盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の概要
図表IV-1 盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の概要
 
金属盗の犯行用具及び被害品
金属盗の犯行用具及び被害品

(2)大量万引き

大量万引きについては、衣料品販売店やドラッグストア等に対し、事業者団体を通じるなどして、防犯カメラの設置等の防犯対策について働き掛けを実施している。

また、被害品の中には、海外のECサイトで売買されているものもあることから、関係機関・団体等に盗品流通抑止の働き掛けを行うとともに、本国にいる首謀者の検挙に向けて外国の治安機関に捜査協力を依頼するなどの連携強化を図っている。

(3)自動車盗

自動車盗については、関係機関・関係部門と連携して、自動車解体ヤード等に係る情報を共有・分析した上で、各種法令に基づく立入り等による行政的な観点からの実態把握や指導を積極的に行うとともに、悪質な自動車解体ヤード等の壊滅に向けてあらゆる法令を駆使した取締りを推進している。

また、自動車製造業者に対して盗難防止性能の高い自動車の開発を図るよう働き掛けるとともに、自動車販売店等に対して自動車盗の手口等に係る情報提供や顧客に防犯対策を促す働き掛けを行っている。



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