トピックス

トピックスII 警察活動における先端技術等の導入・活用

警察では、日々刻々と進歩する科学技術を効果的に取り入れることにより、警察活動の高度化に取り組んでいる。ここでは、AIや小型無人機(ドローン)といった先端技術等の導入・活用による警察活動の合理化・高度化を実現するための取組について紹介する。

(1)警察におけるAIの利活用に向けた取組

① クローズド環境下での生成AI利用環境の構築・検証

警察庁では、生成AIの活用による業務の合理化・高度化を実現するため、令和6年度(2024年度)にBRIDGE(注)の対象施策としてクローズドな警察内部ネットワーク上に生成AIを利用できる環境を構築し、資料草案の作成やプログラムコードの生成等の機能を検証した。検証の結果、その有効性が確認されたことから、令和7年6月から警察庁において暫定的な運用を開始している。

注:programs for Bridging the gap between R&d and the IDeal society (society 5.0) and Generating Economic and social value(研究開発とSoceity5.0との橋渡しプログラム)の略。内閣総理大臣を長とする総合科学技術・イノベーション会議がイニシアティブをとり、官民の研究開発投資の拡大が見込まれる領域における研究開発等を推進するため、各省庁の対象となる施策に対して推進費を配分するなどしている。

 
図表II-1 クローズド環境下での生成AI利用環境の概要
図表II-1 クローズド環境下での生成AI利用環境の概要
② 子どもからの聴取に関するAI訓練ツールの開発

児童からの事情聴取については、児童の負担軽減及び供述の信用性確保の観点から、警察、検察及び児童相談所の関係機関が協議し、代表者が児童から聴取する代表者聴取の取組を推進している。警察では、児童の心情や特性に配意した聴取技法を習得させるため、ロールプレイング方式による教育訓練を行っているところであるが、より実務に近い訓練が求められている。

そこで、警察庁では、令和5年度から令和6年度にかけて、BRIDGEの対象施策としてAIを活用した訓練ツールを開発した。同訓練ツールは、児童のアバターとの対話により実際の児童との受け答えを模した訓練を可能にするものであり、令和7年度から全国警察での運用を開始することとしている。

 
AI訓練ツールのアバターの例
AI訓練ツールのアバターの例
③ 指掌紋識別業務の高度化・効率化に係る実証実験

警察では、被疑者から採取した指掌紋と犯人が犯罪現場等に遺留したと認められる指掌紋をデータベースに登録して照合する業務において、指掌紋自動識別システム(注1)を運用し、効率化を図っているところであるが、人手によって処理されている作業も存在しており、更なる高度化・効率化を図る余地がある。

そこで、警察庁では、令和6年度にAIを活用して指掌紋の特徴点(注2)の抽出及び照合を行う実証実験を実施した。実証実験の結果、照合に十分な数の特徴点が抽出可能であり、また、押なつにより採取した指掌紋の照合については、同一人物の指掌紋を正しく抽出可能であることが確認できたことから、今後の運用に向けて検討を進めている。

注1:88頁参照(第2章)

注2:指掌紋の紋様を形成する隆線(表皮が隆起して形づくる線)が流れを開始又は終止する点(端点)及び隆線が分岐又は接合する点(分岐点)

 
図表II-2 指掌紋識別業務の高度化・効率化に係る実証実験の概要
図表II-2 指掌紋識別業務の高度化・効率化に係る実証実験の概要

(2)小型無人機等の各種警察活動への活用の推進

① 小型無人機

警察では、小型無人機を効果的に活用して各種警察活動の合理化・高度化に取り組んでいる。具体的には、人が立ち入ることが困難な場所における行方不明者の捜索、交通事故事件捜査における現場見取図の作成及び警護における高所からの現場状況の確認に活用しているほか、災害発生時には、小型無人機によって撮影した映像をリアルタイムで警察本部、警察庁及び首相官邸に伝送するなど、迅速な被災状況の把握や被災者の救出救助活動にも活用している。

CASE

富山県警察では、令和6年4月、県内において事件、事故等の初動警察活動に当たる機動警ら隊に「ドローンパトロール隊」を新設した。同隊は、パトカーに小型無人機を積載してパトロールを行い、出動要請を受けた場合は、部門を問わず様々な事案に小型無人機を活用している。

 
ドローンパトロール隊
ドローンパトロール隊
② ウェアラブルカメラ

職務執行中の警察官がウェアラブルカメラを装着し、その執行状況を記録することは、職務執行の適正性の客観的な検証や警察官が現認した犯罪の証拠保全等に資するものであると考えられる。

そこで、警察庁では、地域警察活動、交通取締活動及び雑踏警備活動におけるウェアラブルカメラの活用について、その効果や課題を把握するため、令和7年度に一部の都道府県警察においてモデル事業を実施することとしている。



前の項目に戻る     次の項目に進む