第4節 災害等への対処と警備実施
1 自然災害等への対処
(1)自然災害の発生状況と警察活動(注1)
① 自然災害の発生状況(注2)
令和6年(2024年)中は、地震、大雨、台風等により、死者・行方不明者279人、負傷者2,056人等の被害が発生した。令和2年から令和6年にかけての自然災害による主な被害状況は、図表6-11のとおりである。
注1 :死者数については、災害関連死を除く。
注2 :数値は、いずれも令和7年4月末現在のもの

② 令和6年能登半島地震(注)
令和6年1月1日午後4時10分頃、石川県能登地方を震源とするマグニチュード 7.6の地震が発生し、石川県輪島市等で震度7を観測した。この地震により死者 228人等の被害が発生した。石川県警察及び全国から派遣された警察災害派遣隊等の警察官等延べ約13万5,000人は、被災状況についての情報収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索、交通対策、応急通信対策、被災地の安全安心を確保するための活動等の災害警備活動を実施した。
注 :数値は、いずれも令和7年5月13日現在のもの

倒壊した家屋から被災者を救出する状況(石川)
③ 令和6年7月25日からの大雨(注)
令和6年7月24日から同月26日にかけて、梅雨前線の影響により、東北地方の日本海側を中心に大雨となった。特に、山形県で線状降水帯が発生し、警察官2人を含む死者5人等の被害が発生した。山形県警察をはじめとする関係県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の災害警備活動を実施した。
注 :数値は、いずれも令和7年3月24日現在のもの

行方不明者の捜索活動(山形)
④ 日向灘(ひゅうがなだ)を震源とする地震
令和6年8月8日午後4時42分頃、日向灘を震源とするマグニチュード 7.1の地震が発生し、宮崎県日南市で震度6弱を観測した。宮崎県警察をはじめとする関係県警察では、被災状況についての情報収集を実施した。また、同日午後7時15分に気象庁が南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表したことを踏まえ、南海トラフ地震津波避難対策特別強化地域(注)等を管轄する都道府県警察では、所要の警備体制を確保した。
注 :南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法第10条に規定されている。
⑤ 台風第10号(注)
令和6年8月27日から9月1日にかけて、台風第10号の影響により、西日本から東日本の太平洋側を中心に大雨となった。この台風により、死者8人等の被害が発生した。管轄区域内で被害が発生した関係県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の災害警備活動を実施した。
注:数値は、いずれも令和7年3月24日現在のもの
⑥ 令和6年9月20日からの大雨(注)
令和6年9月20日から同月22日にかけて、前線及び低気圧の影響により、東北地方から西日本にかけて大雨となった。特に、石川県で線状降水帯が発生し、死者17人等の被害が発生した。石川県警察をはじめとする関係県警察では、被災状況についての情報収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等の災害警備活動を実施した。
注:数値は、いずれも令和7年1月28日現在のもの

バックホウを活用した捜索活動(愛知)
(2)大規模災害への備え
① 災害対処能力の向上
警察では、災害対処能力の向上を図るため、初動対処や救出救助訓練、都道府県警察間での合同訓練、広域緊急援助隊と消防、自衛隊、DMAT(注)等の関係機関・団体との合同訓練等を実施しているほか、様々な装備資機材の整備を進めている。
また、警察庁では、大規模な地震や大雨等による土砂災害等、我が国における災害の特性を踏まえ、災害現場に即した環境で体系的・段階的な救出救助訓練を実施するための災害警備訓練施設を整備しており、平成28年(2016年)には近畿管区警察局災害警備訓練施設の運用が、平成30年には警視庁・東日本災害警備訓練施設の運用が、それぞれ開始された。警察では、両施設を積極的に活用し、実戦的な訓練を実施している。
注: Disaster Medical Assistance Teamの略。医師、看護師等で構成され、大規模災害等の現場において活動するための専門的な訓練を受けた医療チーム

可変式訓練ユニットを活用した訓練
② 今後の災害対策の見直し
警察では、気候変動により激甚化・頻発化する気象災害、今後発生が懸念される南海トラフ地震等の大規模地震、火山災害等に的確に対処することができるよう、令和6年能登半島地震をはじめとするこれまでの大規模災害の経験を踏まえ、大規模災害における警察活動の高度化に向けた取組(注)を部門横断的に推進し、災害対処能力の一層の向上を図り、国民の安全・安心の確保に万全を期すこととしている。
注:24頁参照(トピックスI)