第1章 警察の組織と公安委員会制度

公安委員の声

公安委員としての振り返りと警察活動への感謝の思い


新潟県公安委員会委員

山田 知治(やまだ ともはる)


委員就任  平成29年7月17日


気が付くと、公安委員として8年になりました。当初はバス会社の経営者という立場で選任されたと考えて毎週定例会に臨んだものの、なかなか他の委員のような的確な意見具申は難しいと感じておりましたが、定例会等を通じて、公安委員会が警察とどのように関わっているのか、次第に理解していったところであったかと思います。

新潟県公安委員会は5名の委員で構成されており、地域的には上越、中越、下越及び新潟市から、分野別には経済関係、教育関係及び法曹関係からバランス良く選任されております。

私の場合は、会社と比べての感想になりますが、警察組織の目標達成への手法、組織の運営、職員の育成法等で、大変参考になることが多いと感じます。

特に、警察学校での教育により士気高い職員が育成されていることは、県民の安全安心を守る体制を強固にするために、最も基本的な取組と思っております。

また、企業であれば、商品・サービスへの要望は改善のヒントになるものと受け取ることからして、警察署協議会での意見の多さや活発さは、県警察の健全性の表れかと感じております。さらに、警察署協議会代表者会議においても、各地区の意見をきめ細かく集約できるような工夫もなされておりますが、今後とも住民ニーズを十分くみ取る警察であってほしいと願っています。

さて、定例会ごとに多岐にわたる報告がある中で、この8年間で顕著に改善されていると思えたものは、県内の交通事故死の件数です。実際、人口10万人当たりの交通死亡事故等を指標とする日本経済新聞による「交通安全度ランキング」で、令和5年、新潟県は全国2位となったのも、日頃の成果の表れと感じます。交通に関しては、交通事業に携わる者としても関心のあるテーマですが、県警察では、事故が発生した際にはその状況を分析して対策に役立てているほか、春と秋の交通安全運動等のタイミングでの定期的な安全啓発運動や取締りの強化に加え、事故が多発しているときにもこうした取組を機動的に実施しており、その積み重ねが交通事故の減少等に功を奏しているのではないかと思われます。交差点での歩行者への積極的な指導に至るまで、手を抜かない対策に邁進されている県警察をはじめ、関係の皆さんに敬意を表する次第です。

また、毎回の報告において増加傾向になっているのが特殊詐欺被害であり、委員就任当初はこれほどやっかいな事案とは正直思ってはいませんでした。一人暮らしの高齢者等が被害に遭われるということで、各種啓発活動、録音機能付き電話の普及、支払を止める水際対策等に努められているところですが、さらに最近は、匿名性の高いSNS等を利用して協力者を募集するなど、摘発が難しく、深刻になってきています。

技術の進歩により発生する犯罪は、それを上回る技術で対処すべきですが、この点は、専門要員の拡充、警察庁との緊密な連携等が図られており、根負けしないよう、粘り強く取り組んでいただきたいと願っております。

さらに8年間の中で特に記憶に残っているのは、新潟市の女子児童殺人事件や、他県にまたがるストーカー事件です。防犯カメラ捜査や各県の連携の良さが功を奏し、スピード逮捕に至り、当県の刑法犯の検挙率が全国平均を大きく上回っていることと併せ、大変心強く感じた次第です。

全国公安委員会連絡会議では、児童保護における教育機関と警察との連携について他の都道府県の委員からの熱心な意見に触れ、連携の必要性のほか、警察の役割の重要性を再認識したところです。

また、県警察視閲式に出席させていただきましたが、機動隊の気迫みなぎる動き、高所を恐れないヘリコプターによる救助活動等を間近に拝見し、県警察の数々の実績も、警察官の皆さんのこうした気持ちがあって初めて成し遂げられたのかと改めて感じたところです。是非、新潟のこれからの安全安心も、この姿勢で守り抜いていってほしいと切に思う次第です。

 
新潟県公安委員会委員 山田 知治


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