トピックスI 銃砲による凶悪事件を踏まえた規制の強化と警察の取組
銃砲を悪用した凶悪事件が相次いで発生したことを踏まえ、令和6年6月、第213回国会において、銃砲等の発射及び所持に関する罰則を強化することなどを内容とする銃刀法の一部を改正する法律が成立した(注)。警察では、当該改正後の銃刀法(以下「改正銃刀法」という。)を厳正に運用し、銃砲による事件の未然防止に努めることとしている。
注:罰則の強化に関する規定については、令和6年7月に施行された。その他の規定については、令和7年3月までに施行することとされている。
(1)自作の銃砲を含む銃砲による危害防止対策
令和4年7月に奈良県奈良市内で発生した安倍晋三元内閣総理大臣に対する銃撃事件では、自作の銃砲が犯行に使用された。インターネットを利用して銃砲の製造に関する情報を容易に入手し、自ら製造することができるようになっており、自作の銃砲の悪用が治安上の課題となっている。これに対し、警察では、インターネット上に流通する情報の収集を強化し、銃砲等の製造行為の取締りを推進するとともに、インターネット・ホットラインセンター(IHC)(注1)で取り扱う情報の範囲に、爆発物・銃砲等の製造に関する情報等を追加し、サイト管理者への削除依頼を行うなど、自作の銃砲を含む銃砲による危害防止対策を推進している。
改正銃刀法において、銃砲等の発射及び所持に関する罰則の強化等が行われ、銃砲等の所持のあおり又は唆しに関する罰則が整備されるなどしたことから、今後、警察では、インターネット上に拳銃の不法所持をあおる投稿をするなどの行為の取締り等を通じ、自作の銃砲を含む銃砲による危害の防止を一層強化することとしている。

注1:117頁参照(第3章)
注2:猟銃その他装薬銃砲、空気銃及び電磁石銃並びにクロスボウ

電磁石銃の一例
CASE
無職の男(29)は、令和4年10月、札幌市内の自宅で自作の砲、黒色火薬及びHMTD(注)を所持した。令和5年1月までに、同男を銃刀法違反(所持)、火薬類取締法違反(所持)、爆発物取締罰則違反(所持)等で検挙した(北海道、警視庁)。
注:化学名「ヘキサメチレントリペルオキシドジアミン」の略。爆薬の一種
(2)許可猟銃の対策
銃刀法では、猟銃は、ライフル銃とそれ以外の猟銃に分類されており、ライフル銃の所持許可については、特例として、より厳格な基準が定められている。銃腔(こう)に腔旋を有する猟銃で腔旋を有する部分の割合がライフル銃に満たないいわゆるハーフライフル銃については、これまで、ライフル銃以外の猟銃に分類されていた。
令和5年5月に長野県中野市において発生した殺人事件では、被疑者が所持許可を得ていたハーフライフル銃を使用して犯行に及び、自宅に立てこもるなどしたところ、同事件を通じ、射程距離の長いハーフライフル銃が犯罪に悪用された場合の危険性が明らかになった。
そこで、改正銃刀法では、銃腔に腔旋を有する猟銃で腔旋を有する部分が銃腔の長さの5分の1以上であるものについて、ライフル銃としての所持許可の基準の特例を適用することとされ、これにより、ハーフライフル銃の所持許可の要件が厳格化された。一方、ハーフライフル銃は、獣類の駆除に利用されている実態があることから、警察では、獣類による被害の防止に支障が生じることがないようにしつつ、改正銃刀法を適切に運用することとしている。
また、警察では、銃砲等の所持許可の審査に際し、申請者と同居する親族や近隣の住民等に対して聞き取りを行うなどして、申請者が銃砲等により他人の生命、身体又は財産を害するなどのおそれがあるかなどの欠格事由の該当性を審査するための調査を行っており、こうした調査等を通じて、引き続き、不適格者の排除に努めることとしている。

ハーフライフル銃の一例(全体)

ハーフライフル銃の銃腔
さらに、改正銃刀法では、都道府県公安委員会は、猟銃等の所持許可を受けた者が引き続き2年以上当該猟銃等を当該所持許可に係る用途の全部又は一部に供していないと認めるときは、その所持許可を取り消し又は当該一部の用途が当該所持許可に係る用途に含まれないものに変更することができることとされた。警察では、銃刀法第13条に基づく検査等の機会に猟銃等の使用状況を厳正に確認することとしている。

銃刀法第13条に基づく検査の様子